とある少年の教育実習 4
フラグ
上条は校庭で常盤台の女子中学生達と向かい合っている。
まるで決闘でも行いそうな雰囲気だが、あくまでも授業の一環だ。
まぁ、レベル3以上の能力者と戦う……
というか一方的に攻撃が許された鬼ごっこを行うのだから決闘よりもたちが悪いのかもしれない。
それでも、上条だけでなく生徒側にも緊張の糸が張られている。
このような空気になってしまったげいいんは上条本人だ。
いや、要因は他にも色々あるが正確には上条の未知なる力(生徒側から見て)に対してだ。
集会の時から上条の謎だらけの能力を見ている者もここにいる。
さらにスピーカーを切り替えてからの秦舞との会話からは謎をさらに深める単語も飛び交っていた。
ちなみに、上条は人間ではない説は上条自身が晴らそうと試みたが未だに疑いの目を向けられている。
そんな雰囲気の中、携帯越しで状況を感じ取れてないと思われる秦舞は話を切り出す。
秦舞 『それじゃあ、楽しい鬼ごっこを始めようか♪』
上条と白井は秦舞の声が発せられている携帯をガン見しながら心の中で心の中でつぶやいた。
上条・白井 (こいつ、絶対にわざとだ((ですわ))。)
しかし、白井にとって、こうして遊びという形ではあるが上条をコテンパンにできるかもしれない
場面は中々ないので雰囲気としては少々乗り気である。というか、内心ではかなり喜んでいる。
その喜びは上条にフラグを立てられた心の部分も含まれているが、その心は上条への復讐心で埋もれている。
とくにもかくにも、上条の(命がけに近い)鬼ごっこが始まる。
秦舞 『上条君、準備はいいかな♪』
上条 「はぁー、いいでせうよ」
白井 「類人えn、上条先生。手を抜かずに本気でお願いしますの。そうでないと怪我しますわよ」
上条 「ほぼ、類人猿って言いきってるよな?てか、本気でやらなければ怪我するってルール違反だよな?
怪我しない程度になら能力OKってハズだよな!?」
秦舞 『私がルールを決めたから私にきずかれなければOKだよ♪
気付かれなければ、それも技の一つってやつだよ♪』
上条 「いや!?アンタは携帯越しだから、そんなのルール違反ジャンジャンし放題じゃねーか!!」
白井 「いい事聞きましたわ。それなら、わたくしは本気でやらせていただきますわ」
秦舞 『おう、どんどんやってしまえ♪』
上条 「アンタが後押しをするな!!?てか、気づかなければOKとか言いながら今、違反する事を聞いたよな!?」
秦舞 『ん……な、何のことかな~?』
上条 「とぼけた!?しかもとぼけ方が下手すぎだよ!!」
秦舞 『さぁーて、準備はいいかな?よーーーーーーーーーい』
上条 「ちょっ!待てっ、つか取り囲まれてるから鬼ごっこどころじゃ!!」
秦舞 『スタート♪』
秦舞の始まりの合図とともに生徒側に居た白井が上条の視界から消える。
上条は慌てて姿勢をかがめて後ろに飛び退く。
飛び退きながらの上条の視界に白井が瞬間移動してドロップキックする姿が映る。
白井は上条の背後からドロップキックをくらわえるために瞬間移動で移動したが視界に上条はいない。
上条はとっさのことだったので深くまでは考えいなかったが
どちらの方向から来られても視界の中に納まるようにという行動だった。
白井は一瞬戸惑うがすぐに瞬間移動を実行。高い位置に移動し全体を見渡せるようにする。
上条は白井が高い位置から自分の居場所を確認してきたので、慌てて後ろに飛び退いて崩していた体勢を持ち直し第二波に備える。
白井は今度は上条の左側に瞬間移動を実行し、ジャッジメントの訓練でも行っている足払いをする。
こけそうになる上条は身をひねりながら、うつぶせの状態で両腕で衝撃を殺しながら横に転がるように白井と距離をとる。
そんな、一瞬の二人の攻防に周りの生徒は少し茫然としていたが
その中の一人が我に返り上条たちの攻防に参加して行き、それが引き金になり他の生徒たちも能力を行使する。
ある者は水球を放ち白井は巻き添えを喰らわないように瞬間移動で上条から離れる。
上条は姿勢を崩しているので避けれずに、水球を放った者は当たってしまう事に慌てだす。
しかし、次の瞬間には水球は右手に防がれて何もなかったかのように消えていく。
何が起こったのか分からずに茫然としていたがすぐに我に返り上条の元に駆け寄る。
湾内 「だ、大丈夫ですか?お怪我はございませんか?」
上条 「え?あ、あぁ~、大丈夫だぜ。俺はそういう能力持ってるから、は、ははは……」
湾内 「そ、そうですか?それなら良かったですが」
白井 「大丈夫ですわよ。そのくらいでやられるようなたまであれば、今頃はお姉さまに黒こげにされえてますわよ」
湾内 「え!?!?」
白井 「この猿人、もとい上条先生はお姉さまと対等に渡り合えるのですわよ?
時にはこんな猿人ッ訂正上条先生が圧勝してしまうほどですの。
……!ピカーン(閃き音)」ニヤー
生徒一同 「えっ、え~~~~!!!!!」
上条 「おい、白井…何を考えているかは知らないがそんな大層な能r「そうですので!!!!」」
白井 「皆さんは本気でやっても大丈夫ですの!
というより本気でやっていかないとこの猿人に勝てませんわよ」
上条 「おい!お前わざと周りを煽ってるだろう!?そして呼び方猿人になってるぞ!」
白井の発言によって身の危険を感じ慌てだす上条。だが、今頃慌てだしても後の祭りである。
そしている間にも生徒たちは、さらに壮大な想像を繰り広げる。
ザワザワ
生徒9 「なんと、あの殿方は御坂様に勝ったことがあるのですか!?」
生徒10 「これは、本格的に人間ではないという説が一層真実味を増しましたわ」
湾内 「あの白井さんが言うのですから間違いありませんわ」
白井 「(人間でないと言った覚えはありませんが)そうですの!
一番お姉さまの近くにいた、わたくしめが言うのですから間違いはありませんの!!」
ザワザワザワ
ドンドン人間ではないという誤解が広まる一方で自分の身の危険度が
グングン上がっていってるのを上条は感じずにはいられなかった。
そんな中何を思ったか一人の生徒が上条に話しかけた。
生徒11 「上条先生、すみません!!」
上条 「へ?っ!?」
話しかけた生徒は右手を前に突き出したかと思うと、その手から火球が飛ばされてくる。
どうやら、話しかけたというよりは上条の実力を確認しようとしたが身構えてない
上条にいきなり攻撃するのは気がひけたので、こちらに視線を向かさせたという感じのようだ。
だが、人に(人ではないかもと思いこんでいるが)怪我をしてしまうかもしれないほどの能力を
使うのは大覇星祭のときなど限られた時期のみなので少し慌ててしまい声を掛けてから間をおかずに攻撃してしまう。
これでは、不意打ちとそんなにかわらないのだが慌てている彼女にはわからない。
上条もいきなりの攻撃はたまったもんじゃないが、そこは例によって例のごとく
持ち前の人間離れをした反射神経を駆使して己の唯一の武器である右手でかき消してしまう。
パキーン
上条 「……」ダラダラ
生徒一同 「……」
上条は考えた。今この現状で避けずに右手で能力をかき消してしまった事の意味を。
生徒たちは今、上条が人間ではないかもしれないから本気でかかってもいいのではと迷いがあり
あと一歩を踏み出すと校庭でプチ戦争が起こるかもしれないという危ない状態である。
いわば、ダイナマイトの導火線に後は火をつけるだけという状況下で上条自身が火をつけた感じだろう。
何人かの生徒が無言で右手を突き出す。笑顔でイージス艦を沈めかねない少女たちは無言で上条を見据える。
そして、なんの合図もしていないのにほぼ一斉に攻撃を開始した。
上条は攻撃を回避しながら今に最もふさわしい言葉を叫ぶ。
上条 「不幸だーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
キーン、コーン、カーン、コーン
授業は終わった。結果だけを言えば上条は逃げ切った。能力の攻撃の雨を浴びながら、逃げ回る上条。
生徒たちのほとんどは上条に攻撃を当てることに必死になりすぎて鬼ごっこであることを忘れていた。
いっそのこと捕まってしまえば楽ではないか?と上条は考えたが
タッチしてくる者がおらず、こちらから近づけば能力による攻撃。結局逃げ続けるしかなかったのだ。
上条 「うぅ、なんか無駄に疲れた気がする」
白井 「まぁ、だらしないですわね。それですと先が大変ですわよ」
上条 「うるせー!周りのやつら煽ったお前には言われたくはねぇーよ」
白井 「あら、わたくしは授業をより良いものにしようと本当の事を申したまでですわよ」
この授業中に病院送りになりそうな攻撃を何回受けたか。
上条はそう考えたが数を数えると鬱になりそうな気がしたのでやめにして生徒たちに適当に解散を報告する。
生徒たちは口々に「ツギノジュギョウデハカナラズ」とか「コレデアノトノガタガニンゲンデハナイトイウセツガノウコウニ」とか、ささやき合っている。
ちなみに秦舞は途中で電話切っていた。タイミング的には開始の合図を出して30秒後に切っている。
携帯での審判にはあまり期待はしていなかったが、せめて繋げとけよと上条は携帯をにらみながら思った。
そんなこんなで上条は疲れた体を引きずるように生徒たちの先頭から少し後ろを歩く。
上条が着替えた更衣室は方向的には一緒だ。白井も生徒たちの先頭らへんを歩いていた。
だが、白井は考え事にふけっていた。考えている内容は上条の事についてだ。
今回の授業でいつも以上に身近な位置で上条を見て、上条の異常さを感じたのだ。
もちろん、今までにも何度か戦いを共に経験していたので上条が自分達のいる場所とは少し違う事は気が付いていた。
しかし、今回の授業では、一クラス対一人の上に攻撃できるのは一方的にしか、できないという理不尽な状況なのだ。
攻撃や反撃が出来るならまだしも、避ける・逃げるという選択肢だけで約一時間も「戦い」抜いたのだ。
自分のいるところと少しどころか全く違う遠いところに上条が立っているように感じるのだ。
白井 (上条さんはいったい何なんですの。
ここまで違う場所に立っておきながら気が付けばこちら側にも立っていますし
本当にわからない方ですわ。)
考えても考えても上条が何故戦闘慣れしているかはわからないだろう。
白井は実は魔術を知らない。上条と一緒に戦ったことはあるが、そのほとんどが科学側の事件なのだ。
美琴でも魔術と敵対したが詳しくはわかって無く魔術という自分の知る力とは違う力が存在する程度にしか認識してないのだ。
ちなみに、上条に何回か説明を求めた美琴だが当たり前のように、はぐらかされている。
少ししか魔術に触れていない白井では魔術の存在には気が付けないのは当たり前である。
そうして深く考え事していたので白井は……周りの状況に気が付くのが遅れた。
生徒? 「キャーーーーー!!」
白井 「え?」
誰からともなく起きた悲鳴で白井は意識を中から外へと向ける。周りを確認するも先頭を一緒に歩いていた他の生徒たちはおらず。
どこにいるのかと見てみると来た道を戻るように走っていた。さっきまで考えことをしていた白井には何が何だか分からない。
すると急に周りが薄暗くなった。慌てて生徒たちが逃げた方向の反対側を確認する。
確認をして白井は絶句する。耐震補強工事の作業を行う足場がどういう訳かこちらへ倒れ始めていた。
今から走ってもよけきれない段階になっていた。だが白井の能力は「空間移動」である。
走っても間に合わない距離でも白井には関係の無い話だ。
なので白井はいつまでも呆けずに即座に「空間移動」の演算をはじめ、安全地帯へ飛ぼうとした。
しかし、まるでタイミングを計ったかのように轟音が鳴る。
カーーン!!!!
白井 「!?」
パイプがどこかで落ちたのだろうか。金属が固い場所に思いっきりぶつかる音がする。
だが、白井にはそんなことどうでもよかった。今、最も大事なことは今の轟音のせいで「空間移動」が失敗したという事実だ。
11次元という複雑な演算を行う事によって初めて成功する「空間移動」は気が散ってしまったりすると途端に使えなくなる。
そして、一回失敗してしまえばそれを立て直すことも容易ではない。
戦闘などの緊張した場面では不意を突いた攻撃などで気を散らされることもあったが、その時は上条関連や事件性のある物だったので
最初から気を緩めず何事にも対処できるように引き締めた精神状態だった。
だが、今回は見た感じは完全に事故。安全に避難していたら白井は組み立てミスがあったのだろうと振り返っていたかもしれない。
だから、白井は気を緩め油断していた。自分が能力を1回使えば回避できると。
そんな状態で不意を突かれれば、立て直そうとしても焦りを誘発するだけである。
案の定、白井は焦り、それが演算の邪魔になり結果、能力が使えないという悪循環になっていた。
白井は目を瞑り、腕をクロスにしてガードの姿勢を取りながら覚悟した。自分は最低でも大けがをすると。
そしてその後病院へ心配しながら見舞いに来てくれるであろう人物を思い浮かべていた。
同級生、初春に佐天、寮監など、心配させた人たちにはなんて謝り、感謝しようと考える。
だが、最後に思い浮かぶのは美琴と上条だった。この二人は誰よりも心配しているだろうなと思い浮かべながら
次の瞬間、体に衝撃が来る。
ガラガラ ドーーン
白井 「?」
白井は違和感を感じる。
まずは痛みだ。目を瞑った後、ドンという何かがぶつかる衝撃と背中を地面にぶつける衝撃が来たがそれだけだった。
あまりの痛みに脳が処理しきれていないのかもしれないと考えたが、それだと次の違和感が説明できない。
それは、頭が地面にぶつけたときの衝撃が無かったことと目をつぶっている今も感じる自分に以外のぬくもりだ。
最初は自分の血がかかっただけかと思ったが傷みすら感じないほど感覚がマヒしているのなら
ぬくもりを感じること自体がおかしい。ぬくもりだけを感じたとしても血であるならいつまでも熱が冷えないのがおかしかった。
恐る恐る目を開いてみると目の前には自分の後頭部に腕を回し崩れる足場からかばうように覆いかぶさる上条がいた。
白井 「!?だ、大丈夫ですの!?どこか怪我はしてませんか!?」
上条 「ちょっと頭を打ったが大丈夫だ……そんなことよりお前は怪我してねえか?」
白井 「そ、そんなことよりって!……わたくしは上条さんのおかげで何ともありませんわ。
上条さんこそ頭を打ったのであれば大事になる前に病院へ行きませんと!」
上条 「あぁー、病院には後で行くよ。だが、今はやることをやらないとな」
白井 「え?」
上条がそういったかと思うと白井の上から、どきながら真剣なまなざしになり周りを見渡す。
今回の工事はセメントも使っていたらしく、空気中には灰色のセメントの粉が舞っており視界が確保されていなかった。
そんな視界の遮られた状況下で上条は確信を持っているような声で叫んだ。
上条 「出てこいよ。この事故を起こした犯人さんよ」
上条はとぼとぼ疲れ切った表情で歩いていた。この後にも不幸が待ち受けているのかと思うと足が進まないが
この現実から逃避すれば、後に舞っているのは留年の二文字だ。
なので聞きたくもないがこの後の予定は全くもってわかっていないので秦舞に予定を聞かなくてはならない。
場合によってはゆっくり着替えている暇が無くなってしまう。
そんな訳で教職員用の携帯で秦舞に連絡を取ろうとポケットの携帯に意識を向けた時。
生徒? 「キャーーーーー!!」
上条 「え?」
前を歩いていた生徒の誰かが悲鳴を上げた。慌てて悲鳴の聞こえた方を確認してみる。
すると視界に入った光景に上条は唖然とする。
更衣室に向かっていた生徒たちの先頭付近の耐震補強工事の足場が崩れ始めていたからだ。
生徒たちはパニックになりながらも来た道を戻るようにこちらへ逃げてくる。
だが、上条の目には一人の少女が映っていた。彼自身もよく知る白井だ。
何か考えことをしていたのだろうか、彼女は一人だけ逃げ遅れていた。
上条は白井なら、能力を使えば簡単に難を逃れれるだろうと思っていた。
そう思っていながらも上条は気が付いたら走っていた。
何で、走っているのかを今の上条に聞いたとすれば、答えられないだろう。
ただ、何の前触れもなく足場が崩れて状況に悪い予感がしていた。
学園都市の工事は安全性が高い位置づけがされている。絶対に事故が無いとまでは言わないが確率は低い。
おまけに、ここは学園都市でも指折りの名門校の常盤台だ。
生徒に怪我を負わせてしまえば工事会社は、ただでは済まないであろう。それこそ細心の注意を払っている。
そのうえで起こってしまった事故、言葉では言い表せない悪い予感は上条の心をざわつかせる。
走っていると白井も逃げるために能力を行使しようと身構えるのが見えた。
自分の悪い予感は気のせいで、走ってきたのは徒労になるかな~と考えたかった。
だが、悪い予感が的中する。どこかで金属が固い所に当たる轟音が響く。
白井はその轟音に能力使用を阻害されたらしく、まだその場に残っていた。
もう一度、能力を使おうとしているが焦っているためか成功する気配が無い。
上条は最初から走っていてよかったと思った。
そう思いながら、全力で走り白井を崩れる足場から守るために抱きかかえるように飛び込んだ。
崩れた後は特に二次災害などは特に起きなかった。怪我も特に目につくものはなかった。
足場を組み立てていたパイプが崩れた時に何本か飛んできて頭を打ったので少しズキズキするのと
とっさに頭を守るためにまわした腕が地面とすれていたかったがそれだけだ。
これだけの惨事で、この程度ですんだのは本当に奇跡的だった。
自分の下にいる白井は、まだ状況を把握しきれていないため目を瞑りながら身を固めていた。
ただ、自分の状況に疑問を感じ始めているのか疑問符が浮き始めている気がする。
見た感じは大きなけがはないのでほっとしながら念のため周りに他に逃げ遅れた生徒がいないかを確認する。
上条 「!……」
そこで、不自然なものを目にしてしまう。上条は考える。自分が見てしまった物が意味する事を。
そこから、自分の考えの信憑性を導く。
ここで白井もやっと自分が無事なことや上条に守られたことを認識して声を掛けてくる。
白井 「!?だ、大丈夫ですの!?どこか怪我はしてませんか!?」
上条 「ちょっと頭を打ったが大丈夫だ……そんなことよりお前は怪我してねえか?」
白井 「そ、そんなことよりって!……わたくしは上条さんのおかげで何ともありませんわ。
上条さんこそ頭を打ったのであれば大事になる前に病院へ行きませんと!」
上条 「あぁー、病院には後で行くよ。だが、今はやることをやらないとな」
白井 「え?」
とりあえず、白井は大丈夫なのかを確認して一安心するが、次にやるべきことのために立ち上がる。
頭を打ったせいか少しクラクラする。おまけに視界はセメントの粉が舞っているため全然見えない。
だが問題はちゃんと解決しておかなければならない。
きちんと『最後』まで。
上条 「出てこいよ。この事故を起こした犯人さんよ」
白井は意味がわからなかった。
自分を守ってくれた上条はやることがあると言って立ち上がると真剣な表情で犯人出てこい的な事を叫んでいる。
自分も立ち上がり周りを見渡す。相変わらずセメントの粉が舞っており視界が悪い。
なので、何を根拠にしてこのように言っているのかがわからないので理由を上条に聞いてみる。
白井 「上条さん、いったい、どういう事ですの?」
上条 「……」
白井 「か、上条さん?」
声を掛けるが上条は真面目な面立ちのまま周りを警戒おり白井に応えない。
何が何だか分からない。そんな状況の中、新たに人影が現れる。
その人影に上条は警戒する。その人影は警戒心を向けられている事に気が付いたようで
警戒を解こうとするような口調で話しかけてきた。
?? 「怪しいものではありません。風紀委員の戸藤(とどう)と申します」
こちらへと近づいてきたので人影の姿がはっきりと見えるようになった。
そこには、高校二年生ぐらいのきちんと制服を着込んで袖には風紀委員の腕章が付いている男がいた。
見た感じは清楚で礼儀正しく、その見た目にそぐわぬ言葉遣いで自己紹介を終えている。
白井は何が何だか分からない混乱状態だったが目の前の人物が風紀委員であることがわかったので
自分も仕事をこなそうと状況についていけていない脳を働かせる。
白井 「わたくしは風紀委員の白井と申します。どうして、こちらに?
何か、事件でも遭ったのしょうか?状況説明をお願いできますか?」
戸藤 「ある危険人物がこの学舎の園に侵入しまして、私はその人物を追っているのです」
白井 「そのような事があったなら先生方から報告があっていいと思いますの?
緊急用の連絡をする携帯をここでは先生方全員が持ち歩いていますから」
そう言って白井は上条の方を見る。後ろで話を聞いていた上条は白井の意図を察し
ポケットから職員用の緊急の形態を取り出し戸藤に見せる。戸藤はそれを見ながら推測を述べる。
戸藤 「そのことに関しては、たぶんつい先ほど侵入したことが判明しましたので連絡が遅れているのだた思います。
状況説明はもうよろしいですか?この事故がその侵入者によって起こされたものかどうかはわかりませんが
用心することにこしたことはありません。なのでほかの生徒の避難誘導をお願いできますか?
私はこのあたり一帯を捜索します」
白井 「わかりましたわ。上条さんも手伝ってくださいまし」
上条 「あ、あぁ…………」
上条と白井はさっそく生徒の避難誘導を行うため、生徒のいるグラウンドの方にに走っていく。
戸藤も捜索を行うために上条達が行った方向とは反対方向に足を運ぶ………が
その歩みも二、三歩で止まって上条達の方向へ振り替える。何か言い忘れたことを言おうとしているようにも見える動作だが
それは違う、そのためだけなら彼の手に『火球』が生み出される必要はない。
生み出された火球を戸藤は高らかに掲げ、そのまま躊躇することなく上条達に向かって投げ振り下ろされた。
白井はそれに反応することはできなかった。火球は上条達がいる地点で爆発した。
ドォォォーーーーーーーーーーン
紅蓮の爆炎によって照らされた戸藤の顔は先ほど会話していた時からは想像もつかない極悪な笑みを浮かべていた。
そう、それはまるで『スイッチ』切り替えたかのように。