116 二進法に生きる僕達・後編 ◆EY23GivUEuGq sage New! 2009/08/01(土) 02:54:04 ID:byAGdTuc
コンコン、と扉がノックされ、昼食を食べ終えた姉が入ってきた。
「あら、どうしたの? 顔が真っ青よ」
姉が僕に、性的感情を抱いている・・・。通常では有り得ない事だが、思い当たる節が無いわけでもない。
例えば、姉は思春期であるにもかかわらず僕に「そういった類」の物の所持、そして自慰行為を厳しくチェックしていた。
「したくなったら、お姉ちゃんに言いなさい」と、あの時は冗談、もしくは自慰禁制の為のプレッシャーだと思っていた。
また、中学に上がって以降、お風呂場に乱入されたのも一度や二度ではない。
そして、何故か断り続けるお見合いの話・・・。
勿論、確証があるわけではない。凡人たる僕の推理なのだから、恐らく間違っている可能性のほうが高いだろう。
しかし、正否の事は別にしても一度「そういう答えに至った」という事実は、僕の目にフィルターとして焼きついてしまった。
「具合でも悪い―――」
頭で考えたわけではなかった。ただ、姉に頬を触れられたとたん、体が、本能が反応し、刹那的に手を振り払っていた。
「あ・・・」
ごめんなさい、と言おうとしたが声は出ず、気まずい沈黙だけが流れた。
何をしているんだ僕は。たった一人、僕を認めてくれた姉に対しこの仕打ちは酷いだろう。
心が、頭がそんなことを叫んでいても実際僕は動けなかった。そして姉はまるで魂を失った様に固まっている。
「ご、ごめん
姉さん・・・」
なんとかかんとか、謝罪の台詞だけは発することが出来た。が、依然姉は固まっており、その口だけが僅かに動いていた。
「・・・00・・・110・・・+101101・・・」
(数式・・・?)
どうやら姉は、固まりながら何かの数式を解いているようだった。耳を澄ませばブツブツと、小さく姉の声が聞こえる。
やがて、唐突に黙り込んだかと思うと両手で顔を覆い、二、三度深呼吸をすると普段の姉の顔に戻っていた。
「あら、どうしたの? 顔が真っ青よ」
先程と、部屋に入ってきたときと全く同じ声色、音声、テンポで呼びかけた。
そっくりと言うよりは、まるで先程の光景を巻き戻し、再生したと言ったほうが正しい。
そして、もう一度同じタイミングで僕の頬に手を伸ばした。
「具合でも悪いの?」
これまたさっきと怖いほど同じだ。違うとすればそのまま手を払わなかった為、温かい掌で顔を撫でられたということだ。
まるで何事も無かったかのように、心配そうな顔で抱きしめられる。温もりが顔全体に広がった。
姉の提案でベッドに横になった僕の頭を、心配そうに何度も丁寧に撫でられた。
「夏バテには少し早すぎるんじゃない?」
クスクス笑う姉を見て、僕は先程の自分の行いを深く恥じた。
「あのさ姉さん、さっきはごめんね」
「さっき?」
「いや、手、振り払っちゃったろ? まったく、どうかしてたよ僕」
「え? 何言ってるのよ宗一ったら。手なんか振り払ってないじゃない」
- ? あれ? なんなのだろうかこの違和感は。姉の顔は心底、全くと言っていいほどに疑問の表情が浮かんでいた。
「え、と。だからさ、その前に一回手を振り払っちゃったじゃ・・・」
「そんなことしてないわ」
ピシャリ、と一喝するように言い放った。あまりにも強引で、まるで「本当にそんなことが無かったかのような」反応だ。
117 二進法に生きる僕達・後編 ◆EY23GivUEuGq sage New! 2009/08/01(土) 02:56:10 ID:byAGdTuc
「宗一がそんなことをするわけが無いじゃない」
何か、この一言が重大な、決定的な部分を含んでいるように聞こえた。
姉が自分のことをどう思っているのか、自分に何を求めているのか、そして何を考えているのか。
「あの、姉さん・・・」
「少し休みなさい」
ゆっくりと、静かに「命令」した。
「やっぱり少し疲れているのよ。ずっと傍にいてあげるからちょっと眠りなさい」
掌で僕の瞼を覆い、優しく語り掛ける。姉の言葉はいつだって正しかった。だからこのまま眠ってしまうことに素直に従った。
目が覚めたのは陽の沈みかけた夕刻だった。
姉は言葉通り、僕が目覚めるまでずっと離れなかったらしい。僕に気がつくと読んでいた本を閉じ顔を覗きこんだ。
「おはよう。気分はどう?」
「ん・・・。悪くは無いよ」
頭が覚醒していくに従って、昼間の出来事が沸々と思い出されてくる。姉が僕のことをどんな目で見ているのかということ、一連の行動に
ついて全く覚えていないこと。
「あのさ、姉さん。昼間のことなんだけど・・・」
言いかけて止めた。確信は無かったが、きっと何を言ったところで無駄だろうと思った。下手をすればまた眠らされるかもしれない。
(何がなんだか分からない・・・。もう頭がぐちゃぐちゃだ・・・)
凡人の頭は、小難しいことをあれこれ考える程容量に余裕があるわけではなかった。
結局、姉には何も聞けない、考えは纏まらない、何も解決せずに夏休み初日は幕を閉じ―――なかった。
深夜、何度目かの時計確認で現時刻は午前3時半だと分かった。昼間に寝てしまった為、ツケが回ってきたのだ。
「やっぱ眠れないよなぁ・・・」
小さく独り言を呟く。もっとも、無音の暗闇は考え事をするのに丁度良かった為、もう一度姉について思い出してみた。
―――姉さんは本当に何も覚えてなかったんだろうか。
そういえば、手を振り払った後の姉さんはどこかおかしかった。虚無の表情と言うか、何も見ていないというか。
それに、あのとき口走っていた数式も気になるところだ。
こうやって考えてみると、いままでずっと姉と一緒だったのに僕は知らない事だらけだ。
姉さんの僕に対する考えだって、
家族愛なのか、それ以上なのか、何とも言えない感じがする。
(一体姉さんは何を考えているのだろう・・・)
「0」と「1」。この二つが何かのキーワードであるのは間違いないと思うのだけど・・・。
―――ギィィ・・・
不意に、部屋の扉が開いた。反射的に眠った振りをするが、別に起きている事を隠す理由は無い。とりあえず様子を伺う事にする。
「宗一・・・」
入ってきたのはどうやら姉のようだ。目を開けられないため顔は分からないが、ベッドの横に立っているのは気配で分かった。
「さぁ、今日も一杯出そうね」
次の瞬間、口にハンカチのようなものを押し当てられた。鼻から口に掛けて、グリグリと押し付けられる。
(―――まさか睡眠薬とかじゃないだろうな!?)
これまた反射的に鼻と口の呼吸を止め、ハンカチが取り除かれるのを待った。それにしても今姉は気になることを言っていたような。
―――「今日『も』」・・・?
まさか、こんなことを毎晩行っていたとでも言うのだろうか。一体何のために?
やがてハンカチが取り除かれ、呼吸確認の為に姉が掌を僕の口のすぐ上へと持ってきた。
「そろそろいいかしらね」
118 二進法に生きる僕達・後編 ◆EY23GivUEuGq sage New! 2009/08/01(土) 02:58:17 ID:byAGdTuc
ちゃんと眠っていることを確認した姉は、ゆっくりと僕の腹にかかっているタオルケットを剥ぎ、寝巻きのハーフパンツを引き下げた。
(何だ・・・!? 何をしているんだ・・・!?)
心臓の鼓動が早くなり、手に汗がにじむ。落ち着かなければ姉に気づかれてしまいそうだ。
やがて姉はトランクスをも引き下げ、外気に晒された僕の陰茎を手で揉み解し始めた。
―――『アネハ ボクヲ セイテキナメデ ミテイル』―――
信じたくは無かった。可能性としてでも考えたくは無かった。
この時点で僕は自分の推理が当たっていること、即ち『姉は僕に性的欲求を求めている』という仮定が事実となったのである。
姉は既に片手で己の秘所を弄りながら、もう片手で僕の陰茎を支え、その先端を口に含んでいた。
「はんっ・・・むぅ・・・れろっ・・・ちゅぅっ、じゅるっ・・・」
こういった経験は無かったが、姉が初めてではない程のテクニックを持っていることは分かった。
つまり、僕は夜な夜な姉に睡眠薬を嗅がされ、フェラチオをされていたのだ。
優しい姉。厳しい姉。笑った姉。抱きしめてくれた姉。頭を撫でてくれた姉。勉強を教えてくれた姉。一緒に買い物をした姉。
色々な姉が浮かんでは、消えていった。あれはすべて「偽り」。これが、これこそが姉の本当の姿だったなんて・・・。
「じゅぽっ! じゅぽっ! じゅぽっ! ・・・」
規則正しく卑猥な音が部屋に木霊する。
唯でさえ性欲を持て余す思春期なのに、その上自慰禁止を言い渡されている。
想像以上の快楽が下半身全体を包み、とにかくあれこれと考える間もなく姉の口の中に放出してしまった。
「んむぅぅっ・・・!! ゴクゴクッ、じゅるる、ゴクン・・・」
吐き出される精子を一滴も零すことなく、姉は僕の陰茎に吸い付き、全てを綺麗に飲み干した。
「なんで・・・」
声が出てしまった。いや、そんなことは最早どうでも良い。とにかく本当の事が知りたかった。
「ずっと・・・僕のことをそんな風に見てたんだ・・・?」
最初こそビクッた反応した姉であったが、ゆっくり振り向くといつもの笑顔がそこにあった。
「言ったでしょ? したくなったらお姉ちゃんがしてあげるって」
「!! ・・・そんなこと頼んだ覚えは無いだろっ! なんでっ!? どうして・・・こんな・・・」
最後はもう言葉にならなかった。信じていた人に裏切られたような、何とも言えない憤怒の感情が、どこへ発散されるでもなくただただ
痛みとなり心に突き刺さった。
「無理をしちゃいけないと言ったでしょう?」
馬乗りになりながら向きを変え、こちらににじり寄った。笑顔は崩さず、手を伸ばす。
「自分を偽ってはいけないわ。思春期の子が性欲を発散・・・」
「いい加減にしてくれよッッ!!」
姉の伸ばした手を叩き落とし、枕を掴んで投げつける。もう、僕の脳みそはオーバーヒートしていた。
「どこに自分の弟の性欲を発散させる姉がいるんだよッ!? こんなの普通じゃない!! おかしいだろ!!」
姉弟なのだから。これは普通じゃない。有ってはいけないことなのだ。
信じていた姉が、大好きだった姉が、尊敬していた姉が、音を立てて崩れ落ちてゆく。
「『あの時』からずっと・・・ずっと僕のことをそんな風に見てたのかよっ・・・どうなんだよッッ!!」
姉は何も答えない。少し気を落ち着かせて暗闇の中の姉の顔を見ると、その顔は昼間の「魂のない顔」になっていた。
「・・・10100×・・・000・・・110-0010・・・」
ブツブツと、呪詛のような数式が聞こえてくるのも昼間と同じだ。
やがて両手で顔を覆い、深呼吸を済ませる。と、やはりいつもの笑顔の戻がそこにあった。
「無理をしちゃいけないと言ったでしょう?」
まただ、同じシーンの繰り返し。動作も先程と寸分違わず同じタイミングで腕を伸ばす。
「自分を偽ってはいけないわ。思春期の・・・」
「やめろよッッ!!」
今度は腕を掴み、そのままベッドに押し倒す。キッと睨み付けたはいいものの、姉の顔はまたしても無表情になっていた。
119 二進法に生きる僕達・後編 ◆EY23GivUEuGq sage New! 2009/08/01(土) 03:00:15 ID:byAGdTuc
「質問に答えてくれよ姉さん! ずっと、俺のことを・・・」
自分の言葉が通じていないことはすぐにわかった。まるでただの肉片と化したような姉は、やはり同じく数式を唱え始める。
そして数式が途切れた瞬間、女性とは思えぬ圧倒的な力で僕を逆に押し倒し、先程と同じポジションに戻った。
両手で顔を覆い、深呼吸。
「無理をしちゃいけないと言ったでしょう?」
三度、同じ光景が眼前に広がった。腕を伸ばし、笑顔のまま、何事も無かったかのようににじり寄る。
「自分を偽ってはいけないわ。思春期の子が性欲を発散したいと考えるのは自然なことよ」
柔らかなタッチで頭を撫でる。先程まで秘所を弄っていた左手のせいで、僕の髪にヌルヌルとした粘液が付着した。
そして、僕は気づいてしまった。この、姉の一連の動作の関係性に。
「だから、お姉ちゃんが手伝ってあげる。偽りの玩具で気持ち良くな―――」
パシッと腕を振り払う。姉はまたしても表情を失い、数式を唱え始めた。
そう、姉の考えは、思考は数式で構成されている。そして、たった一つの正解へと至る最良の方法を導き出すことが出来る。
だが、人生は数学ではない。人の生きる道において「たった一つの正解」なんて有りはしないのだ。
では、姉の導き出す「答え」とは? 誰にとっての「答え」を見出しているというんだ?
―――他でもない、姉自身である。
故に、数式によってはじき出された「道筋」以外のパターンが起きてしまった時―――昼間僕が姉の手を振り払ってしまった時―――姉の
脳内では「バグ」が発生する。
予想外のパターンとなった時の「記憶の数式」を脳内の数式から除去し「完全にその時の記憶を忘れ去る」ことを行っているのだ。
唱える数式は、いわば記憶を消去する自己暗示のようなものだ。
そしてもう一度、いや、何度だって同じ方法を繰り返す。何故なら姉にとっての答えは一つであり、それ以外の選択肢は「脳内で計算され
ていない」から。完成された人生と言う莫大な量の数式を、手順通りにこなすだけなのだ。
「無理をしちゃいけないと言ったでしょう?」
そう、何度だって繰り返す。「姉にとっての答え」へ至るまで、僕がどんなアクションを起こそうとも必ず繰り返すのだ。
「自分を偽ってはいけないわ。思春期の子が性欲を発散したいと考えるのは自然なことよ」
では姉の望む答えとは? 姉の導き出した計算は、「0」と「1」は、どのような数式で答えが出ているんだ?
「だから、お姉ちゃんが手伝ってあげる。偽りの玩具で気持ち良くなってはいけないわ。0と1が揃えば何だって、どんなことでも出来る
もの」
―――偽り。
姉にとって、僕以外の物質は全て偽りなのだ。
例えるならば、母は「2」。父は「3」。近所のおばさんは「4」、向かいのおじさんは「5」・・・。
人だけじゃない。犬や猫といった動物も、車や標識も、この部屋も、ベッドも、服も、何もかも。
二進法に生きている姉にとって、「1」である僕以外は全て「偽りの数字」なのである。
「0」と「1」。
僕がいるから姉にとっての「世界」が構築されているのであり、僕以外の物質は無限に続くただの「数字」でしかないのだ。
「ね、一緒に気持ち良くなろう? 一緒に、どこまでも、永遠に・・・」
それが姉の願い。姉の数式の終着点。
僕と永遠に一つになり、「0」と「1」だけの完全な「二進法の世界」へ。
「10101000000010101111101010011111001010001001010111は邪魔だから脱いじゃおうね」
姉から見た僕のTシャツは、そんな数字なのだろうか。最早姉には、抵抗する気力の失せた僕以外何も見えていない。
素肌を晒す僕を、いつもの優しい笑顔でゆっくりと抱きしめる。頭を撫で、髪を梳き、力強く抱擁する。
120 二進法に生きる僕達・後編 ◆EY23GivUEuGq sage New! 2009/08/01(土) 03:02:33 ID:byAGdTuc
「ああ・・・宗一、宗一・・・宗一・・・」
姉と一つになった時、僕はどんなことを考えていたのだろう。
今となってはもうどうだっていい。ただ、下半身からの強烈な快感と、口内を侵食する姉の舌の感覚。
一つになるというのは、こんなにも気持ちのいいものなのか。脳が、神経が、存在そのものが溶けていくようだ。
「あっ・・・ああんっ! ・・・いい、よぉ・・・宗・・・い、ち・・・っ!」
0と1の融合で他の数字が作れるのならば、僕達のこうした行為は何かを創造することになるのだろうか。
肩に食い込む姉の爪が、絶頂間近であることを告げる。僕の男としての本能は腰の動きを早め、快楽の瞬間を迎える。
「ッッ――――――!!」
開放はあっけなかった。それが禁忌であるとわかっていたはずなのに、止めようとは思わなかった。
そして僕は―――直に出されてもなお動き続ける姉を見つめながら、ゆっくりと意識を手放した・・・。
―――身体の感覚が無い。ここは一体どこなのだろう。
―――夢の中のような空間。何も見えず、何も感じず、虚ろな魂だけで漂っているような気もする。
―――僕は死んだのだろうか。それとも、これが姉の言う「二進法の世界」なのだろうか。
何も見えないはずなのに、目の前には姉が立っていた。あの優しい笑顔を投げかけ、そっと頬に触れる。
そしてごめんね、と唇だけで呟きながらそのまま頭を撫でられた。
第六感、とでもいえばいいのだろうか。とにかく僕はその行為が酷く悲しい物のように思えた。
感覚が無いはずなのに僕は涙を流し、姉にすがりつき激しく泣いた。
「まったくもう。本当に泣き虫が治らないわね」
はっきりと、声が聞こえる。頭を撫でる手の感覚も、温かさも、浮かべる微笑みも、次第に鮮明に見えてくる。
「忘れないでね宗一。私と貴方は「0」と「1」。互いが互いを必要としている限り、私達はどんなことだって、どんな物だって作り出す
ことができる。不可能なことなんて何も無いのよ。
世界中の全てのものに目を背けられても、私だけ、お姉ちゃんだけはずっとあなたを見つめているから」
抱きしめる温もりが、次第に消えていく。そして姉の姿が、言葉が、霞み朧となってゆく。
いつだって、あなたを・・・―――
叫びたいのに声が出ない。姉であったものの欠片が最後に消えてゆくその瞬間、僕はどんな顔をしていたのだろうか。
目が覚めたのは病院の一室だった。信じられないことに、僕は丸三日昏睡し続けていたのだと言う。
別段身体に異常は無く健康体そのものだったためか、その後すぐに退院することができたのは素直に嬉しかった。
あの日、僕の怒声や姉との性交の音に不審がった両親が僕の部屋で見たものは、気絶している僕相手に狂ったように腰を振る姉の姿だった。
慌ててなんとか引き離すも、数式を唱え何度も僕と繋がろうとする姉。父が押さえ、母の呼んだ警察の手により姉はその場で未成年相手の
強制わいせつ罪の現行犯で逮捕された。
そして姉は精神不安定と診断され、そのまま精神病院のほうへ収容されることになった。
実名が報道されたことでマスコミや地域住民は大騒ぎ。もちろん支払われていた学者達からのお金も停止し、僕と両親は逃げるように街を
後にした・・・。
「まさか、『こんなもの』が創造できるなんてね」
ゆっくりと、弟にしてやったみたいに腹を撫でる。ドクン、ドクンと、生命が脈打っているのがわかる。
あの日、0と1との融合の「残痕」は、こんなところに根付き、育み、存在していた。
「あなたは、「0」? それとも「1」? ・・・ああ、違うわ。何なのかしら。これはちょっと再計算が必要ね」
――END――
最終更新:2009年08月02日 22:52