とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ ~私の居場所~



ー結局、また巻き込んじゃったのよね。「妹達」に、アイツにそして今度はただの後輩までー

自分を慕ってくれるただの後輩にあそこまでの怪我を負わせて、私は何をやってるんだろう。

昨日の夜、寮の部屋のドアを開けたときの衝撃、いつもきれいに整頓されてる部屋がめちゃめちゃに荒らされていた。
しかもすぐ取り出せるようになっている救急セットがいつもの場所から消えていた。
そして、バスルームから漏れる光…

身体が震えた。

その震えを声に出すまいとバスルームで怪我の手当てをしているらしい後輩に声をかけた。
ドア越しの彼女の声は明るく振舞ってはいるが痛みを隠し切れず、ひどい怪我をしていることは明白だった。

…なぜ自分に隠れて傷の手当てをしているのか、
そのことを考えれば答えはすぐにわかる。

自分の怪我に「御坂美琴」が関わっていることを彼女は知ってしまったのだ。

その後、ドアをはさんで背中合わせの会話で私はわかってしまった。
彼女がまだ諦めていないこと、傷つき痛みに耐えながら…その戦う意思は少しも曇りを帯びていないことを、
そして、そんなになってまでまだ自分を気遣ってくれているということを。

ドアを無理やり開け病院に連れて行くことは簡単なことだった。そうすればこれ以上彼女を巻き込まなくてもすむ。
でも、彼女はそれを望まない。

ならば自分の手で、この手で全てをもう一度終わらせる。彼女がこれ以上関わってしまう前に…

そう誓ったのに…

わかっていた。アイツで身にしみてわかっていたはずだった。

また、「絶望」を相手に私が動いていることを知ればアイツはなにもためらわずに突っ込んでくる。
たとえ、どれほど傷つこうが…たとえ、そこに死の罠が待ち受けていることを知っていようが…
そんなことは関係無しに突っ込んでくる…

わかっていた。

私の大事な人たち。この命をかけても守りたい人たち。

自分の回りにいる大事な人たちが、こんなにもお節介でばか者ぞろいだということを。

どうして私は、私の「絶望」は…彼らを、本当に大事な彼らを巻き込み傷つけてしまうのだろう…



足は自然とあの場所に向かっていた。




そう…あの鉄橋に…

あの時と同じように、私は一人、川面に映る夜の町並みを眺めていた。
ただ、後悔だけが心を満たしていた。

一人悔やんでいれば落ち着くはずだった…そうしなければいけないはずだった…

それなのに……

「よッ。彼女ひとり?隣は空いてるのでしょうか?」

なんで…なんで…

「…ご愁傷様、わたしの隣は予約でいっぱいよ…」
声がかすれていた。強がりをはくのが精一杯だった。

こいつは…

「それは、残念だな。まっ予約してる奴が来るまでちょっとお邪魔するとしますか。」

私が苦しい時、辛いとき、悲しい時…

「…許可なんて出すと思う?」

いつも勝手に現われて…

「許可されなくても俺がそうしたいからそうするだけさ。」

そうやって、私を甘やかす。

「なんで…ここにあんたがいるのよ。」

答えを聞きたい。なぜ、、あなたはここにいる…

「いや、なんとなくお前がいそうな気がしてな…」

抑えていたものが暴れだす。抑えきらなくっちゃいけないものが暴れて飛び出そうとする。

「あ、あたしは!あ、あんたに頼らなくたって!!一人で、、一人でやれるのよ…」

ウソだ。一人で何一つできない。傷ついた後輩さえ一人では救うこともできなかった。

「あたしを誰だと思ってるの!学園都市で7人しかいないレベル5なのよ!!それなのに、
それなのに…あんたは……」

「しゃあないだろうが…オレはお前を守るって決めてるんだから。」

夏休み最後の日の言葉を思い出す。

勘違いしちゃあダメだ…勘違いしちゃあダメだ…かんちがいしちゃあ……

「…かんちがい、しちゃうかもよ…」

「ん?」

「私が勘違いしちゃうかもよ!責任とってくれるの!!」
お願い…神様……どうか…どうか……




こいつが突き放す言葉を言ってくれますように…




「ん~~俺が勝手に決めてることだしナ。責任とってと言われても、もともと責任はオレにある気がするからいくらでもとるけど?」

「なんで、なんで、、私にそんな価値なんかない!アンタに命を懸けて守ってもらえるようなそんな価値なんかない!」

心が…闇に飲み込まれる…

「私が、私さえ存在しなければ……あんただって傷つかないし、黒子だって傷つかなかった。「妹達」だって…」

心の闇が、正直な心と裏腹な言葉を紡ぎだす。

「は~~~」
頭をガジガジとかきながら、アイツは思いっきりため息をついた。

「な、なによ…本当のことじゃない…アンタだって本当はこんなことに巻き込まれて不幸だって思ってるんでしょ!」

違う、違う、、こんなことを言いたいんじゃない!言いたいんじゃない!!言いたいんじゃない!!!

「お前な、、そんなに泣きながら強がっても強がりにもならんぞ…」

「泣いてない!」
私は泣かない!泣くわけがない!!泣く資格なんかあるわけがない!!!

いきなり視界がふさがれた。
抱きしめられてることに気がついた時、全ての思考が停止した。

「泣けばいいさ。おれに見られるのがいやなら、こうすりゃあオレからは見えないぜ。思いっきり泣けよ。」

「ば…ばか……」

「俺が人の事言えるわけはないけどな…前にも言ったよな。なんでもかんでも抱え込もうとするなよ。
すくなくても俺はお前と同じ場所に立ってるつもりだぞ。悩んでたら相談にのるし、泣きたい時に胸ぐらいいくらでも貸すさ。」

「……責任取ってよね……」

「あ~いくらでも取ってやるさ。おまえがわらってくれるのならな…」

責任とってよね。アンタはあたしが泣き顔を見せたただ一人の男なんだから…

そして、私はその胸にすがって、少しだけ泣いた…。

勘違いでもいい。

アンタはいつでも信じられないタイミングで現われる。
私が苦しい時、辛いとき、悲しい時にいつも現われてくれる。
そして救ってくれる。闇にとらわれそうになる私の心を…
それがとても悔しくて、敵わないと思い知らされて…
私の心を満たしていく…光が、やさしさが、あたたかいなにかが…

そのあたたかいなにかの名前を今はまだ私は知らない。今はまだ知りたくない。

ただ、今、このとき、この腕に抱かれて、この胸の中で…私はしあわせだ……しあわせだ。

それで充分だ。

けれど、幸せすぎて不安になる。だから祈る。

自分勝手だと思う。けれど祈ることをやめられない。

神様、神様、どうかお願いです。この人を、このひとを…この場所を……私から奪わないでください。

私の居場所は……ここにしかないのですから……

私が素直に泣けるところは…


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