「上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ/Part02」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ/Part02 - (2020/08/07 (金) 07:05:08) の1つ前との変更点
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ)
その日夕方近く、白井黒子は書類作成のため、いつもの支部にいた。
ロシアとの戦争が終結して以来、管内に不穏な出来事もなく、いつもの風紀委員活動に戻っている。
同僚の初春飾利は、監視システムをチェックしつつ、画面に映る人の流れを漫然と、
それでいて細心の注意を払いながら眺めていた…とその時。
「白井さん、ちょっとこの人…」
その声に反応し、白井の意識に緊張が走る。
「これ…は…」
モニターに映った人物を見て、白井の身体に鳥肌が立った。
「上条さん…」
初春がその名を口にする。
「あの類人猿…戻って…来やがりましたの…」
「し、白井さんってば」
白井の相変わらずの言葉に、初春は思わず笑みを浮かべた。
「(よかった…。上条さん、戻ってらしたのね…)」
白井はしばらくの間、何か考えるような顔をしていたが、やがて何か決意を秘めた表情に変わった。
「初春さん、ちょっと出かけてきますの」
その時の白井の表情を見なかった初春は、暢気に答えた。
「はぁい、いってらっしゃい。上条さんによろしく…」
その言葉も終わらないうちに、白井はテレポートに移った。
---------------------------------------------------------------------
上条当麻がロンドンから、学園都市第7学区にある自宅たる学生寮に戻ったのは、その日のお昼前だった。
食料品など買い物をしつつ、街の喧騒に包まれていることは、彼にとって懐かしく、快く感じられ、気分も良かった。
久しぶりに開けられた自室の窓からは、新鮮な空気が入れられ、湿気た臭いは外に吐き出された。
痛んだ食料品や埃の積もった床を掃除し、ベッドのシーツも取り替えられ、
最高とはいえないものの、良好な居住空間へと復活した。
しかし、そこには何か大事なものが消えたような、ポッカリとした喪失感と共に、寒々した空気だけが残されている。
上条は、そこにいるはずだった者の名を思わず呟きそうになり、あわてて頭を振る。
人は、前に進むしかないのだ。
「さて、片付けも終わったし、次は…」
彼は戦地で携帯電話を無くしていた。
「せめてあのゲコ太ストラップだけでも残ってればよかったんだがな…」
彼はまた別な喪失感を感じつつ、そうぼやいて、街へ手続きに出かけた。
新しい携帯はすぐに手に入ったが、それまで蓄積した電話番号などは当然覚えてなどおらず、
せっかく学園都市に帰ってきたものの、未だ誰とも連絡をつけられなかった。
「しゃあねぇ、本日のメインイベント、始めるとすっか…」
上条はこの後、よく利用していた公園の自販機前に行くことにした。
御坂美琴を探すために。
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いつもなら、この公園のこの自販機の前に、あの少女はいるはずだった。
いや、自分がここにいれば、必ず向こうから何かのアプローチがあるはずだった。
しかしその日、下校時間を過ぎても、あの怒ったような、笑ったような、なんともいえない愛らしい表情の少女はいなかった。
上条当麻はちょっといやな気持ちがした。
あのロシア上空で見た御坂美琴の顔は、それまで見た中で一番美しかった。一番凛々しかった。
しかしその彼女を突っぱねたのは上条自身であった。わざわざこんな激戦地まで、一人の少年を追いかけて、
たとえ高位能力者といえども、たった一人でやってくるのは至難なことである。
ましてや10代半ばの少女。そんな少女が、少年を救いにやってきたのだ。
如何に鈍感で、バカな上条当麻でさえ、その意味は十分にわかる。御坂美琴は、愛する男性を助けに来たのだ。
しかし上条当麻はそんな御坂美琴の必死の願いを、その目の前で『ぶち壊して』しまったのだ。
かつて上条は、御坂美琴とその周りの世界を守るという約束をした。
だからこそ、上条は必死で彼女のために『も』戦い、いつも生還してきた。
しかし今回ばかりは、上条の負けであった。いや生きている以上、試合には勝った。
でも勝負には負けたのだ。その理由が、上条にはなんとなく理解出来つつあった。
「あの時、最後に見た美琴の顔、泣いていたよな。俺が泣かせたんだよな」
「俺は、あの約束、守れなかったんだよな。美琴は、許してくれるのかな」
ベンチに腰を掛け、俯いて両手で頭を抱えた状態の上条に、衝撃が襲った。
「な、なんだ」
一瞬美琴の電撃かと期待したが、すぐにそれは失望に変わった。
「なんだ白井か」
「なんだとは、たいがいですの、この類人猿さん」
「これまでどちらかにお出かけでしたの。しばらく顔を見なくて清々してましたのに」
相変わらずの挑発に、いささか辟易しながらも、上条はその問いに答えた。
「いや、ちょっと遠出したんでね。おまけにアッチコッチでトラブっちゃってさ」
「ほう、ロシアあたりにでもお出かけだったのかしら」
「いや、ま、そのね…」
「まぁそれはよろしいの。むしろここからが本題ですの…。上条当麻!」
そう言い放った白井の表情は、上条がこれまで目にしたことがなかった。
----------------------------------------------------------------
白井黒子は、いつになく真剣な面持ちで上条当麻に向き合った。
「貴方、わたくしのお姉さまに何をされましたの…」
半ば予想していたとはいえ、さすがに面と向って言われると堪える。
しかも自分が御坂美琴にしたことを理解した上は、何も言葉に出来ない。
「黙っておられては、何もわかりませんの…」
「でもなんとなくわかりますの…」
「貴方は、お姉さまの大切にしておられたものを壊してしまわれたようですわね!」
白井の言葉が、容赦なく上条に突き刺さる。
「…どうやら図星のようですのね」
「お姉さまが戻られた時、表面的には何の変化も見られませんでしたの」
「でも夜毎、うわ言のように貴方の名前をつぶやかれるお姉さまの姿は痛々しくて…見ていられませんでしたわ」
「お姉さまは貴方と違って、高位能力者ですの…」
「ですから自らを律する事に関しましては、他の何方にも負けませんわ」
「ですが睡眠中は別…。真夜中にうなされては飛び起き、ため息をつきながら携帯電話を眺めているお姉さま…」
「それがどういうことか、貴方、理解されてますの?」
「黙ってなくてなにかおっしゃったら?上条当麻さん!」
重苦しい沈黙が流れる…
上条のあまりの反応の無さに大きく失望した白井黒子が、ある決断をしようとした時、上条の口から想定外の言葉を聞いた。
「白井、今までありがとうな」
「えっ…」
「俺さ、バカだから今まで全然気がつかなくてさ…」
「こんな俺を助けてくれる人がいっぱいいるのにさ…」
「これまでのことを、みんなに感謝しなくちゃな。俺、本当に助けてもらってたんだって」
「今まで不幸だーなんて口癖になってたけどさ。俺は本当は不幸じゃなかったんだって」
「だから、本当に、今までありがとうな。白井!」
「い、いきなりなにをおっしゃられますの。それとお姉さまのこととは別でしょうが…」
「俺、まだ誰にも言ったことが無いんだが、ある奴と約束しててさ…」
「御坂美琴と、彼女の周りの世界を守るって」
「貴方、それ、どういう…ことか…わかって…」
今度は白井が動揺する番だった。
「恥ずかしい話だが、実はこれまで解ってなかったんだ」
上条はいつもの笑顔になったが、目だけは真剣だった。
「その約束の意味ってものをさ…。でも今ははっきりとわかったんだよ」
「俺、その約束を守れなかったんだ。それを美琴に謝りに来たんだ」
「貴方…」
白井がいつもの顔に戻った。
「やはり貴方は類人猿以下、ですわね」
「そのお猿さん以下の脳みそで、わたくしの大切なお姉さまを傷付けてしまうのは…」
「許されるべきことではございませんの!」
「わたくし、今日はある決断をしてまいりましたの」
「貴方のお返事しだいでは、本当に貴方をこの世から消して…」
「お姉さまをわたくしの手で楽にしてさしあげようかと」
「白井…」
「ええ、ジャッジメント失格、いや人間として失格ですわね」
「でも、感謝いたしますの。上条さん」
「おかげでわたくしは罪を犯さなくてすみましたの…」
何か言おうとした上条に、白井はそれを遮るように畳み掛ける
「まだわたくしのお話は終わっておりませんの!」
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キッと表情を引き締めた白井が、上条に放った言葉は強烈だった。
「今夜、お姉さまを一人にさせていらしたら、わたくし、この鉄針を貴方の心臓にテレポートしてさしあげますの」
そう言い放った白井の両目に光るものが見えた。
「わたくしも貴方にはいろいろ借りがございますの。でもこれで貸し借りなし、でございますの」
「お前…」
「もう一つ。今夜、お姉さまが帰る場所はわたくしのお部屋ではございませんの」
「え、おいっ…」
「もちろんお姉さまの2回目は、わたくしが頂戴しますから誤解のないように」
「お前、どんな誤解だよ。っていうかそれは…」
「お姉さまを支えることが出来るのは、わたくしだけではないということですの」
「白井、本当に、ありがとうな。感謝するよ。でもそれについては美琴の気持ちが…」
「ああ、もう本当にお猿さん以下ですのね。女性に恥をかかせる殿方なぞ、最低最悪ですの」
そう言い放つと、彼女はこれまで誰にも見せたことがない顔を、目の前の少年に見せた
「…お姉さまは多分今夜も、いつもの鉄橋のところですの。どうか行ってさしあげてくださいませ。」
「行ってしまわれましたわね…」
走り去る上条の背中を眺め、白井はそうつぶやくと、くるりときびすを返した。
両の目からこぼれる滴の、本当の意味を白井はまだ、誰にも言ったことはなかった。
あふれ出る感情を押しとどめようとすればするほど、視界が滲んで見えなくなってしまう。
傍のベンチに腰を下ろすと、彼女の肩は細かく震え始めた。嗚咽を漏らしつつ、それでも彼女の顔には笑みがあった。
彼女もまた、一人の恋する少女であった。
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ)
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/起きないあいつ)
その日夕方近く、白井黒子は書類作成のため、いつもの支部にいた。
ロシアとの戦争が終結して以来、管内に不穏な出来事もなく、いつもの風紀委員活動に戻っている。
同僚の初春飾利は、監視システムをチェックしつつ、画面に映る人の流れを漫然と、
それでいて細心の注意を払いながら眺めていた…とその時。
「白井さん、ちょっとこの人…」
その声に反応し、白井の意識に緊張が走る。
「これ…は…」
モニターに映った人物を見て、白井の身体に鳥肌が立った。
「上条さん…」
初春がその名を口にする。
「あの類人猿…戻って…来やがりましたの…」
「し、白井さんってば」
白井の相変わらずの言葉に、初春は思わず笑みを浮かべた。
「(よかった…。上条さん、戻ってらしたのね…)」
白井はしばらくの間、何か考えるような顔をしていたが、やがて何か決意を秘めた表情に変わった。
「初春、ちょっと出かけてきますの」
その時の白井の表情を見なかった初春は、暢気に答えた。
「はぁい、いってらっしゃい。上条さんによろしく…」
その言葉も終わらないうちに、白井はテレポートに移った。
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上条当麻がロンドンから、学園都市第7学区にある自宅たる学生寮に戻ったのは、その日のお昼前だった。
食料品など買い物をしつつ、街の喧騒に包まれていることは、彼にとって懐かしく、快く感じられ、気分も良かった。
久しぶりに開けられた自室の窓からは、新鮮な空気が入れられ、湿気た臭いは外に吐き出された。
痛んだ食料品や埃の積もった床を掃除し、ベッドのシーツも取り替えられ、
最高とはいえないものの、良好な居住空間へと復活した。
しかし、そこには何か大事なものが消えたような、ポッカリとした喪失感と共に、寒々した空気だけが残されている。
上条は、そこにいるはずだった者の名を思わず呟きそうになり、あわてて頭を振る。
人は、前に進むしかないのだ。
「さて、片付けも終わったし、次は…」
彼は戦地で携帯電話を無くしていた。
「せめてあのゲコ太ストラップだけでも残ってればよかったんだがな…」
彼はまた別な喪失感を感じつつ、そうぼやいて、街へ手続きに出かけた。
新しい携帯はすぐに手に入ったが、それまで蓄積した電話番号などは当然覚えてなどおらず、
せっかく学園都市に帰ってきたものの、未だ誰とも連絡をつけられなかった。
「しゃあねぇ、本日のメインイベント、始めるとすっか…」
上条はこの後、よく利用していた公園の自販機前に行くことにした。
御坂美琴を探すために。
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いつもなら、この公園のこの自販機の前に、あの少女はいるはずだった。
いや、自分がここにいれば、必ず向こうから何かのアプローチがあるはずだった。
しかしその日、下校時間を過ぎても、あの怒ったような、笑ったような、なんともいえない愛らしい表情の少女はいなかった。
上条当麻はちょっといやな気持ちがした。
あのロシア上空で見た御坂美琴の顔は、それまで見た中で一番美しかった。一番凛々しかった。
しかしその彼女を突っぱねたのは上条自身であった。わざわざこんな激戦地まで、一人の少年を追いかけて、
たとえ高位能力者といえども、たった一人でやってくるのは至難なことである。
ましてや10代半ばの少女。そんな少女が、少年を救いにやってきたのだ。
如何に鈍感で、バカな上条当麻でさえ、その意味は十分にわかる。御坂美琴は、愛する男性を助けに来たのだ。
しかし上条当麻はそんな御坂美琴の必死の願いを、その目の前で『ぶち壊して』しまったのだ。
かつて上条は、御坂美琴とその周りの世界を守るという約束をした。
だからこそ、上条は必死で彼女のために『も』戦い、いつも生還してきた。
しかし今回ばかりは、上条の負けであった。いや生きている以上、試合には勝った。
でも勝負には負けたのだ。その理由が、上条にはなんとなく理解出来つつあった。
「あの時、最後に見た美琴の顔、泣いていたよな。俺が泣かせたんだよな」
「俺は、あの約束、守れなかったんだよな。美琴は、許してくれるのかな」
ベンチに腰を掛け、俯いて両手で頭を抱えた状態の上条に、衝撃が襲った。
「な、なんだ」
一瞬美琴の電撃かと期待したが、すぐにそれは失望に変わった。
「なんだ白井か」
「なんだとは、たいがいですの、この類人猿さん」
「これまでどちらかにお出かけでしたの。しばらく顔を見なくて清々してましたのに」
相変わらずの挑発に、いささか辟易しながらも、上条はその問いに答えた。
「いや、ちょっと遠出したんでね。おまけにアッチコッチでトラブっちゃってさ」
「ほう、ロシアあたりにでもお出かけだったのかしら」
「いや、ま、そのね…」
「まぁそれはよろしいの。むしろここからが本題ですの…。上条当麻!」
そう言い放った白井の表情は、上条がこれまで目にしたことがなかった。
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白井黒子は、いつになく真剣な面持ちで上条当麻に向き合った。
「貴方、わたくしのお姉さまに何をされましたの…」
半ば予想していたとはいえ、さすがに面と向って言われると堪える。
しかも自分が御坂美琴にしたことを理解した上は、何も言葉に出来ない。
「黙っておられては、何もわかりませんの…」
「でもなんとなくわかりますの…」
「貴方は、お姉さまの大切にしておられたものを壊してしまわれたようですわね!」
白井の言葉が、容赦なく上条に突き刺さる。
「…どうやら図星のようですのね」
「お姉さまが戻られた時、表面的には何の変化も見られませんでしたの」
「でも夜毎、うわ言のように貴方の名前をつぶやかれるお姉さまの姿は痛々しくて…見ていられませんでしたわ」
「お姉さまは貴方と違って、高位能力者ですの…」
「ですから自らを律する事に関しましては、他の何方にも負けませんわ」
「ですが睡眠中は別…。真夜中にうなされては飛び起き、ため息をつきながら携帯電話を眺めているお姉さま…」
「それがどういうことか、貴方、理解されてますの?」
「黙ってなくてなにかおっしゃったら?上条当麻さん!」
重苦しい沈黙が流れる…
上条のあまりの反応の無さに大きく失望した白井黒子が、ある決断をしようとした時、上条の口から想定外の言葉を聞いた。
「白井、今までありがとうな」
「えっ…」
「俺さ、バカだから今まで全然気がつかなくてさ…」
「こんな俺を助けてくれる人がいっぱいいるのにさ…」
「これまでのことを、みんなに感謝しなくちゃな。俺、本当に助けてもらってたんだって」
「今まで不幸だーなんて口癖になってたけどさ。俺は本当は不幸じゃなかったんだって」
「だから、本当に、今までありがとうな。白井!」
「い、いきなりなにをおっしゃられますの。それとお姉さまのこととは別でしょうが…」
「俺、まだ誰にも言ったことが無いんだが、ある奴と約束しててさ…」
「御坂美琴と、彼女の周りの世界を守るって」
「貴方、それ、どういう…ことか…わかって…」
今度は白井が動揺する番だった。
「恥ずかしい話だが、実はこれまで解ってなかったんだ」
上条はいつもの笑顔になったが、目だけは真剣だった。
「その約束の意味ってものをさ…。でも今ははっきりとわかったんだよ」
「俺、その約束を守れなかったんだ。それを美琴に謝りに来たんだ」
「貴方…」
白井がいつもの顔に戻った。
「やはり貴方は類人猿以下、ですわね」
「そのお猿さん以下の脳みそで、わたくしの大切なお姉さまを傷付けてしまうのは…」
「許されるべきことではございませんの!」
「わたくし、今日はある決断をしてまいりましたの」
「貴方のお返事しだいでは、本当に貴方をこの世から消して…」
「お姉さまをわたくしの手で楽にしてさしあげようかと」
「白井…」
「ええ、ジャッジメント失格、いや人間として失格ですわね」
「でも、感謝いたしますの。上条さん」
「おかげでわたくしは罪を犯さなくてすみましたの…」
何か言おうとした上条に、白井はそれを遮るように畳み掛ける
「まだわたくしのお話は終わっておりませんの!」
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キッと表情を引き締めた白井が、上条に放った言葉は強烈だった。
「今夜、お姉さまを一人にさせていらしたら、わたくし、この鉄針を貴方の心臓にテレポートしてさしあげますの」
そう言い放った白井の両目に光るものが見えた。
「わたくしも貴方にはいろいろ借りがございますの。でもこれで貸し借りなし、でございますの」
「お前…」
「もう一つ。今夜、お姉さまが帰る場所はわたくしのお部屋ではございませんの」
「え、おいっ…」
「もちろんお姉さまの2回目は、わたくしが頂戴しますから誤解のないように」
「お前、どんな誤解だよ。っていうかそれは…」
「お姉さまを支えることが出来るのは、わたくしだけではないということですの」
「白井、本当に、ありがとうな。感謝するよ。でもそれについては美琴の気持ちが…」
「ああ、もう本当にお猿さん以下ですのね。女性に恥をかかせる殿方なぞ、最低最悪ですの」
そう言い放つと、彼女はこれまで誰にも見せたことがない顔を、目の前の少年に見せた
「…お姉さまは多分今夜も、いつもの鉄橋のところですの。どうか行ってさしあげてくださいませ。」
「行ってしまわれましたわね…」
走り去る上条の背中を眺め、白井はそうつぶやくと、くるりときびすを返した。
両の目からこぼれる滴の、本当の意味を白井はまだ、誰にも言ったことはなかった。
あふれ出る感情を押しとどめようとすればするほど、視界が滲んで見えなくなってしまう。
傍のベンチに腰を下ろすと、彼女の肩は細かく震え始めた。嗚咽を漏らしつつ、それでも彼女の顔には笑みがあった。
彼女もまた、一人の恋する少女であった。
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