覚悟
「ねぇ当麻、まだつかないの?」
今、俺の助手席に乗っているのは、中学校時代は容姿端麗・才女・泣く子もだまる常磐台中学校のレベル5として恐れられていた人。
現在俺は、大学四年生、美琴は、高校まで進学したのち就職、腐れ縁とでもいうべきか、いわゆる恋仲となっている。
それから、美琴は就職を機会に上条の家に来て(学園都市有数の研究施設に就職、しかも、なぜか上条の住んでるマンションの近く)、同棲をはじめ早2年がたった。
「もうすこしだから、我慢しろよ?」
「はぁーい♪」
「ほら!見えてきたぞ!」
今日向かっているのはなんと結婚式場の見学。なぜそのようなところに行く事になったかは、
数週間前にさかのぼる。
「ねー当麻、今日の夕飯は何?」
食事は、基本的に一日おきで、お互いがお互いの作る料理を楽しみにしている。
ちなみに、本日は、上条サンが作る日で、美琴は特に楽しみにしている。
「そうだな………最近は熱くなってきたから、今日はさっぱりとしたものにするか?」
「なら、冷シャブにしよ、お肉もあるだろうし」
「なら、すぐに作るから」
「ありがとう、当麻♪」
~~~~夕食終了~~~~
「どうだ美琴、たまにはカクテルでも?」
美琴の母を見ている上条は、あまりお酒を飲ませたくなかった。
美鈴さんの遺伝を正確に受け継いだ美琴は、以前飲ました時、能力が暴走し、美琴が寝るまで、ずっと付きっきりでいる羽目になった。
その時の被害額は、十数万円になった。
上条は、あのときのことを思い出すと震えが止まらない。
「たまにはいいかもね………頂く」
美琴もその時のこと覚えているので、それ以来、あまり飲まなくなった。
だが、結論から言うと酔った、盛大に酔ってしまった。
「きょ、きょうはぁ………ひさしぶrりに、電撃喰らわしてやろうかとぉぉぉ、思ったわよ」
「そろそろお酒は止めませんか?美琴さん」
予備対策として、美琴の手を握っている。もうこれ以上被害を出さないために、
「まだ、まだぁ、飲むわよ!!」
どうやら仕事でだいぶストレスを貯めてたらしく
カクテル→ビール→酎ハイの絶賛コンボ中です。
「ヒック…うぅぅ……」
「ど、どうしたんだ?」
「ごめん、トイレ………うっ……」
「まずい!!袋、ふくろはいずこにぃい!?」
間一髪で、なんとか袋が間に合い悲劇は回避できた。
その後、だいぶ落ち着いたらしく美琴はソファーで寝てしまった。
「二年も一緒に暮らしてきたがこんな日もあるものだな………」
そう言って、苦笑した。
一人で後処理をしているとブツブツと寝言が聞こえてきました。
「当麻…もうヤダ?
私のこと…嫌いに…なった?….ヤだ.…当麻…すてないで…ヒック…ご…ごめ…ごめんなさい
これから…がんばるから…」
そこには、美琴が泣いていた。
どうやらさっきの失態のことで相当ショックを受けているようだ。夢の中でうなされていた。
「美琴………」
(なにをそんなバカことを言っているんだ)
涙が止まらない美琴の涙を拭こうともせずにただ見つめていた。
「大丈夫、俺が美琴から離れる事なんかないから………」
そんな、つまらない幻想を消すかのように、
「…これから…がんばるから…だから…当麻ぁ……」
俺は眠る美琴に駆け寄り、そっと涙を拭く
「ずっといっしょにいるって、もう決めたんだから」
美琴は俺の腕ですすり泣きをしながらうなずいていた。
「苦しい時はお互いに支え合う………俺はその中で一生美琴を泣かせない、かならず守っていく。
あのときの約束は決して忘れない。だから、美琴もあの時の約束を守ってくれないか?」
美琴はそのまま頷いてみせたので、僕もホッとして軽く頭を撫でて、体から離そうとしましたが、
グッ っと力を感じて美琴を見ると、
「ねぇ、当麻………いまのって……………プロポーズ?」
そこには、まっすぐ見ている美琴の姿があった。
「おっ、起きてたんですか!?」
確かにプロポーズのような発言だったと気がついたときには自分の顔面の温度がみるみる上昇していくのがわかった。
目の前の美琴も残ったアルコールのせいか照れのせいか茹蛸のように耳と顔が真っ赤になっていた。
「ねぇ、当麻………………プロポーズ?」
美琴は、同じ事を繰り返した。
誤魔化しのきかない目で、まっすぐ見つめている。
「ぉ………おう」
当麻は、不思議と迷わなかった。
もう答えは、すでに出ていたたから。
「嬉しい!!」
答えを聞いた瞬間、当麻に抱きついた。
喜びを体全体で表すかのように、当麻の体に強く抱きついた。
「そんなに抱きしめなるなよ、美琴!!」
さっきまで泣いていた烏がもう笑っていた。
そんな、普段は優秀なのに、どこか子供っぽい彼女は、とても大切で、……愛している。
~~~~後日~~~~
そんな事があった、とある日の事、大学の講義を終え、自宅に帰ると、リビングのテーブルの中央に、俺を見ろ!!と言わんばかりに結婚情報誌ゼクシィが置いてあり、その分厚い本のページにはピンクの付箋が数箇所挟まれていた。
「当麻、おかえりー」
「ただいま………あの、これって………美琴サン!?」
恐る恐るこの雑誌のことを聞いてみると、
「あ、当麻、再来週ここ見学申し込んだから」
なんとういう行動の早さであろうか。驚いている俺をよそに美琴は鼻歌を歌いながら雑誌を広げていた。
男、上条当麻、覚悟を決めました。…………多少手足に汗をかきながら。
というのが現在、結婚式場に向かっている理由である。
「まぁ、早めに式場決めて、当麻には責任とってもらわないとね」
美琴は、うれしそうに未来予想図を想い浮かべていた。
突然の発言に?を多めに出しながら首をかしげた。美琴をチラッとみるとなぜか顔を赤く染めて笑っている 。
「な、なんですか、責任て?」
まったく見えない答えに美琴は自らのおなかをさすりながら・・・
「わかんない?」
美琴はうれしそうに、
「は、はぃ………」
当麻は、だんだん顔色が引きつりながら、
「エヘヘ・・・よろしくね、パーパ!」
美琴、現在、妊娠約1ヶ月。
「!?」
その瞬間、上条の顔から血の気が引いた瞬間だった。
了