狙われたカップル
その日の夜、絹旗はアイテムがいるホテルに戻った。絹旗の姿を真っ先に見つけたのは麦野。
当然麦野は本日絹旗が得た情報を求めようと近づくが・・・
「あっ、絹はt・・・」
「お!!絹旗おかえりー!!」
麦野を遮って前に出てきたのは浜面だった。
「悪い麦野。俺絹旗と大事な話があるから先に絹旗を借りるぜ?」
見事なスピードで絹旗を別部屋に連れて行く浜面を見て麦野はポカーンとしかできなかった。
「・・・・・まぁ、いっか。楽しみは後にとっておくものだしね」
浜面が絹旗を連れて行った部屋には滝壺もいた。絹旗はこの2人が何を言いたいのかすぐにわかった。
「絹旗、上条のことを調べたんだろ?」
「ええ・・・」
「その反応はまさか・・・」
「その超まさかです。超電磁砲のこと、2人は超知っていたんですね?」
「隠していたつもりではないんだが俺も麦野がそうだってことさっき知って・・・」
「私は麦野にわかった事をそのまま超伝えます」
「おい!それはヤバイだろ?アイツ今度こそ超電磁砲の事殺すぞ?」
「それでも構いません。私が麦野なら超殺しに行くでしょう」
「え?何かあったのか?」
「それはもう・・・声しか聞きませんでしたが超興味ない私でも超腹が立ちました」
「どんな事があったんだ?」
「浜面と滝壺にはまだ超早い事です。では私は麦野の所へ・・・」
マズイ。このままでは超マズイ。浜面は直感した。別に超電磁砲がどうなってもいいがあの男は別だ。
あの男は自分を、世界を救ってくれた男。そいつを何故か見捨てることができなかった。
でも解決策が浮かばない。麦野は手段を選ばずおの男に近づくだろう。もしかしたら超電磁砲を・・・
それだけはさせたくない!でもどうすれば・・・・
(そうだ!!!)
浜面の逆転の発想が浮かんだ。
「絹旗、お前は麦野に報告しないでいい」
「浜面に口出しをする資格は超ありません。これは麦野が行動を取ることなので」
「そうだ。だから報告しないでいい。俺に任せてくれ」
「・・・・・?」
それだけ言い残すと浜面は麦野の部屋に入って行った。滝壺と絹旗もこっそりとそれに続く。
部屋に入ると麦野は相変わらずボーっとしていた。
「麦野、聞きたいことがある」
「ん?何だよ」
「お前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上条に惚れただろ」
その瞬間麦野の蹴りが浜面の腹にヒットした。
「ぐぼぁ!!」
「本当に浜面は私に殺されたいようだね・・・」
いつもの死を恐れてしまう言葉。だがその言葉にはいつもの威圧感がない。浜面の言葉に
麦野が耳まで赤くしていた。
「へっ、顔は正直みたいだぞ麦野?」
「ば!・・・違う、さっき酒を少し飲んだから・・・」
「・・・にしては空き缶もグラスもボトルも見当たらないな、この部屋」
「・・・・殺す」
「だぁーー!!待て!!俺はお前を冷やかすつもりは全くない!少しアドバイスをしてあげようと思っただけだ!!」
「アドバイスだぁ?浜面がこの私に?」
「そうだ。俺はお前より上条のことを知っているんだぜ?」
「・・・・・聞くだけ聞いてやんよ」
「まず・・・そうだな。あいつは・・・バカだ」
「・・・・・・・・は?」
「そう、上条はバカなんだ!だから安直な作戦や行動より直球アピールじゃないとダメなんだよ!」
「どういうことだ?」
「お前、絹旗に上条のこと調べさせただろ?それじゃダメなんだよ。裏でコソコソ行動を取るよりも
バカなアイツには直接ハッキリと言わないとお前の気持ちには気付いてくれないぞ!?それに
お前はレベル5の第4位の前に一人の・・・・・・女の子だから」
「・・・・・・・・・・・・・ふん」
「だからお前の口から直接伝えないといけないぞ?能力で思いを伝えるとかいうのはナシだからな?
アイツも一応無能力者なんだから」
「うるせえなぁ。浜面もあの男みたいに説教まがいな事してんじゃねぇよ」
「俺だって無能力者だ」
「その私を何回も打ち負かしたのによく言うよ・・・」
「へっ・・・・・・・・」
「んじゃ、早速明日から行動しちゃおっかな~。あ、浜面には悪いけど絹旗の情報は少しだけもらうから」
「え・・・?」
「絹旗―!どうせ聞き耳立ててんだろ!?上条が通っている学校教えてよー」
「そ、それだけでいいのか麦野・・・」
「あん?確実に会うための情報だけでいいさ。それに浜面がさっき言ってたじゃん」
「・・・・・・・そか、頑張れよ」
ここで初めて浜面は自分の行動を後悔した。はっきり言って自分が麦野にこれから取らせる行動は
「当たって砕けろ」だ。麦野は上条が超電磁砲と付き合っていることは知らない。
だけど自分たちだけが砕けるとわかっている結末なのに背中を押すという人道的に反していると思った。
でもこれも麦野の為。もっと麦野が素晴らしい能力者、人間、いや、一人の女性になってほしいという
自分のエゴだけが浜面の頭の中を支配してしまっていた。
翌日
毎朝途中まで上条と登校する美琴。待ち合わせはいつもの公園。いつもの癖で時間の30分前には
到着しているのだが、珍しく公園に人影が見えた。
もちろん相手は上条当麻・・・ではない。レベル5の第4位の麦野だった。
第4位は美琴御用達の自販機に体を預けて誰かを待っているような様子だ。
(何であの人がここに・・・)
美琴が思い返したのは上条から教えてもらった先日の夜の出来事・・・
もしかしたら当麻を狙っている?このままだと当麻が危ない。そう思った美琴は咄嗟に上条にメールを送る。
『今日は待ち合わせて学校に行くのやめよう!公園は今日危ないと思う!』
自分でもなんて意味深なメールだろうと思ったがそこまで考えきれなかった。だが上条からすぐ返信が来た。
『あと30歩程度で着く距離ですよ?』
ということはもう・・・
いつも登場してくる所を見ると・・・ちょうど現れてきた。終わった。美琴はそう思った。
美琴しかいないだろうと警戒心ゼロの上条。麦野の存在には全く気付かずあくびをしながら
公園に入ってくるのが見えた。
麦野が上条の姿を見つけると臨戦態勢を取るのが見えた。美琴はいつでも飛び出せるように準備する。
上条は公園の中をキョロキョロと見渡す。「あれ?美琴は?」というような顔をしながら。
すると視界に一人の女性が目に入る。
「あれ?お前は・・・」
「この前のことを謝りたくて色々調べさせてもらったんだよ、すまなかった」
「いや、いいんだ。俺もつい熱くなってしまって・・・」
「アンタ、なかなか男らしい所があるのね?浜面に聞いたよ。無能力者なんですって?」
「アイツのほうが男気あると思うけどな。ていうかそれを言うためだけにこんな早くから待っていたのか?」
「いや、ち、違う!もっと別の用事があって・・・・・////」
「・・・・?」
この人妙に顔赤いな~と思いながら次の言葉を待つ上条。美琴以外の女性にはまだまだ鈍いのだ。
「あー!!ここで話すのはなんだからお茶するかこの野郎!!」
「はい?」
一瞬の静寂。上条の目の前の女性は茹ダコのように赤くなっていた。
「あ・・・あ・・・だ、だから・・・どっか行こうって言ってんだよ!!ほら、行くよ!」
「ておい!俺はこれから学校・・・美琴が・・・」
「どこがいい?朝からステーキってのもいいねぇ~」
「聞いてね~~~!!!」
(あんの第4位~~・・・私がいるってのに当麻に手を出すなんていい度胸じゃない・・・
ていうか当麻も何?悪くない顔しちゃってさ。こうなったらとことん私が当麻にふさわしい女
ということを証明してやろうじゃない)
美琴はダッシュかつこっそりと2人の後をつけた。
一方、
「麦野にしては超頑張りましたけどタイミングってのが超悪かったですね」
「そして超電磁砲が追いかけて行った・・・これは・・・」
「滝壺、今超電磁砲怒ってたよな?」
「多分。これから血が流れる」
「私はこっちのほうが超燃えますね」
「・・・・平和的に解決できないのか」
「さあ、何が食べたい?」
「いや、学校に行かないといけないのですが・・・」
麦野御用達のお店に入り、麦野はルンルンと楽しそうだが上条はそうでもない。
「私はこの鮭弁がお勧めだけどぉ~?」
「あの、学校・・・」
「あん?この時間ならもうとっくに遅刻決定だろ?ほら、気にせず何でも選んで」
「・・・・・・・不幸だ」
上条は根負けして麦野がゴリ押しする鮭弁を頼むことに。しかしこの光景を誰かに見られていたら?
土御門、青髪、吹寄、他のクラスメイト、小萌先生、そして美琴。絶対にバレてはいけない気がしてならなかった。
「どうした?顔が青いよ?」
ダラダラと冷や汗をかきながら考えている上条を見て麦野が気を配る。
「あ、いや・・・ちょっと体調悪いみたいで。熱あるかもしれないから帰るわ」
「んん~?どれどれ?」
麦野は自分のおでこと上条のおでこを合わせた。
「っ!!!!!////」
「ん~熱はないみたいだぞ?」
「いや、そう、腹が痛いんだ!上条さんはとてもではないが鮭弁を食べる腹じゃないんだよ!あはは・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ?」
麦野が固まってジッとしている。というより睨んでいる。
「あの~・・・不謹慎な発言をしたなら謝ります・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
だが麦野は微動だにしない。上条を睨みつけていると思っていたが視線の先は上条の頭の上、
上条の後ろにいつの間にか立っている人物のようだ。上条が振り返ると一番恐れていた人物がいた。
「おはよう当麻。楽しそうね?」
ジッと観察していたが我慢ならず飛び出して来た美琴がバチバチと電気を鳴らしながら立っていた。
「な・・・美・・・・・琴?何故ここに?」
「アンタはた~っぷり話したいことあるから後でね。その前に・・・そこの泥棒猫!!」
美琴がビシ!!と麦野に指をさす。どこからかゴングが鳴る音が聞こえてきた。
「ああ?誰が泥棒猫だって?」
「アンタよアンタ!!私の当麻に手を出すのはやめてもらえるかしら?」
「あぁ?誰の当麻だってぇ?寝言は寝て言え小娘が」
「あ~はいはい。それじゃおでこをくっつけあうよりももっと証拠になる所を見せてあげる」
すると美琴は上条の肩に顔を置いて
「あむっ」
「ひっ・・・・・・・・・・」
上条の耳を甘噛みした。
「ふん!こ・・・これでどう?私たちが付き合っているってことよ~くおわかり?」
「あはははは!第3位、アンタのほうが顔真っ赤だっての!!」
「そ、そんなことにゃい!!」
「ほらお兄さん、こんな子供といるより大人な私といるほうが楽しいぜ~?夜もコイツより楽しませる自身はあるよ~?」
「ちょ・・・2人共、ここお店です。ちょっと話が卑猥ですことよ?」
「何当麻、私の体あれだけ楽しんでいるくせにその言い方は何?」
「う・・・・・・・・」
「ほら!これで当麻は私にメロメロだってこと証明できたわよ?諦めてさっさと帰りなさい!!」
「それじゃどうして子供ができてないのかにゃ~?所詮はごっこ遊びなんだよ!」
「ちょっと!話の内容がズレていることに気付いているの俺だけですか!?」
「・・・・・・・・・・・」
「ほぅら、何も言い返せない!早く尻尾巻いて帰れっつうの第3位が」
「・・・・・・・・・もん」
「「・・・・・・・・・・・・・・え?」」
「私・・・・・・が・・・・・・るもん」
「言いたいことがるならはっきり言えよはっきりぃ!」
「悪い美琴、俺もよく聞こえなかった」
「それじゃ後悔しないように耳の穴かっぽじって聞いてなさい」
美琴は顔を真っ赤にした常態でゆっくりと息を吸った。そして大きい声でしっかりと発言した。
ここがお店だということも忘れて。
「私のお腹の中に当麻との赤ちゃんがいるもん!!!!!!」
「・・・・・え?美・・・・・」
一番動揺したのは上条だった。