672 :
水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:39:55.52 ID:C6icyP4v
かつての私は幸福ではなかった。
家は小金持ちに部類に入り、金には困らなかった。
小学校に入学してからずっと勉強を強いられてきた。
外で遊ぶことなく、帰ったら家庭教師や塾の日々だった。
しかし、その時は苦痛ではなかった。勉強を頑張り成績が上がれば、両親は褒めてくれたからだ。
いつもは怒るばかりで、滅多に褒めてくれなかったので、私は一層勉強に励んだ。
中学生になって変化が訪れた。
父親が浮気したのだ。
それを知ると、怒るでもなく母親も外で他の男と遊ぶようになった。
あっけない家庭崩壊だった。
私自身は勉強に没頭することで逃げ道を探していた。
いや…、勉強に逃げることで他のことから目を逸らしているにすぎなかった。
だが気付いてしまった―――。
家族旅行の思い出や、一家団欒の夕食といったありふれたことの記憶もなかったこと。
私は愛を知らずに育った…。
高校に上がり、間もなく離婚。
母親側に引き取られたが、既に彼女は母ではなかった―――。
毎月、通帳に振り込まれる金で生活し、誰も帰らない家でただ一人勉強するしかなかった。
転機が訪れたのは高校一年の夏。
夏休み前にして、提出物を運んでいたときのことだった。
曲がり角で私にある男子がぶつかってきた。
持っていたノートが床に散らばる。
このときの私は周囲に興味が無く、人と会話することも苦手としていた。
それどころか、生意気にもその周囲の人々を見下してもいた。
だから、友達と呼べる人もいなかった…。
「(この男子も謝ることもしないだろう…)」
無言で散らばったノートを集めていると―――
「ゴ、ゴメン!!大丈夫?!怪我は?」
その男子が、謝ってきたのだ。
予想外のことで呆けていると
「ああ!!ノート散らばっちゃってる!集めないと!」
あわてふためいてノートを拾うその姿は何とも滑稽でおかしくなって笑ってしまった。
きっかけはこんなものだ。
何ともベタだ、と我ながら思った。
彼がどんなことに笑い、喜び、悲しみ、怒るのか、それらを知りたかった…。
673 :水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:42:05.87 ID:C6icyP4v
彼には姉妹がいた。
大学生になっている姉とまだ中学生の妹だ。
さらに、不幸なことに彼も早くに両親を亡くしていた。
このとき、直感的に察した!これは運命だ、私たちは同じ境遇なのだ。
わかりあえる、そして…愛し合える―――。
私は愛を欲していた。
誰かに愛されたかったのだ…。
彼に告白しようと思った。
しかし…、私は魅力的なのか?彼に釣り合うのか?
鏡に映る自分を見てみる。
化粧っ気のない地味な女子がそこに映っていた。
これでは駄目だ!!
こんな女が振り向いて貰えるわけがない…。
彼はそれほどまでに輝いていたから。
しかし、彼の恋愛事情を調べてみると、意外な事実が判明した。
彼が級友達と談笑していたとき耳にした事、恋人はおろか、告白されたことすらないらしい。
何なんだろうか?ともかくチャンスだ。
私は、自分を魅力ある女性に高めること、彼に対する調査を続けることにした。
まずは容姿からだ。
化粧を覚え、お洒落することを心掛けた。
ファッション雑誌や、ネットを片っ端から調べた。
さらに男性向けのファッション誌も読み、一般男性の思考も知識として取り入れた。
次に、対話力。
これはかなり高いハードルとなった。
なにしろ今までが今までだったので、他人とどう話せばいいかわからなかったからだ…。
高校の二年、三年はこのことに費やした。
おかげで卒業までに人並みの会話が出来るまでになった。
容姿も改善され、目標に近づきつつあった。
実際、私に告白してきた男どもは5人はいた。全てフッたが。
それとは別に、心身を鍛える為に、合気道も習い始めた。
自分の身は自分で守る…、その辺のクズにこの身をさらすわけにはいかなかったからだ。
次に重要なのが彼の進路、調べたところ進学するらしい。
このあたりではそこそこのレベルの大学に受験するようだ。
私自身の進路相談の際には当然、彼と同じ大学を第一志望とした。
担任は驚いた様子で、もっと上の大学に入れるなどと言っていたが…私には無意味だった。
彼と同じ場所で過ごす、それは絶対条件だった。
674 :水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:43:20.59 ID:C6icyP4v
翌年の四月、晴れて大学生となりいわゆる大学デビューを飾った。
高校時代と比べて、誰かはわからないだろうというくらいには変われていた。
初めて彼と同じ授業を受けるときには、さりげなく横に座り初対面の如く会話した。
彼の方も、高校時代の私を覚えてるはずもなく、初めてのように会話してくれた。
少し寂しい気持ちもあったが、それでも至福の時間となった…。
身体に電流が何回も流れる感覚…。
授業が終わり、すぐトイレに駆け込むとアソコがすでにびしゃびしゃだった―――。
学年も上がり、ある程度親交を深められるようになってきた。
この時期が勝負所。
複数人で遊ぶという名目で彼を呼び出し、二人でデートをした。
あらかじめ他の友人達には相談してあり、上手く口裏を合わせてくれた。
定番のデートコースを周り、ラストは観覧車での告白だ。
当初、彼は答えに戸惑っていた。
当たり前だ…、友達として付き合っていた女からいきなりそんなことを言われればそうなるだろう。
私自身も恐ろしくなり、返答は焦らなくていいと言っておいた。
でももし拒否の答えが返ってきたら―――私の人生は終わりだ。
数日して彼からの答えが―――。
「俺もお前のことが好きだ。まだ友達感覚が抜けないけどそれでも…付き合ってほしい」
一番欲しかったものがそこにあった…、涙が溢れてきた…。
嬉しすぎて…、今までの努力が報われて…、ただ彼に抱きつき泣いた……。
675 :水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:45:46.03 ID:C6icyP4v
後日、彼の姉妹と偶然会う機会があった。
そこでお付き合いのご報告をさせてもらった。
喫茶店に入り、さらに深い話をすることに。
彼のお姉さんからは、将来的なことを聞かれた。
結婚は?子供は?共働きするのか?住む場所は?
正直そんなところまでは考えなかったが…彼と人生を共に歩みたいと、自分の意思を伝えた。
妹さんからは、彼との馴れ初めを質問された。
私は全てを話した。
高校時代に一目惚れし、彼に釣り合う女になるために、自分を磨く努力をしてきたことを…。
二人共、満足したのか彼のことをよろしくといい、帰っていった。
ついに彼の家族にも認められた…。
そして現在―――
「ん、んん!!」
「ん、ふ…」
彼とのキス…。
身体が芯から震え、下腹に熱が籠る…。
クチュクチュ、ニチャ、ニュルン―――
「はぁぁぁ…、べとべとだね…」
「相変わらず激しいな…、ここももう、ぬるぬるだ」
「あぁん!!…そんなところぉ…」
「ん?触らないほうがよかった?」
「……イジワル」
676 :水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:47:39.41 ID:C6icyP4v
彼とするときはいつも正常位だ、彼に突かれる快感がたまらない…。
にゅるにゅる、ずぷぷぷぷ…
「んっ!…締め付けがいつもよりキツイな…」
「ふぁぁ…、そんなこと言わないでぇ…」
ズプズプズプ!グチュグチュ!!
「ん!あん!!ああ、ふぅあ!あぁん!!」
「ふうふう…、してるときはいつもと違った可愛さがあるな…」
「んん!!ま、るで、あん!いつもは可愛くな、ん!みたいじゃん…んふ!!」
「いや、いつもも可愛いよ…」
くちゅ
「んー!んんん!!」
クチュクチュクチュ、にちゃり…
ぐぷぐぷ、ズプズプ…
上と、下で繋がる私たち…。
このときが一番好きだ…、まるで彼と身体も心も一つになってるようで…。
ドプドプドプ!!ビュビュゥゥゥー!!!
「んんんんん!!!」
「んっ!…はぁぁ…」
そのまま中に熱いものが注がれる…。
「はあはあはあ…、もぅ…それは反則ぅ…」
「ふふ、いつも驚くのが面白くてね…」
677 :水面下の戦い10 ◆ZNCm/4s0Dc :2013/01/12(土) 17:49:01.78 ID:C6icyP4v
大学卒業後、私たちは結婚し彼の家に住んでいる。
彼は無事就職でき、それなりの会社で働いている。
私は主婦をしながらもパートをして生活している。
彼の義姉さん、義妹さんも一緒だ。
かつて、義姉さんは悪い男に騙されて、子供を身籠ってしまった。
彼からその話を聞いたときに、彼自身が複雑な顔をしていた…、当然義姉さんのことが心配なんだろう…。
しかし、彼女は堕胎することなく、出産しシングルマザーとして働きながら子育てしてる。
ちなみに、彼女の子供は女の子で彼女そっくりに見える。
最近はネットで自営業も兼ねてるらしく収入も安定してきているとか…。
母親の鏡として見習いたいものだ。
義妹さんももうすぐ大学を卒業予定だ。
そうそう、彼にもう一つ、報告することがあった。
「あのね…、出来たの」
「えっ?!もしかして…」
「赤ちゃん…それも双子よ」
「…そうか!やったな!!」
彼は私を抱きかかえ、喜んでくれた…。
私、今本当に幸せです―――。
最終更新:2013年02月02日 04:43