とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 再会



 何をしてるのだろうか。

 自分でもよく分からなかった。

 今まで何をしてきたのかも、ここが何処なのかも、自分が何者なのかも。

 それさえよく分からないような状態だった。

 フラフラと、目的もなく歩いていた。

 ただひたすらに、何かを求めるように。

 いつの間にか一緒にいた白いシスターとも、喋ることはなかった。

 今まで会うたびに何かと言い合っていた気はするが、そんな事はどうでもよかった。

 なんとなく、他人のような気がしなかった。

 彼女も自分と同じなのだろう。

 同情するわけじゃないけど。

 仲間意識が芽生えたわけじゃないけど。

 二人で、ふらふらとしていたときだった。

 ちょうど、日付も分からなくなったくらいだった。

 ふと、視界に一つの影が飛び込んでくる。

 まるで何かに操られるようにして、私は顔を上げる。

 人とぶつかっても、声を掛けられても、気にしなかったというのに。

「よう……久しぶり」

 そんな声が聞こえた。

 軽い声だった。

 馴れ馴れしい声だった。

 そして―――。

 聞きたくてたまらない声だった。

「心配かけたな」

 自分の頬に、何かが流れるのを感じた。

 鼻をすする音が聞こえて、自分が泣いているのだと気づく。

 もう涙など枯れ果てたと思っていたのに。

 ふと、隣を見る。

 身体を震わせ、顔をくしゃくしゃにした女の子と目があう。

 良く分からない感情の渦に戸惑うような、そんな顔をしていた。

 多分、私も同じような顔をしているだろう。

「え、ちょ、だ、だいじょうぶでせうか?」

 間抜けな声が聞こえた頃。私とあの子は、目の前の影に向かって飛んでいた。

 もう泣くことなんてないと思っていた。

 もう声なんて出ないと思っていた。

 もう喜ぶことなんてないと思っていた。

 もう嬉しいことなんてないと思っていた。

 もう―――笑うことなんてないと思っていた。

「え、ええ!?」

 三人で地面を転がる。

 恥も外聞もプライドも、そんなものはどうでもよかった。

 止めどなく溢れる感情に身を任せる。

 何も言えなかった。

 ただひたすらに、嗚咽するだけだった。

 白いあの子と一緒に、生まれたての子供のように、ただ泣くだけしか出来なかった。

「…………ごめんな」

 ぽんと、頭の上に手が乗せられるのを感じた。

「ただいま」

 その声に、答えられなかったけど。

 隣にいるあの子も何も言えそうになかったけど。


 おかえり。


 と、それだけ。

 ただ一言だけを胸に秘めて。

 すぐ近くに感じるアイツの身体を思い切り抱きしめた。


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