<新訳・第1章 上条当麻の決意>
(こんどは…なんだ……)
気が付くとまた、俺以外何もない空間へと辿り着いていた。
変わったことといえば、今度の夢は世界そのものがひどく漠然としていた。
変わったことといえば、今度の夢は世界そのものがひどく漠然としていた。
そして、どこか懐かしく、優しく、暖かな光が俺を包み込んでいた。
(――どうやらここが終着点のようだな…、俺が、アイツと一緒に夢見てた幻想の…)
上条はインデックスの言葉を聞いて何もかも思い出したのだ。
美琴との思い出、上条からの告白、常磐台に行った理由、風紀委員の支部に行った理由
――そして、美琴に完全に拒絶されてしまったことも。
美琴との思い出、上条からの告白、常磐台に行った理由、風紀委員の支部に行った理由
――そして、美琴に完全に拒絶されてしまったことも。
(…もう、何もかもどうでもいい)
そういう後ろ向きな思考だけが俺を支配していた。
そういう後ろ向きな思考だけが俺を支配していた。
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・‥…ーー━━☆
そんな俺の目の前に、突如として『星』が出現した。
(なっ、何だ!コレは)
『星』はお先真っ暗な上条という一隻の舟が、彼の悲願(彼岸)たる一つの港に到着したときの印、
俗に言う『澪標(みをつくし)』に到達したことを想起させるように、小さいながらも身を尽くして懸命に輝いていた…。
俗に言う『澪標(みをつくし)』に到達したことを想起させるように、小さいながらも身を尽くして懸命に輝いていた…。
――――
―――
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――
その光の元を辿っていく。
そこに現れたのは、可愛らしい少女であった。
彼女の姿形が分かる距離まで歩み、見てみると、どこか見覚えのある幼い娘であった。
そこに現れたのは、可愛らしい少女であった。
彼女の姿形が分かる距離まで歩み、見てみると、どこか見覚えのある幼い娘であった。
そして、今度ははっきりと聞いてみた。
「…こんな何もないところで、何してるんだ?」
「…お星様を描いてるのよ」
そんな返事が聞こえてきた。
彼女は先程の『星』をなぞるようにこの空間に同じものを何百個も描いていた。
彼女は先程の『星』をなぞるようにこの空間に同じものを何百個も描いていた。
「…さっき泣いていたのは、ひょっとして君だったの?」
「私は泣いてなんかいないよ、泣き虫なんて大っ嫌いよ!
…でもこれから、一杯嫌なことがあるけど…決して泣いたりなんかしないもん」
…でもこれから、一杯嫌なことがあるけど…決して泣いたりなんかしないもん」
…どうも要領を得ない。そして次の質問が頭に浮かばない。
そんな上条は、本当に楽しそうに描いている彼女の横顔をただ見つめることしかできずにいた。
そんな上条は、本当に楽しそうに描いている彼女の横顔をただ見つめることしかできずにいた。
◇
「よ~し、終わったよー。最後まで付き合ってくれてどうもありがとう!
お礼に素敵なプレゼントを送りたいな♪受け取ってくれるよね?」
「…ああいいぜ、受け取ってやろうじゃねえか」
「良かった…。それじゃいくよ、それっ!」
お礼に素敵なプレゼントを送りたいな♪受け取ってくれるよね?」
「…ああいいぜ、受け取ってやろうじゃねえか」
「良かった…。それじゃいくよ、それっ!」
彼女の合図から始まり、奇妙な姿勢で軽やかに歌って踊り出した彼女に同調するかのように、
辺り一面へと彼女の描いた星の光が、上条にとっての「常世の闇」を照らし、満ち溢れていく。
その光景はあたかも宇宙が誕生して間もないころの原始の光であった。
辺り一面へと彼女の描いた星の光が、上条にとっての「常世の闇」を照らし、満ち溢れていく。
その光景はあたかも宇宙が誕生して間もないころの原始の光であった。
(これは、スゲェな!…ファンシー系が好きだったあの御坂は、きっと大喜びだろうな)
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…やがて光は消えていき、また闇が戻ってくる。
「ん、もうおしまいか?素敵なプレゼントってのは?」
――― もう隠す必要も無いでしょう。あなたは知っているのでしょう?…私が誰なのか?
気が付けば、少女は俺の隣から消えて辺りを埋め尽くす闇に溶け込んでいる。
少女の声もいきなりどこか無機質なものに変わった。
その声にも聞き覚えがあるような気がしたが、どこで聞いたのかまではやはり分からない。
少女の声もいきなりどこか無機質なものに変わった。
その声にも聞き覚えがあるような気がしたが、どこで聞いたのかまではやはり分からない。
…でも、彼女はどうやら俺の心の奥深く、『絶対的意識』の中に常に存在するようだった。
だからその声を聞いてようやく答えが出た。
だからその声を聞いてようやく答えが出た。
「俺がさっきまで見てた夢の、そのまえ――最初に何度も夢の中に出てきた奴だろ?」
――― はい。あなたならば、その答えが返って来ると思っていました。
もうじき『私』は、「この場所」から一歩も動けなくなるでしょう。
だから私はある者の『影』として、こうして時代という境界を超えて現出しています。
もうじき『私』は、「この場所」から一歩も動けなくなるでしょう。
だから私はある者の『影』として、こうして時代という境界を超えて現出しています。
「…さっきの話もそうだが、いまいち要領を得ないんだけど…」
――― 説明している時間がありませんので、次へと進ませていただきます。
――あなたが先ほどまで忘れていて、今も後悔している『あの少女』のことについてです。
――あなたが先ほどまで忘れていて、今も後悔している『あの少女』のことについてです。
俺はその言葉に反応する。
「…御坂のことか?一体何を話そうっていうんだよ…俺はもうアイツに嫌われちまったんだぞ?
確かに後悔してもしきれないが……運命がそう決めちまったんだ」
確かに後悔してもしきれないが……運命がそう決めちまったんだ」
――― …そんなことを他でもないあなたが言わないでください。
あなたは一度、偽りの幻想から私を救ってくれたではありませんか?彼女のことは諦めてしまうのですか?
あなたは一度、偽りの幻想から私を救ってくれたではありませんか?彼女のことは諦めてしまうのですか?
「私を救ったって、…俺は夢の中でしかオマエに会ってないんだぞ?」
と、自分で言ってハッと気付いてしまう。
夢の中で彼女が身近にいる誰かのように思っているのは、他でもないこの俺だが……記憶は別なのだ。
夢の中で彼女が身近にいる誰かのように思っているのは、他でもないこの俺だが……記憶は別なのだ。
今の上条はどういうわけなのか、前世である『記憶をなくしたはずの少年』の記憶を受け継いでいる。
もしかしたら、彼の記憶の根幹に関わる身近な人なのかもしれない。
もしかしたら、彼の記憶の根幹に関わる身近な人なのかもしれない。
そして俺はある一つの結論を出した。
「ひょっとして…インデックスなのか?」
――― はい。…ですが、正確には違います。『禁書目録』は謂わば、わたしの生き写しです。
本当の私はとうの昔に、彼女を産み落として亡くなっています。
本当の私はとうの昔に、彼女を産み落として亡くなっています。
どうやら目の前にいる彼女は、自らの過去について語るらしい。
◇ ◇
彼女…名前がないので適当に付けた「エル」は、まるで神話の世界にいたかのように、こう語っていた。
「エル」は文学や天体の知識に詳しく、魔術の才能に満ち溢れた少女であった。
そして若いころの彼女には生まれも育ちも同じ、愛しい少年がいた。
その少年は卑しい身分の者であったが、大きな夢を持ち、そのためには如何なる苦労をも惜しまなかった。
やがて多くの者が彼の熱意に触れて、彼を中心として神々に対抗し、ついに彼等は勝利を収めた。
そして若いころの彼女には生まれも育ちも同じ、愛しい少年がいた。
その少年は卑しい身分の者であったが、大きな夢を持ち、そのためには如何なる苦労をも惜しまなかった。
やがて多くの者が彼の熱意に触れて、彼を中心として神々に対抗し、ついに彼等は勝利を収めた。
――だがそれは本来、存在し得ない歴史の流れだった。
躍起になった『神』は彼の拠り所であった少女「エル」を、自分の物にしようとして彼にとある試練を与えた。
彼には神様に対抗できるだけの力がなかったが…それでも、「エル」を神々からの呪縛から解き放とうとした。
しかし、あと一歩まで迫った彼が記憶を消されてしまったことで、「エル」は神様の子を産む結果となったと言う。
彼には神様に対抗できるだけの力がなかったが…それでも、「エル」を神々からの呪縛から解き放とうとした。
しかし、あと一歩まで迫った彼が記憶を消されてしまったことで、「エル」は神様の子を産む結果となったと言う。
「その子供が…インデックスってことなのか?」
あまりにも馬鹿げている話である。神様は二人の強い結びつきを、記憶を消す形で踏みにじったのである。
そしてインデックスが産まれてきて間もなく、彼女は不治の病にかかってしまう。
元から無理な出産だったのだ。「エル」自身も彼女と同様に自らの死を覚悟していた。
元から無理な出産だったのだ。「エル」自身も彼女と同様に自らの死を覚悟していた。
だが「エル」は、産まれてきた『自分』の子供の輝かしい未来を、いつまでも見ていたいという強い気持ちがあったらしい。
そこで、その時代・その分野において最も秀でた才能を持つ魔術師に頼み、困惑した魔術師も承諾する。
そして彼女の病を治す形で、「エル」はインデックスに乗り移った。
そこで、その時代・その分野において最も秀でた才能を持つ魔術師に頼み、困惑した魔術師も承諾する。
そして彼女の病を治す形で、「エル」はインデックスに乗り移った。
――『自動書記(ヨハネのペン)』である。
また、その魔術師は交換条件として『天上の意志に辿り着く』インデックスを自分の養女として迎え、
自身が研究を進めてきた能力開発の第一号にすることを要求し、苦悩の末に「エル」はその条件を飲んだ。
…結果は怖ろしいものであり、魔術を自由自在に使いこなす才能にも恵まれた「エル」が乗り移ったためなのか、
インデックスは古今東西の魔道書を記憶し、その魔術師の力をも上回る正真正銘の『神』の領域に達した。
だから「エル」を封印する形で、インデックスの本来の記憶が消されていたのだ。
自身が研究を進めてきた能力開発の第一号にすることを要求し、苦悩の末に「エル」はその条件を飲んだ。
…結果は怖ろしいものであり、魔術を自由自在に使いこなす才能にも恵まれた「エル」が乗り移ったためなのか、
インデックスは古今東西の魔道書を記憶し、その魔術師の力をも上回る正真正銘の『神』の領域に達した。
だから「エル」を封印する形で、インデックスの本来の記憶が消されていたのだ。
――― しかし、あなたが彼女と私を救ってくれたおかげで、私はこうしてあなたの前に現れることができました。
それに過程はどうであれ…『神の如き者』のおかげで再び現出することができた私は、
このことを彼女に教えてあげることもできました。
それに過程はどうであれ…『神の如き者』のおかげで再び現出することができた私は、
このことを彼女に教えてあげることもできました。
「えっ…それじゃ、」
――― はい、彼女の記憶は戻っていますよ。記憶を消される前の私たちの記憶や
仲睦ましい二人の魔術師、彼等以外の彼女を見初めていた人たちとの大切な思い出も…。
仲睦ましい二人の魔術師、彼等以外の彼女を見初めていた人たちとの大切な思い出も…。
良かった。本当に良かった…。
そう思っているのは俺ではない、記憶を失った少年だったのかもしれない。
知らぬ間に目からは一筋の涙が流れていた。
そう思っているのは俺ではない、記憶を失った少年だったのかもしれない。
知らぬ間に目からは一筋の涙が流れていた。
◇ ◇ ◇
――― 『禁書目録』は、立派なシスターです。彼女は神の子でありますが、同時にこの時代における平和の象徴でもあります。
もしあなたが彼女を助けていなかったら、あなたは今頃彼と同じ運命を辿っていたのかもしれません。
もしあなたが彼女を助けていなかったら、あなたは今頃彼と同じ運命を辿っていたのかもしれません。
「…どういう意味だ?」
――― あなたが最初に彼女を助けていなかったならば、私もこうして過去の記憶を取り戻すことはありませんでしたし、
何より私が、これからあなたに『正解の道』を示すことができるのですから。
あなたを愛し、あなたが愛する少女と私は、同じ運命にあるのですから…。
何より私が、これからあなたに『正解の道』を示すことができるのですから。
あなたを愛し、あなたが愛する少女と私は、同じ運命にあるのですから…。
「…ようやく本題ってことか。でも御坂も神様に愛されているってどうして言えるんだ?
確かにここんところのアイツのツキは異常だが…それだけじゃないんだろ?」
確かにここんところのアイツのツキは異常だが…それだけじゃないんだろ?」
――― 確かに、私も神に愛されてからというもの、強運に恵まれました。
ですが、私の言う問題は他にあります。あなたは神に対抗し得る力を、ついに手に入れてしまいました。
―――それは私の愛した人が望んだ力でもあるのです。
ですが、私の言う問題は他にあります。あなたは神に対抗し得る力を、ついに手に入れてしまいました。
―――それは私の愛した人が望んだ力でもあるのです。
「つまり、ソイツと同じように記憶を消されかけた俺は、今神様の試練の前にいるっつうことか?
…んでもって俺の右手にある『幻想殺し』も、その神に対抗するだけの力を持っているのか?」
…んでもって俺の右手にある『幻想殺し』も、その神に対抗するだけの力を持っているのか?」
上条はここまで話の筋が合っている、彼女の言うことならば嘘はないと信じる。
――― 察しが良くて助かります。少し違いますが、そう思っていてくれて構いません。
――『現世(うつしよ)は夢、夜の夢こそ真実(まこと)』
あなたが見た夢は現実のものとなりますが、悲観することはありません。私の彼も通った『正解の道』です。
しかし、あなたが彼女のことを強く思っていなければ、より強い結びつきがなければ、
今度こそ記憶を失うことになります。あなたにそれだけのモノや覚悟がありますか?
あなたが見た夢は現実のものとなりますが、悲観することはありません。私の彼も通った『正解の道』です。
しかし、あなたが彼女のことを強く思っていなければ、より強い結びつきがなければ、
今度こそ記憶を失うことになります。あなたにそれだけのモノや覚悟がありますか?
「…ああ、俺にはある」
上条の携帯には、美琴からもらったゲコ太ストラップがある。
かつて一度だけ自分の手から離れてしまったその装飾品は、
北極海を彷徨って、もう一度奇妙な偶然で美琴の手から俺の手に戻ってきたのだ。
これ以上の結びつきがあるはずがない。
かつて一度だけ自分の手から離れてしまったその装飾品は、
北極海を彷徨って、もう一度奇妙な偶然で美琴の手から俺の手に戻ってきたのだ。
これ以上の結びつきがあるはずがない。
――― そうですか。…もしそれですら駄目なときでも、その右手のおかげで、あなたは正解にたどり着けるでしょう。
上条はその言葉に小さく頷く。自分の右手を強く握り締めて。
そして、上条の前に一本の道が現れた。
――― …この道を辿っていけば、もう帰ってこれないかもしれません。
でもそれは、さっきのあなたのように過去に囚われることの無い、とても幸せな未来。
――私たちのずっと思い描いてきた未来、『誰一人悲しむことのない世界』が実現する未来につながっています。
でもそれは、さっきのあなたのように過去に囚われることの無い、とても幸せな未来。
――私たちのずっと思い描いてきた未来、『誰一人悲しむことのない世界』が実現する未来につながっています。
「…そんな大切なものを、俺にくれるっていうのか?」
彼女は小さく首を横に振った。
――― いいえ、この道の先にあるのは、あなた方が創る、最も輝かしい未来でもあります。
あなたが自らの意志で歩んでいく道なのです。…夢の叶わなかった私がその未来の顛末を決めることはできません。
あなたが自らの意志で歩んでいく道なのです。…夢の叶わなかった私がその未来の顛末を決めることはできません。
「…そうか」
歩み出そうとした足を一端止めて、上条は改めて彼女に聞く。
「でも、…オマエはそれでいいのか?」
――― ……いいのかもしれません。
「…どうして、運命の赤い糸で結ばれていたオマエ達が、こんな不幸を背負わなきゃいけないんだろうな」
上条はしばらく上を向き、彼女の苦労を嘆くよう天に睨みつけていた。
そして、おそらく自分の右手が『運命の赤い糸』を打ち消すということも神の仕業のように思えてきた。
そして、おそらく自分の右手が『運命の赤い糸』を打ち消すということも神の仕業のように思えてきた。
――― でも、いいのです。こうして何千分…いえ、何十億分の一の確率で再び巡り合うことができたのですから。
「……へっ?…ひょっとして俺なの?」
――― ふふっ、いいえ違います。彼は生まれ変わっても私と、私の生き写しである禁書目録と、今は一緒にいてくれています。
…それだけで、私はとても幸せです。
…それだけで、私はとても幸せです。
「…」
上条はしばらく黙り込み、後で大きく頷いた。
「――じゃあ、俺行くわ」
上条が一歩ずつ前に進んでゆき、後ろを振り返らずに手を振った。
振り返らずとも分かる。
彼女は嘘をついていた。――さっきまで泣いていたこと、…今も泣いていること
でも本当は、彼女は嘘をついていない。――もうあの夢で見た少女は『死んだ』のだ、
…それでも今は、笑顔を浮かべて『嬉しい』から泣いているのだ
…それでも今は、笑顔を浮かべて『嬉しい』から泣いているのだ
だから上条は振り向かない。立ち止まれない。
彼女の見たかった世界をこの手で掴もうという決意を抱き、上条はまた歩み出す。
彼女の見たかった世界をこの手で掴もうという決意を抱き、上条はまた歩み出す。
―
――
―――
――
―――
夢から覚めた俺に先程の症状はなく、起き上がった俺にインデックスが抱きついてきた。
どうやらずっと魔術を行使して看病していたらしい。
どうやらずっと魔術を行使して看病していたらしい。
「…ただいま」
「ヒグッ…エグッ…うん、おかえり…とうま」
「ヒグッ…エグッ…うん、おかえり…とうま」
汗が滲み出る程にまで詠唱を繰り返していたインデックスの瞳に大粒の涙が浮かんでいる。
「それから、インデックス。ごめんな、ずっと気付いてあげられなくて」
「…うん、でもとうまは悪くないよ。わたしもやっぱりとうまと同じで、本質は何も変わらなかった。
多分『前のとうま』でもね、ちっとも分からないんだと思うよ。だから、そんなこと言わないで。
私はいっぱい泣いたから…、夢の中でいっぱい泣いたから…」
「…うん、でもとうまは悪くないよ。わたしもやっぱりとうまと同じで、本質は何も変わらなかった。
多分『前のとうま』でもね、ちっとも分からないんだと思うよ。だから、そんなこと言わないで。
私はいっぱい泣いたから…、夢の中でいっぱい泣いたから…」
「…」
「さっきも言ったけど、…わたしはもうここから一歩も動けない。
魔術もね、さっきので限界まで使い切っちゃった。」
「さっきも言ったけど、…わたしはもうここから一歩も動けない。
魔術もね、さっきので限界まで使い切っちゃった。」
「…」
「ほんとはね、わたしもみことを救いたいんだよ!
みことはわたしが泣いてたとき、わたしを、優しく抱きしめてくれた…。ほんとのお母さんのように…。
あのとき、どんなに救われたか。
…今度はみことが泣いている。
「ほんとはね、わたしもみことを救いたいんだよ!
みことはわたしが泣いてたとき、わたしを、優しく抱きしめてくれた…。ほんとのお母さんのように…。
あのとき、どんなに救われたか。
…今度はみことが泣いている。
だからお願い…とうま、わたしの思いも持っていって!みことを救ってあげて!!」
先程のエルの話から推測して、正義感の強い美琴は
俺に辛い目を合わせないために、俺から距離を置くなんていう『絶対にできない』嘘をついたのだ。
そして知った。今は助けを求めている。頼ってくれている。
だから何としてでも救い出す…今なら間に合うのだ。
いや、間に合わせる!
俺に辛い目を合わせないために、俺から距離を置くなんていう『絶対にできない』嘘をついたのだ。
そして知った。今は助けを求めている。頼ってくれている。
だから何としてでも救い出す…今なら間に合うのだ。
いや、間に合わせる!
「…分かった、インデックス。お前の分も、俺は諦めない。忘れてやるもんか!
絶対にアイツが囚われている幻想は、この俺が跡形も残さずぶち殺してやる!!!」
――そして、俺と神様との壮絶な戦いの火蓋が切って落とされる!