とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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16巻if ~あの時あの手を掴めたら~




「私だって、戦える」
第二十三学区に上条と美琴はいた。
上条は入院服で、点滴のホースがそのままくっついている。
目もよく見ないとわからない程度だが、左右の視点があっていない。
これでは曇りガラス越しに見ているようなものだ。
「み、さか?」
そんな状態の上条を放っておくことなど美琴にはできない。
「あんたはあの時、私と妹達のために戦ってくれた。だったら今度は私が戦う。たまには見ているだけの人の気持ちも味わいなさい」
普段の怪我は不良との喧嘩によるものだと思っていた。
学園都市最強の超能力者との死闘なんて、一生に一度あるかないかのものだと思っていた。
けれども上条はそんな戦いを日常的に行っていたのか。
精神的になのか肉体的になのかはわからないが、これでは記憶を失ってもおかしくない
「悪い、けど俺が行かなきゃ。今もあいつらは俺のために戦ってくれてるんだ。お前は早く帰れよ」
そのまま上条は歩き始めてしまった。
止めなくてはと美琴は思い、
「知ってるわよ。あんたが記憶喪失ってことぐらい」
足を止める上条、
「記憶がなくなるようなことを、どうしてあんたは繰り返せるの。死んでもおかしくないのよ」
その顔は隠していることばバレたというより、自分の知らないことを突きつけられたようだ。
「そうか、知っちまったのか、お前」
何故だか、美琴にはその顔が少し笑っているように見えた。
「けど、違うんだ。記憶を失ったって、『上条当麻』という人間は変わらないと思うんだ。記憶をなくしたって、それで助かったやつがいるんだ。後悔なんてしてない」
美琴の中の『何か』が鮮明になった気がした。
今まで曇っていた『それ』に気づいて、言葉が出せなくなった。
「そういうわけだから。じゃあな、御坂」
行ってしまう。だけど、
(このままじゃ、ただ待っているだけじゃん)
だが、それでいいのか?
(じゃあどうすればいいのよ。電撃で意識を落とせばいいわけ?無理やりにでも、病院に連れていけばいいわけ?)
そんなことをしたって、彼はまた病院を抜け出すに決まっている。
止めることはできない。、
自分が代わりに行くことも。
(それにあいつは、何のために戦うの?)
わからない。
戦う理由が。
自身を犠牲にできるその訳が。
ならば、と思ったら、自然と足が走り出す。
さっきまで重かった足が軽く感じた。
「待ちなさい」
追いかけて、上条の手を掴み取る。
上条の答えを見てみようと思った。
自分の命を投げ打ってまで守ろうとするものを、
その先の未来を。
「もう待っているだけはいやのなの」
掴んだ手に力がこもる。
「『この気持ち』に気づいちゃったから。もうあんたのそんな姿を見たくないから。もう待っているだけじゃ嫌だから」
「なに・・・言ってんだよ」
「どうせ言ったって聞かないなら、私も連れて行きなさい」
「おい、なに、言って・・・・・・」
「あんたがいつもそんな怪我しながら」
「死ぬかもしれないんだぞ」
「あんたも同じでしょ」
「はぁ、わかったよ」
上条は美琴の掴んでいた手を解き、握り返す。
「頼むぞ、美琴」
「うん」
美琴は握られたその手に力を入れた。



後方のアックアが天草式という集団に放った魔術を止めて、天草式の五和という少女が聖人崩しで止めを差した。
これは全て、状況を理解できなかった美琴が後から上条に聞いたことだ。

「あ、起きた?」
目が覚めて、映ったのは今にも泣きそうな美琴の姿だった。
「み・・・さ、か?」
「起き上がっちゃだめよ。あんた、絶対安静だってのに病院から抜け出して無理してたんだから」
その目からは何だが少し、流れていた。
「なんで、お前は泣いてんだよ」
「心配したからに、決まってるからでしょ馬鹿!!あんな体で、死にそうだってのに・・・・・・びょう、いんからぬけだして、たおれたときには、しんだんじゃないかって、おもったわよ・・・・・・馬鹿、ばかぁ」
「悪かった。だからもう、泣くなよ。お前が泣いてると、俺まで悲しくなるんだよ」
「ひっ、ぐす、ばか、ばか、ほんとーに、しんじゃったら、わたし、もう」
「そんなに泣くなよ。どうすれば泣き止むんだよ」
「・・・・・・教えなさい」
「え?」
「あんたが今ままでどんなことをしてきたのか、今言った魔術っていうのも、全部」
「・・・・・・もう、隠したって意味ないよな」
上条は話した。

魔術という、学園都市の超能力とは違う『法則』があるということ
インデックスや神裂、ステイルのこと
記憶をなくしたこと
アウレオルス=イザード、姫神秋沙のこと

海原光貴に変装していたやつや地下街を襲ったテロリストも魔術師ということ
風霧氷華のこと
オルソラ=アクィナス、天草式十字凄教のこと
大覇星祭での
9月30日の事件の真実
美琴の母親、美鈴を武装無能力者集団から助けたこと
フランスのアビニョンで神の右席の1人、左方のテッラと対決したこと
そして、今回の後方のアックアとの戦いのこと

美琴が知らなかったこと全てを。
彼女を『魔術側』へ巻き込むと分かっていても。

「じゃああんたは死ぬようなことを繰り返して、その度に大怪我して入院してるってこと?」
「いやいやいや、毎回ってわけじゃないですことよ!」
「じゃあほとんどってことね」
「・・・・・・はい」
「馬鹿、好きな人が傷だらけで帰ってくるのがどれだけ辛いか、あんたわかってる?」
「悪い・・・え、・・・あれ・・・?なんか、いまとんでもないことを聞いた気が・・・・・・」
「え?」
「えっと、『好きな人』が傷だらけで帰ってくるって・・・それって、御坂、もしかして」
気がつけば、上条の顔が真っ赤になっていた。
そして自身の言ったことに気づいた美琴も同じように顔を真っ赤にしていた。
「そうよ、私はあんたが好きなの。それに気づいたのはさっきだけど、好きだったのは前から」
「・・・・・・」
突然のことに上条は戸惑ってしまっている。
「ちょっと、告白したんだから返事くらいしなさいよ」
「えっと、ごめん。」
「あんたはあの時言ったでしょ。『上条当麻という人間は変わらないんだ』ってだったら、記憶があってもなくても『私が好きになったあんた』に変わりはない」
この言葉に上条は救われた。
『記憶をなくす前の上条当麻』でなく、『今の上条当麻』の存在を許された気がして、
そして彼の心に『何か』が芽生えた気がした。
それが何かは、既に理解できたいた。
「きっと、これからはお前を巻き込むことになるぞ。それでもいいなら、一緒にいてくれ」
何も言わずに、美琴は上条の手を掴み取った。








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