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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係/Part07 - (2010/06/06 (日) 13:39:39) のソース

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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係)

三人の長い一日~尾行編~


「今日はあの子を尾行してみない?」

とある休日、いつもの喫茶店で美琴は呟いた。
先程、さも当然のようにデートの待ち合わせに遅れてきた当麻を説教した彼女はくるくるとコップを回しながら今日の行動について提案をする。
そんな唐突な提案に当麻は目を丸くする。

「は?なんだいきなり?」
「…最近知らない人からお礼言われたり、子供から『ときわだいのおねーちゃんこのまえはありがとー』って言われたりするのよ」
「んーと?それは美琴の普段の行いが良いからでは?」
「心当たりはないのよねー。それで思ったんだけど、これってあの子達が何かやってるんじゃないかと思うわけよ」
「なるほど…それはあり得るな」

あの子達…妹達かと予想した当麻はうんうんと頷く。すると美琴はコップを置いて身を乗り出すと、

「で、よくよく考えたら普段あの子達が何してるのか全然知らないのよね」
「あー、そう言われるとそうだな」
「だから、今日は妹の素行調査をするって事でどうかな?」
「お前なぁ…別に探らなくても良いだろ?」
「いいじゃない、当麻だって気になるでしょ?」
「そりゃ…でもなぁ…」

確かに普段妹達が何をしているのか知らない当麻としても気にはなる。だが、コソコソと後を付けるのはどうかと考え、悩んでいる。

「私はあの子の姉として、学園都市でちゃんと生活出来てるのか見たいわけよ」
「そんな心配しなくても大丈夫だろ、あいつ等はしっかりしてるし」
「…たまには『お礼』したいのよ!いつもいつもからかわれてばっかなんだから!」
「おいおい…結局それかよ…んで?具体的にはどうするんだ?」
「気付かれないように後を付けるだけよ。あの子の電磁波センサーに引っかかるかもしれないから当麻に協力して欲しいんだけど、ダメ?」

美琴のお願いにため息をつく。もう何を言っても無駄だと感じた当麻は仕方なくお願いを聞くことにする。

「…で?どうやってあいつ等を探すんだ?…先に言っとくけどあの手は駄目だぞ?余計な心配かけるだろうし」
「何でよ~、別に良いじゃない。元を言えばあの子が先にやったんだから」

他に妹達を呼ぶ有効な手段が思い付かなかった為、結局例の餌を使って妹を呼び出す事にした美琴は、渋る当麻を引きずるようにして喫茶店を後にする。
公園に向かって歩いていた二人だが、その途中、偶然にもお目当ての人物が姿を現した。その人物は黒い猫を抱いている。
そして、その胸元にはキラリと光るネックレスがある事から彼女が御坂妹(10032号)だと二人は理解する。
御坂妹も二人に気付き、ペコリと頭を下げる。軽く挨拶を済ませた三人はそのまま雑談へシフトする。

「こんな朝早くから散歩か?」
「いぬの散歩です、とミサカは回答します。フフ、フフフ…」
「その言い方は語弊が…というか表情が怖いぞ…」

黒猫(いぬ)を抱いた御坂妹は不気味な笑みを浮かべる。当麻はそんな彼女を見てやや引き気味にそう呟いた。
美琴はというと、いぬに心を奪われ、そわそそわと落ち着かない様子で御坂妹といぬを交互に見ている。

「猫…、ねぇ…ちょっと抱っこさせてくんない?」
「良いですよ、とミサカは即答します」
「ありがと!当麻、ちょっと右手で背中触ってて?この子が怯えちゃうから」

美琴のお願いに頷いた当麻だが、彼女が要求した背中ではなく、その頭の上に右手をぽんっと乗せる。
彼女は少し驚いた様だったが、御坂妹からいぬを受け取った為か、何も言わなかった。

「もふもふしてて気持ちいい…あ~幸せー…」
「…」

当麻に頭を撫でられながら猫を抱っこする美琴はふにゃふにゃになった顔でいぬに頬ずりを始める。するといぬが『みゃー』と鳴く。
それを聞いた美琴は『ほふっ…』という声と共により一層顔を緩める。幸せオーラを漂わせる美琴と頭を撫でながら見守る当麻。しかし…

(…これは正直面白くありませんね、とミサカはお姉様に嫉妬の炎を燃やします。
 …物は試しです、とミサカは咄嗟に思いついたプランを即実行してみます)

当麻はともかく、いぬまで独占され一人になってしまった御坂妹は、寂しさと共に目の前で展開される幸せオーラの発生源に嫉妬する。
その思考が1つの答えを瞬時に弾き出と、彼女はスッと当麻の左隣に立ち、こっそっと耳打ちする。

(お義兄様、ミサカは面白くないのでお姉様の真似をさせていただきます、とミサカは宣言します。
 声を出すと気付かれて死ぬかもしれませんので動かない方が良いです、とミサカは釘を刺しておきます)
(は?お前何言って…?…!!!!)

御坂妹は当麻の左腕にしがみつき、そのまま腕に頬ずりを始める。すると、当麻がその身を硬直させた事に気付く。
これは面白い、と考えた御坂妹は擦り寄るように身を寄せ、目を細めながら気持ちよさそうに頬ずりを続ける。
一方美琴はというといぬに夢中で全く気付いていない。
美琴がいぬの鼻をつんつんすれば御坂妹が当麻の頬をつんつんする。頭を撫でれば頭を撫でる。いぬが『みゃー』と鳴くと…

(みゃー、とミサカはいぬの鳴き真似をしてみます)

上目遣いに囁かれたその言葉に不覚にも萌えてしまった当麻は、顔を真っ赤にしてしまった。
慌てて視線を逸らす当麻だが、逸らした先で見てしまった…美琴がいぬにキスをしている所を。…という事は…

(仕方がありません、とミサカはお姉様の真似をする事にします)
(まてまて!早まるな!落ち着け御坂妹!)

慌てる当麻を他所に御坂妹は当麻の顔に近づいていく、当麻の視線は御坂妹に釘付けとなり、動く事ができない。
そしてあと数センチ、御坂妹の唇が触れる―――そう思った瞬間にスッと顔が遠ざかり、クスクスと笑い声が発せられた。

「フフ、本気ですると思いましたか?とミサカはお義兄様の慌てっぷりにほくそ笑みます」
「へ!?お、お前なぁ…マジでするかと思ったじゃねぇか…」
「そこはミサカの演技力の勝利という事ですね、とミサカは己の演技力の高さを自画自賛してみます」
「はぁ…もういいから離れてくれないか?」

御坂妹の悪戯にしてやられた当麻はげんなりしながらも御坂妹に離れるように言う。しかし、未だにその顔は赤く、心臓はバクバクと高鳴ったままだ。
だが次の瞬間、その顔は真っ青になる事となる。何故なら…

「そうね、とりあえず離れなさい。で?今度は一体何やってんのかしら」
「はっ!み、美琴!?こ、これは違うんだ!」
「へぇ…何が違うのかしら?なんか顔が真っ赤なんだけど、何で?」

声を出したことで美琴に気付かれてしまったようだ。その状況は御坂妹に抱きつかれて真っ赤になっているという最悪の状態。
必死に言い訳しようとする当麻だが、美琴の低い声で放たれた言葉と突き刺すような視線に死を覚悟する。とその時、横から更に燃料が投下される。

「幸せのおすそ分けを貰っています、とミサカは回答します。
 更に詳しく言いますと、ミサカは先程までお姉様がいぬにしていた事をお義兄様にしていただけです、とミサカは懇切丁寧に状況を説明しました」
「待て!それはちょっと違うんじゃないか!?」
「な!?ちょっと待って…っていう事は―――あ、あんた等ぁ――――!!!」

先程の行為をさらっとカミングアウトした御坂妹に慌てる当麻。
そしていぬにしていた事を思い出した美琴は真っ赤になってその怒りを爆発させる。
そんな二人の反応に満足した御坂妹はニヤリと口元を吊り上げると、

「キスはしていませんので安心してください、とミサカは重要事項を述べます。
 それでは『ごちそうさまでした』とミサカはおすそ分けのお礼を述べつつ撤退を開始します!」

サッと当麻から離れた御坂妹は流れるような動きで、美琴に抱かれているいぬの首根っこをひょいっと掴み、そのまま走り出す。

「あ!この!待て―――!!」
「待てと言われて待つミサカいません、とミサカは―――――!!」

美琴の制止を無視して御坂妹は全速力でその場を離脱する。

「~~!やられた!!当麻!」

あまりの素早さに対応が遅れてしまった美琴は当麻を睨みつけるように見て、強い口調でそう言った。
すると当麻はビシィ!っと姿勢を正す。その顔は青ざめ、若干引きつっているようにも見える。

「はい!なんでしょうか姫!?」
「言い訳は後で聞くからとにかく追っかけるわよ!折角向こうから来てくれたのにこのまま逃がしたらからかわれ損だわ!」
「え!?尾行するんですか!?」
「い・い・か・ら!早くしなさい!あんにゃろう…笑ってやがった…」

真っ赤になった顔であの一瞬、いぬを掴んだ時の妹の顔を思い出す。あの一瞬で彼女が見たのは薄ら笑みを浮かべた妹の顔だった。
あの顔を見せるときは決まって悪戯が成功した時だ。そう思うと、上手い具合に乗せられてしまった事に腹が立つ。
『ふふふ…見てなさい』っと邪悪な笑みを浮かべた美琴は、直立不動になっている当麻の右手を左手で掴むと、逃げた御坂妹の追跡を始めるのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「いたわね…あの馬鹿妹…。ふふ…」

電柱の影で美琴はそう呟いた。追跡開始から20分程たった頃、二人は御坂妹を発見することに成功する。
一旦見失ってしまった為、半ば諦めていた美琴だったが、運よく発見出来た上、妹には気付かれていないと言う事に思わず怪しげな笑みが零れる。

「美琴さーん、オーラが怖いですよー?」
「誰の所為だと思ってんのよ、ったく…毎度の事とはいえ腹立たしいわ。それに当麻も少しは抵抗しなさいよ」
「ゴメンナサイ」
「そんなに妹が好きなのかしら?」
「そんな事は無いぞ!?…ただ美琴と同じ顔で『みゃー』は正直効いた。今までのあいつ等の中で一番の破壊力だったかもしれないのは認める。
 というか、あんな不意打ち食らったらどうしようもないですよ?」

冷ややかな目で見つめる美琴に言葉を返す当麻だが、先ほどの出来事を思い出し、少しだけ赤くなる。
そんな反応を見た美琴はぷくーっと頬を膨らまし、そのまま俯いてしまった。

「み、美琴?どうした?」

突然俯いてしまった美琴に慌てる当麻。左手を自分の額に置き、しまったー、まずい事言ったかなーと思っていると美琴が顔を上げた。
が、どうも様子がおかしい。少し赤くなった顔、そして上目遣いに見つめてくる視線。なんだろう?と考えていると、彼女は思いがけない言葉を放った。

「に、にゃー」
「――――――――」

予想外の事態に当麻は完全に固まった。その瞳には真っ赤になり、ちらちらと反応を窺う美琴の姿が映っている…のかどうかは怪しい。

「ちょ、ちょっと!何とか言いなさいよ!?恥ずかしかったんだからね!?」

いつまで経っても当麻の返事が無かったのが心配になった美琴は叫びながら当麻を揺する。すると、

「――――――は!?今何が起こった!?もう一回頼む!!」
「な!?出来るわけ無いでしょこの馬鹿!」
「そこを何とか!なんか凄い光景を見てしまったような気がするんだ!!」
「~~!それよりあの子を見失っちゃうから早く尾行続けるわよ!!」

意識を取り戻した当麻はその原因=にゃーをはっきりと覚えていなかった。
ただ頭には凄いものを見た!という感覚だけが残ってしまい、もう一度見たいと懇願するが却下されてしまった為、ガックリと肩を落とす。
真っ赤になっている美琴がそっぽを向いてしまった事もあり、仕方なく御坂妹を尾行する為に歩き出すと、少し歩いた所で右手が少し強く握られた。

「…そ、そんなに言うならまたいつかやってあげるわよ…」
「!!」

俯きながら小声で囁かれたその言葉に当麻のテンションは一気に跳ね上がった。美琴の方は耳まで真っ赤になってしまっている。
先ほどまでの嫉妬は何処へやら、二人は仲良く手を繋いだまま御坂妹の尾行を開始する。っとその時、御坂妹が不意に振り向いた。

「ヤバッ!」

咄嗟に看板の陰に隠れた二人は顔を覗かせて様子を窺うと、小首を傾げながらも再び歩き出した御坂妹がいた。どうやら気付かれていないようだ。

「危な所だったわね…、でも結構スリルがあって面白いわ」
「おいおい、あんまり感心できるような事じゃないからな?」
「…今日だけ目を瞑って?ね?」

美琴のお願いにため息を付いた当麻たったが、実際彼も同じ事を思っていた。
二人は付かず離れずの距離を保ちながら尾行を続ける。暫く歩くと、当麻がいつもお世話になっているスーパーの前に到着する。
御坂妹は立ち止まると、入り口の横にいぬを下ろし、そのまま店内へ入っていった。

「どうしよう?」
「中に入ると見つかるかもしれないし、いぬがそこに居るから戻ってくるの待つか」
「そうね、…それにしても大人しいわね~あのいぬって子。あ!前足舐めてる~可愛い~」

美琴は主人の帰りを大人しく待ついぬの一挙一動に釘付けになっている。そんな彼女の緩みきった表情を見て当麻も笑みを零す。
そして10分程そうしていると、御坂妹がスーパーから出てきた。その左手には小さな袋を持っている。
彼女はしゃがみ込み、右手でいぬを抱くと立ち上がり歩き出す。っと…

「うわ!こっち来た!?」
「ど、どうする!?隠れる所は―――――こっちだ!」

御坂妹の接近に気付いた二人は電柱の影から路地の狭い通路へ素早く身を隠す。そこで御坂妹が通り過ぎるのを待つ事にするのだが…

「ふー、危ない所だった…な…?」

咄嗟に美琴の体に手を回し、路地裏に連れ込んだ当麻は自分が彼女を壁に押し付け、手を繋いだまま覆いかぶさるようにしている事に気付く。
彼女の顔との距離は10cmもなく、繋いだ手からは相手の鼓動が伝わる。それは少しずつ早く大きく脈打っていく。

「ぁぅ…」

突然の事態に顔を真っ赤に染め上げた美琴は、右手を胸の辺りできゅっと握り細い声を漏らしていた。
この後一体何をされてしまうのだろう?そんな事を考えていた美琴だったが…

「わ、悪ぃ!すぐにどくから!」
「う、うん…そ、それよりあの子はもう過ぎたのかしら?」
「そ、そうだったな。え~とあいつは~」

結局何もせずに距離を取る当麻。彼は美琴の視線から逃げるように入り口の方を見る。
すると丁度御坂妹が通過する所だった。何とか見つからずに済んだのだが、思わぬハプニングにその心臓はバクバクと高鳴り、繋がれたままの手は少し汗ばんでいる。
視線を戻すと、ちらちらとこちらを見てくる美琴と目が合った。その瞬間、彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。

(ど、どうしたらいいんだこの状況!?しかもこんな場所で!?)

なにやらもじもじしている美琴を見た当麻は、場所が場所なだけにこの空気に耐えかねていた。一旦離れて仕切り直したい所だが、
手を離せないという状況なのでそれも出来ない。無い頭をフルに活用し、打開策を考えていると―――
~♪~~♪
っと携帯電話の着信音が響き渡る。どうやら当麻の携帯電話のようだ。

(誰だか分からないがナイスタイミング!)

この妙な雰囲気をぶち壊す着信音に心の中で感謝する当麻。メロディからメールだと判断した彼はポケットから携帯電話を出すと送り主と中身を確認する。

「えーっと…お?番外個体からか、何だろう?」

空気を変える助力を得た当麻は、わざとらしくそう口に出すと内容を確認する。するとそこには…

#asciiart(){{{
 Time 2010/ ×/○□ 11:25
 From 番外個体
 Sub Re:78
 ―――――――――――――

 やっほう
 例のスーパーで豆腐と野菜が
 驚きの価格だったよ!
 豆腐は一丁40円!
 大根は一本45円!
 これは買いでしょ!
 情報のお礼は今度お姉様に内
 緒で…むふふ~
}}}

「ちょっと待てぇ!最後の一文は何だぁー!!」
「ちょっと!急に大きな声出さないでよ!それでなんて書いてあったの?」
「あ~、ああ~…うん、俺も男だ。たまには潔くいこう」
「はあ?なにワケ分かんない事言って…」

あまりの内容に思わず叫んでしまった当麻。隣で覗き込もうとする美琴を見て逃げられないと感じ、メールの中身を見せる事にする。
そして差し出された携帯電話を見た美琴は固まる。すると空気が一転、緊張したものに変わる。美琴は当麻をジト目で見ると尋問を開始する。

「何これ?」
「番外個体からのメールです。今日のスーパーの目玉商品情報」
「…この返信数の78ってのは?」
「中身を見れば分かりますが概ね激安情報です。後はたまに雑談とか近況報告みたいな感じです」
「…まあいいわ、じゃあ最後の一文についてなんだけど、私に内緒で何するつもり?」
「それは分からん。というか今までそんな話一回も無かったんだが…嘘だと思うなら履歴見てもいいぞ」
「…私に何か隠してない?やましい事は何も無いって信じてもいいの?」
「信じてもらうしかないです」

当麻を真っ直ぐ見つめて言葉を続ける美琴。当麻もまた美琴を真っ直ぐ見つめて答えていく。
すると美琴は『ふー』っと軽く息を付くと、険しくなっていた表情を元に戻す。

「分かった。じゃあ今回のは不問にしてあげるわ」
「中身は見なくて良いのか?」

当麻の言葉に対して、美琴はクスッと薄く笑みを零す。

「そんな必要ないわよ。さっきはああ言ったけど、当麻と妹達の事は信じてるから」
「そっか、ありがとな」
「というかミサカネットワーク使って激安情報のやり取りってどうなのよ?」
「俺としては凄い助かってるぞ?あいつ等がいろんな店の情報くれるから何処で何が安いか分かるんだ。おかげで家計は安泰ですよ」
「むー、私だって当麻の役に立ちたいのにー」
「美琴にはこうして側にいてくれる。それだけで十分幸せを貰ってるから、気にしなくていいんだよ」
「そう言って貰えると素直に嬉しいわ。…そんじゃ、気を取り直してあの子の追跡を再開するわよ…ってもう居ないかもしれないわね…」

当麻の言葉に少し気恥ずかしくなった美琴は繋がれた手を一度だけぎゅっと強く握ると、御坂妹の追跡を続ける事にする。
しかし、今までのやり取りで随分時間をロスしてしまった為、もう居なくなってしまったのではないかと考える。
とにかくそれを確認する為に、路地裏から顔を出してみる。すると、かなり距離は離れてしまっているが、御坂妹の後ろ姿を見つけた。
そのまま路地裏から飛び出すと、その遠ざかっていく後ろ姿を追いかけるのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


尾行を始めて1時間が過ぎ、時刻は12時になろうとしていた。

「ちょっと腹減ってきたな」
「私も。何か食べたいわね…」
「御坂妹は昼飯どうすんだろうな?やっぱり病院か?」
「ここからだと結構距離あるからそれは無いと思うけど…」

そう考える美琴は、ふと何かを思い出したかのように当麻を見つめる。

「ねえ、やっぱこういうのってアンパンと牛乳がしっくり来ると思わない?」
「お前…漫画の読みすぎだ…」
「な、なによぅ!ちょっと言ってみただけよ!」

図星だったのか美琴は少し赤くなって慌てる。そんな彼女から視線を御坂妹に移す。
すると御坂妹が街の一角にあるお店へ真っ直ぐ向かっていく所だった。

「お、なんか御坂妹に動きが…?あ、あれは!?」
「どうしたの?」

当麻の言葉に御坂妹の方を見ると、彼女が何かを買っている。
なるほど、当麻が驚くのも頷けると美琴は思った。何故なら彼女が買っているのは例の2000円もするホットドッグだったからだ。

「つか、あの子の手震えてないかしら?どうしたのかな?」
「そりゃ2000円のホットドッグなんてどこぞの上流階級のお嬢様しか食べれませんからね。貧乏人が無理して買えば手くらい震えますよ」
「いや、無理して買う理由が分かんないんだけど…」
「それもそうか…御坂妹の奴もお金持ちだったのかーショックだ…」
「何で当麻が落ち込むのよ。んで、どうする?私達も食べようか?」
「へ?何を?」
「ホットドッグよ。あの子はあっちのベンチに座って食べてるみたいだから今の内に買って、見やすい位置に行きましょ?
 ちゃんと奢ってあげるから心配しなくて良いわよ?あ、遠慮もしなくて良いからね。今日は無理やり付き合わせちゃってるからさ」
「まあ俺も結構楽しめてるから無理やりって事は無いけど、今日は美琴たんの言葉に甘えようかな」
「美琴たん言うな、んじゃ早速買いに行くわよ」

見つからないうちに…といった感じでサッとお店に近づく。
手早く注文を済ませた美琴は右手で器用に財布からお金を取り出すと、商品を当麻に持たせる。
そして道路を挟んで反対側のベンチに座っている御坂妹を見やすい位置へと移動する。

「ん~、座れると良いんだけどさすがに無理ね」
「仕方ないな、っと悪い、左手じゃ上手く取り出せないから頼むわ」
「しょうがないわね~、はい、どうぞ」
「さんきゅー、うん、やっぱ美味いわこれ…」

美琴からホットドッグを受け取った当麻は早速一口かじる。そして涙目…とまではいかないが、歓喜の声を漏らしている。

「普通でしょ?…ん~あの子が持ってた買い物袋の中身っていぬの餌っぽいんだけど、当麻はどう思う?」

普段余程良い物を口にしているのか大げさねと美琴は呟く。
そして妹を見ると何やら買い物袋から缶詰っぽい物を出している所だった。はっきりと見えなかった為、当麻に問いかけると、

「すまん、ちょっと飲み物取ってくれないか?」

自分の話を完全に無視した言葉が返ってきた。

「人の話を聞け!全く…」

その態度に文句を言いながらもドリンクのカップにストローを挿した美琴。
当麻の手が塞がっているため、飲ませてあげようと考えて、カップを近づける。その時、通りに男の声が響き渡る。

「引ったくりだ――!誰か捕まえてくれ―――!!」
「…当麻!」
「ああ!」

通りの反対側、御坂妹が座っているベンチの左側20m程の所に逃げる男の姿が目に入る、二人は言葉を掛け合い動き出そうとする。が、既に動いている者がいた。
それは自分達が今まで尾行していた人物。のんびりとした雰囲気を放っていた彼女がいつの間にか犯人の前に飛び出していた。
彼女は持っていたドリンクのカップを男に投げつける。すると男は顔を守るべく左手を盾にする。
御坂妹は相手の動きを見て能力者ではないと判断したのか、男に向かって走り出し、一気にその距離を詰める。
カップから飛び出した液体が男の左手に掛かると、御坂妹は男が怯んだその一瞬の隙を突いて姿勢を低くし、すれ違いざまに右の拳を男の腹に叩き込む。
男はビクン!と一度大きく跳ねるとそのままその場に倒れ、御坂妹はふぅっと息を付くと、倒れた男を見下ろしている。
その一部始終を見ていた二人は、御坂妹の鮮やかな動きに驚いていた。

「おー、御坂妹の奴すげぇな。一瞬の出来事ってこういうのを言うんだな。それにしても腹への一撃で落とすってどんな威力だよ…」
「動きに迷いも無駄も無かったわね。それとあのパンチだけど、電撃入りだと思う」
「うへぇ…相手大丈夫かよ…」
「私の電撃に比べたら可愛いもんよ。私だったら槍で打ち抜いてたわ」
「それも怖いな…、あれ?でもそれだったら何で最初から電撃使わなかったんだろうな?」
「さあ…大々的に能力を使う所を見られたくなかったとか?ん~こればっかりは本人に聞かないと分からないわ」
「お?御坂妹の周りに人が集まってきたな」
「当然でしょ?あの子はひったくり犯を捕まえた本人なんだから。…って、なんか困ってるような顔してるわね。 
 あ、逃げた…全くあの子は…もうちょっと愛想よくしてあげても良いのに…」

男を倒した御坂妹は投げつけたカップを拾いゴミ箱に捨てていた。そこに被害者の女性や協力者や野次馬やらが集まり、女性からは頭を下げられている。
礼には及ばないと言った様子で両手で頭を上げるように促す彼女だったが、
人が集まりすぎてしまったためか、ベンチにいるいぬと袋を手に取るとそのまま走り去ってしまった。
残された人たちは突然逃げ出した彼女に呆然としていたが、風紀委員が到着すると同時に野次馬は蜘蛛の子を散らすように去り、通りはいつもの風景に戻っていった。

「げ、あれは黒子…当麻、逃げるわよ」
「確かにあいつに見つかると色々面倒だ!それに御坂妹も追わないとな!」
「はっ!?そうだった!ってかいつの間にか当麻もノリノリじゃない!」

風紀委員の中に白井黒子の姿を確認してしまった二人は颯爽とその場を後にし、走り去った御坂妹を追いかける。
程無くしてターゲットを見つけた二人は、その後も街中を歩き回り、
風紀委員顔負けの治安活動や困った人を助けるといった御坂妹姿を見て、感心しつつも尾行を続けていく。
そして午後3時を回り、公園の近くまで戻ってきた御坂妹はおやつの時間だと言わんばかりにクレープを買い、公園に向かって歩いていく。
その姿背中は時折立ち止まり、手を動かしている。どうやら歩きながら食べているようだ。

「うー、ねえ当麻」
「はいはい、何にする?」
「さっすが!分かってんじゃない!」
「あれだけ物欲しそうな目してたら誰でも分かるって。ほら、早くしないと見失うぞ?」
「えーっと、じゃあね~…」

美琴の様子からその心中を読み取った当麻は彼女を促す。
すると彼女は待ってましたと言わんばかりにクレープを買い始める。そして、当麻にもクレープを強引に買わせ、御坂妹の後に続いて公園内に入っていく。
御坂妹は公園内のベンチに腰掛けると、いぬをベンチの上に降ろし、殆ど減っていないクレープを食べ始めた。
二人は御坂妹から10m程の距離にある茂みの中から顔を出して様子を窺っていた。

「ちょっと遠いわね…それに横からだから表情が見えづらいわ…」
「他にいい場所無いからな…正面だと絶対見つかっちまうし…」
「それにしても、さっきも思ったんだけど、あの子食べるの遅いわね。半分も減ってないじゃない…」
「んむ?ふぉふふぁ?(ん?そうか?)」
「行儀悪いから食べながら喋らないの。それよりそっちのちょっと貰っていい?」
「ん、ほれ。あ~ん」
「ちょ、ばか…そんなこと言わなくてもいいから…」

当麻のあ~んと言う単語にちょっぴり恥ずかしくなった美琴は、ごにゃごにょ言いつつも差し出されたチョコクレープをぱくっと食べる。

「ん、おいし。それじゃあ今度はこっちの番ね!はい、あ~~ん」
「お、おう…」

満面の笑みでいちごクレープを差し出す美琴。その仕草、言動にドキっとした当麻が一口食べようと顔を近づけた時…
『ガサガサ!』という音が聞こえた。それに驚いた二人は慌てて音のした方を見る。すると…
「みゃー」という鳴き声が聞こえてきた。どうやら猫だったようだ。その事に二人は胸を撫で下ろす。
美琴は改めてあーんを実行しようとしたのだが、当麻の頬にクリームが付いてしまっていることに気付く。どうやら先程驚いたときに付いてしまったようだ。

(えーと、単純に拭き取るべきなんだけど、手は塞がってるし、拭く物も無いわね。
 …………えーっと?これってチャンス?いや、でもさすがにそれは…普通ここは指で掬って舐め取るのがセオリー…なんだけど…よし!)

なにやら考え込んだ美琴は、1つの答えを出す。そして意を決すると当麻に少しずつ近づく。

「当麻、頬にクリームが付いてるから取ってあげる。そのまま動かないでね」
「!」

瞬間、美琴はスッと当麻の顔に自分の顔を寄せ、頬に付いたクリームをペロッと舐め取る。
するとその感触に気付き、美琴の方を向いた当麻と目が合う。そして二人は揃って顔を真っ赤にさせると…

「な、何をしているのですか美琴サン!?」
「だ、だって手塞がってるし他に方法無かったし…それに…ちょっとやってみたかったし…」
「…超恥ずかしいのですが…」
「…嫌だった?」
「嬉しいのですが、あまり精神衛生上よろしくないので程々にしてください」
「私も自分でやってみて恥ずかしくて死にそうだからそうするわ。でも、美味しかったわよ」
「ぶふー!な、なんつー事言い出すんだ!」

美琴の発言に驚いた当麻は口に含んでいたクレープを噴出してしまった。

「へ!?ち、違う違う!美味しかったのはクリーム!勘違いしないでよね!?」
「あ、ああ…そっちか…びっくりした…」

先ほどの行為ですっかりテンパっていた美琴は自分の言った事を理解し、慌てて誤解を解く。
当麻も自分が勘違した事を理解し、ほっと胸を撫で下ろすが、勘違いするような言い方すんなよ…と内心で突っ込むのであった。
そして気恥ずかしいおやつタイムが終了すると、改めて御坂妹の様子を窺う。すると猫じゃらしのような物でいぬと遊んでいる所だった。
左右に走り回り、ピョンピョン飛び跳ねるいぬだったが、暫く遊んでいると疲れたのか御坂妹の膝の上に乗って丸くなり、そのまま寝てしまったようだ。
そんないぬを優しく撫でる御坂妹の様子を微笑ましく見つめる二人だったのだが…

「あの子はいつもこんな事をしてたのかな…」
「…」
「ごめん、あの子に謝ってくるね。仕返しなんて考えてた私が馬鹿だったわ」
「…だな、俺も一緒に行く」

二人は尾行中に見てきた御坂妹の行動やいぬを見つめるその優しげな表情に罪悪感を感じ、尾行した事を打ち明けて、謝罪する事を決意する。
ガサガサと茂みの中から出ると、そのまま御坂妹の元に歩いて行く。そして目の前に立つと深々と頭を下げる。

「ごめんね、今朝あんたと別れてからずっと後付けてたの」
「悪かった、御坂妹」

頭を下げたまま平謝りする二人。この後何を言われるか分からない、何を言われてもおかしくは無いと不安になっていると…

「…ミサカを尾行して何が面白いのですか?とミサカは怒りを露にします」
「ご、ごめん。いつもからかわれてばっかりだから…それで…」
「そうですか、お姉様はミサカを尾行して弱みを握ろうと考えていたのすね、とミサカはお姉様の狙いを予測しつつ睨みつけます。
 それでお義兄様も一緒になって面白がっていたのですか?とミサカは問いかけます」
「…すまん」
「待って!当麻は止めようとしてくれたの!悪いのは私だから当麻を怒らないで!」
「いや、実際俺も楽しんでたし、美琴だけの所為じゃないから。怒るなら一緒に怒ってくれ」
「目の前で庇い合いですか…、とミサカは嘆息します」

あまりにも冷たい妹の視線と態度に美琴は涙目になり肩を震わせている。そんな彼女の盾になるように当麻は少しだけ前に出る。
すると御坂妹は先ほどまでの険しい表情をスッと緩めると、口調を先程より柔らかくした。…いや、ニヤリと怪しい笑みを浮かべている。

「では、今日は楽しめましたか?とミサカはお二人に問いかけます。
 とは言ってもお二人がミサカを尾行しながら楽しんでいたのは知っていましたが、とミサカは重大な事実を打ち明けます」
「…?」
「どういう事だ?」

先程と打って変わって怪しげな笑みを浮かべるその姿に二人は状況が理解できずにいる。
そんな二人をあざ笑うかのように御坂妹は言葉を続ける。

「ミサカは始めから気付いてました、とミサカは報告します。
 その上でわざと尾行させてお二人の様子を窺いながらデートのお手伝いをしていたのです、とミサカは懇切丁寧に説明しました」
「…え?」

目を点にしている美琴を見た御坂妹はもうこれ以上無いというくらいニヤニヤした笑みを浮かべると、

「ミサカとしては先程の茂みの中での痴態(頬舐め)は正直驚きましたが、とミサカはお姉様の大胆さに頬を赤らめます」
「ちょ、ちょっと!何でそんな事知ってるのよ!?」
「フフ…どうやらお二人は気付いていないようですね、とミサカは勝ち誇ります。
 ではあちらをご覧ください、とミサカは自販機を指差します」

二人は御坂妹が指差した方向を見るとそこは先程自分達がいた茂みのすぐ横だった。
そしてそこにある自販機の後ろから顔を半分だけ出した御坂妹(10039号)がじぃ…とこちらを見ているのが見えた。

「み、御坂妹!?まさか俺達つけられてた!?」
「嘘…全然気付かなかったわ…。!!もしかしてさっきの猫の鳴き声って!?」
「あのミサカ(10039号)です、とミサカは報告します。では今度はあちらをご覧ください、とミサカは更に指差します」

今度は高層ビルの屋上を指差す御坂妹。するとそこから強烈な電撃が発せられた。

「あの力…番外個体!?」
「はい、とミサカは返答します」
「なんだってあんな所に?」
「10039号は集音、番外個体は双眼鏡で映像の入手と担当があったためです、とミサカは種明かしをします」

つまり、声と映像の入手方法が別々であっても彼女達にはミサカネットワークで記憶の共有をしているので頭の中で合成してしまえば良いという事だ。
完全に予想外の事態、そして事の詳細を聞いた美琴はその場に力なく座り込む。

「…は、はは…はぁ~…よ、良かったぁ…嫌われたのかと思ったわよぉ~」
「申し訳ありません。少々悪戯が過ぎたようです、とミサカは先程の演出を謝罪します」

尾行した二人が謝罪しに来ることを10039号の情報から知っていた御坂妹は、ちょっとした意地悪をしてみたかったようだ。
だがその裏で、こういう流れにすることで自分達の尾行を有耶無耶にしようというしたたかな考えがあったりもする。

「なあ御坂妹、一体いつ気付いたんだ?」
「朝、お二人が看板の裏に隠れたときにお義兄様の髪の毛が見えましたので、とミサカは返答します」
「うぅ…もしかして全部見てたの…?」
「ええ、全部見ていました、とミサカはミサカネットワークに配信された痴態を思い出します。フフ…フフフ…」
「はぅぅ…」

尾行中のやり取りを全部見られていた上、妹達全員に知られたという事実に真っ赤になって小さくなってしまった美琴。
だが、元々自分の所為というのもあって怒ることもできない。それを知ってか知らずか…御坂妹が畳み掛ける。

「お姉様が能力を封じたおかげで動きやすかったですよ、とミサカは追い討ちをかけてみます」
「くぅぅ…」

自分の能力を封じることで尾行に気付かれないようにしていた事が逆手に取られてしまうなんて考えていなかった。
完全敗北を喫した美琴はガックリとうな垂れるが、「はは…」と小さく笑うと吹っ切れたかのように顔を上げる。

「あ~もう!あんた達には敵わないわ!ねえ、この際だからいくつか聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「なんでしょう?とミサカはお姉様の質問事項を待ちます」
「えっと、私達があんたを見失わなかったのって、私達が来るのを待ってたの?」
「はい、番外個体の情報を元に距離を把握していましたので、とミサカは回答します」
「なるほどね、じゃあ次だけど、ホットドッグ買った時に手が震えてるように見えたんだけど何で?」
「…それはミサカのバイト代が大幅に消えてしまったからです…、とミサカは涙ながらに語ります」
「は?じゃあ何であそこで買ったんだ?」
「雰囲気作りという奴ですよ、とミサカは返答します。それにあの近くには他に店がありませんでしたので、とミサカは学園都市の不便さに嘆息します」
「それよりあんたバイトなんかしてたの?全然知らなかったんだけど、何してるの?」
「夜の労働です、日によって忙しさは違いますが、意外に儲かります、とミサカは答えます。
 ですが妹達が日替わりで働いているので分け前は少ないのです、とミサカは貧乏人であることを赤裸々に告白します」

いつまでも冥土返しのお世話になるのもどうかと考えた彼女達は自分の維持費を稼ぐことにしたのだが、クローンである彼女達には正規の働き口は無い。
そこで冥土返しに仕事の紹介をしてもらい、その仕事を交替でこなし、
維持費を抜いたお金を学園都市組みで均等に割って、小遣いとしていた事を説明するのだが…

「夜の労働!?あんた変なことしてないわよね!?」

美琴は細かいことを聞き流し『夜の労働』という単語に反応する。
そんな彼女の反応に呆れた御坂妹は大きくため息を付くと補足説明を始める。

「正確には昼間出来ない学園都市内の工事や修復、発電設備の替わりに電気を供給するといったような内容です、とミサカは懇切丁寧に説明しました。
 お姉様が考えているような事は無いです、とミサカはお姉様の盛大な勘違いっぷりをせせら笑います」
「そ、そうなの?私はてっきり『実験』の時みたいな事をしてるんじゃないかと思って…」
「そっちですか!とミサカは予想の遥か上空を通過したお姉様の発言に戦慄しつつも突っ込みます」
「あんたは何だと思ったのよ?」
「それは後でお義兄様にでも聞いてください、とミサカはお義兄様にパスします」
「変なところで振らないでくれますか!?それすっごい困るから!」
「それが目的ですから、とミサカはお義兄様の慌てっぷりにほくそ笑みます」
「??」

狼狽する当麻をニヤニヤ見つめる御坂妹。当麻はぬおーと唸っているが、美琴は何の事か分からずに?マークを浮かべている。
心の中で『このお子様め』と吐き捨てた御坂妹はいぬを抱きかかえると立ち上がる。すると10039号、番外固体が近づいてきた。

「ミサカの華麗な隠密スキルはどうでしたか?とミサカ10039号は己の尾行術を誇ってみます」
「ミサカもいいポジション確保の為にあちこち飛び回ったよ」

10039号は親指を立て、番外個体はVサインをもって挨拶をする。すると美琴は一気に疲れたような顔をする。

「あんた等が悪戯する時のその異常なまでの団結力には恐怖すら感じるわ…」
「…それは褒め言葉として受け取っておきましょう、とミサカ10039号は強引に褒められた事にしてみます」
「いや、どう考えても褒めてないから…というか今日はあいつ(19090号)は一緒じゃないのか?」

もしかしたらまだどこかに潜んでいるのか!?という考えに思い当たり、キョロキョロと辺りを見回す当麻。
その明らかに挙動不審な動きになってしまっている彼を見かねた番外個体が当麻に言葉をかける。

「ああ、あの個体はチェック中だからここには居ないよ、
 ミサカとそのミサカ(10032号)もこれからチェックがあるからそろそろ病院に戻る事にするよ」

そう言うと御坂妹&いぬと番外個体は「では」「じゃあねー」と別れの挨拶をすると、背を向けて歩き出す。
その場に残された当麻、美琴、ミサカ10039号は二人の背中を見送る。そして二人が視界から見えなくなった所で美琴が口を開く。

「さて、私達はどうしようか?私としてはゲーセンに行きたいんだけど」

ここまで散々弄ばれた美琴は暴れたいーというオーラを周囲に撒き散らしている。
それを当麻と10039号は敏感に感じ取る。

「俺は構わないぞ?御坂妹はどうする?」
「そうですね…お二人のお邪魔でなければご一緒します、とミサカは行きたい気持ちを押さえ気を使ってみます」
「遠慮すんなよ、御坂妹なら大歓迎だ」
「そういう事。それと覚悟しなさいよ?ゲーセンでボコボコにやり返してあげるから!!さー行くわよ!」
「…ミサカは早くも後悔しています、とミサカは…」

こうして二人の尾行劇は終わりを告げる。
結果として、『また』妹達に遊ばれてしまった二人。美琴はリベンジを宣言をすると、
10039号の腕を掴み、半ば強引に引きずりながらゲーセンへと連行していくのであった。

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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係)
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