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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11スレ目短編/901」を以下のとおり復元します。
*ミッシング・リンク After_play_lovers. 3
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◆         ◇         ◆         ◇         ◆


「はぁ…やっとコレ終わるのか……これって、俺たちにとっては時間外労働じゃねーのかよ」

「ほら、ぼやかない、ぼやかない♪アンタ、一応こっちでは主役なんだから、さっさと宣伝とタイトルコールやんなさいよ」

「あー、一応訊いとくけど、なんでお前はさっきからそんなに上機嫌なんだ?コレが若さの力ってヤツなのか」

(やっと、アンタを捕まえられたからに決まってんでしょうが、気付けこの鈍感…)
「う、うっさいわねっ、いいからさっさとやんなさいよ!まったく…、アンタってヤツは……」

「うわっっ!?おまっ、いきなりビリビリすんなっっ!!お願いですから、その物騒なモノをさっさとしまってくださいーーっm(__)m

 えっとー、ご愛顧いただいたすべてのみなさまに宣伝します。このSSは、電撃文庫から発売されている鎌池和馬先生の『とある魔術の禁書目録』の第5&6巻をよくチェックしてから読んでくれよな!面白さが倍増するっつーか、このふざけた幻想をブチ殺せるかもしれねぇから、原作小説の方も是非よろしくお願いいたしますっ!以上、宣伝でしたっ」

「ア・ン・タ・はー………」
(勝手に打ち消すんじゃないないわよっ)

「あのー…御坂サン…アナタは何をそんなに怒っていやがりますのでしょうか?」

「うっさい、人の気も知らないで、このド馬鹿っっ!!!」

「またまた意味のわかんねぇキレ方しやがって…まぁ、お前と一緒にいるのは別に嫌じゃねーから、上条さんとしてはビリビリさえ遠慮していただければ、時間外労働も別に苦にならないんですけどねー」

(えっ今、コイツなんて言った......)
「そ、そっかー、そうなんだ…(えへへー♪)じゃ、じゃぁ、タ、タイトルコールはいっしょに……………」

「よーし、一丁キメてやろうぜ!」



「とある魔術の禁書目録外伝!」
「「ミッシング・リンク ~After_play_lovers.!!」」


「さぁっ、はじめるわよっ♪」



◆         ◇         ◆         ◇         ◆



 (Sep.01_AM08:03)


 突き刺すような真夏の日差しの中、半袖の白いブラウスにサマーセーター、灰色のプリーツスカートの中学生くらいの少女が、早くも開演した蝉たちの大合唱をバックに、朝の大通りを学校へ向かって走っていた。
 肩のあたりまで伸ばした茶色い髪には、昨日までとは違う真新しい何かが朝日を浴びて自己主張をしている。
 その少女、学園都市でも7人しかいない超能力者(レベル5)にして、学園都市の全学生の憧れ、能力開発の名門・常盤台中学のエースであり、容姿端麗にして品行方正なお嬢様(でないと困る)、電撃使いの少女、御坂美琴の機嫌はすこぶる悪かった。

 昨夜、美琴は『とある事情』から、寮の門限を大幅にブッチ切ってしまった。
 それ自体は美琴にとってさして珍しいことではなく、いつものように、ルームメイトであり、空間移動能力者(テレポーター)である白井黒子を呼び出して、自室である208号室にこっそりと生還しようと考えていた。
 しかし、この日ばかりは、いつもの問屋は営業停止になっていたようだった。
 寮の裏手に回り、白井に連絡するため、携帯電話を取り出そうとした美琴は、まさにその瞬間、万力のような怪力で首を120度ネジ曲げられ、文字どおり問答無用に捕獲された。
 『朝の寮の眼前での逢引騒ぎ』→『大幅な門限破り』のスペシャルコンボをうやむうやにしては、他の寮生たちに対して示しが付かないであろう鬼の寮監サマの執念の哨戒網の軍門に下ることになった美琴は、即決裁判で廊下に正座させられた上、寮監サマの愛情溢れる教育的指導を延々と受講する羽目になってしまったのだ。
 日付も変わって大分経った頃、ようやくお仕置きタイムからは解放されたものの、既に真っ白な灰となり果てて自室に戻ってきた美琴を待っていたのは、彼女をお姉様と慕う変態淑女(しらいくろこ)からの執拗な追求だった。
 なんとか肝心な部分は誤魔化しきったものの、『愛しのお姉様』への白井の追求は延々と夜半まで続き、最後は睡魔と懲罰を天秤にかけた美琴が白井に電撃を浴びせて、半ば強引に強制終了してなんとか床には就いたものの、今度は昨日のとある少年の誓いの言葉が何度もフラッシュバックしてなかなか寝つけず、明け方近くになってようやく眠れたかと思えば、今度は起床時間を大幅に寝過ごしてしまったのだ。
 当然、寝起きは最悪だった。
 その結果、やむなく朝食を抜いたあげくに学校まで走らざる得なくなってしまった美琴は、いつも以上にハイテンションだった。

(はぁ……不幸だわ…まったく、黒子のヤツときたら…でも、そもそもの原因は、あの馬鹿が私のことをさんざんさんざんさんざんさんざんスルーするからこんなことになってんのよね。だいたいアイツはいったい私のことを何だと思ってんのよ。って、あれ?)

 視線の先には、見間違えようもないツンツン頭が、美琴と同じ方向に向かって走っていた。

(何、このラッキーイベントは!?今まで朝は一度も会ったことなんてなかったのに。も、もしかしてアイツの方から「昨日はゴメン。美琴の言うこと何でも聞くから許してください」とか「あれ?ヘアピン替えたのか?似合ってるぞ美琴」なんて展開になったりして。キャー、ウソウソ、ないない。だってあの馬鹿なのよ。昨日のスルーっぷりをもう忘れたの?あの鈍感男に限ってありえないわよ。そ、そうよ。いつも私の方から声掛けてばっかりだから、アイツがいい気になるのよ。たまには私の方からスルーしてやって、あの馬鹿を慌てさせてやらないと)

 脳内会議の様相が全部顔に出たまま走り続けている常盤台のお嬢様は既に立派な不審人物候補なのだが、そんな周囲の視線など物ともせず、満場一致で『敢えて気付かないフリ』をすることを選択した美琴は、舞い上がるスカートの端にも気付かない程のものすごい全力疾走で『とある少年』の左側を追い抜いた。
 すると --

「……おっすー。若者は朝っぱらから元気だなぁオイ」

(キターっ!珍しくアイツの方から声を掛けてくるなんて、これって作戦成功!?でも、昨日あれだけさんざんスルーされたばっかりなのに、ここで嬉しそうになんてしちゃったら、私まるで……とっ、とっ、とにかく、でっ、電撃だけは絶対にダメよ。こっ、ここはクールにオトナの対応で…)

 心の中で深呼吸を繰り返し、クールにクールにと詠唱しつつも、緊張から顔の筋肉が強ばってしまい『ただいま不機嫌です』と言わんばかりの表情になってしまった美琴の口から発せられた言葉は --

「ってか、どうしてそんなに気安く話しかけられんのかしら。昨日の夜は人をさんざんさんざんさんざんさんざんスルーしていったてのに!ちょっとは引け目とか感じないの!?」

(ちがーう!ホントはこんなことが言いたいんじゃないのにっ!『ケガとかなかった?心配してたのよ』って、なんでこんな簡単なことが言えないのよ、ワタシはーっっっ!!)

 結局は、いつもと同じ光景の繰り返し。
 上条のぶっきらぼうな対応に、美琴が赤くなったり青くなったりしながら怒鳴り散らす。
 さっきまで思い描いていたのとは程遠い現実に『ずーん』と落ち込む美琴。
(勝手に期待して、勝手に落ち込んで、ホント馬鹿よね、私。ま、これはこれで私たちらしいっていうかいつもどおりなんだけどさ。でも、これで『サヨナラ』はさびしいわね…)

「…コラっ!ローテンションのままスルーしてんじゃないわよアンタっ!!」


◆         ◇         ◆         ◇         ◆


 ふたりでぎゃあぎゃあやりながら学校への道を走っているうちに、寝不足で回転が悪かった上条の頭も、ようやく開店準備が整ってきた。
 今朝方考えていたのに、さっきはぼーっとしていて言い忘れてしまっていた言葉を上条はようやく思い出した。

「あー、もしかしてだけどさ、昨日はなんか心配かけちまったのかな。まぁ、疲労困憊に加え極度の睡眠不足ではあるけど、身体自体はこのとおりなんともねーからさ」

 美琴は、炎天下での全力疾走でさすがに暑くなったのか、真っ赤な顔をして俯いていた。

「べっ、別に、ア、ア、アンタのことが心配だったんじゃないんだからねっ!アンタを私の事情に巻き込んで、そ、その、こっ、恋人ごっこでケガなんかされたら、後味悪いじゃない!だっ、だからっ、そのっ…」

(まぁ、今思えばだけど、俺はそれなりに楽しかったんですけどね。だから…)

「それでもいいさ。ありがとな、御坂」
「え?うん…、ありがと…」

 上条の不意打ちに、心構えの『こ』の字もできていなかった美琴は思わず素が出てしまったのだが、あまりに無防備な美琴の反応に今度は上条の方が固まってしまった。
 胸の鼓動が不規則に高鳴っていく。

(今のは何ですか?御坂ってこんなキャラでしたっけ?そ、その上目遣いはやめれ!御坂が違う、何かが違うんだけど……)

 美琴は彼女としては珍しく『ぽわっ』とした表情で、上目遣いに上条をのぞき込んでいる。
 見つめられているだけでも、脳がふやけていきそうだ。
 これ以上接近されると、自称『紳士上条』の理性が決壊しかねない。

(素直な御坂たんに見惚れてしまいましたなんて、死んでも言えますかっつうの!!とっ、とにかくこの空間は…マズい、今すぐ元に戻さねぇと、なんか色々マズいことに…こっ、ここはひとまず)

「あ、あのさ…なんで御坂がお礼を言うわけ?」
「う、うっさいわね!私が言いたかったんだから、別にいいでしょっ!!」

 瞬時に美琴の前髪あたりから電撃が放たれた。
 上条は飛んできた紫電を裏拳気味に右手を横薙ぎにして打ち消してみせる。
 これで元通り、いつものふたりだ。
 また、ココロがチクリと痛む。
 この痛みの正体を上条は知らない。
 でも、この痛みはあの時とは違う痛みだということだけは、辛うじて理解できた。
 その事実を誤魔化すように上条は強引に会話を終了させる。
 おあつらえ向きに丁度ここは『自分の高校ルート』と『常盤台ルート』の分岐点だ。

「じゃぁ、俺こっちだからさ。またなー、御坂。お前も遅刻すんなよ!カエルグッズあげるって言われても知らない人についてっちゃダメですよー」
「こ、子供扱いすんなーっっっ!!待ちなさいよアンタ!まだ話は終わってないわよーっ!!」

 美琴がまだ何か叫んでいるのが聞こえるが、これ以上美琴に付き合っていると本当に遅刻してしまうので、振り返らずにさらにスパートを掛けていく。

「またなー、か…」

 上条は自分が思わず口にした言葉を反芻する。
 連絡先を知っているわけでも、まして約束を交わしたわけでもないのだが、何故だかまたすぐに会えるような予感がするのはどうしてだろう。
 そういえば、アイツの携帯番号知らなかったなー、などと思いながら走っているうちに、ようやく目指す自分の高校が見えてきた。
 実質転校初日から遅刻という醜態だけはどうやら回避できたようだ。
 たとえ不幸体質でも、上条当麻はやれば出来る子なのである。


◆         ◇         ◆         ◇         ◆


 上条当麻が走り去った方向を向いたまま、美琴の足は完全に止まってしまっていた。

(何なのよ、あの馬鹿は。またまたまたまたまたまたまたまたまたまた私をスルーしてくれちゃってさー。でも………、嬉しいじゃないっ!コンチキショーっ!!アイツが私に「ありがとう」なんて、びっくりし過ぎて思わず素が出ちゃったじゃない)

『ありがとう』
“それは感謝のコトバ”

(アイツは私に「ありがとう」って言ってくれた。でも、私はアイツに感謝されるようなことをした記憶はまったくないんだけど…逢うたびに電撃浴びせたり、むしろ厄介ごとに巻き込んでばかりよね)

 美琴は軽く落ち込んでしまう。
 でも、それでも上条当麻は御坂美琴に感謝のコトバを、そして笑顔をくれた。
 なんで、上条がそんなコトバを口走ったのか、美琴にはわからない。

(一瞬、何が起こったのかわからなくて、思わず私も「ありがと」なんて言っちゃたけど、そういえば、あの後アイツも何か挙動不審だったわね。アレはなんだったんだろ?)

 アイツにとっては、大した意味などなく、例の如く無自覚に発したコトバだったのかもしれない。
 でも、とても暖かいキモチになれた。
 あんな感情が自分にもあったなんて。
 8月21日、美琴は全てをひとりで抱えて死のうとしていた。
 昨日の今頃はちょうど寮から外出しようとしていた頃だった。
 たった、これだけの間に、あんなことや、こんなことがあって今に至っているのだ。

(アイツは、私と妹達のために命懸けで闘ってくれた。それに昨日だって、「守る」って誓ってくれたのよ。無自覚だろうとなんだろうと、今はそれで充分じゃない!って、何だってアイツのことで私がこんなに悩まなきゃなんないのよ)

 我ながら馬鹿だなぁと、美琴は溜息をついた。
 まだ、美琴はこの感情の本当の正体に気付いていない。
 いや、もしかすると、ちょっと油断すると暴れ出して、ココロから噴き出しそうになるこの感情を無理矢理抑えつけようとしているだけなのかもしれない。
 それは痛みを伴うことなのに…

(自分に嘘なんてついてたら、笑えないじゃない。私らしくないぞ、御坂美琴!)

 この痛みに背を向けてはいけない。
 ここから逃げてしまうことは、とても哀しく、そしてもっと激しい痛みを伴うことだということも、本当は分かっているのだ。
 だから、美琴は立ち向かう。
 この正体不明な感情に。
 あの馬鹿は夢にも考えていないだろうけど、さっきのは美琴にとっては上条とふたりきりの『始業式』。
 二学期は始まったばかりなのだ。
 これから、あの少年と顔を会わせる機会だって増えるだろう。
 時間はまだまだたっぷりあるのだ。

(それにしても…)

 美琴はまた溜息をついた。
 先ほどの上条との会話から推察すると、上条は昨日美琴とはぐれた後も、やはりまた別の厄介ごとに巻き込まれていたようだった。

(もし神様なんてのがホントにいるとしたら、ソイツはとんでもなく怠惰で不公平なヤツよね)

 美琴は昨夜のゲリラライヴを思い出しながら、心に残ったフレーズを反芻していく。

(アイツの右手はみんなを守る右手なのかもしれない。なら、私のリョウテは何を守れるの?アイツは私に「お前は笑って良いんだ」って言ってくれた。あの馬鹿はいつだって「不幸だ!」「不幸だ!!」て言ってるけど、私だって、アイツにはいつも笑顔でいて欲しいのよ。だから、私は私のやり方でアイツを笑顔にしてみせる!アイツの不幸なんてこの御坂美琴が吹き飛ばしてやるわ!!)

 あり得ないことをあり得ると信じたから超能力者(レベル5)になれた少女は力強く誓う。
 そこにあるのは、超電磁砲の軌跡のように、真っ直ぐな想い。
 もう、気のせいでも勘違いでもいい。
 顔が真っ赤になっているのが鏡を見なくても分かるが、そんなこと程度では今の美琴のココロは止められない。

(私は、御坂美琴は守られるだけの女なんてガラじゃないわ。アイツには神様がいないっていうなら、私がその神様になってやろうじゃないの!まったく、感謝しなさいよねー。世界広しといえど、こんなに慈悲深い女の子なんて私しかいないんだから)



◆         ◇         ◆         ◇         ◆



 (Sep.01_AM08:17) ~エピローグ~


 完全に自分だけの世界に旅立っていた美琴は、今度こそ本気の全力疾走を披露する羽目になった。
 お世辞にもお嬢様らしくないことこの上ない姿ではあるのだが、もうそんな些細なことに構っていられるような状況ではなかった。
 目指す学舎の園まではあと僅かとはいえ、始業まであと3分しかないのだ。

(だぁっっ、アイツの不幸が移ったのかしら?新学期早々遅刻しちゃうじゃない。あぁもう、ふこー…でもないわよね)

 今朝はあの少年には気付いてもらえなかったけれど、風に揺れるその茶色い髪には、美琴の想いをカタチにした二輪の花が、夏色の日差しを浴びて咲き誇るかのように虹色に輝いていた。



                                              Sep.01_AM08:18 終了





Fin



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