水面下の戦い7

610 :水面下の戦い7 ◆ZNCm/4s0Dc :2012/12/18(火) 19:56:08.85 ID:Zr97zMKW
今週の月曜日、人生初の彼女が出来、晴れてリア充の仲間入りをした。

そして次の日曜日に初デートとなったわけだ。
無論妹との買い物はカウントしていない。
―――が…。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……何とか言いなさいよ…」
「…んー、なんとか」

ベキ!

元々親しかったわけで今更何を話すべきかわからなかったりする…。

月曜日に返事をしたとき、こいつは涙を流して喜んでいた。
そんな反応に少し困ったが、でも嬉しくもあった。
泣くほど自分に思いを寄せていてくれたことに…。

ちなみにまだキスもしていない。
どうアプローチすればいいかわからない…というのもあるが、相手の真剣な気持ちにこちらも応じなければならない。
軽はずみな行為は避けたかったのだ。

「折角恋人同士になったんだから、もっとロマンチックなことでも言いなさいよ」
「…例えば?」
「“ずっと昔から君を知っていた気がする”とか―――」
「漫画の読み過ぎだ!!」

「お待たせしました―――デラックスパフェです」

頼んだデザートが来たようだ。
かなり大きめの、一人で食うにはキツイと思われる化け物が登場した。


611 :水面下の戦い7 ◆ZNCm/4s0Dc :2012/12/18(火) 19:57:10.62 ID:Zr97zMKW
「これを全部食ったら胸焼けしそうだな…」
「そう?私には美味しそうに見えるけど」
「さっきあれだけ食べてよく腹に入るなぁ…」
「スイーツは別腹よ」
「―――だから太るn」

ベキ!!!

「だから二人で分けるんでしょ?」
「ふ、ふぁい…」

やっぱりそれは禁句か…。

「―――はい、あーん?」
「……」
「どうしたの?」
「…やっぱりやるの?」
「当たり前じゃん!!」
「………あーん」
「美味しい?」
「…ん」

変わらないようでも、変わっていくものだ。
今までは何処か夢うつつな気分だったが、こいつは本当に俺の彼女になったんだな…。

この後プリクラを撮り、服屋を見て回るうちに夕方となり、お開きとなった。

「もう一日も終わり…ね」
「ああ、ゴメン。来週は大丈夫だから」
「じゃあ来週の日曜は……私のアパートでね。朝まで帰さないわよ?」
「へ?」
「……」
「……!!」

お互い顔を赤くする…。
カップルが一夜を過ごすということはつまり…そういうわけで…。

「もう何言わせんのよ!!」
「俺のせい?!」
「こういうときは男性からリードするものでしょ?!」
「面目ない…」
「―――それにもっと一緒にいたいんだから…」
「…明日になればまた会えるさ」
「……うん」

駅の改札口で見送る。
あいつは見えなくなるまで振り向いて手を振っていた。


612 :水面下の戦い7 ◆ZNCm/4s0Dc :2012/12/18(火) 19:58:18.24 ID:Zr97zMKW
日が沈み、夜となった。
本来はそのまま彼女と夜のデートを過ごすはずだったが、それを中止してまでの用事が今日はあった。
というより、つい先ほど出来たんだが…。

「お待たせしました、兄さん」
「いや大丈夫。そんなに待ってないよ」
「急なメール、ゴメンね。でも予約取れるのが今日しかなかったからさ」
姉さんもいいよ、別に。それに家族三人で外食なんて久しぶりだし」

待ち合わせスポットにて姉妹と合流する。
用事とは何のことはない、家族サービスだ。

家族の絆は切れることは無いが、いずれお互いに相手が出来て離ればなれになるだろう…。
だからこそ、今の時間だけは大切にしたい…。



「そういえば、あんたの彼女ってどんな人?」

食後のドリンクとデザートを楽しんでいるとき、姉さんが聞いてきた。
…まぁ当然だろう。

「大学の同じゼミにいる奴。明るい性格だな」
「私は以前にお会いしましたよ」
「ふーん、―――それで告白のときはどうだったの?どんなところに惚れてる?結婚は考えてる?子供の名前―」
「ちょ、ちょっと?!!そんな聞かれても…、って子供?!」
「私も興味あります。それにこんな兄さんのどこに魅力を感じたのかも」
「お前らぁ…」

ふと気付く。
そういえばあいつはなんで俺のことを好いてくれるんだろうか?
聞こうと思っていたが、忘れていて聞けなかったな。
明日にでも聞いてみるか…。

「それで?まさかCまでいったの?!」
「言い方、古っ!おばさんかよ!!ってそうじゃなくて!」
「何ですってぇ?!」
「兄さん…学生の身で相手を身重にするなんて…」
「いや、違うから!変な妄想をエスカレートさせんな!!」

「―――お客様、店内では静かにお願いします」

ほら、怒られた…。


613 :水面下の戦い7 ◆ZNCm/4s0Dc :2012/12/18(火) 20:00:02.44 ID:Zr97zMKW
「もう時間だしそろそろ出るか」
「んー、そうね」
「会計は俺が払っとくよ」
「えっ?どうしたのよ、ここは私に任せておきなさい。これでも社会人よ?」
「いや、たまには払わせてよ。外食の度に姉さんが払ってるじゃん」
「学生が無理しないの。ここは大人に従うところよ」
「…じゃあせめて半分でも」
「―――ふう、しょうがないわね…。気持ちは嬉しいけどお金は大事にしなさい」
「わかってるって」
「兄さんは彼女さんにほとんど使ってしまいそうですね?」
「そこまで自分を見失ってないよ」

まぁたまには家族に貢献したいと考えることもあるのだ。


コト。



「どうぞ兄さん」
「ん、ありがとう」

風呂上りに妹からお茶を受け取り一杯―――。

「ふぅ、一息ついた」
「お疲れ様でしたね、今日のデートはどちらに?」
「街をぶらっとしただけ。とくに変わったことはしてないよ」
「…そうですか」
「この辺は遊べる場所が少ないから―――ふわぁぁぁ」

何か身体が急に重く……。
意識もだんだんと―――。
せめて部屋に戻ってからじゃないと…風邪――ひく――――


614 :水面下の戦い7 ◆ZNCm/4s0Dc :2012/12/18(火) 20:01:13.24 ID:Zr97zMKW
ピピピピピピピピp!

「ん?!」

カチン!!

朝、か…。
起き上がると身体のだるさを感じた。
風邪―――ではないな、この感じは。
…そういえば、昨日リビングで寝ちゃったような気が……。
なんでベッドで寝てたんだ、無意識に戻ってきたのだろうか?

コンコン!

「兄さん?起きてます?朝食は出来てますから早く来てください」
「おー、わかった。今行くよ」
「…あと昨日はご馳走様でした」
「ん?いいよそんなこと。何れお前に奢ってもらうときもくるだろうからさ、そのときを楽しみしてるよ」
「ええ、いつかは。…では、お待ちしてます」

パタパタパタ…

携帯を見ると、あいつからおはようのメールが来ていた。
やっぱり恋人の存在は人生を豊かにするな。
何れ姉さんや妹にもいい人が現れるといいな。





「本当にゴチソウサマでした、兄さん―――ふふ、フフフ」

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最終更新:2013年02月02日 04:39
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