とある男女の三角関係
12月20日
(もうこんな時期かぁ・・・)
街はクリスマスのイルミネーションに彩られていた。
夕暮れの学園都市、上条当麻は街のイルミネーションを見てそうつぶやいた。
記憶を失った上条当麻にしてみれば、初めてのクリスマスになる。
(クリスマスくらい何かいいことあればなぁ・・・っといっても不幸の化身である上条さんにはクリスマスなんて
素敵イベントが起こるはずも無いなんてわかってるんですけどね・・・)
「とりあえずスーパーに向かうか・・・ん?あれは?」
上条はふと路地裏に目をやった。
「やめ、てください」
「お嬢ちゃんオレ達とちょっと遊ばない?」
「な?どっか行こうぜ?」
(女の子が不良に絡まれてる・・・ここはいつものように)
「悪い待たせちまったー」
「えっ?」
上条当麻は不良の中を割って入り女の子の腕をつかみその場から連れ去ろうとする。
「なんだぁお前は?」
「あーこの子連れですよー、さっ行こうぜ」
「は、はい!」
が、スキルアウトはそんなに甘くない。
「連れとか関係ねーよ。野朗はすっこんでな!!」
「はぁ・・・、そんな簡単に済むはず無いか・・・不幸だ」
「あぁん?文句あるのか?」
「あぁそうだよ!女の子1人に男4人で囲んでナンパとかお前ら恥ずかしくないのかよ!」
「何だとこのガキが」
上条は挑発して女の子からスキルアウトを遠ざけた。
「君は早く逃げろ」
「でも・・・」
「俺のことはいいから!早く!!」
「は・・・はいっ」ポッ
(あの子を逃がすことは出来たな・・・、後は俺がこいつ等から逃げるだけか・・・)
「あ!後ろにアンチスキルが!」
「何!?」
上条が叫び、スキルアウト達は一斉に後ろを振り向く・・・が
「誰もイネェじゃねぇか・・・って!」
上条は一瞬の隙に猛ダッシュで逃げていた・・・・
「あのヤロウ・・・なめやがって・・・」ピクピク
スキルアウトの怒りが限界を超えた。
「待ちやがれ!!テメェぶっ殺す!」
「待てと言われて待つ奴がいるかー! あぁー不幸だー!!」
叫びながら上条は全力で逃げる。
女の子に小さなフラグを立てて・・・
御坂美琴は悩んでいた・・・
もうすぐクリスマスなのに未だ上条を誘えていない。
一端覧祭もなんだかんだとうやむやになってしまって後悔したのに。
(アイツをどうやって誘おう・・・)
電話をすればいいのだが、アイツと話すと素直になれない。メールをするにも指が震えてボタンが押せないし、なぜかアイツには届かない。
いつもの公園で偶然を装って出会えたとしても、緊張して伝えたいことが伝えられない。今までいろいろアプローチしてきたのだが鈍感上条には伝わらない。
(電話して・・・、でも断られたら・・・でも・・・素直に・・・)
かれこれ2時間ベットの上で携帯の画面も見て悩んでいる美琴を見て血の涙を流す一人の少女もいる。
(キーッまたお姉さまはあの類人猿のことをーーー)
そんな白井黒子の様子を知らず御坂美琴は一人悩み続けた。
(決めた!電話しよう!)
美琴は意を決して上条当麻の番号に電話をかける。
コール1回・・・2回・・・3回・・・6回・・・・『ただいま電話に出ることが出来ません、ピーっと言う発信音の後にご用件をお話ください』ピー
(なんで電話に出ないのよ!)
上条はスキルアウトに追われていて全力で逃げている途中だが、そんなことを知らない美琴はベットの上で更に落ち込んでいく・・・
スキルアウトから逃げ切った上条は公園にいた。
「ハァハァ・・・、やっと諦めたか・・・」
「ちくしょー、スーパーに行く途中だってのに店からかなり離れちまった・・・特売にも間に合わないし、不幸だ・・・」
「ま、あの女の子を救えたし良しとするか」
「今何時だ・・・」
上条は時間を知ろうとしたが辺りには時計が見当たらない。
「携帯っと・・・あれ?御坂から着信か、何の用だ?」
「何でアイツは電話をかけてこないのよ・・・」
御坂美琴はベットで落ち込んでいた、上条の携帯には御坂からの着信履歴があるはずなので、気づいたら電話をかけてきてもいいはずだと思う。
(アイツの声聞きたいな・・・)
ゲコゲコゲコゲコ・・・
突然携帯が鳴り出した。
「アイツから!?ちょっとまだ覚悟が出来てないわよ!」
自分から電話をかける覚悟が出来ていても、上条からの電話を受ける覚悟が出来ていない。
早く電話を取らないと切れてしまう、覚悟を決めて電話を取る。
「も、もしもし?」
『もしもし、御坂か?電話してきたみたいだけど何か用か?』
「あ・・・えっと・・・その・・・」
(素直に・・・素直に・・・)
『もしもーし、御坂さんー?』
「何でも無いわよっ!黒子に電話しようとして間違えてアンタにかけただけなんだからっ!」
(違う!私が言いたいのはこんなことじゃない・・・)
『えーと、つまり間違い電話ってことですか、そうですか。』
「ちがっ」
『上条さんはこれから夕飯の買出しなのでまたなー』
ツーツーツー
(何やってるんだろ私・・・)
「ただの間違い電話か・・・、って何を期待してたんだ俺?」
上条はスーパーで売れ残りの食材を買い帰宅する。
12月21日
美琴は白井、初春、佐天の3人と共に喫茶店で談笑していた。
「聞いてくださいよ、昨日ものすごくカッコイイ人と出会ったんですよ!」
佐天は昨日あった出来事を美琴達に話していた。
「へぇ~、どんな人なの?」
「昨日、不良っぽい人たちに絡まれたんですけどね」
「不良にって大丈夫だったの?」
「はい、もうダメだって思ったときにその人が助けてくれたんで大丈夫でした」
「どんな人だったんですかぁ~?」
初春はパフェを食べながら聞いてきた。
「年は私より少し上くらいで高校生かな?黒髪のツンツンヘアーの人でした」
「ぶっ」
「どうしたんですか御坂さん?」
「いや、何でも無い・・・」
「まさかその人のこと知ってるんですか?」
「えっ?いや別にアイツに似てるなーって」
「アイツって誰ですか?」
美琴の顔が赤くなっていくのがわかる。
「それは上条さんのことではございませんか?」
「白井さんも知ってるの?」
「はい、何度かお会いしたことがありますの」
「く・・・黒子?」
「高校生のツンツン頭で、困ってる人がいたら風紀委員を差し置いて助けに行く方ですの、その人不幸だーって言っておりませんでした?」
「言ってた気がする・・・」
「ちょっと待ってくださいね、今パソコンで上条って名前の人を調べてますので、白井さん下の名前ってわかりますか?」
「『上条当麻』ですの」
「えっと・・・上条当麻、あったこの人ですか?」
「そうそう!この人だよ初春!」
佐天は白井が言う上条が自分を助けてくれた人だと確信する。
(ぐへへ、これであの類人猿と佐天さんがくっつけばお姉さまは黒子のもの・・・グヘヘ)
「バンクに乗ってるデータではレベル0ですね・・・」
「私と同じレベル0なのに不良たちに立ち向かって私を助けてくれたんだ・・・」(ポッ)
(あのバカ、何で私の友達にまでフラグ立ててんのよ!)
「ねぇ初春、この上条さんがどこに住んでるか調べてくれないかな?」
「ダメですよ佐天さん、個人情報を教えることはいくら佐天さんでも出来ませんよ~」
「そんなこと言わないでお願いっ!」
「う~ダメなものはダメです!」
「御坂さんは上条さんがどこに住んでるか知ってるんですか?」
「えっ?知らない・・・かな?」
「そうですか・・・会って昨日のお礼したかったんだけどな・・・」
落ち込む佐天、お礼がしたいのに出来ないという感情は美琴も知っている。妹達の一件で美琴は上条に助けられたのに、
お礼がされるのが目的じゃないと上条に断られ、ずっとモヤモヤしているのだ。
(お礼をしたいのに出来ないのは私も同じか・・・)
「佐天さん」
「はい?」
「アイツの家は知らないけど、アイツの連絡先なら知ってるわよ・・・」
「本当ですか御坂さん!?」
「うん・・・会って話してみる?」
「是非お願いします!」
いくら友達のためとはいえ、上条に女の子との出会いを仲介してしまうのは心が痛む
prrrrprrrr
『もしもし、御坂か?今日は間違いじゃないんだな?』
珍しくコール2回で出た。
「アンタにちょっと会ってほしい子がいるのよ・・・」
『俺に会ってほしい子?いったい何を企んでるんですか?』
「何も企んでないわよ!、いいから30分後にいつもの公園に来なさい!」
『ちょっ、30分後って俺の予定も何も聞か「アンタどうせ暇でしょ?」ずにどうせ暇ですよハイ・・・』
「それじゃ30分後にね」ピッ ツーツーツー
「御坂さんちょっと強引すぎじゃ・・・」
「あーでも言わないとアイツを誘うなんて出来ないんだから」
「どういう意味ですかそれ?」
20分後
「それでは私たちはジャッジメントの支部に行きますので、佐天さんがんばってくださいね!」
「それではお姉さま、また後ほどに・・・」
いつもの公園にて
「せっかく補習が無くて夕方からゆっくり出来ると思ってたのに、御坂に呼び出されるなんて」
「悪かったわね、突然呼び出したりして」
「って御坂サン聞いていたのですか?」
「アンタに会わせたい人がいるって呼び出したのはこっちだし、別にいいわよ」
「そちらの方が上条さんに会わせたい子かな・・・?」
「佐天涙子です、昨日はありがとうございました」
「昨日?あぁスキルアウトに絡まれてた!あの後無事に帰れたのか?」
「はい!上条さんのおかげで、上条さんもあの後追っかけられたみたいだけど大丈夫だったんですか?」
「ん?まぁ毎度御坂に追っかけられたりして逃げ足だけは速いんだよ、ハハハ・・・」
「え、御坂さんに?」
「アンタが私のことをいつも無視するのが悪いんでしょうが!」
「っていきなりビリビリすんなよ!」
上条は飛んでくる電撃を右手でかき消した。
「今のは・・・?」
始めて見る幻想殺しの存在に驚きを隠せない。
「上条さんってレベル0って聞きましたけど、今のって御坂さんの電撃を消しましたよね?」
「あー俺の右手にはどんな能力も消しちまう幻想殺しって能力があるんだよ、
生まれついての能力だからこの街で開発したもんじゃねーんだけど、
演算とかしてるわけじゃないから超能力ってより特殊能力って表現のほうが正しいかもな、
システムスキャンにも引っかからないしレベルは0だけどなー」
「そう・・・ですか・・・」
レベル0にもかかわらず自分を救ってくれたヒーローをイメージしていた佐天だったが上条の幻想殺しの存在で、上条が自分とは違う世界の人間だと思ってしまった。
「まぁ幻想殺しって言っても右手以外は普通の人間だから上条さんはスキルアウトが4人もいたらギブアップで速攻にげるけど」
「それなら何で私を助けてくれたんですか?」
「そりゃ君が困ってたからかな」
「それだけの理由で・・・」
「コイツはそういう奴なのよ、私もコイツに何度も助けられた・・・」
「御坂さんがですか?」
御坂と言えば常盤台のエース、レベル5、レールガン、最強無敵の電撃姫と異名を持つ、
そんな彼女を助けるなんてやっぱり上条は普通じゃない、佐天はそう思った。
(でも・・・・・私を助けてくれたことは事実)
「あの!よかったら連絡先を教えてもらって良いですか?」
「へっ?別に良いけど・・・」
上条が取り出した携帯電話には美琴とお揃いのストラップが着いていた。
「そのストラップ、御坂さんと同じやつですよね?」
「あー前に携帯のペア契約をしたときにもらったんだ」
「ペア契約・・・」
ペア契約の事実に驚きを隠せない。
「おっともうこんな時間か、悪い!スーパーで特売の時間だ!じゃまたな~」
上条は特売を目指してスーパーに走って行った。
佐天を何かを決意したように、美琴に問いかけた。
「御坂さん・・・上条さんのことどう思ってますか?」
「えっ?」
「だから上条さんのこと・・・」
「別にどうも思ってないわよ!」
「じゃぁ私が上条さんのことを好きだって言ったら応援してくれますか?」
衝撃が走った、佐天が上条のことを好きになる、美琴が一番恐れていた結末に向かって物語が進みはじめる。
(応援?出来るはず無い!私だって・・・いや、私の方がアイツのことを好きなんだから)
「出来ない・・・、私もアイツのことが好き・・・」
「やっぱりですか、携帯のペア契約するくらいでもすもんね」
「・・・・」
「私達ライバルですね」
「!!!」
突然のライバル宣言に御坂美琴は言葉を失った・・・
「たとえ御坂さんが相手でも私は負ける気ないですから!」
「・・・」
「それじゃ」
美琴は去っていく佐天の背中を黙って見つめることしか出来なかった。
とある男女の三角関係
12月22日
美琴は上条と公園にいた。
「私、アンタのことが好きだったの!」
「悪い、お前とは付き合えない・・・」
「どう・・・して?」
「俺は佐天のことが好きなんだ」
「御坂さん、どうやら私の勝ちみたいね・・・」
美琴の後ろから佐天が話しかける。
「そ・・・ん・・・な・・・、イヤよ」
「それじゃ行こうか涙子」
「はい、当麻さん」
「待ってよ」
美琴は膝から崩れ落ちて立ち上がることが出来ない。
「お願いだから・・・待って・・・・」
「ハッ―――」
目が覚めると見慣れた天井、ここは常盤台の学生寮、隣にはパートナーの白井黒子が心配そうに美琴のことを見つめていた。
「夢?だったの?」
「お姉さま?ずいぶんとうなされていたようですが」
「ちょっと嫌な夢を見てね」
「ハッ!まさか黒子と離れ離れになる夢ですか!大丈夫ですわよお姉さま!!黒子は一生お姉さまのお側を離れることなんてありませんわ!」
と言いつつ美琴のベッドにダイブしようとしたが・・・
「違うから」ビリビリ
「あぁお姉さば・・・朝から激しすぎますわああばばばば」
(あんな夢を見るなんて――――)
(どうすりゃいいのよ・・・)
上条のことが好き、佐天や初春たちと友達でいたい。
上条が美琴を選んだら今の友達関係は壊れてしまうのでは?
上条が佐天を選んだら美琴の想いは?
それ以前に上条が美琴も佐天も選ばずに他の人を選んでしまったら?
(こんなことになるなら、アイツと佐天さんを会わせなきゃよかった・・・)
後悔の念が押し寄せる。どうしてこんなことになったのだろう。
考えても答えが出ない。
「う~い~は~る~」バサッ
「ちゃんとパンツ履いてるか~?」
「へっ ///」
「いきなり酷いじゃないですか!佐天さん!」
「アハハ私と初春の挨拶じゃん~」
「スカートめくって挨拶しないでくださいよ~」
佐天は初春との日常の会話を楽しむ、上条をめぐって美琴との関係が少し揺らいだことを初春はまだ知らない。
「ところで、あの後上条さんどんな話をしたんですか?」
「・・・・」
佐天の表情が少し変わった、親友である初春は佐天の表情の変化にすぐ気づいた。
「佐天さん?どうかしましたか?」
「私ね上条さんのこと好きになったんだ」
「ぬふぇ!?いきなり爆弾発言ですか?」
いきなりの発言に初春は驚きを隠せない。上条属性を知っている者からすれば、またフラグの犠牲者か!
と言われるだけだが、上条のことを詳しく知らない二人はその事実を知る由も無い。
「それでね、言っちゃった」
「え~、いきなり告白したんですか?」
「違う違う~まだしてないよ~」
「じゃぁ何を言ったんですか?」
「御坂さんに、上条さんが好きって・・・」
「え?」
「御坂さんもね、上条さんのことが好きで」
「確かに上条さんの名前が出てから様子が変でしたからね」
「それで御坂さんに、私達ライバルだねって」
「・・・御坂さんはどういう反応を?」
「何も言わなかった、ただどうしていいかわからなかったみたい・・・」
「私も御坂さんが相手だと勝ち目無いかなって思ったんだけどさ、でも初めて男の人を好きになれたのに、
相手が御坂さんだからって諦めたくないって思ったんだよね。」
「それでライバル宣言ですか・・・」
「うん・・・」
「佐天さん!がんばってください!!私は何があっても佐天さんの味方ですから!」
「初春ッ!私がんばるからね!!」
初春と佐天は硬い絆で結ばれている。美琴と白井黒子も同じように硬い絆で結ばれて居居るのだが
美琴の性格と白井の性癖が障害となり美琴は白井に相談できずにいた。
放課後 とある公園
佐天は公園にいた、なんとなくだがここに来ると上条に会えるような気がして・・・・
しばらくすると、のんきに鼻歌を歌っている上条が歩いてきた。
「あの!上条さん!!」
「ん?君は佐天だっけ?」
「はい、あの・・・この後時間ありますか?」
「え?まぁ今日は特売も無いしそれなりに時間はあるとけど・・・」
「それじゃこの間のお礼がしたいので、私とデートしてくれませんか?」
「ええええ?何で助けたお礼がデートなんですか?それに上条さんはお礼がして欲しくて助けたわけじゃないんですよ?」
「それでも助けられたことには変わりないんですから、お礼くらいさせてください!」
喫茶店に入ろうとする上条と佐天を美琴は偶然目撃してしまった。
「あれは、アイツと・・・佐天さん!?」
上条と佐天は喫茶店に入っていた、美琴は二人の会話がギリギリ聞き取れて二人に気づかれない席を選び座っていた。
「上条さんって付き合ってる人いるんですか?」
「いきなりなんですかその質問は?」
(佐天さんったらいきなり何聞いてんのよ!)
「ごめんなさい、ちょっと気になったもので・・・」
「あーこの不幸の化身、上条さんのことを好きになってくれる女の子なんていないですことよ」
「そんな言い方しなくても・・・」
佐天は思った。
(もう二人も好きになってるんですけど)
上条の交友関係の一部を知っている美琴は思った。
(アイツの周りにはいっぱい好意を持ってる子といそうなんだけど、まったく気づいてないわけ?どこまで鈍感な奴なのよ!)
「じゃあ、上条さんは好きな女の人とかはいるんですか?」
(えええええ、そこまで聞くの佐天さん!?)
「・・・・えーっと「ストップ!」え?」
「やっぱり聞くのやめにします」
「上条さんってモテるイメージあったんですけど、付き合ってる人いないって本当ですか~?」
「俺の右手はあらゆる能力を消してしまう反面、神のご加護とか赤い糸とかそういう神秘的なものまで打ち消しちまうらしいんだよ、
その結果上条さんはものすごい不幸体質の人間となってしまっているのですよ」
「本気で言ってるんですか?確かに上条さんは不幸かも知れないですけど、
それでも女の人から好意を持たれることは無いって言うのと少し違うんじゃないですか?」
「確かにそうかもしれない、でも俺って不幸な人間だからさ、親しくなった人に不幸が降りかかるのが嫌だから、
無意識のうちに人のことを避けていたのかもな・・・」
佐天は言葉を失った、ここで上条に好きだと言えば上条は信じてくれるだろうか?
不幸体質の話を聞いた直後に告白しても、気を使ったとか思われるのではないか?
美琴は――――
「さて、そろそろ出ようか?本当にここの支払い良いのか?」
「はい、もともとお礼でしたし、上条さんコーヒー1杯しか頼んでないじゃないですか」
「年下の女の子にそんなに支払わせるわけにはいかないだろ」
「お礼なんだから気にしなくて良いのに・・・」
「送ってくよ」
「結構ですよ、まだそんなに暗くないし」
「そうか?それじゃ俺はこっちだから」
「あの!明日も今日と同じ時間くらいにこの公園に来てもらえますか?どうしても聞いて欲しい事があるので・・・」
「明日?今じゃダメなのか?」
「・・・いろいろと整理してから聞いて欲しい事なので」
「そうか、それじゃ明日17時にここで」
「はい、さようなら・・・」
上条が去った公園で佐天は考えていた
どう伝えれば上条さんに想いは届くのだろうと
上条さんはあー言ったけど本当は好きな人がいるのではないか?
「佐天さん・・・」
「み、御坂さん?」
「偶然喫茶店に入るのを見かけてね・・・」
「盗み聞きしてたんですか?」
「っ!そんなつもりじゃ・・・、それより明日アイツに何を言うのよ?」
「やっぱり聞いてたんだ、別にいいけど・・・、明日上条さんに告白しようと思ってます」
「!!!」
「明日は今日みたいに盗み聞きするのはやめてくださいね、そんなことしたら一生許しませんから!」
「・・・」
「それじゃ御坂さん、さよなら」
常盤台寮
美琴は悩んでいた、上条のこと、佐天のこと・・・
自分の気持ちは決まっているのに、表現できない、素直になれない。
――――佐天さんにアイツを紹介したのがいけなかったの?
――――20日の夜、電話で素直になれなかったのがいけなかったの?
――――もっと素直になって、黒子や初春さん、佐天さんにアイツへの想いを相談しておけばよかったの?
――――佐天さんより先にアイツに告白をすれば・・・?
――――佐天さんがいつ告白するかを知っているのに先に言うのはフェアじゃない・・・
(アイツは・・・、佐天さんの想いにどう答えるんだろう・・・)
「お姉さま、何かお悩みなら黒子に話して欲しいんですの」
「黒子・・・」
「お姉さまがお話にくいのであれば、無理には聞きませんの」
美琴は少し考えて、そして口を開いた。
「昨日ね、佐天さんがアイツのこと好きだって・・・」
「それはそれは・・・」
「それで、佐天さんにね・・・ライバルって言われちゃって」
「お姉さま・・・」
「もうどうしていいかわかんないよ・・・、佐天さんとも友達でいたいのに・・・アイツのことも好きでいたいのに・・・」
「やっとお姉さまの口から、上条さんのことが好きって出てきましたわね」
「黒子」
「愛情か友情か、難しい問題ですわね・・・ですが、黒子にもひとつだけ言えることがありますの、
お姉さまには幸せになって欲しいと、そしてどんなことがあっても最後までお姉さまの味方でいると」
「・・・ありがとう、黒子」
少しだが気が晴れたような気がした、ひとりで悩むより誰かに話したほうが楽になれる。
(それにしても、あの類人猿が・・・お姉さまをこんなにも悲しませて!)
12月23日 17時03分
「上条さん!」
「悪い、少し遅れちまった」
「いいんです、来てくれたことが嬉しい」
「それで話って何なんだ?」
佐天は真剣な顔で上条当麻を見つめる。
「あのっ!私、上条さんのことが好きです!」
「えええ?それは告白でせうか?」
「いろいろ考えたんですが、やっぱりストレートに伝えたほうが伝わると思って」
「ハハハ、生まれて初めて上条さんは女の子から告白を受けましたよ・・・」
「それで返事は?」
「えっと、俺たちまだ知り合って3日だぜ?それでいきなり好きだって言われても・・・」
「人を好きになるのに時間は関係ありませんよ」
「・・・」
俺が好き?
でも何で俺のことを?
スキルアウトに絡まれているところを助けたからか?
昨日の不幸体質の話の同情か?
違う、この子はそんなことで俺を好きになったんじゃない―――
きっかけはそうだったかも知れないけど、上条当麻という人間を見て上条当麻を好きになってくれたんだ。
でも――――俺の気持ちは――――
俺が好き人は――――
「ごめん・・・俺はお前とは付き合えない」
「そう、ですか・・・」
「他に好きな子がいるんだ・・・」
「私の知ってる人ですか?」
「・・・・」
「御坂さんですね?」
「っ!」
「ほんとはわかってたんです、上条さんが誰が好きなのかを・・・、それでも私の想いを伝えたくて、言えなかったら一生後悔するって思って・・・」
「ごめん・・・」
「謝らないでください、上条さん悪いことしてないじゃないですか」
「佐天・・・」
「ひとつだけ約束してください」
「俺に出来ることなら・・・」
「上条さんは幸せになってください、いつも不幸だって言ってるけど、右手のせいだってそんな言い訳しないで・・・あなたが幸せにならないと、私も前に進めないから・・・」
佐天は必死に涙をこらえる。その顔を見て上条は決意する。
「ああ・・・約束するよ」
佐天は涙をこらえた精一杯の笑顔で上条に答える。
「ありがとうございます、それじゃがんばってくださいね!上条さん!!」
去っていく佐天の背中を見て
「御坂、俺はダメな奴だよ。お前の友達を傷つけて、やっと自分の気持ちに気がついた」
携帯電話を見つめつぶやきながら上条は電話をかける。
電話の相手は――――
常盤台寮
(もう佐天さんはアイツに告白したのかな・・・)
(もし、もしもアイツが佐天さんの告白にOKなんかしたりしたら・・・)
(まだ何もしてないのに・・・想いも伝えてないのに失恋なんてやだよぉ・・・)
ゲコゲコゲコゲコゲコ・・・ゲコゲコゲコゲコゲコ
(あ・・・アイツから?)
『もしもし、御坂か?』
「・・・」
『どうした御坂?具合でも悪いのか?』
「べ、別にどこも悪くなんて無いわ』
『それなら良いんだが・・・・』
アイツの声・・・聞くと安心する。
私のことを心配してくれている、嬉しい・・・でも・・・
「ア、アンタからかけてくるって珍しいわね、また厄介事?」
『俺が電話をかけるイコール厄介事を抱えているって方程式なのか?』
「・・・それで用件はなんなのよ?」
『明日会えないか?って思ってさ』
「!!」
『イヴの前日に言われても困るよな・・・、悪い無かったことに』
「待って、行くから!!」
『わかった、それじゃ午後1時にいつもの公園で待ち合わせな!』
「必ず行くから・・・」
『遅れんなよ?』
「誰に向かって言ってんのよ?」
(イヴの日に私を誘うってどういうこと?アイツ佐天さんをフッたの?何で?)
(佐天さんに聞くわけには・・・ダメだよね・・・)
(んもぅわけがわかんない!)
電話を横で聞いていた黒子は決意する。
(上条さん・・・、これ以上お姉さまを苦しめたら・・・そのときは!)
初春の部屋
「初春いるー?」
「佐天さんどうしたんですか!?」
「初春・・・私フラれちゃった・・・」
「・・・今日は気が済むまで付き合いますよ」
「ありがとう初春」
1人の少女の初恋は終わった、佐天は親友の胸を借りて一晩中泣いていた。
12月24日 12時30分 いつもの公園
(佐天さんのこと聞いたらダメだよね・・・)
(とにかくアイツの前なんだから、いつも通りにしないと!)
佐天とのことは触れずに上条と今日を過ごそうと、美琴は決意をする。
(いつまで逃げるんだろ、私)
「なんだ御坂、もう来てたのか」
「遅い!いったい何分私を待たせるのよ!」
「待たせるって言ってもまだ30分前だぜ?いったい何時から来てるんだよ」
「12時・・・」
「30分も待たせたのか、それは悪かったなー」
「別に、私が勝手に早く来ただけだからいいわよ」
いつもの自分に戻れている、でも上条に見て欲しいのはこんな自分じゃない―――
「それで、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「えっ!あー考えてなかった・・・」
「アンタねぇ、私を誘っておいてノープランなんていい度胸してんじゃない!」
「お前を誘うことで精一杯で今日の予定を考える余裕も無かったんです、すいませんでしたー」
上条は土下座する。
「いいわ、それじゃここ行きましょう」
カップル限定イベントと書かれたチラシを見せる。
「またカエルか・・・」
「カエルじゃない!ゲコ太!!」
「え~っと、クリスマス限定でカップルで買い物をすると、もれなくゲコ太ストラップがもらえる―――」
「そうよ!だからアンタと私で、こ、こ、こ恋人に―――」
「あーそれは、今日限定の恋人ごっこってことなのか?」
「そうよ!別にアンタが嫌なら無理に言わないけど・・・」
嫌だ―――
「嫌だ」
「えっ?」
「なぁもう恋人ごっことか、そんな子供の遊びみたいなことやめないか?」
「えっえっ?」
(そうよね、コイツは私のことなんて・・・)
「御坂、あのさ・・・「そうよね、好きでもない女の子と・・・」・・・俺の話を聞いてくれ」
「もうちょっと良い雰囲気で言おうと思ってたんだけどさ、俺は・・・」
「いいのいいの気にしないで、ちょっとストラップが欲しかっただけだから」
御坂は涙を流す、断られたことの悲しみと、上条が佐天を選んだのかという想いが交じり合って感情が制御できない。
「アンタは佐天さんと仲良くやって・・・」
「聞けって!俺はお前のことg」
突然後頭部に衝撃が走る―――― 白井黒子だ
「こんの類人猿があああ!お姉さまを泣かせるとはいい度胸ですのおおおー!」
「黒子・・・」
「さ、こんな類人猿は放っておいて黒子と熱いイヴの夜を過ごしましょう」
「ちょっと待て白井!」
上条が止めるのも聞かず、白井は美琴を連れてテレポートで消えてしまった。
「何やってんだよ、不幸だ・・・」
常盤台学生寮
「申し訳ありません、お姉さま」
「・・・」
「後を付けてたのですが、あそこで泣き崩れるお姉さまを見て黒子は居てもたっても居られず・・・」
「いいの、これ以上アイツに泣き顔見られたくなかったし・・・」
ゲコゲコゲコ
「メール?」
────────────────
TO:御坂美琴
FROM:上条当麻
――――――――――――――――
御坂、話したいことがある
落ち着いたらいつもの公園まで
戻ってきてくれないか?
待ってるからな
「話ってなんなのよ・・・、まさか佐天さんと付き合うことになった報告とか」
「嫌だよそんなの、当麻・・・」
時間だけが過ぎて行く――――
初春の部屋 22時30分
「せっかくのイヴなのに佐天さんを慰めるのに一日消費するなんてー」
「あははー、ごめんね初春~」
「イヴを過ごす男性とかいないですから別に良いですけどー」
そう言ってハッと佐天の方を見る。特に気にした様子は無いようでホッとする。
「はー今頃は御坂さんと上条さんはラブラブか~」
「佐天さん?」
「え?ああもう気にしてないよ、いつまでも引っ張ると前に進めないしね~」
「さすが佐天さんですね!」
「まぁ全部吹っ切れたって言ったら嘘になるけど、それでも前に進むためにね、
もっといい女になって上条さんに後悔させてやるんだから!」
「その意気ですよ佐天さん!」
「でも御坂さんと上条さんが結ばれたら、白井さんはどうするんだろうね~」
「気になりますねー」
「今頃必死になって御坂さんの行方捜してたりして」
「それでも見つからなくて、私に人工衛星をハッキングさせて探させたり?」
「ありえるー」
「ちょっと白井さんに電話してみようっと」
prrrrprrrr
『はい、白井ですの』
「初春です」
『何か用ですの?』
「用ってわけじゃないんですけど、どうしてるのかな?って」
『別にどうもしてないですの』
「御坂さん帰ってますか?」
『・・・』
「白井さん?どうしたんですか?」
『お姉さまは、落ち込んでいらっしゃいますの』
「御坂さんが?何があったんです?」
『あの類j、上条さんに何か言われたみたいですが、会話までは聞き取れなかったので・・・わたくしもどうしていいのか』
「初春、どうしたの?」
「御坂さんが落ち込んでるって」
その言葉に佐天はショックを受けた、上条が好きな人は美琴じゃなかったのか?
今日美琴が告白して、上条がフッタのか?
とにかく真相を確かめる必要があった。
「初春ちょっと変わって」
初春の電話を奪い白井に確認する。
「白井さん、佐天です。白井さんのことだから朝から御坂さんのことを付けていたんですよね?上条さんとのデートを邪魔するために・・・何か変わったことありませんでしたか?」
『変わったことと申されましても、待ち合わせの1時間前にお姉さまが着いて、そこから30分後に上条さんが到着、
その後少し会話したと思ったら突然お姉さまが泣き出されて・・・、わたくしはいてもたってもいられず』
「現場から御坂さんを連れて行ったと・・・」
『ですの・・・』
「そうですか、ありがとうございました」
電話を切ると佐天は自分の携帯で上条に電話をかけた。
prrrrr prrrr
『もしもし・・・』
「もしもし佐天です、上条さん今どこにいますか?」
『いつもの公園だけどどうした?』
「どうした?はこっちのセリフですよ!一体御坂さんに何を言ったんですか?」
『まだ何も言ってないはずなんだけど』
「でも、白井さんは御坂さんが泣いてるって・・・」
『御坂と今日どうするか話をしただけなんだけど・・・』
「具体的にはどんなことですか?」
『今日の予定をどうするかって話になったときに御坂がチラシを見せて、カップル限定のイベントに行こうって誘ってきて、もう恋人ごっこは嫌だって断ったら・・・、』
「それで?」
『御坂が急に泣き出して、説明をしようとした瞬間に白井が俺にドロップキックをかましてきて、御坂を連れ去った・・・』
「それで?」
『だからそれだけ・・・』
「それで上条さんは何をしてるんですか?」
『常盤台の寮は男じゃ入れないからな、電話しても出てくれないし、御坂に説明するから戻ってきて欲しいとメールを送って、公園で待ってる』
「・・・いつまで待ってるつもりですか?」
『んーとりあえず、今日が終わるまで待ってようと思う・・・それで来てくれなかったら、何か別の手を考えるよ』
「わかりました・・・」
『佐天?』
電話は切れてしまった
「御坂さんと会ってくる」
「佐天さん!」
時間はもう午後23時を回っていたが佐天と初春は常盤台の学生寮に向かう。
学生寮に到着したが入り口で寮監に止められる。
「通してください!私は御坂さんに用があるんです!」
「お前達は御坂の友人の・・・こんな時間から御坂に何の用だ?」
寮監も夕食に御坂が来なかったことを知っていて気にしている様子だったが、規則を破るわけにはいかない。
白井は御坂に付き添っていたが、外がうるさいのでテレポートで向かう。
入り口では佐天と初春が寮監と向かい合っていた。
「一体これは何の騒ぎですのって初春と佐天さん?あなた達何をやってますの?」
「御坂さんに会いに来ました」
電話の様子から佐天が美琴のために来たことはすぐにわかった。佐天も上条が好きだったはずなのに、美琴のためにここに来た。その中にどんな感情があるかわからないが、佐天を信じて美琴の元に送ることに決意した。
「そうですの・・・ここはわたくしに任せてくださいですの」シュン
佐天をテレポートで208号室に送る
「白井っ!」
「お姉さまの笑顔を取り戻すためには必要なことですの」
「覚悟は出来てるんだろうな?」
「罰というならすべてが終わった後にして欲しいんですの、わたくしにはお二人を見届ける責任がありますので」
「・・・わかった」
寮監と白井は208号室に向かう。
テレポートで208号室に送られた佐天は泣いている美琴を見る。
「御坂さん・・・、こんなところで何してるんですか?」
「・・・」
「上条さん待ってますよ?」
「・・・行きたくない」
「フラれるのが怖いんですか?」
「っ」
「あの人のこと好きじゃなかったんですか?」
「・・・」
「あきらめるんですか?」
「・・・・」
「まさか自分の気持ちも伝えないで好きになってもらおうなんて都合のいいこと思ってるんですか?御坂さんまだ何もしてないじゃないですか・・・、
恋人ごっこ?それじゃ子供の遊びって言われても仕方ないですね!」
「佐天さんには私の気持ちなんてわからないのよ・・・」
その一言に佐天がキレた
「わかりませんよ・・・、わかりたくも無いです。私は昨日上条さんに告白しました・・・、私の想いは届かなかったけど・・・、でも・・・後悔なんてしてませんよ・・・、
失恋が怖くて泣いてるだけのアンタの気持ちなんてわかりたくない!そんなアンタにあの人のことを好きだなんて言って欲しくない!」
「・・・」
「失恋が怖いなら最初から好きになるな!あきらめるんだったらフラれてからあきらめてよ!」
「私の好きだった人をこれ以上不幸にするな!!」
その言葉に美琴は顔を上げる、そこには涙を流している佐天の顔が――――
「佐天さん・・・ごめんなさい」
「早く行ってあげてください、上条さんきっと待ってますよ」
「ありがとう」
部屋の入り口には白井黒子と寮監が立っていた
「こんな時間からどこに行く?」
「私、行かないと!罰なら後でいくらでも受けます!だから通してください!お願いします!」
思いを込めて美琴は叫ぶ。
「規則破りを許すと思っているのか?」
「お姉さま行ってくださいまし」シュン
白井が御坂を寮の外にテレポートさせる。
「白井、覚悟は出来てるんだろうな?」
「ええ、もう思い残すことはありませんの、次にわたくしが目覚めるときにはお姉さまの笑顔は戻ってると確信してますので」
「そうか・・・」
「寮監?」
「確か佐天涙子だったか・・・、今日はもう遅い、空き部屋があるから今日はそこで休め、白井案内してやれ」
「規則破りの罰はいいんですの?」
「ほう?そんなに私に首を刈られたいのか?」
「そのようなことはあろうはずがございません!佐天さん初春、案内しますの着いてきてくださいな」
「あっはい・・・」
「それと佐天さん、ありがとうございましたですの」
「えっ?私は別に・・・」
「それでもお礼を言わせてください、わたくしではお姉さまの悲しみや迷いを拭い去ることは出来ませんでしたの」
「白井さん・・・・」
(お姉さま、がんばってくださいですの)
23時58分
上条当麻は公園のベンチに座っていた。
(もう今日が終わるか・・・)
(不幸だな・・・)
当麻!自分を呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと御坂美琴が息を切らせて立っていた。
「御坂!」
上条当麻は美琴の元に駆け寄り強く抱きしめた。
美琴は泣いている。
「と、うま、ご、めん、わた、し」
「何も言わなくていい」
上条は美琴を強く抱きしめる。
「いつ不幸が起きるかわからないから、今すぐ言う!俺の本当の気持ちを聞いてくれ、俺はおま「待って」えの・・・へ?」
「私に・・・先に私に言わせて」
「・・・」
美琴は上条の言葉をさえぎる
そして自分の想い、わずかな勇気を振り絞る
「素直になれずにアンタことを名前で呼べなくて、会うたびに電撃ばっかり飛ばして・・・
罰ゲームとかアンタの気を引くためにいろいろやったんだけど、私のことなんか鬱陶しいビリビリ中学生としか見てないかもしれないけど・・・」
一呼吸おいて涙にぬらした頬と満面の笑みで――――
「上条当麻さん、あなたのことがずっと好きでした」
ずっと思っていた言葉
ずっと言えなかった言葉
ようやく今言うことが出来たのだ・・・
少女の想いを乗せて、少年に届けた言葉・・・
「待ってる時間ずっと不安だったんだ、俺のことを嫌いじゃないのかと、だって名前で呼ばれたこと無かったし・・・
会うたびに電撃は飛ばしてくるし、何かあるとすぐ怒るし・・・」
上条は自分の頬に涙が流れるのがわかる。
「でも、やっぱり俺は不幸だな・・・」
「え?」
「俺が言おうとしていた言葉を先に言われたんだからな」
上条は満面の笑みで――――
「御坂美琴さん、あなたのことが好きです俺と付き合ってください」
「うれしい・・・」
上条は美琴の頬に両手を当てる
「ん・・・」
美琴の唇に柔らかくて暖かい唇が触れるのが分かった。
ーFINー