小ネタ 偽りだらけのラブレター
上琴への3つの恋のお題:たくさんの嘘とひとつの真実/出せなかった手紙/いっそ ころして
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【上琴語り】2人の子供は何人でどんな子かについて語りましょう。
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ラブレター…それは自分の気持ちを伝える為に愛する人へ贈る手紙の事である。
メール全盛期のこの時代で、紙という媒体を使う手紙は徐々に見かけなくなってきたが、
それでもやはり手書きというのは気持ちを込めやすく、温かみのあるものだ。
そのラブレターがここに一枚ある。
宛名は「上条当麻」。差出人は「御坂美琴」である。
拝啓 最近めっきり寒くなってきちゃったわよね。本格的に「冬が来た!」って感じ。
さて、今回は急に手紙なんか出しちゃってごめんね。ビックリさせちゃったかな?
ほら! ここんとこ私、まともにアンタと会話できてないじゃない?
だけど手紙なら大丈夫かなって思って。
あっ! 勘違いしないで欲しいんだけど、別にアレよ?
アンタの事が好きになりすぎて、アンタの声を聞くだけでドキドキするようになっちゃったから、
会話もままならないとか、そんなんじゃないわよ? 本当だからね!
そりゃ確かに、一日中アンタの事を考えてる事もあるし、毎日アンタの夢を見てるけど、
それは全部、アンタがいつもトラブルに巻き込まれてるから心配になってるだけで、
別にアンタが好きだからとかそういうのじゃないから! いやホント違うからね!?
っと、そうそう。夢で思い出したんだけど、この前私とアンタが…その………
結婚……してるって夢見ちゃったのよね。
分かってるから! 現実じゃありえない事だって分かってるから!
だから今から語るのはその時の夢の内容で、私の将来の夢って訳じゃないから、
そこん所を頭に叩き込んでおいてね?
淡いピンクの部屋で、アンタが上の子と遊んであげてて、私は下の子におっぱいあげてるの。
そしたらアンタがこう言ったのよ。「なぁ美琴。もう一人くらいどうだ?」ってね。
それで私はこう言ったの。「うん、いいよ」って。
そこで目が覚めちゃったんだけど、本当にありえないわよね!
ありえなすぎて、起きた瞬間に熱出しちゃったもん。てか気絶した。
まぁつまり、長々と私が何を言いたかったかって言うと、
「別にアンタの事なんて好きでもなんでもないんだからねっ!」って事よ。
ホントのホントだからね!
薄着して寝て、風邪とか引くんじゃないわよ。じゃあね。 敬具
追伸 本当はちょっとだけなら好きって言えなくもな……やっぱ何でもない!
…ツッコミたい事が山ほどあると思われるが、ここはぐっと我慢してほしい。
御坂美琴にとってはこれが精一杯なのだから。
しかしながらこのラブ(?)レター、上条の下へと渡っていない。
深夜のおかしなテンションで書いたこの手紙、
翌日の朝冷静に読み返したらとても渡せる代物でないと気づく。
だがせっかく書いたものを捨てるのも忍びなく、
彼女はこの手紙を自分のバッグの中に入れておいたのだ。
では今もバッグの中にあるのか、と問われると実はそうではない。
今現在この手紙は、
「なるほどー…御坂さんは上条さんの声を聞くだけでドキドキしちゃうんですか。へー♪」
佐天涙子の手に握られている。
初春のスカートめくりと美琴弄りに定評のある、『あの』佐天にだ。
カバンの中に入っていたその手紙は、何かの拍子に落ちてしまっていたらしい。
それを偶然拾ったのが知人【さてん】だったのは、美琴にとって不幸中の幸いであり、
同時に踏んだり蹴ったりでもあった。
「夢の中で子供は何人くらいいたんですか? 将来的にはやっぱ3人くらい欲しいですか?
御坂さん似ですか上条さん似ですか? どうなんですかどうなんですか!?」
佐天は生き生きしながら問い詰める。
これに対し、美琴は両手で顔を覆いながらこう答えた。
「いっそ、ころして!!!」