「上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/7スレ目ログ/7-214」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/7スレ目ログ/7-214 - (2010/04/04 (日) 14:07:12) の最新版との変更点
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春休み3日目。
上条はここ2日間役目を果たさなかった目覚ましの健闘ぶりに目を覚まし、体を起こす。
と言っても左半身の機能が骨折により動かないので、右足からベットの下に下ろし、そこから右腕を使って起き上がる。
昨日は美琴が起きる前に既にいて起きるのを手伝ってくれたので、骨折翌日同様につらい目覚めとまった。
「…はぁ、美琴様様じゃねぇかよ」
上条はトイレを済ませ、冷蔵庫を開く。そこには綺麗にラップしてある昨日の夕食の残りがあった。
確か美琴が朝の為にって残ってるのをラップしていたような。
ガス台を見ると鍋があり、その中には白菜の味噌汁が入っていた。
これも美琴が昨日のうちに用意してくれたものだろう。
上条はこんな美琴が天使に思えた。もう色々感謝感激で言葉にならなかった。
『こいつは彼氏じゃなくて、私の旦那様なの♪』
昨日美琴が言っていた言葉を思い出す。昨夜も色々と美琴に迷惑をかけてしまったが、美琴は小言一つ言わず
『旦那の世話をするのは妻として当たり前なの。だから気にしないで』
とか言ってたのも思い出す。
上条は深く溜息をした。美琴の抑えの効かない行動になどではなく、自分に向けて。
「俺あいつになにもしてやれてねぇじゃん…。この辺で何かお礼しないとな、でも何したらいいのか分からない…」
上条はうーんと唸りながら味噌汁やおかずを温め、朝食を取った。
そしてその時上条は閃いた。今日も夕方には美琴がここに来る。ならば今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。
もちろんベット+ティシュ+シャワー的な事は出来ないが(理性があるうちは)それ以外なら望む事をしてあげたい。
こんなにも自分を想ってくれているのだ。ならばこちらもそれ相応の事を返してあげなければいけない。
そんな事を考えて、上条は車椅子を組み立て部屋を後にした。
この時上条は気付いていなかったが、この2日間で上条にとって美琴はいなくてはならない存在になりつつあった。
怪我をしているから助けてほしいとか、そんな考えでは無く。女性として美琴を心から愛し始めたのだと。
「すみませんね、土御門さん。上条さんの為に車椅子押していただいて」
「うんにゃ気にするな、カミやん。困った時はお互い様なんだぜい」
学校の補習が終わると、上条はデルタフォースと共に帰り、青ピと別れると寮まで土御門が車椅子を押してくれていた。
小萌先生にやらた心配され、家事が大変ならインデックスを帰そうかと言われたが、上条は断固拒否した。
この状態で飯を強請られると色々ダメになりそうだ。
それに部屋には美琴がいるしと思って小萌の申し出を断った。
「それにしてもカミやん。そんな状態でよく今まで生活できたにゃ。一人で大変だったろ? あのシスターがいないんじゃにゃー」
「そ、そうか? べ、べべべ別に普通に生きて来れましたよ?」
上条は土御門の当たり前の言葉に動揺を隠せなかった。
もちろん美琴が毎日来てくれてるので全然生活には困らなかったが、それを知られたらもう数箇所骨折する可能性がある。
土御門はそんな上条の挙動不審に疑問を持ち、車椅子を押す手を止めた。
「…? つち、みかど……?」
「まさかとは思うがカミやん。いるのか? お前の部屋に?」
「な、なななななんのことでせう」
「とぼけるな! 舞夏がカミやんの世話してるのかと聞いてるんだぜぃ!」
「―――――――――は、い? ………舞、夏…さん?」
「なんだ違うのか。だったら何でもいいぜい。舞夏に手を出してなけりゃにゃー」
「し、親友の土御門さんが愛する舞夏様に手を出すなど…お、おお恐れ多くてとてもとても!」
「そうだぜカミやん。もし手を出そうものなら」
「……ものなら?」
「御使堕としで使った風水魔力を使いカミやんの部屋もろともカミやんを消すぜぃ。幻想殺しだけを残して」
「…」
「実は既に四方に配置されて…」
「…」
「俺の魔法名はFallere825。その意味は背中刺す刃で…」
「わかった! もういいから! 冗談でも冗談に聞こえないから!」
「はは。カミやんは面白いな。冗談なんかじゃないぜぃ」
「……」
「それにしてもカミやん。そんなんじゃ色々と不便だろ? 彼女の一人でも作ってそいつに色々やって貰った方がいいんじゃねぇのかにゃ?」
「……ま、まぁ…そうだな。で、でも彼女なんか…いない、し」
「カミやんが頼めば誰でもお世話してくれると思うぜよ。でもそんなカミやんみたら、ぶん殴ってクラス中に言いふらし、集団リンチかけるけどにゃ」
「…」
「そういうわけでカミやん。これから抜き打ちお部屋チェックぜよ」
「は、はいぃぃぃぃぃ!? な、なななななんで!?」
「もちろん女を部屋に連れ込んでないか検査するのにゃ」
「ぶぅぅ!! そ、そんな事しなくても誰もいないですって! (…多分)」
「じゃあいいじゃないかにゃ。今日は舞夏が遅くなるっていうから暇だったんだぜぃ。久しぶりに笑いのトークでもしようぜぃ」
「そ、そう…ですネ」
そう言って上条は速攻で美琴にメールを送った。
自分の生活を守る為に。自分の命を永らえる為に。
Time 10/03/25 16:22
To 御坂美琴
Sub
―――――――――――――――――
突然ですが、今どちらにいらっしゃい
ます?
メールはすぐに帰ってきた。
Time 10/03/25 16:24
From 御坂美琴
Sub Re:
―――――――――――――――――
今はまだ初春さん達と一緒よ。
なーに?会いたくなっちゃったの?
もうしょうがないなー。ちゃっちゃと
買い物して帰るからもう少し我慢して
てね♪
そんな美琴に上条もすぐ返す。
Time 10/03/25 16:27
To 御坂美琴
Sub Re2:
―――――――――――――――――
いやいやいや!そんな悪いですよ!
久しぶりに友達と遊んでるんだから、
もう少しゆっくりしてろって。
俺も少し遅くなるからさ。
上条はそれだけ送ると「完璧だ…」と小声で言う。土御門には聞こえていない。
その後寮に着くまでに携帯がメールを受信したが上条は見なかった。
上条は部屋まで行くと土御門に支えられ部屋に入る。
上条は気付いていないが、皆さんなら既にお分かりだろう。
まず上条当麻が不幸だと言う事。
そして先程のメールの内容からして今美琴はどこにいるのかと言う事。
さらにはピンクのフリルエプロンの事。
その現実を目の前に上条当麻と土御門元春は言葉を失った。
そこには、上条当麻の部屋には、ピンクの可愛らしいエプロンだけを着ている御坂美琴が玄関に立っており上条を(正確には2人を、だが)迎えていた。
「おかえり! ご飯にする? お風呂にする? そ、それとも…わ・た・し?」
「……………」
「……………」
「あ」
「……………カミジョウトウマクン?」
「……………ナ、ナンデセウカ。ツチミカドモトハルクン」
「キミハイッタヨネ? カノジョナンカヘヤニイナイ。フツウニイキテイケテルッテ」
「イ、イイマシタ…ガ、コ、コココレニハフカイワケガゴザイマシテ」
「ちょっと! そこの金髪! 人を勝手に彼女にすんな!」
「―――へ? 何だ違うのかにゃ。そんな格好してるからてっきりカミやんの彼女かと思ったぜぃ。いやぁ、久しぶりにビビったにゃー」
上条も安堵の息を漏らす。…が、その後思い出した。昨日の事。昨日美琴が同じような事を聞かれた反応を。
「ま、待て! み―――」
「私は彼女じゃなくて、そいつの妻なの! だからこれから先は私がお世話するわ! ここまで旦那を連れてきてくれてありがとう」
「―――こと」
「つ…ま? カミやん? 嘘だろ? お前はフラグを立てるのが仕事で回収なんかしない奴だよな? そうだよな?」
「…」
「嘘なんかじゃないわよ! ほら。いいから渡して! これから愛を育むんだから!」
「か、カミ…やん――――」
「つ、土御門…」
「土御門? あぁ。ひょっとして舞夏のお兄さん? はじめまして、御坂美琴です」
「御坂…美琴だと? 常盤台の超電磁砲か。カミやん…おまえ……」
「ま、待ってくれ土御門! お、俺を! 今俺を1人にしないでくれ!!」
「はぁ!? なに言ってくれちゃってるのよアンタは! 2人きりじゃないと恥ずかしいじゃない!」
「そ、そんな格好のおまえがそんな台詞吐くか!!」
「もう……エプロンの下を見せるのは、アンタだけがいいって言ってるの。気付いてよ、バカ…」
「ぶっはぁぁぁ!! みみみみみ美琴ぉぉぉぉっ、そ、そそそそそそんな事ををををををを」
「…離せや、カミやん」
「え?」
「だ、大丈夫だぜぃ? こ、この事は絶対誰にも言わないからにゃぁ…」
「う、嘘つけ! おまえがどもる時はロクな事を考えてねぇ! な? お、俺達は…デルタフォースは固い結束で結ばれているんだよな?」
「……今日限りでデルタフォースは解散だぜぇ、カミや…上条くん」
「な、なにを? 君が何を言ってるのか分からないよ…元春くん」
「自分の胸に聞くんだにゃーーーーーっ!!」
「ぶっはぁぁ!?」
「ちょっ! あ、アンタねぇ! 人の旦那なんだと思ってるの! 怪我人なんだから優しく扱って!! 私を愛してくれないじゃない!」
「……うぅ…うわあああああああああん!!! ま、舞夏ーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「つ、土御門ッ! 待ってくれ!!」
「うるせぇにゃーーっ! 精々残り少ない余生をいちゃつく事にゃーーーっ!!!」
「ふ、不幸だ…」
上条はその後改めて美琴を見た。マジでエプロン以外何もつけてねぇ…と思ったが、短パンだけは穿いているらしい。
上条は安堵する。まだ彼女が恥じらいを持っていてくれた事に。
そして美琴に支えらながらベットに腰かける。
もうそれだけで美琴の柔らかさを感じ、口から心臓がこんちにはしそうになった。
美琴は上条の隣に座ろうとしたが、上条はそれを許さない。精一杯の理性を駆使し、美琴を目の前に正座させた。
美琴は頬を膨らませながらも上条の言う通りに目の前に正座した。
上条当麻の理性説教vs御坂美琴の愛の9裸エプロンの戦いの火蓋はこのようにして切って落とされたのだ。
ちなみに上条当麻の理性の壁は、現在94%崩壊している。
「おい、御坂美琴」
「なによ」
「君は何故そんな格好をしてこの部屋にいるのかな? お友達と遊んでたはずだよね?」
「アンタが帰ってきて欲しそうだったから…急いで帰ってきたんじゃない」
「まぁ、そっちの話はいいんだよ? 問題はその格好」
「これがどうかしたの?」
「なんで裸エプロンという格好なんでせう? 仮にも嫁入り前ですよね? 土御門にもその格好を見られましたよ?」
「だって舞夏が男を落とすならコレ! って言うから…それにエプロン大きいの買ったから前からじゃ全然見えないし」
「舞夏…だと?」
そんな話をしていると隣の部屋から「ま、舞夏ぁぁぁぁぁぁ! そ、その格好は何だにゃあああああああ!!!」と聞こえてきた。
土御門にとってその出来事は、記憶を上書きする程の事であり、後日も土御門は上条に対して普通だった。
「…」
「あ、舞夏もお兄さんにやってるみたいね」
「…あのですね。美琴さん」
「ん?」
「おまえはまだ中学生じゃないか。そんな格好しなくてもおまえはおまえのいい部分があるんだから、そんなに急ぐこ――」
「………う、うぅ…」
「え? お、おい…みこ――」
「せ、せっかく…折角アンタが喜ぶと思って買ってきたのに…恥を忍んで着たっていうのにぃ…う、うぅ……」
「あ、あぁ…あ、す、すまん美琴。お、おまえがそこまで考えてるとは思ってなくて…てっきりまたふざけてるんだと…」
「ふざけてこんな格好するわけないでしょぉ…うぅ、こんな格好見てもアンタは文句ばっかりで何にも言ってくれないし…」
「あ…」
上条は朝の事を思い出す。自分の決めた事を。
今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。
だって美琴はやり方はぶっ飛んでいるが、中身は可愛い恋する乙女なのだ。好きな人に喜んでもらいたいと思うのは当たり前だろう。
上条も朝それで悩んでいたのだから。
「ご、ごめんな。俺…ちょっとキツくいい過ぎたよ。お、お詫びに今日は美琴の好きなようにしていいから」
「………なんでも?」
「まぁ…一線越えないくらいなら」
「…知ってるよ。前夜まで取っておくんでしょ?」
「ま、まぁ…そ、それ以外なら何でもいいからさ!」
「じゃ、じゃあ私が何を言ってもその通りにしてくれる…?」
「そ、そんな風に言われるとイエスと言いづらくなるんですが…」
「…う、うぅ…やっぱりダメだよね…こんなぺったんこな体で迫られてもアンタは全然うれしくないもんね…」
「い、いや…美琴さんの体は十分魅力だと思いますよ? た、ただ恥ずかしすぎて……」
「うぅ…」
「だああああ! もう分かったよ! 何でも聞いてやるから何でも言えや、もう!」
「…本当に? 後でやっぱ無しとか言わない?」
「男上条舐めんな! どんな事を要求されようと即座に実施してやっけんのぉぉおおおお!!!」
「あ、そう? はー、やっとその台詞聞けたわ。つっかれたー泣きまねすんの。アンタ早く折れなさいよね、全く…」
「―――――――なん、…だと?」
「さてと。じゃあまずは何をして貰おうかしらねぇ…あ、もちろん今日は泊まるからね? これ絶対。拒否不可」
「み、みこ…と?」
さっきまでの泣き顔はどこへやら。美琴はゲコ太の台詞の様にケロッと表情を変え、上条へ何をしてもらうか考える乙女の顔になった。
上条は本気で泣いてるんだと思ったから、無理な要求でも呑んで美琴を泣き止ませようとしたのだが、美琴はその上条を狙い打った。
ここは美琴の勝ちだろう。彼女は上条の事を詳しくしっていたし、上条は彼女の事を知らなすぎた。
「じゃあまず抱っこ。抱っこして?」
「えっと…美琴さん? 上条さんは見ての通り骨折してるんですが、その痛みに耐えて抱っこしろと?」
「アンタはそのままベットに腰掛けてればいいわ。私が勝手に乗っかるから」
「なんですと? って、うぉ――」
「えへへー」
美琴は上条の上に跨ってきた。2人の顔は急接近し、唇が時々当たるくらい近かった。
そんな状態の上条は顔を真っ赤にし、少し背を仰け反った。しかし美琴はそれを許さない。
上条の首に腕を絡めて、顔をまた自分の目の前に持ってきてホールドする。
美琴は上半身はエプロンだけだったので肌を直接触る事になる上条の右手は、行き場を無くしバタバタしていた。
「手は肩に」
「は、はいぃぃぃ!? そ、それはさすがに…」
「即実施」
「そ、そうでしたネ」
「…んっ」
「へ、変な声出すなよ…」
「だっ、だって…そんな優しく触るからぁ…」
「……ぁ、は」
上条は、上条は、上条は、もうどうしたのか? どうしたものか?
ちなみに言っておくと理性の壁はとっくの大昔に全壊され、本能と書かれた覆面部隊が脳内の操縦室に攻め込んできている。
壁をなくした理性部隊は迎撃するが、数が圧倒的で間違いなく占拠されるのは時間の問題だった。
上条はそんな自分から湧き出る欲望に耐えてるのか、上を向いてぷるぷると震えていた。
しかし――
「…ん。…っちゅ、れろ…」
「…!? お、おまえ…なにをっ……んっ」
美琴は上条の首筋にキスをすると優しく舐めた。
上条はその行為に大変驚き美琴に目を向ける。しかしそこには唇が待ち構えており、上条はそれを奪われた。
その瞬間、本能の覆面兵士が、冠を被った理性覆面の偉そうな奴をぶっ飛ばして、
「上条」と表札が掛けられていた脳のドアを蹴破り、上条当麻コントロールルームに入っていった。
「…はぁ、えへ……ん?」
「コォォォォォォォォォォォォ……」
「ど、どう…したの?」
「み、みことォォォ……」
「な、なに…?」
「責任は、取らせていただきます」
「はぇ?――――」
上条当麻の理性の壁、3日目の夜に完全崩壊。
夕方に部屋に戻った上条だが、その日の夕食を取る事は無かった。
あ。いや、まぁその…夕食は取った。
春休み5日目。
上条当麻は目を覚ました。目覚まし時計の音で。
何故なら今日は補習がある。とても面倒臭いが春休みに2日だけの補習で済んだ上条だったので、今日行けばもう終わりだ。
上条は頑張って体を起こし朝食を取って部屋を後にした。
ちなみに朝美琴は部屋にいない。
今日は3日目の夜無断外泊したので、ルームメイトの白井黒子のご機嫌取りをしないといけないらしく、夕方にならないと来れないらしい。
学校では土御門、青ピと共に補習を受けたが、いつもと変わらない光景に上条は安堵した。
そんなこんなで上条は土御門に連れられ部屋に帰ってきた。まだ美琴は来ていないようだ。
上条は玄関まででいいと土御門を帰すと松葉杖を使ってベットまで行くとそのまま倒れ込んだ。
学校で補習があったからか、または普段の疲れが溜まっていたのか、上条はそのまま寝入ってしまった。
そして暫くすると玄関のドアが開く音が聞こえて上条は目を覚ます。
部屋に入ってきたのはスーパーの袋を持った御坂美琴だった。
「たっだいまー」
「……ん? おぉ、美琴…おかえり……」
「あれ、寝てたの? そのまま寝ててよかったのに。寝顔拝見したかったし」
「あー、うん。でも悪いし…米くらい洗うよ」
「だめよ。立ってるのもつらいんだから。そのまま寝てて」
「……お世話かけます。美琴さん」
上条のその言葉を聞くと、美琴は上条の前に歩み寄って来て、顔をまじまじと見た。
突然の事で上条は少し驚いたが、何か言う前に美琴が笑って上条の頬に手を置いた。
「うん、もう大丈夫みたいね」
「なにが…」
「なにって…昨日アンタやばかったわよ? さすがにあの状態のアンタは手を焼いたわ」
「う…そ、それはもう忘れてください……マジで黒歴史なので」
「あはは。まぁそれだけ私と離れたく無かったって事だしね」
「うぅ…」
昨日というのは4日目。つまりは上条当麻の理性が崩壊した翌日にあたる日なのだが。
4日目の朝、上条はいい匂いで目を覚ます。
隣を見ると誰もいないが、台所で美琴が料理をしているようだ。
可愛いエプロンをつけて鼻歌を奏でて。
「ん…おはよう、美琴ぉ…今日は早いんだな」
上条の声に美琴はビクッとして上条を見る。
その顔は瞬く間に真っ赤になり、小さくおはようと言うと俯いてしまう。
上条はそんな美琴を見て首を傾げたが、特に気にする事もなくベットから出ようとした。
右足、右手を駆使し起き上がる…が、そこで何やら違和感を覚える。
「…あれ? 俺何も着てない……?」
上条は裸だった。何やらおかしい。足にはギブスを包帯で巻かれているので、簡単には脱げないはずだ。
では何故裸か? 答えは簡単で、自分が気付かないうちに自分が脱いだのだろう。
この部屋には帰って来たら鍵を掛けたし、中には自分と美琴しかいないはずだ。
さすがに美琴が自分に気付かれずに全てを脱がすのは不可能だろう。
では何故脱いだか? 着替える途中で力尽きたとか? うーん…
そんな事を考えていると、上条は部屋の異変に気付く。
やたらと丸めてあるティッシュが散乱している。上条や美琴だけでこんなに鼻をかんだのか?
上条はちゃんとゴミ箱に捨てろよと思っていると、ベランダに何かが干されているのでそれに目をやった。
「短…パン? こんなの俺持ってない…し、誰の……短パン…短、パン?」
上条は床に置いてあったトランクスを穿くと、シャツも拾って着た。
そこに美琴がご飯を持ってきてくれて、上条はテーブルにつく。
美琴の格好は昨日と同じエプロン姿だが、他に着ているようには見えなかった。
上条はまだその格好してるのかよと溜息を吐いたが、美琴が台所に戻る後ろ姿を見ると昨日とは何かが違った。
「………ない」
美琴は正に純正裸エプロン姿だった。ベランダのアレは美琴ののようだ。
上条はその後ろ姿に呆気に取られていると、昨日の事を思い出すように頭に手を置いた。
そして、全てをフラッシュバックさせる。
フラッシュバックと言っても記憶が無いので、昨日の最後の記憶なのだが。
その記憶とは、確か自分の手で…美琴の着ていたエプロンを、引き剥がし―――
「だああああああああああああああああああああっ!!!!!」
上条は吼えた。もう大声で。近所の迷惑など考えずに。
その咆哮に美琴は驚愕し、上条の前に走って来た。
「ちょ、ちょっと! ど、どうしたのよアンタ!? 何があったの!?」
「み、美琴…」
「ど、どうしたの…?」
「み…美琴、正直に答えてくれ。嘘なんかいらない。回りくどい言い方もいらない」
「う、うん…」
上条は美琴の両肩に手を置き、真剣に向き合った。左腕の痛みなど忘れて。
そして上条は深呼吸を一回大きくすると美琴に言い放った。
「俺、美琴に手を出したのか?」
その言葉に美琴は頭から湯気を出すほど赤くなって俯いてしまったが、小さく「うん…」と言って頷いた。
「そ、その…どこまで手を出した? 俺の記憶が正しければ、おまえのその可愛いエプロンを引ん剥いたところまでなんですが…」
「……どこまでって…、その、さ……最後、まで…」
「……………最後、だと」
上条は美琴の肩に置いてあった手を下ろした。
美琴は真っ赤になって俯きながらも、上条の方を上目使いでチラチラと見ながら更なる事を言い出した。
「わ、私はちゃんと止めたんだよ? 前夜まで取っておくんじゃないの、って。で、でもアンタは『もう我慢できません』だとか」
「…」
「『美琴ちゃんは俺の事嫌いなの?』とか」
「…」
「『おまえの全てが欲しい』…と、とか言うから……」
「…あは、」
上条はもう笑うしかなかった。そしてとりあえず美琴に服を着せると彼女の前で土下座した。
足なんか、骨折なんか痛くなかった。
「本当に申し訳ありませんでした」
「い、いいわよ。…そ、その…嬉しかったし……えへへ」
「こうなった以上は、この上条当麻、一生を掛けて御坂美琴さんを守り抜いて行くと誓―――」
「そんなんじゃ、嫌」
「は、はい? い、嫌…とは?」
「そ、その……し、しちゃったから一緒にいるとか、そんなのじゃ嫌」
「そ、そんな軽い気持ちではないです! 上条さんは美琴さんをこれ以上ないくらいに!」
「じゃあ…ちゃんとプロポーズしてよ」
「わ、わかった…」
そして上条は今自分が考えられる精一杯の好意を持って、美琴にプロポーズした。
美琴は上条のプロポーズに満面の笑みを浮かべ、泣きながら誓いのキスをした。
その後美琴は上条に泣き止むまで胸を借りていたが、やがて笑いながら言った。
「恋人の告白の前に結婚のプロポーズだなんて、アンタほんとにバカなんだから」
そんな事があって取った朝食。
美琴はいつものように上条の右手を取って自分で食べさせているが、今日は上条の方が違った。
今朝は上条から美琴の手を握り、食べさせてほしいを言い出したので。
美琴は上条の変わり様に少し戸惑ったが、嬉しい事だったので否定しなかった。
しかし、今日この後の上条を考えると、ここで少し間を取った方がよかったのかもしれない。
それは何故か。つまり上条は完全なる美琴の虜になり一生を誓ったために、離れたくない精神が特化されすぎたのだ。
「み、美琴? ど、どこ行くんだ?」
「どこって…醤油切れたから新しいの入れてくるだけよ」
「ま、待って! お、俺も一緒に…」
「はぁ!? あ、アンタね! すぐそこの台所だっつの! そんなんでいちいち動かなくていいわよ!」
「そ、そんな…俺を…俺を置いて醤油の所に行くってのか! 俺より醤油が大切なのか!」
「な、なななななに言ってるのよ!? あ、アンタ大丈夫? ホントにすぐ帰ってくるからここにいなさいよ」
「ほ、ほんとすぐだぞ! 待ってるからな!」
「はいはい、ったく…」
というやり取りを事あるごとに繰り返し、美琴の春休み4日目は相当に疲れた。
だから夜、今日は帰らなくちゃと言った途端に上条が泣いて引き止めた時には溜息まで吐いた。
でもさすがに2日連続無断外泊はまずいと言ったが上条は引き下がらない。
そんな上条に明日から来れなくなっちゃうかもと言ったら、上条は泣きやんで帰してくれたのだ。
そんな4日目の出来事を美琴は上条に話していた。
「も、もうその辺りで勘弁してください。昨日は周りが見えてなかったというか、何というか…」
「離したくないっていうのは嬉しいけど、正直アレは勘弁してほしいわね。もっと普通にお願い」
「か、かしこまりました」
「じゃあ責任取るって言ったんだから、ちゃんと言えるわよね? …はい」
「…? カエルの携帯、これ…おまえのじゃないか。どうするんだよ、これ」
「画面見てみて」
「?」
そう言われて上条は美琴の携帯の待ち受けを見る。
…とそこには「Phone Call」と書かれており、その下に「父」と名前が出ていた。
「ぶぅぅぅぅ!! み、美琴さんんんんん!!???? こ、これはいきなりハードル高すぎやしませんかね!? ま、まずは美鈴さん辺りが妥当と言うか!」
「いつかは言うんだからいいじゃない♪ ちゃんと言ってよね♪」
「は、初めて会話する上に娘さんを下さいなんて…と、とても上条さんのガラスの心では言え――」
『―――ブッ、…もしもし? 美琴か? 珍しいな、何かあったのか?』
「あ…」
上条当麻と御坂美琴の春休み。5日目終了。上条はこの日だけで一生分の大半を占める冷や汗をかいたそうだ。
}}}
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*とある2人の春休み 2
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春休み3日目。
上条はここ2日間役目を果たさなかった目覚ましの健闘ぶりに目を覚まし、体を起こす。
と言っても左半身の機能が骨折により動かないので、右足からベットの下に下ろし、そこから右腕を使って起き上がる。
昨日は美琴が起きる前に既にいて起きるのを手伝ってくれたので、骨折翌日同様につらい目覚めとまった。
「…はぁ、美琴様様じゃねぇかよ」
上条はトイレを済ませ、冷蔵庫を開く。そこには綺麗にラップしてある昨日の夕食の残りがあった。
確か美琴が朝の為にって残ってるのをラップしていたような。
ガス台を見ると鍋があり、その中には白菜の味噌汁が入っていた。
これも美琴が昨日のうちに用意してくれたものだろう。
上条はこんな美琴が天使に思えた。もう色々感謝感激で言葉にならなかった。
『こいつは彼氏じゃなくて、私の旦那様なの♪』
昨日美琴が言っていた言葉を思い出す。昨夜も色々と美琴に迷惑をかけてしまったが、美琴は小言一つ言わず
『旦那の世話をするのは妻として当たり前なの。だから気にしないで』
とか言ってたのも思い出す。
上条は深く溜息をした。美琴の抑えの効かない行動になどではなく、自分に向けて。
「俺あいつになにもしてやれてねぇじゃん…。この辺で何かお礼しないとな、でも何したらいいのか分からない…」
上条はうーんと唸りながら味噌汁やおかずを温め、朝食を取った。
そしてその時上条は閃いた。今日も夕方には美琴がここに来る。ならば今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。
もちろんベット+ティシュ+シャワー的な事は出来ないが(理性があるうちは)それ以外なら望む事をしてあげたい。
こんなにも自分を想ってくれているのだ。ならばこちらもそれ相応の事を返してあげなければいけない。
そんな事を考えて、上条は車椅子を組み立て部屋を後にした。
この時上条は気付いていなかったが、この2日間で上条にとって美琴はいなくてはならない存在になりつつあった。
怪我をしているから助けてほしいとか、そんな考えでは無く。女性として美琴を心から愛し始めたのだと。
「すみませんね、土御門さん。上条さんの為に車椅子押していただいて」
「うんにゃ気にするな、カミやん。困った時はお互い様なんだぜい」
学校の補習が終わると、上条はデルタフォースと共に帰り、青ピと別れると寮まで土御門が車椅子を押してくれていた。
小萌先生にやらた心配され、家事が大変ならインデックスを帰そうかと言われたが、上条は断固拒否した。
この状態で飯を強請られると色々ダメになりそうだ。
それに部屋には美琴がいるしと思って小萌の申し出を断った。
「それにしてもカミやん。そんな状態でよく今まで生活できたにゃ。一人で大変だったろ? あのシスターがいないんじゃにゃー」
「そ、そうか? べ、べべべ別に普通に生きて来れましたよ?」
上条は土御門の当たり前の言葉に動揺を隠せなかった。
もちろん美琴が毎日来てくれてるので全然生活には困らなかったが、それを知られたらもう数箇所骨折する可能性がある。
土御門はそんな上条の挙動不審に疑問を持ち、車椅子を押す手を止めた。
「…? つち、みかど……?」
「まさかとは思うがカミやん。いるのか? お前の部屋に?」
「な、なななななんのことでせう」
「とぼけるな! 舞夏がカミやんの世話してるのかと聞いてるんだぜぃ!」
「―――――――――は、い? ………舞、夏…さん?」
「なんだ違うのか。だったら何でもいいぜい。舞夏に手を出してなけりゃにゃー」
「し、親友の土御門さんが愛する舞夏様に手を出すなど…お、おお恐れ多くてとてもとても!」
「そうだぜカミやん。もし手を出そうものなら」
「……ものなら?」
「御使堕としで使った風水魔力を使いカミやんの部屋もろともカミやんを消すぜぃ。幻想殺しだけを残して」
「…」
「実は既に四方に配置されて…」
「…」
「俺の魔法名はFallere825。その意味は背中刺す刃で…」
「わかった! もういいから! 冗談でも冗談に聞こえないから!」
「はは。カミやんは面白いな。冗談なんかじゃないぜぃ」
「……」
「それにしてもカミやん。そんなんじゃ色々と不便だろ? 彼女の一人でも作ってそいつに色々やって貰った方がいいんじゃねぇのかにゃ?」
「……ま、まぁ…そうだな。で、でも彼女なんか…いない、し」
「カミやんが頼めば誰でもお世話してくれると思うぜよ。でもそんなカミやんみたら、ぶん殴ってクラス中に言いふらし、集団リンチかけるけどにゃ」
「…」
「そういうわけでカミやん。これから抜き打ちお部屋チェックぜよ」
「は、はいぃぃぃぃぃ!? な、なななななんで!?」
「もちろん女を部屋に連れ込んでないか検査するのにゃ」
「ぶぅぅ!! そ、そんな事しなくても誰もいないですって! (…多分)」
「じゃあいいじゃないかにゃ。今日は舞夏が遅くなるっていうから暇だったんだぜぃ。久しぶりに笑いのトークでもしようぜぃ」
「そ、そう…ですネ」
そう言って上条は速攻で美琴にメールを送った。
自分の生活を守る為に。自分の命を永らえる為に。
Time 10/03/25 16:22
To 御坂美琴
Sub
―――――――――――――――――
突然ですが、今どちらにいらっしゃい
ます?
メールはすぐに帰ってきた。
Time 10/03/25 16:24
From 御坂美琴
Sub Re:
―――――――――――――――――
今はまだ初春さん達と一緒よ。
なーに?会いたくなっちゃったの?
もうしょうがないなー。ちゃっちゃと
買い物して帰るからもう少し我慢して
てね♪
そんな美琴に上条もすぐ返す。
Time 10/03/25 16:27
To 御坂美琴
Sub Re2:
―――――――――――――――――
いやいやいや!そんな悪いですよ!
久しぶりに友達と遊んでるんだから、
もう少しゆっくりしてろって。
俺も少し遅くなるからさ。
上条はそれだけ送ると「完璧だ…」と小声で言う。土御門には聞こえていない。
その後寮に着くまでに携帯がメールを受信したが上条は見なかった。
上条は部屋まで行くと土御門に支えられ部屋に入る。
上条は気付いていないが、皆さんなら既にお分かりだろう。
まず上条当麻が不幸だと言う事。
そして先程のメールの内容からして今美琴はどこにいるのかと言う事。
さらにはピンクのフリルエプロンの事。
その現実を目の前に上条当麻と土御門元春は言葉を失った。
そこには、上条当麻の部屋には、ピンクの可愛らしいエプロンだけを着ている御坂美琴が玄関に立っており上条を(正確には2人を、だが)迎えていた。
「おかえり! ご飯にする? お風呂にする? そ、それとも…わ・た・し?」
「……………」
「……………」
「あ」
「……………カミジョウトウマクン?」
「……………ナ、ナンデセウカ。ツチミカドモトハルクン」
「キミハイッタヨネ? カノジョナンカヘヤニイナイ。フツウニイキテイケテルッテ」
「イ、イイマシタ…ガ、コ、コココレニハフカイワケガゴザイマシテ」
「ちょっと! そこの金髪! 人を勝手に彼女にすんな!」
「―――へ? 何だ違うのかにゃ。そんな格好してるからてっきりカミやんの彼女かと思ったぜぃ。いやぁ、久しぶりにビビったにゃー」
上条も安堵の息を漏らす。…が、その後思い出した。昨日の事。昨日美琴が同じような事を聞かれた反応を。
「ま、待て! み―――」
「私は彼女じゃなくて、そいつの妻なの! だからこれから先は私がお世話するわ! ここまで旦那を連れてきてくれてありがとう」
「―――こと」
「つ…ま? カミやん? 嘘だろ? お前はフラグを立てるのが仕事で回収なんかしない奴だよな? そうだよな?」
「…」
「嘘なんかじゃないわよ! ほら。いいから渡して! これから愛を育むんだから!」
「か、カミ…やん――――」
「つ、土御門…」
「土御門? あぁ。ひょっとして舞夏のお兄さん? はじめまして、御坂美琴です」
「御坂…美琴だと? 常盤台の超電磁砲か。カミやん…おまえ……」
「ま、待ってくれ土御門! お、俺を! 今俺を1人にしないでくれ!!」
「はぁ!? なに言ってくれちゃってるのよアンタは! 2人きりじゃないと恥ずかしいじゃない!」
「そ、そんな格好のおまえがそんな台詞吐くか!!」
「もう……エプロンの下を見せるのは、アンタだけがいいって言ってるの。気付いてよ、バカ…」
「ぶっはぁぁぁ!! みみみみみ美琴ぉぉぉぉっ、そ、そそそそそそんな事ををををををを」
「…離せや、カミやん」
「え?」
「だ、大丈夫だぜぃ? こ、この事は絶対誰にも言わないからにゃぁ…」
「う、嘘つけ! おまえがどもる時はロクな事を考えてねぇ! な? お、俺達は…デルタフォースは固い結束で結ばれているんだよな?」
「……今日限りでデルタフォースは解散だぜぇ、カミや…上条くん」
「な、なにを? 君が何を言ってるのか分からないよ…元春くん」
「自分の胸に聞くんだにゃーーーーーっ!!」
「ぶっはぁぁ!?」
「ちょっ! あ、アンタねぇ! 人の旦那なんだと思ってるの! 怪我人なんだから優しく扱って!! 私を愛してくれないじゃない!」
「……うぅ…うわあああああああああん!!! ま、舞夏ーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「つ、土御門ッ! 待ってくれ!!」
「うるせぇにゃーーっ! 精々残り少ない余生をいちゃつく事にゃーーーっ!!!」
「ふ、不幸だ…」
上条はその後改めて美琴を見た。マジでエプロン以外何もつけてねぇ…と思ったが、短パンだけは穿いているらしい。
上条は安堵する。まだ彼女が恥じらいを持っていてくれた事に。
そして美琴に支えらながらベットに腰かける。
もうそれだけで美琴の柔らかさを感じ、口から心臓がこんちにはしそうになった。
美琴は上条の隣に座ろうとしたが、上条はそれを許さない。精一杯の理性を駆使し、美琴を目の前に正座させた。
美琴は頬を膨らませながらも上条の言う通りに目の前に正座した。
上条当麻の理性説教vs御坂美琴の愛の9裸エプロンの戦いの火蓋はこのようにして切って落とされたのだ。
ちなみに上条当麻の理性の壁は、現在94%崩壊している。
「おい、御坂美琴」
「なによ」
「君は何故そんな格好をしてこの部屋にいるのかな? お友達と遊んでたはずだよね?」
「アンタが帰ってきて欲しそうだったから…急いで帰ってきたんじゃない」
「まぁ、そっちの話はいいんだよ? 問題はその格好」
「これがどうかしたの?」
「なんで裸エプロンという格好なんでせう? 仮にも嫁入り前ですよね? 土御門にもその格好を見られましたよ?」
「だって舞夏が男を落とすならコレ! って言うから…それにエプロン大きいの買ったから前からじゃ全然見えないし」
「舞夏…だと?」
そんな話をしていると隣の部屋から「ま、舞夏ぁぁぁぁぁぁ! そ、その格好は何だにゃあああああああ!!!」と聞こえてきた。
土御門にとってその出来事は、記憶を上書きする程の事であり、後日も土御門は上条に対して普通だった。
「…」
「あ、舞夏もお兄さんにやってるみたいね」
「…あのですね。美琴さん」
「ん?」
「おまえはまだ中学生じゃないか。そんな格好しなくてもおまえはおまえのいい部分があるんだから、そんなに急ぐこ――」
「………う、うぅ…」
「え? お、おい…みこ――」
「せ、せっかく…折角アンタが喜ぶと思って買ってきたのに…恥を忍んで着たっていうのにぃ…う、うぅ……」
「あ、あぁ…あ、す、すまん美琴。お、おまえがそこまで考えてるとは思ってなくて…てっきりまたふざけてるんだと…」
「ふざけてこんな格好するわけないでしょぉ…うぅ、こんな格好見てもアンタは文句ばっかりで何にも言ってくれないし…」
「あ…」
上条は朝の事を思い出す。自分の決めた事を。
今日だけでも美琴の好きなようにさせてあげようと。
だって美琴はやり方はぶっ飛んでいるが、中身は可愛い恋する乙女なのだ。好きな人に喜んでもらいたいと思うのは当たり前だろう。
上条も朝それで悩んでいたのだから。
「ご、ごめんな。俺…ちょっとキツくいい過ぎたよ。お、お詫びに今日は美琴の好きなようにしていいから」
「………なんでも?」
「まぁ…一線越えないくらいなら」
「…知ってるよ。前夜まで取っておくんでしょ?」
「ま、まぁ…そ、それ以外なら何でもいいからさ!」
「じゃ、じゃあ私が何を言ってもその通りにしてくれる…?」
「そ、そんな風に言われるとイエスと言いづらくなるんですが…」
「…う、うぅ…やっぱりダメだよね…こんなぺったんこな体で迫られてもアンタは全然うれしくないもんね…」
「い、いや…美琴さんの体は十分魅力だと思いますよ? た、ただ恥ずかしすぎて……」
「うぅ…」
「だああああ! もう分かったよ! 何でも聞いてやるから何でも言えや、もう!」
「…本当に? 後でやっぱ無しとか言わない?」
「男上条舐めんな! どんな事を要求されようと即座に実施してやっけんのぉぉおおおお!!!」
「あ、そう? はー、やっとその台詞聞けたわ。つっかれたー泣きまねすんの。アンタ早く折れなさいよね、全く…」
「―――――――なん、…だと?」
「さてと。じゃあまずは何をして貰おうかしらねぇ…あ、もちろん今日は泊まるからね? これ絶対。拒否不可」
「み、みこ…と?」
さっきまでの泣き顔はどこへやら。美琴はゲコ太の台詞の様にケロッと表情を変え、上条へ何をしてもらうか考える乙女の顔になった。
上条は本気で泣いてるんだと思ったから、無理な要求でも呑んで美琴を泣き止ませようとしたのだが、美琴はその上条を狙い打った。
ここは美琴の勝ちだろう。彼女は上条の事を詳しくしっていたし、上条は彼女の事を知らなすぎた。
「じゃあまず抱っこ。抱っこして?」
「えっと…美琴さん? 上条さんは見ての通り骨折してるんですが、その痛みに耐えて抱っこしろと?」
「アンタはそのままベットに腰掛けてればいいわ。私が勝手に乗っかるから」
「なんですと? って、うぉ――」
「えへへー」
美琴は上条の上に跨ってきた。2人の顔は急接近し、唇が時々当たるくらい近かった。
そんな状態の上条は顔を真っ赤にし、少し背を仰け反った。しかし美琴はそれを許さない。
上条の首に腕を絡めて、顔をまた自分の目の前に持ってきてホールドする。
美琴は上半身はエプロンだけだったので肌を直接触る事になる上条の右手は、行き場を無くしバタバタしていた。
「手は肩に」
「は、はいぃぃぃ!? そ、それはさすがに…」
「即実施」
「そ、そうでしたネ」
「…んっ」
「へ、変な声出すなよ…」
「だっ、だって…そんな優しく触るからぁ…」
「……ぁ、は」
上条は、上条は、上条は、もうどうしたのか? どうしたものか?
ちなみに言っておくと理性の壁はとっくの大昔に全壊され、本能と書かれた覆面部隊が脳内の操縦室に攻め込んできている。
壁をなくした理性部隊は迎撃するが、数が圧倒的で間違いなく占拠されるのは時間の問題だった。
上条はそんな自分から湧き出る欲望に耐えてるのか、上を向いてぷるぷると震えていた。
しかし――
「…ん。…っちゅ、れろ…」
「…!? お、おまえ…なにをっ……んっ」
美琴は上条の首筋にキスをすると優しく舐めた。
上条はその行為に大変驚き美琴に目を向ける。しかしそこには唇が待ち構えており、上条はそれを奪われた。
その瞬間、本能の覆面兵士が、冠を被った理性覆面の偉そうな奴をぶっ飛ばして、
「上条」と表札が掛けられていた脳のドアを蹴破り、上条当麻コントロールルームに入っていった。
「…はぁ、えへ……ん?」
「コォォォォォォォォォォォォ……」
「ど、どう…したの?」
「み、みことォォォ……」
「な、なに…?」
「責任は、取らせていただきます」
「はぇ?――――」
上条当麻の理性の壁、3日目の夜に完全崩壊。
夕方に部屋に戻った上条だが、その日の夕食を取る事は無かった。
あ。いや、まぁその…夕食は取った。
春休み5日目。
上条当麻は目を覚ました。目覚まし時計の音で。
何故なら今日は補習がある。とても面倒臭いが春休みに2日だけの補習で済んだ上条だったので、今日行けばもう終わりだ。
上条は頑張って体を起こし朝食を取って部屋を後にした。
ちなみに朝美琴は部屋にいない。
今日は3日目の夜無断外泊したので、ルームメイトの白井黒子のご機嫌取りをしないといけないらしく、夕方にならないと来れないらしい。
学校では土御門、青ピと共に補習を受けたが、いつもと変わらない光景に上条は安堵した。
そんなこんなで上条は土御門に連れられ部屋に帰ってきた。まだ美琴は来ていないようだ。
上条は玄関まででいいと土御門を帰すと松葉杖を使ってベットまで行くとそのまま倒れ込んだ。
学校で補習があったからか、または普段の疲れが溜まっていたのか、上条はそのまま寝入ってしまった。
そして暫くすると玄関のドアが開く音が聞こえて上条は目を覚ます。
部屋に入ってきたのはスーパーの袋を持った御坂美琴だった。
「たっだいまー」
「……ん? おぉ、美琴…おかえり……」
「あれ、寝てたの? そのまま寝ててよかったのに。寝顔拝見したかったし」
「あー、うん。でも悪いし…米くらい洗うよ」
「だめよ。立ってるのもつらいんだから。そのまま寝てて」
「……お世話かけます。美琴さん」
上条のその言葉を聞くと、美琴は上条の前に歩み寄って来て、顔をまじまじと見た。
突然の事で上条は少し驚いたが、何か言う前に美琴が笑って上条の頬に手を置いた。
「うん、もう大丈夫みたいね」
「なにが…」
「なにって…昨日アンタやばかったわよ? さすがにあの状態のアンタは手を焼いたわ」
「う…そ、それはもう忘れてください……マジで黒歴史なので」
「あはは。まぁそれだけ私と離れたく無かったって事だしね」
「うぅ…」
昨日というのは4日目。つまりは上条当麻の理性が崩壊した翌日にあたる日なのだが。
4日目の朝、上条はいい匂いで目を覚ます。
隣を見ると誰もいないが、台所で美琴が料理をしているようだ。
可愛いエプロンをつけて鼻歌を奏でて。
「ん…おはよう、美琴ぉ…今日は早いんだな」
上条の声に美琴はビクッとして上条を見る。
その顔は瞬く間に真っ赤になり、小さくおはようと言うと俯いてしまう。
上条はそんな美琴を見て首を傾げたが、特に気にする事もなくベットから出ようとした。
右足、右手を駆使し起き上がる…が、そこで何やら違和感を覚える。
「…あれ? 俺何も着てない……?」
上条は裸だった。何やらおかしい。足にはギブスを包帯で巻かれているので、簡単には脱げないはずだ。
では何故裸か? 答えは簡単で、自分が気付かないうちに自分が脱いだのだろう。
この部屋には帰って来たら鍵を掛けたし、中には自分と美琴しかいないはずだ。
さすがに美琴が自分に気付かれずに全てを脱がすのは不可能だろう。
では何故脱いだか? 着替える途中で力尽きたとか? うーん…
そんな事を考えていると、上条は部屋の異変に気付く。
やたらと丸めてあるティッシュが散乱している。上条や美琴だけでこんなに鼻をかんだのか?
上条はちゃんとゴミ箱に捨てろよと思っていると、ベランダに何かが干されているのでそれに目をやった。
「短…パン? こんなの俺持ってない…し、誰の……短パン…短、パン?」
上条は床に置いてあったトランクスを穿くと、シャツも拾って着た。
そこに美琴がご飯を持ってきてくれて、上条はテーブルにつく。
美琴の格好は昨日と同じエプロン姿だが、他に着ているようには見えなかった。
上条はまだその格好してるのかよと溜息を吐いたが、美琴が台所に戻る後ろ姿を見ると昨日とは何かが違った。
「………ない」
美琴は正に純正裸エプロン姿だった。ベランダのアレは美琴ののようだ。
上条はその後ろ姿に呆気に取られていると、昨日の事を思い出すように頭に手を置いた。
そして、全てをフラッシュバックさせる。
フラッシュバックと言っても記憶が無いので、昨日の最後の記憶なのだが。
その記憶とは、確か自分の手で…美琴の着ていたエプロンを、引き剥がし―――
「だああああああああああああああああああああっ!!!!!」
上条は吼えた。もう大声で。近所の迷惑など考えずに。
その咆哮に美琴は驚愕し、上条の前に走って来た。
「ちょ、ちょっと! ど、どうしたのよアンタ!? 何があったの!?」
「み、美琴…」
「ど、どうしたの…?」
「み…美琴、正直に答えてくれ。嘘なんかいらない。回りくどい言い方もいらない」
「う、うん…」
上条は美琴の両肩に手を置き、真剣に向き合った。左腕の痛みなど忘れて。
そして上条は深呼吸を一回大きくすると美琴に言い放った。
「俺、美琴に手を出したのか?」
その言葉に美琴は頭から湯気を出すほど赤くなって俯いてしまったが、小さく「うん…」と言って頷いた。
「そ、その…どこまで手を出した? 俺の記憶が正しければ、おまえのその可愛いエプロンを引ん剥いたところまでなんですが…」
「……どこまでって…、その、さ……最後、まで…」
「……………最後、だと」
上条は美琴の肩に置いてあった手を下ろした。
美琴は真っ赤になって俯きながらも、上条の方を上目使いでチラチラと見ながら更なる事を言い出した。
「わ、私はちゃんと止めたんだよ? 前夜まで取っておくんじゃないの、って。で、でもアンタは『もう我慢できません』だとか」
「…」
「『美琴ちゃんは俺の事嫌いなの?』とか」
「…」
「『おまえの全てが欲しい』…と、とか言うから……」
「…あは、」
上条はもう笑うしかなかった。そしてとりあえず美琴に服を着せると彼女の前で土下座した。
足なんか、骨折なんか痛くなかった。
「本当に申し訳ありませんでした」
「い、いいわよ。…そ、その…嬉しかったし……えへへ」
「こうなった以上は、この上条当麻、一生を掛けて御坂美琴さんを守り抜いて行くと誓―――」
「そんなんじゃ、嫌」
「は、はい? い、嫌…とは?」
「そ、その……し、しちゃったから一緒にいるとか、そんなのじゃ嫌」
「そ、そんな軽い気持ちではないです! 上条さんは美琴さんをこれ以上ないくらいに!」
「じゃあ…ちゃんとプロポーズしてよ」
「わ、わかった…」
そして上条は今自分が考えられる精一杯の好意を持って、美琴にプロポーズした。
美琴は上条のプロポーズに満面の笑みを浮かべ、泣きながら誓いのキスをした。
その後美琴は上条に泣き止むまで胸を借りていたが、やがて笑いながら言った。
「恋人の告白の前に結婚のプロポーズだなんて、アンタほんとにバカなんだから」
そんな事があって取った朝食。
美琴はいつものように上条の右手を取って自分で食べさせているが、今日は上条の方が違った。
今朝は上条から美琴の手を握り、食べさせてほしいを言い出したので。
美琴は上条の変わり様に少し戸惑ったが、嬉しい事だったので否定しなかった。
しかし、今日この後の上条を考えると、ここで少し間を取った方がよかったのかもしれない。
それは何故か。つまり上条は完全なる美琴の虜になり一生を誓ったために、離れたくない精神が特化されすぎたのだ。
「み、美琴? ど、どこ行くんだ?」
「どこって…醤油切れたから新しいの入れてくるだけよ」
「ま、待って! お、俺も一緒に…」
「はぁ!? あ、アンタね! すぐそこの台所だっつの! そんなんでいちいち動かなくていいわよ!」
「そ、そんな…俺を…俺を置いて醤油の所に行くってのか! 俺より醤油が大切なのか!」
「な、なななななに言ってるのよ!? あ、アンタ大丈夫? ホントにすぐ帰ってくるからここにいなさいよ」
「ほ、ほんとすぐだぞ! 待ってるからな!」
「はいはい、ったく…」
というやり取りを事あるごとに繰り返し、美琴の春休み4日目は相当に疲れた。
だから夜、今日は帰らなくちゃと言った途端に上条が泣いて引き止めた時には溜息まで吐いた。
でもさすがに2日連続無断外泊はまずいと言ったが上条は引き下がらない。
そんな上条に明日から来れなくなっちゃうかもと言ったら、上条は泣きやんで帰してくれたのだ。
そんな4日目の出来事を美琴は上条に話していた。
「も、もうその辺りで勘弁してください。昨日は周りが見えてなかったというか、何というか…」
「離したくないっていうのは嬉しいけど、正直アレは勘弁してほしいわね。もっと普通にお願い」
「か、かしこまりました」
「じゃあ責任取るって言ったんだから、ちゃんと言えるわよね? …はい」
「…? カエルの携帯、これ…おまえのじゃないか。どうするんだよ、これ」
「画面見てみて」
「?」
そう言われて上条は美琴の携帯の待ち受けを見る。
…とそこには「Phone Call」と書かれており、その下に「父」と名前が出ていた。
「ぶぅぅぅぅ!! み、美琴さんんんんん!!???? こ、これはいきなりハードル高すぎやしませんかね!? ま、まずは美鈴さん辺りが妥当と言うか!」
「いつかは言うんだからいいじゃない♪ ちゃんと言ってよね♪」
「は、初めて会話する上に娘さんを下さいなんて…と、とても上条さんのガラスの心では言え――」
『―――ブッ、…もしもし? 美琴か? 珍しいな、何かあったのか?』
「あ…」
上条当麻と御坂美琴の春休み。5日目終了。上条はこの日だけで一生分の大半を占める冷や汗をかいたそうだ。
}}}
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