とある世にもな奇妙物語
ストーリーテラー
「友人の性格の、『ここが直ったらなぁ』と思った事はないかな?
性格というのは誰しも表と裏があり、同時にいい部分と悪い部分があるものだね?
だから直して欲しい部分も、きっとあるはずなんだね?
けれども性格そのものが変わってしまったら、本当にその人は、君の友人だった人と『同じ人物』なのかな?
もし突然、昨日までと全く性格の違う友人に会ったら、君ならどうするかね…?」
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[デレデレールガン]
いつもの朝、上条はいつも通りに起床する。
今日は休日なので二度寝でもしようか、いやいやインデックスの朝飯作っとかなきゃ噛み付かれる。あー不幸だー。
などと思いながら目を擦り、寝起きでボーっとした頭も徐々に晴れていく。
すると、何だかいつもと違う景色に気付く。
いや、確かにここは上条の部屋で間違いはないのだが、いつものジメッとした風呂場【しんしつ】ではない。
下は湿っておらず、上からピチョンと雫が垂れてくる事もない。
ここはいわゆるベッドだった。この部屋には一つしかないアレだ。
「!!? !!!? !!!!?」
突然の事に上条は混乱する。
(自称)紳士であるワタクシめが、一体何をしてらっしゃりやがりますのでせうか!?、と。
当然この隣には、ここの住人【インデックス】がいるはずである。何だか妙な温もりも感じる事だし。
だが、隣ですぅすぅと寝息をたてているその少女の顔を見たとき、上条はさらなる混乱へと導かれる事となる。
「ぇぇぇええええええ!!? み、美琴ぉぉぉぉ!!!?」
上条の横で一緒に眠っていたのはインデックスではなかった。
彼が大声で叫んだおかげで、眠り姫も目が覚める。
「あ…おはよう当麻、良く眠れた?」
あくびをしながら、さも当たり前のように美琴が話しかける。
少女趣味の花柄パジャマは、寝相で若干着崩れており、チラリと見える鎖骨と胸元に、上条はドギマギする。
上条の視線を感じたのか、美琴はバッと後ろを向き、
「…当麻のエッチ……」
と、一言。 上条も慌てて「ゴメン!」と謝るが、今はそれどころじゃないことに気付く。
「いやいやいや! ゴメンじゃねーよ俺!
何かもう、聞きたい事が山ほどあるんだけど、とりあえずこれだけ答えてくれ!
何で美琴が俺の部屋【ここ】で寝てんの!!?」
すると美琴は、顔だけこちらに向けながら答える。
「何でって…今更何言ってんのよ。付き合い始めてからずっとこうじゃない」
「………はい? ツキアイハジ……………へ?」
「そ、それに……その…しょ、将来の為にも一緒に住もうって言ってくれたのは、当麻の方じゃない……」
「しょ、将来……って…?」
「だ! だから! いつか、け、け、結婚した時の為よ!! 言わせないでよ恥ずかしい!!」
顔を真っ赤にしながら答える美琴は可愛いと思ったが、それより何よりちょっと待てと。
この2ラリー半の会話で、とんでもない情報が盛り沢山じゃなかったかと。
頭が真っ白になり固まる上条に、美琴が更なる追い討ちをかける。
「も、もう……しょうがないなぁ………」
チュッ♡
「な! ななななんばしよっとですか!!!」
唇に残る柔らかい感触。
あまりの出来事に、上条も博多弁になっている。行った事もないくせに。
「おはようのチュウよ。これがなかったから、さっきから拗ねてたんでしょ?
当麻ってば本当に甘えん坊なんだから♪」
もう、何が何だか分からない。
美琴は現在、鼻唄交じりに朝食の準備をしている。
ウインナーの焼ける音と、焦がし醤油の香ばしい匂いが上条の五感をくすぐる。
が、それはそれ、これはこれだ。
今はこの、あからさまにおかしい状況をどうにかしなくてはならない。
「ちょっと、出かけてくる」
「今から? ご飯もうできるわよ?」
「すぐ戻るから」
そう言って彼が行った場所はお隣さんだ。
困った時の土御門。彼なら、何か知っているかもしれない。
ポンポーンと呼び鈴を鳴らすと、家主がドアから顔を出した。
「はいはい、新聞ならお断り…何だカミやんか」
「悪いな土御門。寝てたか?」
「いや、さっき起きたばっかだぜい」
「突然ですまないけど、ちょっと美琴の事で話が―――」
上条が言いかけると、土御門は深く深~く溜息をついた。
「あのなカミやん……もう『当麻上条のストロベる話』は聞き飽きたぜい……
お前さんにはいい加減、『人のノロケはセンブリ茶(対義語:人の不幸は蜜の味)』
って言葉を理解して欲しいにゃー」
心底ウンザリしながら話す土御門。
聞き飽きた、という事は、普段から上条がイチャイチャ話をしているという事になる。
しかし勿論、上条にそんな記憶はない。
「聞いてくれ土御門。何かがおかしいんだ。
もしかしたら、『御使堕し』の時みたいな大規模な魔術でも起きてるのかもしれない」
「……どういう事だ?」
魔術と聞いたら黙っている訳にはいかない。
上条の真剣な表情を見た土御門は、珍しくマジモードになる。
「………なるほどにゃー。 つまりカミやんは、昨日まで美琴ちゃんとはただの友達だったと」
「ああ、今朝起きたらこの状況になってたんだ」
「う~ん…聞いた事のない事例だぜい……」
「ちなみにインデックスは?」
「彼女なら小萌先生のとこだぜい。二人の間を邪魔しちゃ悪いからって、そっちに引っ越したんだにゃー」
「そう…だったのか……」
「ま、とにかくこっちで調べておくぜい。
原因が分かったら電話するから、それまで今の状況を楽しんだらとうかにゃー?」
そう言い残し、土御門は何処かへ出かけて行った。
彼ならばきっと解決法を見つけ出してくれる事だろう。
だが問題は…
「楽しめって言われてもなぁ………」
悩みながら帰る上条だが、ドアを開けた瞬間に目に飛び込んできた、おいしそうな朝食と、
これまた可愛いエプロンを着た、若奥様(予定)を見て、もうどうでもいいかな、と思ってしまった彼である。
上条は目の前の光景に感動していた。
食卓に並ぶのは、焦がし醤油で味をつけたソーセージと目玉焼き。熱々のコーンスープとクロワッサン。
手作りの胡麻ドレッシングがかかったサラダ。微糖のコーヒー。
完璧だった。それはもう完璧な朝食だった。
「おお…」
思わず声が漏れる。物心ついた時【きおくをうしなって】から毎朝、朝食を自分で作っていた上条にとって、
何もせずに朝ごはんが食べられるというのは、ちょっとした衝撃なのである。
腹も減っていることだし、「いただきまーす!」の掛け声と共にさっそくかぶりつこうとする。
しかしその時、美琴が上条陣地のウインナーをフォークで刺す。
「なっ! 何をするだァ―ッ!」と上条が言いかけた瞬間、美琴はそのウインナーを上条の口元へ持っていく。
勿論、アレをする為である。
「はい、あーん」
「へっ!!? いやいや、一人で食えるから!」
「あーん」
「は、恥ずかしいし!!」
「あーん」
「聞いてる!? ねぇ!」
「あーん」
全く譲る気が感じられない。聞く耳を持つつもりはないらしい。
上条は仕方なく口を開ける。
「おいしい?」
「…うまい」
「良かった♪ じゃあ今度はこっちの番ね。 あーん」
そう言いながら口を開ける美琴。今度はこっちからやれと言うのか。
今度もこちら側が折れない限り、向こうは諦めてくれないだろう。
上条は美琴陣地のクロワッサンを指で契り、そのまま美琴の口に運んでいく。
すると、
「ハムッ!」
「ちょ! み、美琴さん!!?」
美琴は上条の指ごとかぶりついた。
「えへへ~。ビックリした?」
「あ、あ、当たり前だろ!」
「だって、一度やってみたかったんだもん」
言いながら美琴は無邪気に笑った。
いつもと違う美琴の一面。素直だったり、イタズラ好きだったり…
コロコロと表情を変える目の前の女の子に、上条は徐々に心を惹かれていった。
上条は「美琴って、こんなに可愛かったっけ…?」などと思いながら、
台所で皿を洗っている美琴の後ろ姿をポケ~っと眺めていた。
「ねぇ、食べたばっかで聞くのもなんだけど、明日は何食べたい?」
ポケ~っとしていた為、急に話しかけられビクッとする。
「あ、ああそうだな。今日は洋食だったから、明日は和食がいいかな」
「ん、分かった」
食器を洗い終わったのか、美琴は台所にかけてあるタオルで手を拭き、上条の隣にストンと座る。
と、同時に横からギュッと抱き締められる。
正直、美琴に気持ちを持っていきかけている上条にとって、これは中々の威力である。
「み、みみ美琴!?」
「だって今日、寒いんだもん。だから当麻に温めてもらうの♪」
そしてそのまま、顔を摺り寄せてくる。
上条は思った。「何だこの可愛いすぎる生き物は」、と。
「いっそこのまま、こっちからも抱き締めてしまおうか」、と。
上条が理性やら何やらと戦っている間に、美琴は更なる一手を打ってくる。
「ねぇ…当麻ぁ………」
しかしそれは、今までよりもさらに甘えた声…いや、むしろ艶っぽい声で、
「私たちって…もう付き合い始めて結構経つじゃない…?」
とんでもない要求だった。
「そ、そろそろ……あの………ア…アッチの方もいいんじゃない…かな…?」
上条の思考の許容範囲がついに超える。流石にこれは反則だ。
上目遣いで瞳を潤ませ、頬を薄紅色に染め、緊張からかしっとりと汗ばんだ表情。
バクンバクンとした心臓の音が聞こえるが、これが自分のものなのか美琴のものなのか、それすら分からない。
「アアアアアッチってどっち方面でせう!!?」
上条も茶化すので精一杯だ。
ヒント。「ア」を「エ」に変えてみよう。
が、ここで助けが入ると言うべきか、はたまた邪魔が入ると言うべきか。
土御門から着信が入る。
「ご、ごめん! その話はまた今度な!!」
口を尖らせてブーブー言っている美琴を尻目に、上条はトイレの中で着信ボタンを押す。
『ようカミやん。今大丈夫かにゃー?』
「ああ…ある意味これ以上ない程のタイミングだったよ」
安心したやら、ちょっと残念だったやらでとても複雑な心境である。
「で、何か分かったのか?」
『ああ、色々調べて分かったんだが、どうやら今のカミやんは、パラレルワールドから来たみたいだぜい』
「パラ…って、マンガとかゲームによく出てくるあの!?」
『まぁ、そう思ってくれて差し支えないぜい』
土御門が言うにはこうだ。
今ここは「A」という世界。勿論、美琴も土御門も「A」の住人である。
そこに、「B」という別の世界の上条の意識(魂的な?)がやって来て、「A」の世界の上条に憑依した、というのだ。
しかしそうなると、今の上条は―――
『ざっくり説明すると、そんな感じかにゃー』
「………どう…すれば元に戻るんだ…?」
『そいつは簡単だぜい。カミやんの右手には何がある?』
「…幻想殺し…か……」
『そう。それで自分の頭を触れば一発だにゃー。カミやんは元の世界に無事戻れるって寸法ぜよ」
「………………」
上条は少し考えた後、意を決して感謝を伝えた。
「ありがとな、土御門」
『行くのか?』
「ああ」
『……本当にいいのか?』
「仕方ねぇよ……俺はこの世界の住人じゃないんだからさ……」
『…そっか……ま、達者でにゃー。カミやんB』
「じゃあな。土御門A」
通話を切り、上条はトイレのドアを開けた。
帰る前に、思いを伝えなければならない人がいる―――
「あっ、電話終わった? じゃあどっかデートに行かない? せっかくの休みだし、今日こんなに天気いいし」
美琴は無邪気に腕を組んでくる。きっとこれもいつもの日常なのだろう。
だがその日常は―――
上条はそっと組まれた腕を解き、美琴の両肩を掴んだ。そして……
「ゴメン…美琴……俺…お前に別れを言おうと思ってさ………」
「え………」
美琴の表情が一気に絶望へと変わる。
上条にとってつらくもあり、同時にどこかホッとしていた。
「なん……で…?」
「ホントに…ゴメンな。ちゃんと…説明するから……」
上条は土御門から聞いた事を美琴に伝えた。
パラレルワールド。今の自分がこの世界の人間でないことを。
「……だ、だから何よ! 当麻は当麻じゃない!!」
それでもいいと美琴は言った。だが上条は……
「…いや、駄目だ。それだけはやっちゃいけない」
「何で…よ…………私じゃ………私じゃ嫌なの!?」
「嫌な訳ねぇだろ!!!
俺だって楽しかったよ!! 短い時間だったけど美琴の色んな表情が見れてさ!!
可愛いとも思った!! 抱き締めたいとも思った!! ああ! いつの間にか好きになってたよ!!!」
上条は声を荒げた。そこだけは…例え自分がニセモノでも、この気持ちだけは本物だったから。
この気持ちだけは否定したくなかったから。
「だったら!!」
「でも! その幸せは俺のものじゃない! この世界の上条のものなんだ!!
俺はもう……『前』の上条の幸せをぶち壊したくはないんだよ……」
「!!!」
それは罪。
以前、記憶を失ったことで、それまで16年間生きてきた上条を殺し、自分が生きてしまったという戒めである。
上条は、もう二度とあんな思いをしたくなかった。
「だから……さよならだ」
上条が別れを言うと、美琴は涙を流しながら上条を抱き締める。
「……向こうに行っても……私を好きになってあげて………」
「はは…でも向こうの美琴って、俺の事嫌ってるからな……」
「そんな事ない!! 私はどんな世界にいても、絶対『上条当麻』を好きになる!!」
「そう…かな。そうだといいな」
「絶対…そうだもん……」
上条も美琴を抱き締め、最後の言葉を伝えた。
「ありがとう美琴。お前を好きになって良かった」
そして彼の右手は、自らの頭に触れ、
彼は意識を失っていった―――
いつもの朝、上条はいつも通りに起床する。
ジメッとした風呂場【しんしつ】、下は湿っており、上からピチョンと雫が垂れてくる。
「元に…戻ってきたのか……」
何だか長い夢でも見ていた気分だ。
だがここからは現実。このドアを開ければ、いつも通りインデックスが………
「あ、おはよ当麻。今日は和食がいいって言ってたから、今朝は焼き鮭と味噌汁よ♪」
……………………へ?
―――――――――
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ストーリーテラー
「やれやれ、人っていうのは中々面倒な生き物だね?
変わって欲しいと願っていても、いざ変わってみたら別の問題が起きる。
君の周りの人も、急に性格が分かったら要注意だね?
もしかしたら、自分が別の世界からやって来たのかもしれないんだからね…?」
ストーリーテラー
「如何だったかな? 今宵ご覧になって頂いた11の物語。
彼等はその不思議な世界の扉を……
えっ? 一つ足りない? 10コしかやってないって?
いやいや、何を言っているのかな。ちゃんと11種類の物語を紹介したんだね?
だって11番目の物語の主役は、君なんだからね…?」
ストーリーテラー
冥土帰し
トントゥントンテントンティント テントン タントン♪ トントゥントンテントンティント テントン タントン♪
テケテケテ アアアアア♪ テケテケテッテ アアアアアー♪
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[底なし胃袋]
インデックス
ステイル=マグヌス 神裂火織
脚本 : 上条当麻
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一方通行
天井亜雄 芳川 布束砥信
下位個体 00001号~20000号
脚本 : 打ち止め
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ジャン ジャン ジャン ジャンジョンジャン ジャン♪
[カザキリ ヒョウカ]
シスターちゃん
姫神ちゃん 結標ちゃん
風斬ちゃん
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[科学最後の日]
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脚本 : リドヴィア=ロレンツェッティ
フォーーーフォーーファーーファーファーフォーフォーフォー♪
ルルララ ルルララーー ララー ララ ラーラララーラーー♪
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アーーアーーアーーアーーー♪
テケテケテ アアアアア♪ テケテケテッテ アアアアアー♪
テケテケテ アアアアア♪ テケテケテッテ アアアアアー♪
[佐天「地球の裏側からでも初春のスカートをめくれる能力かぁ…」]
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御坂さん 白井さん 春上さん
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[デレデレールガン]
カミやん
第三位
土御門元春
脚本 : 土御門元春
トゥンティントゥン トゥールー♪ トゥンティントゥン トゥールー♪
トゥンティントゥン トゥールー♪ トゥンティントゥン トゥールー ルーー♪
ジャン ジャン ジャン ジャンジョンジャン ジャン♪
総合プロデューサー : アレイスター=クロウリー
制作 : 上琴推進委員会