英国 ロンドン
とある大聖堂の中、その祭壇の前にただ1人、銀髪の少女がいた。
その姿は白地に金の飾り縫いをつけた修道服に身を包んでおり、ただ一心に祈り続けている。
バタン!!
扉が開く大きな音と共に、聖堂内に大きく響く声
「…○×△■#%…」
祈りの少女の耳に飛び込んできたのは、彼女には聞きなれた、懐かしい、そして愛しい声だった。
少女は思わず振り向き、その姿を認めるや声を上げて駆け寄り、そして思いっきりその胸に飛び込んだ。
「とうま!!とうまなんだね!!とうまとうまとうまぁ!!!」
息を切らせ、扉から走りこんできたのはツンツン頭の少年。名前は上条当麻。
「インデックス!!」
「とうまぁ!!無事だったんだね!!足、ちゃんとあるんだよね!!」
「…足って、こっちでも幽霊は足、無いのか?」
「とうま、感動の再会シーンで、そのセリフはどうかと思うんだよ」
とある大聖堂の中、その祭壇の前にただ1人、銀髪の少女がいた。
その姿は白地に金の飾り縫いをつけた修道服に身を包んでおり、ただ一心に祈り続けている。
バタン!!
扉が開く大きな音と共に、聖堂内に大きく響く声
「…○×△■#%…」
祈りの少女の耳に飛び込んできたのは、彼女には聞きなれた、懐かしい、そして愛しい声だった。
少女は思わず振り向き、その姿を認めるや声を上げて駆け寄り、そして思いっきりその胸に飛び込んだ。
「とうま!!とうまなんだね!!とうまとうまとうまぁ!!!」
息を切らせ、扉から走りこんできたのはツンツン頭の少年。名前は上条当麻。
「インデックス!!」
「とうまぁ!!無事だったんだね!!足、ちゃんとあるんだよね!!」
「…足って、こっちでも幽霊は足、無いのか?」
「とうま、感動の再会シーンで、そのセリフはどうかと思うんだよ」
感動の再会と、その後のやり取りも収まった後。
少年は少女に向き合い、しばらく何も言わずにもじもじしていたが、
やがて意を決したように口を開いた。
「インデックス、実は俺、お前にどうしても言わなければ…」
「待って、とうま。私は何も言わないよ」
「インデックス…」
「とうま。私は確かにとうまのことが大好きだよ。愛してるよ」
「でも私はシスターなんだよ。私が本当に愛するのはとうまだけじゃないんだよ」
その言葉に思わず動揺を見せる少年。
「私はね、私を必要とする全ての人を愛するのが願いなんだよ。だからとうまを愛しているんだよ。
そしてとうまにもとうまを必要とする人を愛してほしいんだよ」
「それは…」
「だから、とうまは短髪…みことのトコへ帰ってあげてほしいんだよ」
「インデックス…」
「気にしないで、とうま。とうまの他にも、私のこと、待ってくれている人はいるんだよ」
「え、それって…」
「ん、待って」
少女は少年を止め、少し離れた大きな柱に向かって話しかけた。
「…ステイル、男女の会話を立ち聞きするのは野暮ってもんなんだよ」
赤毛の長髪にピアスをし、目の下にバーコードを彫った一人の男がその柱の陰から姿を見せた。
「…気づいていたのか、インデックス…」
「ステイル!お前…今の聞いて…」
少女は再び少年に向き合って言葉を続ける。
「とうま。私もね、ここに帰ってきて、いろいろ知ったんだよ。もちろん記憶には無いけれど…」
「インデックス…」
「とうま、さっきも言ったよね、とうまを必要とする人を愛してあげてほしいって」
「インデックス、すまない…」
「なぜ謝るの?とうま。とうまの悪い癖だよね。そこはありがとうじゃないの?とうまは感謝の気持ちが足らないんだよ」
「え…」
「とうまのまわりには沢山の仲間がいるんだよ。いっぱい支えてくれている人がいるんだよ。どうしてそれに気づかないのかなぁ」
「うっ…」
「だからとうまはバカだと言われるんだよ。すぐ何もかも1人で背負おうとする。それはね絶対直した方がいいと思うんだよ」
「ごめ…!いや、ありがとう。インデ…え?、ん!、んグ!、」
少女は、少年の両頬をその手で挟み、唇を重ねた。
「…でもそれがいつものとうまなんだよ」
「イ…ンデックス…」
「さぁ、とうま。これでお別れじゃないんだよ。私はとうまを必要とする時は、またとうまのところへ…行くから」
「だから、みことの所へ帰ってあげるんだよ」
「…いいのか、インデックス」
「あぁっ…もうっ。とうまは女に恥をかかせるつもりなのかよ!だからとうまはバカで鈍感なんだよ!!
そんなとうまにはお仕置きが必要なんだよ!!!」
「え、あ…、インデックスさん?その歯は…もしかして…ひぃっ!?」
ガウガウガウガウガブゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
少年は少女に向き合い、しばらく何も言わずにもじもじしていたが、
やがて意を決したように口を開いた。
「インデックス、実は俺、お前にどうしても言わなければ…」
「待って、とうま。私は何も言わないよ」
「インデックス…」
「とうま。私は確かにとうまのことが大好きだよ。愛してるよ」
「でも私はシスターなんだよ。私が本当に愛するのはとうまだけじゃないんだよ」
その言葉に思わず動揺を見せる少年。
「私はね、私を必要とする全ての人を愛するのが願いなんだよ。だからとうまを愛しているんだよ。
そしてとうまにもとうまを必要とする人を愛してほしいんだよ」
「それは…」
「だから、とうまは短髪…みことのトコへ帰ってあげてほしいんだよ」
「インデックス…」
「気にしないで、とうま。とうまの他にも、私のこと、待ってくれている人はいるんだよ」
「え、それって…」
「ん、待って」
少女は少年を止め、少し離れた大きな柱に向かって話しかけた。
「…ステイル、男女の会話を立ち聞きするのは野暮ってもんなんだよ」
赤毛の長髪にピアスをし、目の下にバーコードを彫った一人の男がその柱の陰から姿を見せた。
「…気づいていたのか、インデックス…」
「ステイル!お前…今の聞いて…」
少女は再び少年に向き合って言葉を続ける。
「とうま。私もね、ここに帰ってきて、いろいろ知ったんだよ。もちろん記憶には無いけれど…」
「インデックス…」
「とうま、さっきも言ったよね、とうまを必要とする人を愛してあげてほしいって」
「インデックス、すまない…」
「なぜ謝るの?とうま。とうまの悪い癖だよね。そこはありがとうじゃないの?とうまは感謝の気持ちが足らないんだよ」
「え…」
「とうまのまわりには沢山の仲間がいるんだよ。いっぱい支えてくれている人がいるんだよ。どうしてそれに気づかないのかなぁ」
「うっ…」
「だからとうまはバカだと言われるんだよ。すぐ何もかも1人で背負おうとする。それはね絶対直した方がいいと思うんだよ」
「ごめ…!いや、ありがとう。インデ…え?、ん!、んグ!、」
少女は、少年の両頬をその手で挟み、唇を重ねた。
「…でもそれがいつものとうまなんだよ」
「イ…ンデックス…」
「さぁ、とうま。これでお別れじゃないんだよ。私はとうまを必要とする時は、またとうまのところへ…行くから」
「だから、みことの所へ帰ってあげるんだよ」
「…いいのか、インデックス」
「あぁっ…もうっ。とうまは女に恥をかかせるつもりなのかよ!だからとうまはバカで鈍感なんだよ!!
そんなとうまにはお仕置きが必要なんだよ!!!」
「え、あ…、インデックスさん?その歯は…もしかして…ひぃっ!?」
ガウガウガウガウガブゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
そうしてその後、少年は少女から離れていった…
再び無言で祭壇に向おうとする少女に向って、赤毛の男が口を開いた
「それで、よかったのか?インデックス」
少女は祭壇に向ったまま、答えた。
「いいんだよ、ステイル…」
涙交じりの声だった。
そしてじっと立ち止まったまま、2人の間に沈黙が流れる。
先に口を開いたのは少女の方。
「ステイル、さっきの話しのこと…」
男に動揺が走る。
「ありがとうなんだよ、ステイル…」
「インデックス…、お前…わかって…」
少女は涙を流しながら、男に向き合った。
「…ステイル、とうまは本当にわかっているのかな」
「何をだ…」
男はそんな少女から目が離せなかった
「帰るって意味を」
「さぁ、どうかな。でも、多分…大丈夫だと信じてやろう」
そのままお互いの目を見つめ続けていた。
「それで、よかったのか?インデックス」
少女は祭壇に向ったまま、答えた。
「いいんだよ、ステイル…」
涙交じりの声だった。
そしてじっと立ち止まったまま、2人の間に沈黙が流れる。
先に口を開いたのは少女の方。
「ステイル、さっきの話しのこと…」
男に動揺が走る。
「ありがとうなんだよ、ステイル…」
「インデックス…、お前…わかって…」
少女は涙を流しながら、男に向き合った。
「…ステイル、とうまは本当にわかっているのかな」
「何をだ…」
男はそんな少女から目が離せなかった
「帰るって意味を」
「さぁ、どうかな。でも、多分…大丈夫だと信じてやろう」
そのままお互いの目を見つめ続けていた。
日本 学園都市
宵闇が迫る、とある鉄橋に、もう一人の少女がいた。
何も言わず、ただ月をながめながらぼんやりと立っていた。
少女の名前は御坂美琴。
何も言わず、ただ月をながめながらぼんやりと立っていた。
少女の名前は御坂美琴。
そこは忘れもしないあの夏の夜、その少女が、ある少年に初めて助けを求めた場所だった。
周りの季節は既に変わり、風は冷たく、暗くなるのも早い。
澄み渡った空には、暖色と暗色のグラディエーションが滲んだように塗られていた。
橋の欄干にもたれるように佇む少女の、視線の先にあるのは、青白く輝く十六夜月。
彼女はここに来るといつも、あの時の少年、上条当麻の顔とその声を鮮明に思い出す。
自分の中の上条の顔と声が、少しでも色褪せるように思えた時、彼女は必ずここに来ていたのだった。
あの時の、どうしようもない絶望と無力感の中から、救い出してくれた上条はもう自分の横にはいない。
ただ彼が残してくれた希望と願いだけは、確かに自分の中に存在することだけが、
ともすれば崩れそうな自分の支えになっているのがわかっているからだ。
周りの季節は既に変わり、風は冷たく、暗くなるのも早い。
澄み渡った空には、暖色と暗色のグラディエーションが滲んだように塗られていた。
橋の欄干にもたれるように佇む少女の、視線の先にあるのは、青白く輝く十六夜月。
彼女はここに来るといつも、あの時の少年、上条当麻の顔とその声を鮮明に思い出す。
自分の中の上条の顔と声が、少しでも色褪せるように思えた時、彼女は必ずここに来ていたのだった。
あの時の、どうしようもない絶望と無力感の中から、救い出してくれた上条はもう自分の横にはいない。
ただ彼が残してくれた希望と願いだけは、確かに自分の中に存在することだけが、
ともすれば崩れそうな自分の支えになっているのがわかっているからだ。
たまに起きる、どうしようもなくどす黒く、重苦しいあの気持ちを除けば、彼女は周囲が心配せずにすむほど、
表面的には安定していた。彼女はその類まれなる精神力によって、RSPK症候群さえも押さえ込んでいたのである。
しかし、それはわずかなバランスの狂いによって、簡単に覆されかねない危うい状況でもあるのだ。
そのバランスが狂わぬよう、彼女は定期的にここに来ていたのだった。
しかし高位能力者とはいえ、まだ10代半ばの少女である。
このような日が続けば、いつかは破綻することが目に見えているにも関わらず、だ。
表面的には安定していた。彼女はその類まれなる精神力によって、RSPK症候群さえも押さえ込んでいたのである。
しかし、それはわずかなバランスの狂いによって、簡単に覆されかねない危うい状況でもあるのだ。
そのバランスが狂わぬよう、彼女は定期的にここに来ていたのだった。
しかし高位能力者とはいえ、まだ10代半ばの少女である。
このような日が続けば、いつかは破綻することが目に見えているにも関わらず、だ。
御坂美琴はいつものように、上条当麻の顔と声を思い出すように、月の光を浴びていた。
だがその日に限り、上条の顔も、声も、彼女の中に浮かんではこなかった。
しかし不思議と焦りも不安感もない。そのような時に沸き起こる、どす黒く、重苦しいどうしようもない気持ちさえ出てこない。
美琴は心静かに、全てが終わった時のような何か清々しい気持ちでいた。
何かに誘われるよう、橋の向こうへ続く道の先に視線をを向けた時、そこに人影を見つけた。
その瞬間、美琴は大きな衝撃を受けた。胸の鼓動は早くなり、目は大きく見開き、口の中がからからに乾く。
月の明かりに照らされたその人影は徐々に近づき大きくなる。
永遠にも思われた時が過ぎ、その人影は美琴の傍に立つと、口を開いた。
「ただいま、美琴…」
青白い月の光を浴びているその顔は、紛れもない上条当麻その人だった。
「お…か…え…り…、と……う……」
その瞬間、美琴の視界は、あたかも水面下にあるがごとく、なにもかも滲んで見えなくなった。
声にならない声を出しながら、彼女は上条当麻の胸に飛び込んでいった…
だがその日に限り、上条の顔も、声も、彼女の中に浮かんではこなかった。
しかし不思議と焦りも不安感もない。そのような時に沸き起こる、どす黒く、重苦しいどうしようもない気持ちさえ出てこない。
美琴は心静かに、全てが終わった時のような何か清々しい気持ちでいた。
何かに誘われるよう、橋の向こうへ続く道の先に視線をを向けた時、そこに人影を見つけた。
その瞬間、美琴は大きな衝撃を受けた。胸の鼓動は早くなり、目は大きく見開き、口の中がからからに乾く。
月の明かりに照らされたその人影は徐々に近づき大きくなる。
永遠にも思われた時が過ぎ、その人影は美琴の傍に立つと、口を開いた。
「ただいま、美琴…」
青白い月の光を浴びているその顔は、紛れもない上条当麻その人だった。
「お…か…え…り…、と……う……」
その瞬間、美琴の視界は、あたかも水面下にあるがごとく、なにもかも滲んで見えなくなった。
声にならない声を出しながら、彼女は上条当麻の胸に飛び込んでいった…