とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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なぜだかわからない


 桜の時期が過ぎ、緑が盛りを迎える季節。
 上条当麻は、無事高校2年に進級も出来、新学期も始まり、もうすぐ連休が近付こうとする頃だった。
 とある週末の夜、完全下校時間も過ぎ、街は春の闇に包まれかけている。
 自販機と街灯の明かりだけが、辺りをぼんやりと照らしている。
 夜空に上った春の月を眺めながら、上条は、いつもの公園のベンチに1人腰を下ろしていた。
 寒くもなく、暑くもなく、時折吹く、乾いた風が心地良い。
 今夜の同居人は、小萌先生の家で焼肉パーティとお泊りらしい。

 家計を心配してくれる先生に、感謝の気持ちは欠かせないなと思いながら、俺は今日これからの予定を考えた。
 空腹ではあったけど、こんなに気持ちが良い天気なら、もう少しここにいるのも悪くないと呟いた。
 でもなぜかアイツと一緒にいられないのが辛かった。
 アイツのことを思うと、ドキドキして、胸が苦しいんだ。
 実は新学期が始まってから、アイツとは全然会えていない。
 なんでこんなにアイツのことが気になるんだろう。
 春休みの間、始業式までほとんど毎日、アイツと一緒にいたのにな、とも呟いた。
 電話かメールで呼び出せばいいのかもしれないけど、それもなんだか恥ずかしい。
 だいたい俺なんかのために、アイツの時間を割かせるのも気が引ける。
 なのにどうして今も、こんなにアイツと会いたいんだろう。
 会いたくて、会いたくて、泣きたくなるほどに胸が苦しいんだろう。
 なぜだかわからない……けれど。
 本当に……?
 なぜだか……?
 わからない……?

 上条当麻には、気になることがあった。
 この半年近く、御坂美琴の様子がおかしいのだ。
 いや、おかしいというには語弊がある。
 昨年、無事にロシアから帰ってきた時から、ずっとこれまで、何かと上条の世話を焼きたがるのだ。
 なぜだかわからなかった。

「これはいったい、どうしてなのだろう……」

 ロシアから戻って、久しぶりに会ったとき、アイツは真っ赤な顔でいきなり電撃を放ってきた。
 それを右手で受け止めて、「御坂、ただいま」と冗談めかして言ってやったら、アイツは俺に抱きついて、びいびい泣き出したんだ。
 その時はさすがに焦ったが、俺には負い目があるので、恥ずかしかったがアイツが泣き止むまでそのままでいた。
 友人が助けに来たのに、それを振り払ったのだから、怒るし悲しむのは当然なのだと思う。
 その後、アイツは「おかえり……」と言って笑ったんだ。
 その笑顔に、俺は胸がドキッとした。
 なぜだかわからないけれど。

 ロシアで無くした携帯も、アイツと一緒に再契約した。
 罰ゲームよと言われて、またカップル契約させられた。
 まだゲコ太キャンペーンが続いているらしい。
 今度のツーショットは邪魔が入らなかったのでちゃんと撮れた。
 それを待ち受けにさせられたのは誤算だったけれど。
 それでもアイツの笑顔が見られて、俺はなんだか嬉しかった。
 それからというもの、ほとんど毎日のように付きまとわれるようになったっけ。
 お前にも自分の時間というのがあるだろうと聞いたこともあったが、ダイジョーブよの一言で終わった。
 さすがに以前ほど、電撃を放たれることが無くなったのはありがたいと思うが、それでも何か違和感があったな。
 とりあえず、友達から親友にランクアップ、ってところなんだと思うんだ。
 実のところ、セールに付き合ってくれるのは助かるし、帰国後の課題の山を片付けることが出来たのもアイツのおかげだ。
 正直悪い気がしなかった。
 というか、嬉しかった。
 それから少しアイツのことが気になってきた。
 なぜだかわからなかったけれど。


 そういえばいつの間にか、アイツとインデックスの関係も変わったっけ。
 インデックスが俺と同居しているのを教えた時は、どこか複雑そうな顔をしていたが、俺も記憶が無いから説明の仕様が無い。
 それを言うと、「ま、アンタにも事情があるだろうしね、まったく……」と言ってはいたが、分かってはくれたようだ。
 でもその頃から、やたらと俺の家へ押しかけて来るようになったな。

「どうせたいしたもの食べてないんでしょ。育ち盛りに影響するからご飯作りに来てやったわよ」

 と言いながら、持参した材料で、てきぱきと料理を仕上げていく手際には感心したっけ。
 インデックスも最初のうちは、どこか警戒してたようだったけど、途中からは「みことのごはんがいちばんなんだよ」とか言い出す有様だ。
 今じゃ、アイツに向かって、とうまとみことがいっしょならご飯の心配はしなくていいかもとか言ってるようだし。
 舞夏と2人でご馳走を作ってくれた時は、隣人で舞夏の義兄の土御門とも一緒に、感動した覚えがある。
 土御門のヤローは、「花嫁修業は完璧だにゃー」とか言って、なぜかアイツは真っ赤になってたな。
 舞夏なんぞは、「みさかみさかー。これで攻略は完璧だぞー」って言っていたが、何の攻略なのかわからなかった。
 ま、女の子なら誰でも、いいお嫁さんなると言われて、喜ぶのは当然なんだろうし、なにかの練習なんだろうというのはわかった。
 でも練習だとしても、アイツの料理は確かに美味かった。
 練習でもいいから、毎日食べたいと思った。
 どこがどう美味いかと言われてもわからないけれど、アイツの料理は、俺が引き付けられる何かがあるのは確かだ。
 そのうちに毎日ではないが、昼の弁当まで作ってくれるようになった。
 練習なのは間違いないのだろうけど。
 アイツもそんなようなことを言っていたし。
 最初のうちは、クラスメイトからは愛妻弁当がどうのとか言われて、青ピや土御門たちにぶん殴られた。
 そんなんじゃねぇと言ったが、誰も聞いちゃくれなかった。
 なぜなんだ?
 それからしばらくしたら、誰も何も言わなくなったのは助かったが。
 そのかわりアイツの弁当の時は、姫神や吹寄が、料理研究とか言って、おかずの交換に来るようになったな。
 本当は独り占めしたいと思っていたけど、何を言われるか怖かったので、2人には言えなかった。
 なぜだかわからなかったけれど。

 クリスマスイブに約束してた、天草式のミサに出た時は、ちょっと不機嫌そうな顔をしていたが、一緒に来るかと言ったらついて来たっけ。
 神裂と五和に、紹介したら、後でアイツにぶん殴られた。
 親友だと紹介したのが不味かったのか?
 もしかして俺が先走りすぎたのだろうか。
 お前はそう思ってないかもしれないが、お前は俺にとって大切な友達なんだよと言うと、アイツはごめんなさいと謝ってくれたっけ。
 もちろんアイツには、俺が悪かったんだし、気にすんなよとは言ったけれど。
 でも帰り道に、腕にしがみついてきたのは恥ずかしくて参った。
 恥ずかしかったけど、まわりもカップルだらけで、注目浴びることもなかったから良かった。
 でもなんとなく嬉しかった。
 今日だけは、アイツの特別だったらいいなと少しだけ思った。
 なぜだかわからなかったけれど。
 でもこの頃から、本当にアイツのことが気になるようになったな。
 本当になぜだかわからなかったけれど。


 それから正月に初めて帰省したら、実家への帰り道で鉢合わせしたのにも驚いた。
 お互いの実家が近くて、いつのまにか互いの両親の仲がいいのにも驚いたし。
 元旦に両親と一緒に来たアイツは、なぜか真っ赤な顔をしてたな。
 大方お神酒でも飲んだんだろうと思う。
 ちょっと呂律が回ってなかったから、きっとそうだろう。
 なぜか母さんに「あらあら、当麻さんはやっぱり刀夜さんの子供なんですね」と当たり前のことを言われた。
 父さんには「当麻、やっぱりお前は私の息子だよ」とため息をつかれたし。
 美鈴さんと、初めて会った旅掛さんにもなぜかニヤニヤされた。
 でもアイツがいろいろ俺をフォローしてくれたおかげで、記憶喪失のことはバレずにすんだ。
 アイツには本当に感謝した。
 本当に助かったよ、ありがとうと言ったら、アイツは相変わず真っ赤な顔で、

「あ、あ、アンタの役に立てたのなら、わ、私は本望よ」

 って呂律の回らない口調で言ってたな。
 まだ酔いは醒めないのかって聞いたらぶん殴られた。
 美鈴さんといい、あの母娘に酒は禁物なんだと思った。
 しかしアイツの振袖姿にはドッキリさせられた。
 あれは心臓に悪いと今でも思う。
 こちらに戻ってからも、しばらくはアイツの振袖姿が脳裏から離れなくて、アイツの顔を見るたびドキドキして困った。
 本当に困った。
 アイツと会うと、俺もなぜか顔が赤くなるし、アイツの顔がまともに見えなくて困ったんだ。
 なぜだかわからなかったけれど。

 バレンタインデーにはチョコをくれたっけ。
 手作りっぽかったけど、アイツに聞いたら「内緒よ!」とか言ってたっけ。
 学校でも義理チョコだけど、たくさんもらえたから、義理チョコだよな?と聞いたら、「それも内緒よ」と言われたのは意味わかんねぇ。
 なぜかちょっと複雑な気がした。
 他に誰かチョコを渡す相手がいるのかなと気になった。
 そう思うと、胸がちくちくした。
 なぜだかわからなかったけれど。
 それでもチョコをくれた時のアイツの笑顔は、マジで可愛いと思った。
 あの時に、俺の中に何か芽生えたような気がしたんだ。
 アイツのことをおもうと、胸がきゅっとなって、苦しくなるんだ。
 アイツのチョコをもらうのが、俺だけならいいなと思った。
 本当になぜだかわからなかったけれど。
 ホワイトデーのお返しを聞いたら、「アンタのくれるものなら何でもいいわよ」って言われた。
 なぜだかわからなかったけれど。


 ホワイトデーには、日頃のお礼もかねて、御坂妹と同じにネックレスをプレゼントした。
 妹に買ってやって、姉のアイツに何も買ってないのはちょっと気が引けていたのは確かだし。

「どうせアンタのことだから、姉妹で同じものをって考えたんでしょ……」

 なんて図星をつかれて焦った。
 しまったと思って、電撃をくらう覚悟をしたけれど、

「アンタのくれるものなら何でもいいって言ったのはこっちだし、ありがたくもらっておくわ」

 ってアイツは言った。
 少し複雑な気持ちだったが、とりあえず受け取ってもらえたので助かった。
 ホワイトデーは3倍返しという話を聞いていたから、ちょっとしたバイトをして、それなりのを選んだつもりだった。
 でもお嬢様の金銭感覚とは違うのだろう。
 そう言ったら、なぜか一層真っ赤な顔になって涙目になってたな。
 そういやその日は、会った時から顔が少し赤いようだったし。
 「体調悪いのか」って聞いて、熱がないかと思って、おでこをくっつけたら、いきなり気を失いやがった。
 俺はあわてて、アイツを抱きとめて、ベンチに横たえたんだ。
 体調悪いのを、無理して俺なんかのために来ることもないだろうにと思ったが、アイツは本当にやさしいから、俺に気を使ってくれたんだと思う。
 医者へ連れて行こうかと思ったけど、様子を見てからと思い、膝枕をして目を覚ますのを待ってみた。
 寒そうだから、もちろん自分の上着を脱いでかけてやったし。
 俺はそんなアイツの優しさに報いる方法がわからない。
 なんかお礼をすると言っても、アイツは受け取ってくれないし。
 そのくせ、罰ゲームだけはしっかり俺にさせるくせに。
 ま、罰ゲームもお礼だと思えば、別に何の苦にならないけれど。
 アイツが喜んでくれたら、俺は何も要らない。
 そのうちアイツも意識を取り戻した。
 体調悪いのなら、無理すんなよって言ったら、大丈夫と言いながら相変わらず顔が赤かった。
 また倒れるといけないから、俺はアイツを寮まで送ってやることにした。
 途中、やっぱり体調悪いのか、ふらふらしていたから、肩を抱いて支えながら歩いたんだ。
 気分が悪いからか、アイツは俺の肩に頭を寄せて、俺にもたれてきた。
 不謹慎だけど、俺にはなんかカップルみたいに思えて、ちょっとドキドキして嬉しくて仕方なかった。
 これは非常時なんだって自分に言い聞かせながら、無事にアイツの寮まで送り届けた。
 他の寮生に、「御坂様の彼氏……」とか聞こえた気がしたけど、それは違うと言おうとしてやめた。
 なぜだかわからなかったけれど。
 白井があわてたようにテレポートしてきて、俺にお礼を言って、急いでアイツを連れてった。
 そういえば、ロシアから戻って以来、白井に襲われたことがない。
 いったいどうしたんだろう。
 あんなに俺のことを敵視してたのにな。
 なぜだかわからなかったけど。


 ホワイトデーのお返しは、それからずっと身に着けていてくれるらしい。
 そのことを知った時は、なぜか俺も無性に嬉しくなった。
 それをアイツに言ったら、何か気に障ったのか真っ赤になって、

「アンタへの借りを忘れないためよ…」

 って言われた。
 やっぱり俺に借りを作るのがいやなのか、それとも俺の勘違いで怒らせたのかと思って、ちょっとショックだった。
 だから俺は、ちょっと辛くなって、アイツに謝ったんだ。
 そんなつもりなんて無くて、俺はお前に喜んでほしいと思ったけど、もしかしてお前にいやな思いをさせていたのなら謝るって言ったんだ。
 そうしたら、アイツはいきなり泣き出してしまった。
 わんわん泣いて、違うの違うのとか、ごめんなさいごめんなさいとか言って、俺にしがみついて来た。
 どうやら俺の勘違いでアイツを泣かせる羽目になったらしいんだ。
 俺はそんなアイツを見たくなくてどうしていいかわからなかった。
 俺はアイツを泣かせるような最低な男なんだと、本当に自分がいやになったんだ。
 あのシスターズのときの顔と同じ顔をしてたので、俺はアイツにそんな顔をして欲しくなかったから、俺はアイツに言ったんだ。

「ごめんな。泣かせるつもりはなかったんだけど、なにか俺の言い方が気に障ったのなら許して欲しい。
俺はお前に笑って欲しいんだけど、泣かせるようなことをしてしまった最低な人間だ。
どうしたら許してもらえるか分からないけど、俺がお前には相応しくないようなら、もう会わないほうがいいのかな」

 俺は本心からの謝罪のつもりだったけど、言った後、ものすごく胸が痛くなった。
 アイツと会えなくなると思うと、ものすごく気分が悪くなったんだ。
 多分、顔色も本当に悪かったんだろうな。
 そんな俺にアイツは、

「会わない方がいいなんて、そんなこと言わないで。
アンタは……、当麻は……私と居ていいの、ううん、私と居て欲しい。
私は……当麻と一緒ならそれでいいの」

 って言ったんだ。
 涙目で、上目遣いに言ったんだ。
 そのとき初めて、俺はアイツに名前を呼ばれた気がするんだ。
 そんな風に言われたら、俺は……。

「それよりそんな顔色だけど大丈夫?どっか気分悪い?」

 アイツはやさしいから、多分俺を思い遣って言ってくれたんだと思う。
 俺なんかより、ずっとすっと優しいやつなんだ。
 本当に俺には似つかわしくないくらいに。
 でもそう思ったら、俺はまた辛くなったんだ。
 本当になぜだかわからなかったけれど。
 でもアイツにありがとうって言ったら、気分も良くなったし、アイツも一緒に笑ってくれた。
 やっぱりアイツの笑顔を見ると、俺は本当に嬉しくなる。
 本当になぜだかわからないけれど。
 本当に……?



 学年末の課題ラッシュの時は本当に助けられた。
 追試と課題の山を、アイツの指導のおかげで乗り越えられたんだ。
 小萌先生は、上条ちゃんは彼女さんに感謝するべきなんですよって言っていたけれど、アイツはそんなんじゃないですよって、俺は言った。
 実際そうだと思う。
 アイツは俺なんかの彼女じゃない。
 ま、友達ではあるんだろうけど。
 でも俺は言いながら、なぜか胸が痛かった。
 先生もなぜだかため息をついていたな。
 上条ちゃんはやっぱり上条ちゃんなんですねって言われた。
 御坂ちゃんも大変ですねとも聞こえた。
 そうしたら、俺は胸が苦しくなったんだ。
 なんだか自分が悪いことをしているみたいに。
 俺、なんか悪いことしてますかって先生に聞いた。
 先生は笑って、それは上条ちゃんが考えることですよって言った。
 考えたけれど、俺は悪いことはしてないと思う。
 でもやっぱりどこか後ろめたい気持ちがしてた。
 本当になぜだかわからなかったけれど。
 本当に……?

 その時、俺は御坂が俺の彼女だったらいいのになって正直思っていた。
 俺はロリコンじゃないから、中学生は恋愛対象にならないと思う。
 高校生以上ならその対象として見れるのに。
 でもなぜかそんな気にならなかった。
 俺だって出会いは欲しいし、彼女だって欲しい。
 でも友達はいっぱいいるけれど、恋人は別だ。
 友達なら、俺の不幸に巻き込んだって、笑ってくれるし、離れることだって簡単だ。
 でも恋人が俺の不幸に巻き込まれるのには、俺は耐えられない。
 それに、俺はしょっちゅう外の世界へ行く。
 恋人を放ったらかして、そんなことしたら愛想を付かされるのがオチだ。
 恋人にそんな思いをさせたくないし、それで振られるのもイヤだ。
 でもアイツなら……。
 前にも聞いた気がする。

「私はアンタの力になりたい……」

「私はアンタと一緒なら不幸にならない……」

「私は……当麻と一緒ならそれでいいの……」

「私は……」

 本当に……?


「美琴が、俺の恋人ならいいんだけどな……」

 俺は公園のベンチで一人ため息を付いた。
 その時、なにかに気が付いたような気がした。

「あれ……?恋人って……なんだ?」

 それまでなぜだかわからなかったことが、口に出したら、なぜだかわかったような気がした。

「恋人って……俺は……」

「俺は……アイツのことが……」

「御坂のことが……」

「美琴のことが……」

「好きなんじゃねぇのか……?」

 そう口にした瞬間、俺は脳天から突き抜けるものを感じた。
 あわてて周りを見渡したけど、辺りには誰もいない。
 でもそれまでの胸のモヤモヤした苦しさが消えていた。
 なぜだか俺は、わかった。
 本当になぜだかわかった。
 俺は思わずベンチから立ち上がって、思わず夜空に向かって言った。

「俺は、御坂美琴が、好きなんだ!」

 俺は本当に気分が良くなった。

「俺は、御坂美琴が、好きなんだ!」

 ああ、もっと言いたい!

「俺は、御坂美琴が、大好きなんだ!」

 気持ちがだんだんハイになる。

「俺は、御坂美琴が、大好きなんだ!」

 声が大きくなる。

「俺はああ、御坂美琴がああ、大好きだあああ!」

 もっと叫んでスッキリしたいと俺は思った。

「俺はああああ御坂美琴があああああ大好きだあああああ!!!!」

 その瞬間、ズバアアアアンと電撃が飛んできた。
 俺は右手でそれを受け止めた。
 あわてて振り向いたら、そこには肩を震わせて、真っ赤な顔をしたアイツが立っていた。

「アンタはあああ、そんな大声でえええ、なにこっぱずかしいこと言ってるのよおおおお!!!!」

「へ、御坂さん……、今の……聞いて……」

 まずい!非常にまずい!電撃が!!
 俺はとっさにアイツに向かって右手を突き出した。

「こんのおおお鈍感野郎おおおがあああ!!!!」

 アイツが渾身の力を込めて、俺に向かって叫んだ。

「御坂美琴はあああ、上条当麻があああ、大好きなのよおおおお!!!!」

 はあはあと肩で息を吐きながら、アイツが俺を見ていた。
 俺はなにを言われたか、すぐにわからなかった。
 なぜだかわからなかった。

「アンタねぇ、新学期始まって、人がてんてこ舞いの時に、夜の公園でなにを叫んでるのよ」

「あのですね、上条さんは、御坂さんに会えなくてですね、ちょっと寂しくてですね、それがなぜだかわからなくてですね……」

 アイツが笑顔になった。
 俺が今まで見たことがない笑顔になった。
 俺はこの時、なぜだかこの笑顔を守りたいと思った。
 なぜだかわからないけれど。
 そしてアイツが俺の胸に飛び込んできた。
 なぜだかわからないけれど。
 本当になぜだかわからないけれど。

「ね、当麻は、わかったんだよね?」

「ああ、やっとわかったよ、美琴」


  ~ Fin ~


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