秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋

604 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:19:02 ID:ndCIWH2s
 玉恵は美しい少女だった。

 幼い頃から周りからは可愛い少女と褒め称えられ、小学校のときには学校一の美少女として男子たちの注目を浴びたくらいだ。
 中学生になっても、それは変わらなかった。いや、むしろさらに注目を浴びるようになった。
 少女から女性へと変わる第二次性長期。世の女性の誰しもが訪れる通過儀礼に、玉恵にも例外なくそれは訪れたからだ。
 尖った四肢は少しずつ柔らかみを帯びるようになり、平らな胸板は少しずつ脂肪が集まっていく。
 腰のラインに曲線を描くようになり、骨盤が広がって女性らしいまろやかなヒップを持つようになる。
 玉恵は14歳のとき、それくらいの年齢の少女だけが持つ蕾の儚さと、花の美しさを兼ね揃えた少女へと成長していった。

 もちろん、思春期真最中の男子たちが放っておく訳がない。

 週に2回は必ず下駄箱に手紙が投函され、週に1回は誰かに告白されるくらい、玉恵は魅力的だった。
 しかも、玉恵は見た目が良いだけの少女ではなかった。学力という面においても、彼女は優秀だったのだ。
 玉恵自身、あまり勉強は好きではなかったけども、期末ごとのテストでは、かならず上から20番以内の点数を取っていたからだ。
 玉恵にとって、テストで好成績を取るのは苦ではなかった。テストに出るのは全て、授業で習ったことだからだ。
 それは、玉恵が生まれたときから持っている頭の回転の速さと、記憶力の良さが、その点数を可能にする一種の才能とも言っていいものだった。
 そのため、同性から尊敬と嫉妬の目を。異性からは、恋慕の目で見られるのが当たり前だと、玉恵は思っていた。
 玉恵と秋冬の両親も、何かあるとすぐに玉恵の自慢話をする親バカ夫婦と呼ばれ、玉恵のことを可愛がった。

 同時に、近所からはかなり嫌われている夫婦でもあった。

 なぜなら、玉恵に対する態度と、秋冬に対する態度がまるっきり違ったからだ。
 夫婦は、玉恵の我侭にはいつも笑って聞いてあげた。
 新しい服が欲しくなったらすぐに買い与え、誕生日には店で一番大きいケーキを買って来て盛大に祝ったりもした。
 玉恵が何か失敗すると、夫婦はそのことを慰め、旅行に連れて行ったりもしたくらいだ。
 だが、それが弟の秋冬のことになると話は変わった。
 夫婦は秋冬の我侭には非常に厳しかった。新しい服も一年に一回買い与えれば良いほうで、殆どは姉のお下がりだ。
 玉恵の誕生日にはプレゼントとケーキを必ず用意するのに、秋冬の誕生日は忘れて仕事を入れることもあった。
 もちろん、秋冬は子供心に両親に怒った。どうしてお姉ちゃんはちゃんと誕生日を祝ってもらえたのに、自分は祝ってもらえないの……と。
 しかし、秋冬の思いは痛烈なビンタで返された。

 父は言った。
 お前を食べさせるために働いているんだ。食わせてもらっているだけありがたいと思え、と。

 母は言った。
 我侭ばっかり言ってないで、少しはお姉ちゃんを見習いなさい、と。

 秋冬は両親に甘えることは無くなった。


605 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:20:22 ID:ndCIWH2s
 秋冬にとって、両親は自分を育ててくれている恩人という意味では感謝していたが、それだけだった。
 両親も、秋冬のことを居候程度と考え、子供に対する愛は全て娘の玉恵に注いだ。
 そんな生活に我慢の限界を超えた秋冬が、両親の祖母を尋ねたのは、秋冬が12歳の時だった。
 夫を亡くし、一人寂しく過ごしていた祖母にとっても嬉しい話であったため、この話はトントン拍子に進んだ。

 しかし、両親は反対した。

 それは息子が出て行こうとする悲しみからではなく、世間体を気にしての行動だった。
 まだ小学校を卒業したばかりの子供でしかない秋冬が、特に理由があるわけでもなく、
 家を離れようとするなんてことが世間に知れてしまえば、何を言われるか分かったものではない。

 けれども、秋冬の強い意志と、祖母の強い勧めによって、無事に祖母の家で暮らすことになった。

 最初は愚痴を零していた両親も、いつしか、秋冬など初めから存在していなかったかのように振舞った。
 玉恵はそのことを子供ながらにおかしいと思っていたが、口に出すこともせず、行動に移すこともしなかった。
 両親から愛されるという甘美な世界はとても居心地が良かったし、出来の悪い弟が怒られても仕方ないと、心のどこかで思っていたからだ。
 きっと、自分は愛される子供として生まれ、弟の秋冬は要らない子供として生まれた。

 つまり、そういうことなんだと。

 当時14歳、玉恵は本気でそう考えていた。
 だが、玉恵が進級して15歳の誕生日を目前に控えたとき、ある病気に感染することで、彼女の甘美な世界は終わりを告げた。
 自分の考えが全て間違っていたことを思い知ることになる。


606 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:22:16 ID:ndCIWH2s
 変異性フェイスチェンジモンスター症候群。通称、FCM症候群。

 玉恵は、この病気に感染した。

 獣人、別種、人間、それらの女性にだけ感染する悪魔の災い、神の試練。
 古くから人類と共に姿を変え、人類を苦しめてきた最悪のウイルス、最悪の奇病。
 科学が発達した現代でも全容を解読することができないウイルスは、人類を長きに渡って苦しめ続けた。
 感染した女性は一人一人全く違う症状を見せるが、初期症状は共通していたため比較的早く発見することができるようになったのは玉恵が生まれる10年前。
 ウイルスに対して、唯一分かったことだった。

 初期症状は色々ある。

 ホルモン異常分泌による体重の急激な増加。
 それによる女性ホルモンの減少、男性ホルモンの増大、免疫力の低下、臓機能の低下などの症状がでる。
 逆に体重が激減して、たった数日で餓死してしまう人。脳がウイルスに犯され、知性が失われた人もいた。
 体重の急激な増加によって、女性らしいプロポーションがなくなる。または激減によって痛々しい姿になる。
 内分泌系の異常によって、にきび、肌荒れ、湿疹等が異常に出て、悪臭を放つ人も珍しくなかった。
 身体を蝕む激痛が感染者の心を砕き、醜く変わっていく自分の体に絶望する。
 だが、それらの症状より、病気の苦痛より、感染者を死に至らしめるものがあった。
 それは周囲の奇異の視線。それは醜く変わった感染者に対するあまりに酷い仕打ち。それが感染者の生きる希望を奪い、命を奪った。

 致死率99.999%。悪魔の災いといわれる所以だ。

 それだけならFCM症候群は悪魔の災いに相応しいものだろう。だが、神の試練ともいわれる所以は、最後に表れる。
 個人差にもよるが数年近く、この病気に耐えて生き延びることが出来れば、ウイルスは人体に驚くべき変化をもたらすのだ。

 それは人体の強化。

 殺せないと知ったウイルスが、宿主の遺伝子を組み替えてしまい、共生を図ることでこの変化が生まれる。
 醜く変わった肉体は元の状態に戻されるだけでは終わらない。
 筋肉質の変質による筋力の発達、治癒能力の発達、五感の発達、知能指数の増加など、様々な変化が出始める。
 細胞の一つ一つが強靭なモノに生まれ変わることで、肉体は老いを忘れ、永遠の若さを手に入れることになるのだ。
 しかし、ほとんどの女性はまずそこまで生きることができない。
 24時間付きっ切りで介護が必要になるだけでなく、数年も日数が掛かるとなれば、家族が真っ先に見捨ててしまうからだ。
 感染した娘を安楽死してやる家族もいたが、ほとんどは外に放り出して見捨てる。
 そんな風潮が世界にあったため、感染した女性が生き延びる可能性は限りなくゼロだった。

 それは、愛されて成長してきた玉恵も、例外ではなかった。


607 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:23:44 ID:ndCIWH2s
 どうして私は追い出された? どうして私は今ここに居る? どうして私は空腹に悩まされている? どうして?
 私はただ自問していた。
 つい今しがた追い出された家を見て、私は言葉が出なかった。
 いつもお風呂上りに夜風を楽しんだ二階のベランダ。
 お気に入りの縫いぐるみを幾つも飾った箪笥棚。
 クローゼットに入っている、誕生日に買ってもらった洋服。
 それらの色々な思い出が頭の中をグルグル回る。
 けれども、すぐにそれらのことを頭から除外する。考えても仕方ないし、意味がない。まだそれくらいの知性は残っている。
 私は先ほどまで住んでいた我が家を離れることにした。夜も遅いので人通りは全くない。

「……ここに居ても意味ない……か」

 トボトボと静かな住宅街を歩く。一歩進むたびに軋む体が悲鳴を上げる。
 軽く視線を下ろすと、服越しに大きく迫り出したお腹が視線を妨害した。一月前はほっそりとしていた腰周りが、今は見る影もない。
 終わりは一瞬だった。いや、本当はこの病気に感染してから終わっていたんだ。
 FCM症候群になってから、父と母からの視線が日に日に冷たくなっていくのは分かっていた。
 どんどん醜くなっていく私を見て、両親は汚物を見るような視線を向けていたのも分かっていた。

 けれども、心のどこかで私は楽観視していた。

 私をあんなに愛してくれている両親だもの。きっと病気になっても変わらず愛してくれるわ、と。
 でも、結局それはただの夢に過ぎなかったのだ。
 ぐうっ、とお腹が鳴った。ここ数日、碌に食事も取らせてくれなかったから余計に空腹が辛い。

「……はあ、お腹空いた……」

 自然と、頬に涙が伝った。
 父と母は私を愛してくれてはいた。けれども、それは私だけを愛していてくれた訳じゃない。
 美人で成績優秀、運動神経抜群で社交性も文句なしの、病気になる前の私を愛していたんだ。
 あの人達にとって、病気になった私はもう娘ではない。ただ自分達の血を引いた血袋程度でしかなくなってしまった、そうなのだと思う。

 だから涙が流れた。

 どこに行こうとしているのだろう。ただ歩き続ける自分に再び自問した。

「友達だっていないのにね」

 自分でも悲しくなった。かつての親友も、今では私をゴミか何かのように見ていたことを思い出したから。
 病気になる前は、皆私を褒め称えてくれた。綺麗な髪だね、目もぱっちりして羨ましい、肌も白くて綺麗……数え上げれば限がない。
 でも、沢山の賞賛も病気になってからは無くなった。あったのは蔑視と嘲笑だけ。
 結局、彼らや彼女らも、同じだったのだろう。


608 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:24:36 ID:ndCIWH2s
 家を追い出されてから数時間。もう時間の感覚も感じなくなってきた。

 死んだら楽になれるのだろうか。

 そんな考えも浮かび始めていた私の思考を止めたのは、懐かしい人物だった。
 いつからそこにいたのか、数メートル先に佇んでいる少年を見て、気づいたら私はその少年の名を口にしていた。

「……秋冬…」

 私に呼ばれたのが嬉しいのか、弟の秋冬は懐かしい笑みを浮かべ、そして済まなそうに俯いた。

「お姉ちゃん……ごめんね」

 どうして謝るの?
 そう尋ねるより先に、俊敏に近づいてきた秋冬が、素早く何かを私に押し付けた。
 瞬間、押し付けられた部分に激痛が走り、私の意識は遠くなっていった。


609 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:26:02 ID:ndCIWH2s
 暗い、けれど暖かい、そんな場所で私は眠っていた。右も左も分からず、自分の手足すら見えない暗闇の中。
 意識があるのにどうして眠っていると実感したのか、自分でも分からない。ただ気づいたら眠って、気づいたら目覚めて、それを繰り返しているのだけは分かった。

(……今は何時なんだろう……)

 時間の感覚も分からない。
 一分なのか、一時間なのか、はたまた一年なのか。
 短いとも長いとも感じる眠りの中、私は暗闇の中に居た。
 そんなあるとき、私の眠りに変化がやってきた。何かが私の中に入ってきたのだ。
 それは暖かくも優しい。切なくも愛おしい。表現できない何かが私の中に注ぎ込まれていく奇妙な感覚。
 その何かはある程度時間が経つと消え、また突然注ぎ込まれるということが繰り返された。

(……暖かい……)

 一分が過ぎ、一時間が過ぎ、一年が過ぎ。
 時間を忘れて私は、注ぎこまれる何かを、いつのまにか心待ちにしていた。
 そして、そのことに気づいた。

(あ……これって……秋冬なの…?)

 ある日突然、分かってしまった。
 注ぎこまれるものが、なんなのかを。

 理解したのだ。

 それは純粋な愛情という想い。
 そして姿も見えないし声も聞こえないうえに、確証もないのに、その愛情は秋冬が私に向けたものだと、理解できた。

(……こんな私を、今でも愛しているんだ……)

 嬉しかった。なによりも、嬉しかった。
 勉強が出来る私でもなく、綺麗な私でもなく、醜くなった私自身を愛してくれていたことが、心から嬉しかった。

 同時に申し訳なかった。

 思い返せば、自分は秋冬に姉らしいことを何一つしていないのだ。

(…………あ……)

 ふわっ、とゆっくり自分が浮かび上がっているのを実感する。

 きっと起きるのだろう。
 起きたら何をしようか?

 まず、起き抜けに今までのことをいっぱい謝って、次に何をしようか?
 けれど、すぐにしたいことは見付かった。
 久しぶりに弟といっぱいお話したい。そう思った。
 起きたら不意打ちに抱きしめてやろうか、そんな悪戯も頭に浮かんで、消えた。


610 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:27:40 ID:ndCIWH2s
 早く元気にならないかな。

 薄れ行く意識の中、秋冬は思った。
 あの家から飛び出して、それなりの月日が流れた。
 祖母と二人での生活は、とても貧しかった。それでも、とても幸せだった。

 元々高齢だった祖母は、秋冬が高校に入学すると同時に亡くなってしまった。

 せめて孝行してやりたいと思っていた秋冬にとって、恩返しの相手を永遠に失ってしまうことは、精神的にとても辛いものであった。
 それからアルバイトで学費を稼ぐと共に、祖母が残してくれた財産を切り崩しながら生活する日々が始まった。
 昼間は学校に通い、夜はバイトに向かう。
 そんな生活をしていた秋冬は、ある日姉の玉恵がFCM症候群になったことを知った。

 もしかしたら、姉は追い出されてしまっているかもしれない。

 秋冬は、急いで昔住んでいた土地に向かったのだ。
 そこで偶然にも玉恵に出会った秋冬は、人目で家を追い出されたばかりだということに気づき、強引な手段を使って家に連れてくることにした。
 結果的に、玉恵の病気を治すのに一年必要だった。
 家を追い出された玉恵はすぐに秋冬の手によって気絶され、秋冬が住んでいるアパートに連れて来られた日から、一年。
 ウイルスによって昏睡状態にあった姉を、秋冬は一年間休まず看病し続け、休まず命を与え続けた。

 途中、何度も辞めようと考えた。

 FCM症候群に感染している人を見捨てても、なんの処罰もされない世の中だ。今ここで追い出しても、誰も自分を責めたりしないだろう。
 首を下ろすと、そこにいるのは醜くなってしまった姉の姿。豚のように肥えた腹に、像のような手足。お世辞にも美しいとは言えない姿だ。
 けれども、そんな姿になってでも、どんな化け物に変わり果てても、どうしても秋冬には姉を見捨てることが出来なかった。

 なぜだろうか?

 だって、どんな姿をしていても、自分にとっては大好きな姉なのだ。
 たとえ姉から優しくされたことはなくても、太陽のように暖かく、向日葵のように優しく笑う姉が大好きなのだ。

 答えは初めから出ていたのだ。

 そして一年が過ぎたこの日、無理に無理を重ねた秋冬は、ついに倒れこんでしまった。
 暗くなっていく視界。いまだ眠り続ける姉の姿を見て、秋冬は思った。

 早く元気にならないかな……と。


611 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:28:36 ID:ndCIWH2s
 パキ、っと、乾いた音を立てて、玉恵の腕が軋んだ。
 いつものようにベッドに寝かされている玉恵の体に、変化が起きた。
 そう、一年の治療のときを経て、ついに玉恵は乗り越えたのだ。
 そして、FCM症候群を克服したものだけに訪れる、神の寵愛。

 人体の強化である。

 凄まじいスピードでウイルスが遺伝子を組み替え、玉恵の体を改造していく。
 膨れ上がった脂肪は瞬く間に燃焼され、一部は胸やお尻などに移される。
 像の皮膚のようだったボロボロの肌は、乳液で浸したシルクのように滑らかになり、光を優しく跳ね返す輝きを取り戻す。
 水分がなくなり痛んだ髪も、艶と張りを取り戻し、かつての美しさを見せ始める。
 そして、僅か数分で玉恵はかつての美しさを……それ以上の美しさを手に入れて、病気を克服した。
 ゆっくりと、玉恵の目蓋が開き、アメジストよりも美しい瞳が姿を現した。

「……秋冬の匂い……」

 完全に目を覚ました玉恵はゆっくりと体を起こし、ベッドから出た。
 ふわっ、と玉恵から女性の甘い体臭が漂った。
 普通の男ならそれだけで射精してしまうくらいの妖しい色気がそこにあった。

 けれども、玉恵にはどうでもよかった。

 たった一人、世界でたった一人だけが喜んでくれれば、他の大多数がどうなろうが知ったことではないからだ。
 幼子のように寝ている秋冬を見て、玉恵は笑みを浮かべた。

「秋冬……ありがとう……」

 玉恵はその場で膝を付き、ゆっくりと唇を秋冬の唇に近づけ……。

「……ん」

 二人の唇は触れ合った。
 この日、春夏玉恵は、FCM症候群を克服し、かつての美貌を取り戻した。


612 秋冬to玉恵:キモ姉に至るまでの道筋 sage 2008/08/02(土) 01:29:46 ID:ndCIWH2s
 そして翌日、秋冬の申し出を受け入れ、一緒に生活することになった。

 さらに一週間後、玉恵は両親の家を訪れ、親子関係を解消した。
 しかし、病気が治った玉恵を見て、両親はまた仲良くやろうと言って聞かなかったが、玉恵は一切耳を貸さなかった。

 玉恵と秋冬が一緒に生活するようになってから一月。玉恵はある本を図書館から借りてきた。
 本のタイトルは『はじめてのC言語』。
 秋冬はパソコン関係には疎かったのだけど、とりあえず必要になるであろうと思い、無理をしてパソコン一式と必要な設備を買い揃えた。
 玉恵はとても喜び、秋冬に感謝の言葉を贈った。そのとき、玉恵が秋冬を襲いかかるという事件が起こりかけたが、未遂に終わる。

 秋冬は冗談のつもりと思い、笑って許したが、そのときの玉恵の目は修羅のように血走っていたらしい。
 未遂に終わったのも、別種はある時期以降にならないと発情しないので、あまり意味がないという理由だとは、秋冬には考えも付かなかった。

 そして玉恵と秋冬が一緒に住むようになってから二年。
 いつの間にかその筋では超一流となった玉恵がお金を出して、新しい家に引越しした。
 秋冬は遠慮したが、玉恵が問答無用で連れ込んで有耶無耶にしてしまい、一緒に住むようになった。

 このとき秋冬がよく溢していた言葉は、『また下着が盗まれた』

 その盗まれた下着が全て、玉恵の部屋の押入れの置くにあるダンボールにあるとは、秋冬には考えも付かなかった。
 同時期、秋冬の留守中にお金に困った両親が玉恵を訪ねてきた。
 玉恵は金を融資する代わりに戸籍上の親子関係も抹消するよう提案し、両親も渋ったが背に腹は変えられないらしく、結局承諾した。
 後日、再び金を無心してきた両親に対して、玉恵は一円たりとも金を渡すことはなかった。

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最終更新:2008年10月20日 01:17
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