とある三種の恥写真集【フラグブック】
とある高校のとある教室。
放課後となったこの時間に、ぞくぞくと男子生徒が入ってくる。
教卓に立つ青い髪の男は周りを見渡し、そして口を開いた。
「…全員揃ったようやな……ほなやろか」
青い髪の男は簡単に挨拶すると、男たちを集めた理由を黒板に書き出す。
『上』 『条』 『当』 『麻』 『被』 『害』 『者』 『の』 『会』
「これより! 第9回『上条当麻被害者の会』を始める!!!」
その言葉と皮切りに、男たちは歓声を上げた。
上条当麻被害者の会…それは、とある高校でもっともモテる男・上条当麻(本人は無自覚)に、
苦汁を舐めさせられてきた男たちの魂の叫び場である。
上条は一年であるため、夏休みの8月はやらなかったとしても、
今年4月から数えて、月に1回以上は開催されている計算となる。どんだけだよ。
「俺…好きな子に告白したら『ごめんなさい。私、上条くんが好きだから』…って言われた!!」
「俺なんてラブレター渡されてドキッとしたら! 『これ上条くんに渡してくれる?』だとよぉぉぉ!」
「俺なんかもっとひでぇぞ!
中3から付き合ってた彼女がこの学校に受験するからって俺も一緒に受験したのに、
いざ入学したら『ごめん…他に好きな人ができたの……』だってさ!!!
相手の名前を聞いたら…案の定、上条だったよチクショウ!!!」
男たちは白熱していた。みんな涙を流すくらいに。
毎回こんな風に愚痴大会になっているらしいが、そこに一石を投じる男が一人。
今回初参加する、金髪でサングラスでアロハシャツの男だ。
アロハ男は静かに手を上げ、被害者の会のリーダーらしき青髪の男がその男を指す。
「どないしたん? 何や、意見か?」
「思ったんだけどにゃー、ここでグダグダ話し合っていても意味がないんじゃないか?」
その言葉に周りは一気に静まり返る。
御もっともなご意見だが、はっきり言ってそんな事はみんな分かっている。
しかし、あの男のフラグ能力はどうする事もできない。
だからこうやって、ガス抜きをしている訳なのだが……
「あー…つっちー……そないな事は言われんでも―――」
「まぁ聞けって。ちょっとした提案があるんだぜい」
しかしアロハ男はそこも考えていた。
「ここであーだこーだ言ってないで、いっそカミやんから『慰謝料』を貰ったらどうかにゃー?
それくらい貰う権利はあると思うぜい」
「せやけど慰謝料て…それはさすがに……なぁ…?」
確かに被害は受けているものの、お金が動くのはどうだろう。
上条の経済状況も知っているだけに、いくら何でも気が引ける。
だがそれでもアロハ男はニヤリと笑う。
「だから提案があるって言ったろ? カミやんにはちょっとバイトしてもらうんだぜい。
あの男のフラグの多さを逆に利用するんだにゃー。
カミやんに恥ずかしい思い【おしおき】をさせて、俺たちは儲けられて、
女の子も笑顔になれる最高の作戦だせい。勿論、カミやんにもバイト代を出すけどにゃー」
教室がザワザワとしだす。本当にそんな事が可能なのかと。
「ホ、ホンマにそんなんできるんか…?」
「俺に任せろだぜい」
サングラスが怪しく光った。
「しゃ、写真集…? 俺の…?」
上条当麻は困惑していた。
級友である土御門が、朝っぱらから訳の分からない事を言ってきたからだ。
「そうそう。カミやん、一端覧祭の準備ずっとサボってたろ?
だからちょーっと罰ゲームさせようって話になってにゃー」
確かに上条は、ずっと一端覧祭の準備に参加していなかった。
本人的にはのっぴきならない事情があったのだが、その説明を教室でする訳にはいかないし、
何よりサボっていたのは事実だ。だがそれが何故―――
「……それが何で写真集なんだ…?」
「せっかくだから、それで儲けさせてもらおうと思ってにゃー。
カミやんの写真を撮りまくって、それを同人誌として売る【じひしゅっぱんする】つもりだぜい」
「いや誰得だよ! 絶対ぇ赤字だろそれ!!! 確実に元取れねーぞ!!?」
と思っているのはこの教室で上条だけである。
すでにこのクラスの女子全員(一人を除いて)…だけでなく、他のクラス、上級生、
果ては一部の女性教員からも、その写真集の予約が殺到している。
まだこの学校だけで、だ。
学校外からも予約を受け入れたら、一体どうなるのか。
「まぁそれでもいいんだぜい。
これはカミやんへの罰ゲームなんだから、カミやんが恥ずかしい思いをすれば万事OKだにゃー」
嘘つきを自称する土御門らしく、思ってもいない事をペラペラと口に出す。
「そのためだけに赤字覚悟ってお前……」
が、本気で売れないと思っている上条はあっさりとその言葉を信じ、そして呆れる。
しかし上条自身も、準備を手伝わなかった事に後ろ髪を引かれていたのも確かだ。
正直全く気乗りはしないが、ここは甘んじて恥を受け入れる上条である。
「はぁ…分かったよ。やるよ。やるけど、売れなさすぎても俺のせいにすんなよ?」
「安心しろって。そんな事にはしないからにゃー♪」
クラスの人間全員…男子も女子も心の中でガッツポーズをした瞬間だった。吹寄を除いて。
発行された写真集は全3冊だった。
全体的に露出度が高めで、半裸の上条などをおさめた
『上条当麻写真集 「せくしぃな本」』
カジュアルな服やフォーマルな服、更にはコスプレをした上条が楽しめる
『上条当麻写真集 「こすぷれな本」』
食事や睡眠、勉強中など、上条の日常を切り取った写真で出来ている
『上条当麻写真集 「のーまるな本」』
の3種である。
出来は中々だが、「でもお高いんでしょ~?」とお思いの方もいるだろう。
しかしお値段なんと、それぞれたったの1000円ポッキリなのだ。
同人誌としてはそこそこな値段だが、フルカラーでしかもページ数も多い。
しかも3点セットでお買い求めのお客様は、2500円でのご提供で更にお安くなっているのだ。
今なら限定で、生写真もオマケとしてお付けしよう。
お買い得であるような気がしないでもないと思うのは気のせいでは無いかも知れない。
だがそれが功を奏したのか、この写真集は
めっちゃ売れた。
売れすぎて逆に困ったのは、主犯の土御門たちだ。
高校のホームページでちょっと宣伝しただけだったのだが、発売前から予約は殺到したのだ。
こんなごくごく平凡で、毎日アクセス数が二桁の、上条たちが通う高校のホームページなのにだ。
高校内では勿論、学園都市のいたる所から…だけではなく、世界中からも一万件以上。
特にイギリスからの受注がハンパなかった。
イギリスの日本人街宛てに、一人で100冊ずつ…つまり300冊注文した強者もいる程だ。
さて、ここにも一人その本を注文してしまった少女がいる。
休日とはいえ、午前中から常盤台中学女子寮の玄関付近で仁王立ちし、
腕を組みながら片足でパタパタとリズムを刻み、
宅配のお兄さんをまだかまだかと待ちかねているのは、ご存知の通り御坂美琴である。
美琴は先日、『偶然にも』上条の通う高校のホームページを見ていた。
その事を彼女に問い詰めたら、きっとこういう答えが返ってきただろう。
「いいい、いや別に意味なんてないけど!!?
ア、アア、アイツの行ってる学校だから気になってるとかそういうんじゃないし!!!
た、たまたまよ!! たまたまネットサーフィンしてたら目に留まっちゃって、
そもまま何となく見てただけなんだから!!!
ちゅ、ちゅちゅ中学卒業したらアイツのいる所に進学しようとか、
ホントに全然考えた事もないわよっ!!!」、と。
まぁ理由はどうあれ上条の高校のホームページを見ていた彼女は、
写真集の事を知り、その0.9秒後には[予約する]ボタンをクリックしていた。
そして今日がそれの発売日な訳で、美琴はこうしてヤキモキしながら待っているのだ。
(ああんもう! 午前中配達に指定したのに、もう10時回っちゃったじゃない!
こっちは4時間前からここにいるってのに!!)
いくら何でも、早朝の6時から配達はしないだろう。新聞じゃないんだから。
…という当たり前のツッコミすら頭によぎらないほど、彼女は楽しみにしているのだった。
その事を彼女に問い詰めたら、きっとこういう答えが返ってきただろう。
「ちちち違うから!!! べ、べべ別に楽しみにしてるとかそういうのと違うからっ!!!
そ、そりゃ確かに『間違って』変な本注文しちゃったけど、キャ、キャンセルするのも悪いじゃない!?
その上『指が滑って』時間指定までしちゃったし、
万が一宅配の人と行き違いになったら業者の方にも申し訳ないと思うのよ!!!
だっ! だから! たた、たの、楽しみに待ってる訳じゃないんだからねっ!!!」、と。
まぁ理由はどうあれ宅配便を待っていた彼女は、荷物が届くや否や0.7秒でサインした。
宅配のお兄さんも、そのあまりの速さに何が起こったのか理解できないほどだった。
ちなみに予約した時に支払いもカードで済ませており、
代引きする時間すら短縮させたかった事が伺える。どんだけ欲しかったんだよ。
ダンボールを抱き締め、緩みきった顔で「にへへへ~♪」を笑い、
スキップしながら自分の部屋に戻ろうとする美琴。
これからじっくりたっぷりと、届いた写真集を『堪能』するつもりだ。
しかし、エレベーターの開閉ボタンを押す指が、ピタッと止まる。
このまま戻って、本当に大丈夫なのか。
美琴は今、一分一秒でも早くダンボールのガムテープを剥がしたい。
だが彼女の部屋には、ルームメイトである白井がいるのだ。
しかも運悪く、本日は風紀委員も非番らしい。
白井の目の前で、よりにもよって『類人猿』の写真集なんざ読み始めた日にゃあ、
もう何が起こるか分かったもんじゃない。
一日あれば、いつか白井の目を盗める隙もでてくるだろうが、
しかしながら先程説明したように、一刻も早く読みたいのである。
美琴はそのまま回れ右をし、外に向かって走り出した。
どこか人気の無い所で、こっそりと写真集を堪能する為に。
…何かもう、初めてエロ本を買った男子学生と同じような行動パターンである。
そんな訳で美琴は、人のいない公園へとやって来ていた。
初めはビジネスホテルの一室を借りようとしていた(本を読むためだけに)のだが、
ホテルに向かっている最中、この公園が目に入ったのだ。
誰もいない、とても小さく静かな公園だ。公園と言うより、むしろ空き地に近い。
一瞬だけ迷った。
誰にも見られたくないなら、ホテルに行くほうが確実だ。
だがここから一番近いホテルでも、走って3分の距離がある。
それに対し、誰も使っていない公園は目と鼻の先だ。
一瞬だけ迷った。が、美琴は公園を選んだ。3分すら待てないのだ。
どんだけ読みたいんだよ。
ベンチに座り、速攻でガムテープを剥がし、ようやく写真集とご対面する。
「ふぉ…ふおおおおおおああぁぁぁぁぁ……」
とよく分からない声を出し、12冊の本を取り出す。
美琴はそれぞれ4冊ずつ注文していた。観賞用・保存用・予備兼布教用。そして実用用の4種である。
もっとも実用用がどのように使われるのか、皆目見当もつかないが。
本当は美琴も、どこぞの天草式十字凄教徒のように100冊でも300冊でも買いたかったのだが、
そんなに買っても、寮暮らしである彼女には保管場所がないのだ。
これが隠しきれるギリギリの数なのである。
実家に送る、という手もあるのだが、それでは今度は母親にバレてしまう。
『あの』ママの事だ。大量に上条の写真集なんぞ送られて来た日にゃあ、
もうどれだけ弄り倒されるか分かったもんじゃない。
なので『泣く泣く』の12冊なのだ。
美琴は包装用のビニール袋を綺麗に外し、観賞用の3冊を取り出す。
そして心臓をバックンバックンさせながら、ページをめくり始めた。
それでは、ここからはそれぞれの写真集を読んだ美琴の感想を、
建前上の独り言と本音爆発な心の声で楽しんでもらいたい。
『上条当麻写真集 「のーまるな本」』
建前
「わ、わー…あの馬鹿、こんな大口開けて寝ちゃって…授業に集中しなさいっての!
だだ、大体、アレよ。あの馬鹿がこ、こんなお弁当食べてる所とか、誰が興味あるってのよ!
…うわっ! こここ、これアイツの部屋だ!
ち、ちち、散らかしちゃって、ホントにだらしない奴よね全く!!」
本音
(にゃあああ!! 寝顔カッワイ~~~!!
わわ! 美味しそうにお弁当食べてる! ああんもう! 幸せそうにしちゃってこの!!
…えっ!!? こここ、ここってアイツの部屋じゃない!! い、いい、いいの!?
生活感まるだしで…ちょ、ちょっと生々しすぎるわよ~~~!!!)
『上条当麻写真集 「こすぷれな本」』
建前
「へ、へー。こっちはタキシードとか着てんだ……に、似合ってないわね。
だだだ、大体執事とか狙いすぎなんじゃない? こ、こういうのは着る人を選ぶのよ。
…き、着ぐるみなんかもある……ってゲコ太!!?
あ、ああいやいや。ぜ、ぜぜ全然可愛くないわね!
アンタに着られるなんて、ゲコ太も可哀相だわっ!!」
本音
(わーっ! わーっ! やだ、普段見慣れないから、こういうのドキドキしちゃう!
『お嬢様、紅茶のおかわりはいかがでせうか?』とか言うの!? 言っちゃうの!!?
あーもー! コスプレコーナーもカワイすぎるわよ……って、ゲコ太ああああ!!!?
何これ! かわっ!! かんわいいいぃぃぃ!!! 何なのよ! 私を萌え殺す気なのコイツ!!?)
『上条当麻写真集 「せくしぃな本」』
建前
「のうわあああああああ!!!!!
ちょちょちょ、い、いい、いいの!!? ホントにこれいいの!!?
えっ、えっ、これ以上!? これ以上見えちゃう訳!? だだ、大丈夫なのそれ!?
みみ、見ちゃうわよ!!? ホントに見ちゃうからね!!? もう止めても駄目だからね!!?
…………………………
ふにゃああああああああああああああ!!!!!!」
本音
(のうわあああああああ!!!!!
ちょちょちょ、い、いい、いいの!!? ホントにこれいいの!!?
えっ、えっ、これ以上!? これ以上見えちゃう訳!? だだ、大丈夫なのそれ!?
み、み、見ちゃうわよ!!? ホントに見ちゃうからね!!? もう止めても駄目だからね!!?
…………………………
ふにゃああああああああああああああ!!!!!!)
心から楽しんで頂いているようで、何よりである。
と、そんな事が行われているとは露知らず、美琴に近づくツンツン頭の影が一つ。
休日だというのに午前中補習をやらされていた上条は、今やっと寮へと帰る途中である。
「はぁぁ…不幸だ……帰ったら帰ったで腹ぺこシスターさんに昼食作らなきゃなんないし……」
ぶつぶつ言いながらとぼとぼ歩く上条。
愚痴りながら、今日が何の日なのかをふと思い出し、その場で足を止める。
「……そういや今日って、例の写真集が発売する日だっけか?
土御門はバイト代的なモンは払うっつってたけど、本当に出るのか…?
そもそもあんな本、一冊も売れる訳ないし……
まぁ、俺への罰ゲーム【いやがらせ】が主な理由だから、
売り上げが悪くても別にいいんだろうけど……」
ところがどっこい、売れに売れまくっている。増刷に次ぐ増刷である。
上条には想像すらできないだろうが。
だが「まぁどうでもいいか」と思い直した。考えても意味が無い事に気づいたのだ。
再び歩き出そうとすると、知らない公園が目に入る。
寂れているのか、人の気配が無さそうな公園だった。
地理的に、ここを突っ切れば寮へと近い…気がする。
上条は大した考えも無しに、その公園へと入って行った。
そしてそこで見つけたのだ。
「あれ? 美琴だ」
ベンチに座りながら、何かの本のページをめくりつつ、百面相をしているお嬢様の姿を。
「あれ? 美琴だ」、と声が聞こえた。
聞き覚えのありすぎるその声に、美琴はビクゥッ!!!とする。
振り向けばそこには勿論……
「なあああああぁぁぁぁぁぁ!!!? ななな、何でアンタがこんなとこにいんのよっ!!!?」
「何でって…普通に寮【ウチ】へ帰る途中だよ。美琴こそ何やってんだ?」
「な、なな、何!? 何ってその……あの……」
言える訳がない。「アンタの写真集眺めながら興奮してました」なんて言える訳がない。
美琴は読んでいた本をダンボールに戻し、急いで自分の背後に隠した。
が、当然バレバレな上に、そもそも上条は本のページをめくる美琴の姿を目撃している。
なので勿論、
「そういやさっき何か読んでたよな。アレ何の本?」
という反応が返ってくる。対して美琴は、
「ほ、ほほほ本っ!!? 本なんか読んでないけど!!? み、みみ、見間違いか何かじゃない!!?」
とあくまでもすっ呆ける。しかし効果はなさそうだ。
「いや…今、後ろに隠したじゃねーか」
「隠してにゃいわよっ!!!」
子供のような嘘をつく美琴。だが嘘をつく子には天罰が下るものである。
バサリ、とダンボールが落ちる。
そして地面には、上条の恥ずかしい写真がでかでかと表紙に印刷された本が大量にバラまかれる。
「……………」
「……………」
二人の間に気まずい沈黙が流れ、何ともいたたまれない空気となる。
「………か…買った…のか…?」
上条が口を開く。
一冊も売れないと思っていた、後々確実に黒歴史となるであろう自分の写真集を眺めながら。
美琴も普段なら、「アンタをからかう為に、わざわざ買ってあげたのよ。感謝しなさい?」
くらいの軽口は叩けただろう。
しかし今の彼女は、もう色んな意味で余裕がない。
学園都市第三位の演算能力を持っていても、そこら辺は経験の少ない中学二年生の女の子なのだ。
なので、
「お………落ちてたからっ!!!」
と更に子供っぽい言い訳をする。
さすがにそれで誤魔化せはしないだろう。
「いや、落ちてたって……」
「落ちてたの!!! それを私が拾ったの!!! だから、かっ、かかか、買った訳じゃないの!!!」
しかしダンボールの伝票にはハッキリと……
「……宛先の名前んとこ…『御坂美琴 様』になってるけど……」
もはや絶望的な状況である。だがそれでも美琴は諦めない。
「ち、違うもん……箱…は確かに私のだけど、中身は…ひろ、拾ったん…だもん……」
無理がありすぎる。まだまだホコリが出そうなので、上条は更に問い詰めようとする。
「いやでもさ―――」
「拾ったんだもおおおおおおおおおん!!!!!」
しかし上条が問いかける前に、美琴はその場から逃走した。何か知らんが、やたらと赤面させながら。
公園に残されたのは、自分の写真集大量に抱える、イタイ男の姿であったという……
その後、あの写真集を放置する訳にもいかず、
上条は警備員の詰所にある「落し物コーナー」に、それをダンボールごとこっそりと置いた。
さすがに「俺の写真集が落ちてました!」と堂々と言える訳もないので、あくまでも「こっそり」だ。
伝票が残っているのでアッサリと落とし主が分かり、無事に持ち主の下へと返還されたのだが、
その間色々な『持ち主の知人』の目に晒される事となり、結局大騒ぎになってしまったのだが、
それはもうお約束である。