責任とってよ
ふと上条は美琴との出会いを思い出した。
『街中で、川原でもっ、幾度となく私を弄んでくれやがったでしょうがっ!!
あんなに激しかったのに忘れたとは言わせないわよ』
8月20日
記憶喪失となった上条当麻が始めて御坂美琴と会った日だ。
確か、ジュースを飲もうとして手持ちの2千円札を自販機に突っ込んだら出てこなくなっちゃって困っていたら、
後ろから常盤台中学の制服を着た美琴に声をかけられたんだ。
最初見たとき、その年上に敬意を示さないガサツな態度から思わず、
『何だコイツ?』
と呟いたら、いきなり電撃をぶっ放してきて危うく感電死するとこだった。
さらに、自販機が金を飲み込むことを知っていたらしく、自販機のバネの緩みを利用して、
『チェイサー!!』
と突然叫んで回し蹴りを自販機にぶつけて、缶ジュースを取り出した。
そして上条の2千円が飲み込まれたことを知って、美琴は電撃を自販機にぶつけた。すると自販機はショートして大量の缶ジュースが出てきた。
警報も鳴り出したので思わず逃げ出したら、美琴も一緒についてきた。
アンタの取り分よと言われ、缶ジュースを受け取ったが、その美琴の態度がどうも馴れ馴れしかった。
どうも昔の知り合いらしいのだがお嬢様学校の制服を着ている割には、お嬢様とは言い難い感じだった。
それにどうも勝気な様子で、自分を無視すんな言わんばかりに話しかけてくるので、昔の自分とどうやら只の知り合いと言うわけでもなさそうだと感じた。
どんどん喋ってくる分には昔のことを知りやすいので止めることはなかったのだが、電撃を自由自在に放つ少女が、
『ったくアンタってば逃げ腰すぎんのよ。強いくせに弱いと思い込んでバカを見る感じ?
そんなんじゃアンタに負けた私の立つ瀬がないじゃない』
と言ったので上条はキョトンとなった。
確認を取ろうと聞き返すと、美琴は不機嫌になりこう言ったのだ。
『街中で、川原でもっ、幾度となく私を弄んでくれやがったでしょうがっ!!
あんなに激しかったのに忘れたとは言わせないわよ』
確かあの時は直後に一方通行と死闘を演じてあまり気にしていなかったのだが、
今思い返すと明らかにおかしい。
過去の上条当麻はこの御坂美琴に何をしたんだ?
(女の子が弄んだとか、あんなに激しかったとか言うということは、やっぱり、その、『若さゆえの過ち』と言うものをしてしまったんじゃないでしょうか!!??
あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!俺はなんてことをしてしまったんだ!!!
未来ある常盤台中学のエース様をキズモノにしてしまった!!!!サイテーだ、俺はサイテーな人間だ…。
口では色んな説教吐いてきたけど、もう恥ずかしすぎて誰にも顔向けできねぇ!!!
大体これからどうすればいいんだ!!?街中でも、川原でもってことは、最低でも2回はヤッちまっているじゃねーか!!!
そんな酷いことをしてしまった責任の取り方なんて、記憶に残る知識にはねえぞ!!!)
御坂美琴はいつものように上条当麻を探していた。
(アイツはいつもこの公園を通って帰ってたから、今日こそは!!)
美琴がそう思っているとベンチで頭を抱えて唸っていた上条を見つけた。
「あ、いたいた!おーい!!」
ビクッ!!と上条の体が反応して美琴の方を向いた。
(あれ?今日はやけにすばやい反応ね?いつもは無視するくせに)
「みみみみみみみ、御坂さん!!!??」
「どうしたのよアンタ?変にキョドって。だから言ってるでしょ。アンタがそんな逃げ腰じゃ好きに弄ばれた私の立場がないじゃない」
「もももも、弄んだ!!?私上条当麻は過去にそんなに御坂さんに対してヤッてしまわれたのでしょうか!!?」
「ああ、アンタ記憶喪失で覚えてないのよね。そうよ、川原でヤッた時は一晩中寝かせてくれなかったのよ?」
「ひひひひ、一晩中!!!!!!???」
「それに街中でも好きにしてくれちゃってさ。まったく、少しは責任っていうのを感じて欲しいところね」
「セキニン!!!!!???ああああああああああああもうだめだああああああ!!!!!!」
上条は絶望した。昔の、7月28日以前の自分に絶望した。頭を抱え込んで呻いた。
もうだめだ、逃げ場はない。そう悟った上条はとうとう決心した。
「御坂!!聞いてくれ。以前の俺はお前に対してあまりにも一方的にお前のことを弄んでしまった」
「え!?いいいいい、いきなり何を―――」
「いいから最後まで聞け!!御坂、いや美琴!!俺はお前のために、これから責任を果たしてやる!」
(一体なんなのよ!?いつもバカだと思ってたけど、とうとうバグっちゃったの!?!?)
美琴があまりの上条の変貌に混乱していると、上条はベンチから降りて美琴の前に跪いた。
そして美琴の手を取ると顔をじっと見据えてこう言った。
「美琴、結婚しよう。そうじゃないと俺は責任が取れない。
いつも邪険に扱って悪かったな。俺はお前を愛してる。だから、結婚しよう」
「…………………………………へ!?」
同じ頃、他の関係各所では
「はうあー!!??」
「ど、どうしたのよ五和!?」
「い、今また変な嫌な予感を感じたような……」
「五和も感じましたか…」
「女教皇様!?一体何を?」
「詳しくは分かりませんが、学園都市で不穏な動きが感じられます。今から行きましょう五和」
「はい!!もしかすると上条さんに何かあったのかもしれません!!」
「しかし女教皇様、依頼を受けた任務の方は?」
「建宮、後を頼みます。行きましょう五和」
「なんか。嫌な予感がする」
「どうしたの姫神さん?嫌な予感って?」
「わからない。けど。また上条君に何かあったのかもしれない」
「またか上条当麻!!あいつめ、どこまで上条病を広げれば気が済むのだ!!よし、姫神さん、あいつを制裁しに行きましょう!!!」
「うん。私にも出番があれば。この魔法の杖を……フフフフ」
「とうまがいつまで経っても帰ってこないから探しに行くんだよ!!」
「にゃー!」
「スフィンクスもとうまがどこにいるか探してね?」
「にゃー!!」
「にしてもさっきから変な気が流れているような感じなんだよ。もしかしたら、また私に内緒で一人で魔術師を倒しているのかもしれない…」
「にゃー…」
「そのときはおもいっきり噛みついて懲らしめてやるんだよ!!!スフィンクスも爪でひっかいていいよ」
「にゃー!!!」
「よし!じゃあまずは、公園に行ってみようかな?」
その後上条当麻に何が起こったのか、言うまでもない。