小ネタ 恋人はサンタクロース
パチパチと瞬きする。
なんで目を覚ましたのかわからない。
暗闇にうっすらと浮かぶ常盤台の天井。
「お姉さま~」と寝言をいう黒子。
サンタの格好をしたアイツ。
昨日手にいれたゲコ太の抱き枕。
……
……ん?
「アンタなにやってムグッ!!」
「なに大声だしてんのさ!! オレを白井に殺させる気かい!!?」
殺人幇助で訴えるぞコラ!!
と叫ぶ声は間違いなく上条当麻である。
ん、んぅ……、と寝返りをうつ白井に、
二人揃って人差し指を立て、
しーっ、という上琴。
「……恋人をクリスマスイブに放っといて、なにやってんのよ?」
「ごめんってばよ。実は今日も例の不幸に巻き込まれちゃってね」
「ふむふむ」
「で、もうその事件は片付いたんです」
「ほうほう」
「助けた人がサンタだったんです」
「……は?」
「今からその人の代わりにプレゼント配りに行くんですよ」
「マジで??」
「うん、大マジで」
確かに、ゾンビボーズスプリンターがいたのだ。
紅鬚爺がトナカイにソリを引かせて空を飛んでも不思議はない。
「で、ですね、美琴」
「なによ?」
「お前の願いがわたくしとの時間と聞きましてね?」
「ぴゃっ!!!?」
「悪いことしたなー、と思ったわけです」
「ぁぅぁぅふにゃにゃ」
そっと手をつかまれ、ベッドから引っ張り出される。
開かれた窓からの冷気に震えた。
「だから、よろしければ、今から夜空のデートなんかいかがかと思いまして」
プレゼント配りながらですが、といい、
星空を背景にニカッと笑うサンタに、
不覚にも惚れ直してしまう。
「……無理しないでいいわよ。キザッたらしい」
「……上条さん泣いちゃう」
素直になれない自分への嫌悪感を隠し、
別に話題を振る。
「ホントにソリが浮いてる……」
「右手でさわれないのが厄介でしてね」
よっと、と言って飛び乗ったサンタが、
こちらに右手を差し出す。
「ほらっ」
まるで一年前のロシアと逆だな、と思いながら、
美琴はその手をとった。
「ちょ、ちょっと!! 揺れすぎでしょ!!」
「難しいんだぞ!! 左手しかつかえねーし!!」
「ちょ!! もう、貸しなさい!! 私がやる!!」
「ダメ。さっきからオレが右手でお前握ってないと、トナカイ君がビクビクしてたもん」
(T^T)
「あわわ」
「あぶねぇ!! まったく、捕まっとけ!!」
「か、肩っ!! 肩を、だ、抱い!! 抱いてっ!!」//////////
「ちょ、美琴さん、オレは捕まっとけっていったけど、抱きついとけとは言っておりませんけども!!?」//////////
「……いや、なの?」//////////
「イヤではないけども……」/////////
「その服どうしたの?」
「渡されたんだよ」
「に、似合ってるわよバカ」//////////
(ツンデレって大変だな)
「確かにホッとしたよ」
「なにが?」
「服を着替えろって言われたときには、オレもミニスカサンタになって、黒レースの下着までつけなきゃならんかと思いましてね?」
「アァ?」
「こっわ!! 何をお怒りで!!?」
「例によって女の子なのは置いとくわよ。なんで下着まで知ってんの?」
「あ……」
「ねぇ」
「ん?」
「アンタがわたしに触れといて、わたしが操縦すればよくない?」
「バレたか。ようやく慣れてきてな、楽しかったんです」
「ずるい!!」
「あと、いつも素直じゃない美琴さんが自分から抱き付いてきてくれて嬉しかったんです」
「ず…ずるい」//////////
「キスして」
「は?」//////////
「夢じゃない証明して」
「ほっぺたでも引っ張ればいいじゃん!!」
「……お願い」
「ぐっ………………せ、積極的ですね。わかったよ、目を、つぶって、くれ……」
雪がちらつくなか、重なったシルエット。
知っているのは夜空に浮かぶ満月と星々のみ。