とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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とある少女と堕ちた少年




序章 悪夢を越えた先にある闇


美琴と別れて鉄橋を進んでいると、上条の携帯が突然鳴った。
発信元を見ると携帯に登録されていない番号であり出るかどうか迷ったが、
直感で出なければ何か良くないことが起こる気がして上条は怪しみながらも携帯の通話ボタンを押す。

「もしもし、上条ですけど…」

しかし相手からの返事はない。
上条は悪戯または間違い電話かと思い通話を切ろうとした瞬間、携帯から男の声がした。

『いや、まだ切ってもらっては困るんですがね』

その言葉に上条は違和感を覚える。
辺りを見渡すと鉄橋の上にいるのは上条と美琴だけだった。
それに加えて美琴とはすでにかなりの距離が開いており電話の声の主が例え美琴の知り合いだったとしても、
美琴のいる位置から上条が電話を切ろうとした動作が目視出来るとは思わなかった。
上条は周囲を警戒しながら電話の声の主に応える。

「何者だ?」

『学園都市統括理事長にお仕えしている者です、そうですね取り敢えずは電話の男とでもお呼びください』

ふざけた男だと上条は心の中で舌打ちする。
学園都市の統括理事長といえば要するに絶対能力進化の実験に許可を出した人間ということだ。
そしてその人間に仕えるという男がこのタイミングで実験と止めた自分にコンタクトを取ってきた。
どう考えても良い話のはずがなかった。

「それで統括理事長の部下が俺に何の用だ?」

『18億558万』

「は?」

『あなたが絶対能力進化の実験を中止に追い込んだことで無駄になった妹達の単純な製造費です』

上条は電話の先の男が何を言いたいのか悟った。
妹達を生み出すのに掛かる単価はおよそ18万円とされている。
そして犠牲になった妹達が約1万人、
上条が実験を止めたことにより1万人の妹達の製造費である18億円が無駄になったと電話の男は言っているのだ。
ふざけているにも程がある、あれだけの非人道的な実験を行っておきながら今尚妹達のことを実験動物のように語っている。
上条は電話の先の男に激しい怒りを覚えるのだった。

『まあその程度の金額は我々にとっては端金です、痛くも痒くもありません。
 特にあなたが気に病む必要はありませんよ。
 寧ろ私達としては拳一つで学園都市の第一位を倒したあなたに敬意を表しています』

「なら何でわざわざ俺に連絡をするような真似を?」

『統括理事長の権限で超電磁砲を廃棄することが決定しました』



電話の男が言っている言葉の意味が上条は理解出来ない。
美琴を廃棄する?
常識的に考えて学園都市の第三位に君臨する美琴を学園都市が簡単に処分するとは考えづらい。
上条はブラフとも考えるが、上条の心を読んだかのように電話の男は言った。

『ハッタリではありませんよ。
 以前から超電磁砲の問題行動には手を焼かされていましてね。
 そして今回の件で超電磁砲によって破壊された研究施設の損害は数兆円に上ります。
 例えレベル5の経済力を以ってしても簡単に返済することは出来ないでしょう』

「元はといえば、お前らがあんな最低な実験の許可なんて下ろしたからじゃねえか!!」

上条は男のあまりに身勝手な言い分に拳を固く握り締める。
しかし上条の怒鳴り声を意に介した様子もなく男は言葉を続けた。

『あなたの仰る通りです、全ての原因は学園都市の[闇]にある。
 そしてその闇は超電磁砲を制御できない危険分子として判断したというわけです』

「…御坂を救うためにはどうすればいい?」

『あなたならそう尋ねられると思いました。
 簡単なことです、あなたも闇に堕ち我々の言うことに従う道具になればいいだけですよ』

「俺にあんな実験を行っているような奴らの片棒を担げって言うのか!?」

『限りなく善人に近いあなたが我々の行っている実験に手を貸すとは思っていません。
 あなたには統括理事長が不要あるいは危険だと判断したものの駆除を行っていただきたいのです。
 もちろん駆除する対象の詳細なプロフィールは事前にお渡しした上で仕事を引き受けるかどうかの判断もあなたに委ねましょう』

「条件が甘すぎないか?」

『我々にとってあなたはジョーカーなんですよ、特に外部の能力者に対しては』

外部の能力者、それが指す言葉について上条が思いつくことは一つしかなかった。
魔術師…超能力とは異なる異能を操る人間。
確かに彼らへの対抗手段として上条の右手は切り札になりうる存在だった。

『だから我々としてはあなたをぜひとも学園都市に繋ぎとめておきたい。
 まあ超電磁砲はあなたに対する人質みたいなものですかね』

断れば美琴が消される、上条に選択の余地はなかった。
誰かのために命を投げ出す覚悟を見せた心優しい少女…、彼女は自分に初めて誰かを守るという決意を教えてくれた。
美琴がこのことを知ったら今度こそ致死量の電撃が飛んできそうだが、それでも上条は美琴の笑顔を守りたかった。
それが例え美琴を裏切ることになろうとも…

『あなたが我々の提案を受け入れれば超電磁砲の身の安全の保障だけでなく、可能な限りあなたの提案も受け入れましょう。
 それだけあなたの存在が重要だという表れだと思って結構です。
 ふふ、このことを第二位が聞いたらどんな反応をすることか…』

「分かった、俺がアンタらに頼みたいことは…」

こうして少女達を絶望の淵から救った少年は自ら闇へと足を踏み入れていく。
闇へと堕ちた少年に何が待つのか、そしてこの物語が何処に行き着くのか…誰もまだ知らないのだった。









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