とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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夢で逢えたら。



「あ!いたいた!こっちこっち」とこっちを向いて笑って手を振る少女がいる。
制服着用の義務を怠ってはいけない学校に通っている彼女だが、今日は私服である。それも相当気合が入っている模様。それに代わって俺はどうなんだろう。と自分にがっかりしている。
「お!ビリビリ! 早かったな。」
「私はビリビリじゃない! 御坂美琴っ!」
「悪い。わr「いつもじゃん! 」」と話す感じは相変わらずである。それと同時に電撃の槍がこちらに向いてくると想定して右手を構えていたのだが。
「あれ?(電撃がない…これはもしかして成長したのか?いやいや、ここで油断してはこの上条当麻は…死ぬっ!)」
と内心ひやひやしながら相手の顔を窺うことにした。怒っているものの、その顔は少し嬉しそうな顔をしている。
「あのさ…、今日これからの事なんだけど…、しししししっ…」
「し?」
「下の名前で呼び合わない?」と美琴は上条に提案した。彼女はとても緊張している。自分でも顔が赤くなっていくのを感じた。
「あ。いいぞ!」と快諾した。あの上条だから否定されると思いきやあっさりだったため、彼女のシミュレーションは少しずつ別のルートを歩み始めた。それと同時に気が抜けてしまい、倒れかけたが、数秒で回復した。
(あれ?あったかい…。なんで?)機能停止から復帰した美琴は上を見ると上条の顔があることに気づく。それと同時に泣いた子供をあやすように頭をなでられている事実も知る。
「お?気がついたか。最初からこれだったら、上条さんは困ってしまいますよ。お姫様?」
「こんなところでこんなことしてたら、さすがの上条さんも恥ずかしいんで…。」
あわてて美琴は上条から離れて、深呼吸して上条の右手を掴む。そして、走る。

――セブンスミスト内にて、
「お前が行きたかったのってここか?」
「そうなの。てか、さっきの約束守ってよね。」電撃の代わりに、妙に陰影のある笑顔で怒られてしまった。
「いつもの癖で。ごめんな?美琴。」美琴に今日の精いっぱいの笑顔で答えてみる。
「当麻はいつまでも当麻なんだね。」と上条家のシスターの真似をして美琴は言う。
彼女は、大覇星祭の時に上条が妹達(シスターズ)にネックレスを買っていたことを心の中でとてもうらやましく思っていた。そのため、こう言う強硬手段に出たのだった。
美琴は気に入ったものがあったらしく、上条をつんつん、と呼んでこう言った。
「見て。これかわいくない?」
うんうん。と頷きながら、これも似合うんじゃないか。とコメントを突っ込んだりしている。
「それじゃあ、当麻が選んでくれる? 」
「そうだな。俺は、どっちでも美琴たん萌ぇーなんですけどね。」と言ってやると、男なんだからはっきりしてよね。というような雰囲気をかもしながら上目遣いで少しぽわぁーとなっている美琴に見つめられる。それがとても愛おしい。
「…それじゃあ、右のハートの重なってるやつで。」
にこっと笑い、それをレジまで持っていく。2人で順番を待つ…といっても前には3人くらいしかいない。2人の順番になり商品を清算するときに、私が払うから!というように財布を出そうとする美琴の腕をそっと押さえて上条はズボンの尻ポケットから財布を取り出して代金を支払った。家計が火の車である上条の財布が潤っていたようで、彼女へのプレゼントとすることにした。
「ほらよ。」と美琴に渡そうと、買ったものをさし出したのだが、まだ持ってて欲しいと言われたため上条はずっと持っていることにした。
そのあと、セブンスミストを後にして、ゲームセンターやファミレスをめぐった。

時刻は16:30。そろそろ日が暮れてくるころだ。上条は、美琴に引っ張られるままであった。そんな状況も上条は楽しんでいた。とうとう、美琴がファミレスで言っていた「最終目的地」にたどり着いた。夕焼けに染まった橋の上にいる。
二人は夕日のほうを見ながら並んで欄干に腕を置いている。今日一日で一気に二人の距離が縮んだ。――という風に見えているが、二人とも自覚はないようだ。

「ここで当麻に止められてなかったら、今の私はなかったわ。」
「そうだよな。こんなところで悲しい顔してるやつを見てスルーできる上条さんではありませんから。」と美琴のほうを向いて笑って言う。
そのさりげない笑顔に、美琴の心はある願いを達成しようと決心する。
「…なんでだろうな。こんなふうに頭なでてもらってるとさ、なんだか気持ちいいの。」
上条は、そのあと来る不幸を読み取ってか右手で頭を撫でていたため、“ふにゃー”と美琴が漏電する危機を免れることができた。事実、上条の感じ取った不幸は起きずに、美琴が“ふにゃー”と気持ちよさそうな声で上条に甘えてきていた。

「あのさ、当麻にこんなこと言うのも恥ずかしいんだけどさ、」
「言ってみろよ。」
「最初に出会ったころはむかつくやつだってずっと思っててさ。でも、当麻は私がピンチになってるときにいつもそばにいてさ、」
「それは、俺が約束したからだろ?」
「いつの間にか、あんたがいないと生きた気にもならなくなってきてたの。だから…」

――私“御坂美琴”は、あなた“上条当麻”が大好きです。あなたがどうしようもなく好きです。

一瞬、空間が凍りつく。時間が止まったような錯覚に陥る。

――ありがとう。美琴。

静かに、上条は美琴を自分のほうに抱き寄せる。そして、さっき買ったネックレスを袋から開けて美琴の首にかけた。そして、美琴のほうを向いて上条は優しく言葉を紡ぐ。

「約束したろ? 美琴と、美琴の回りの世界を守ってやる。そして、おまえに悲しい幻想(おもい)をさせない。って。」

美琴は、泣いていた。上条はそれを見て目を瞑るように美琴に言った。
上条も目を瞑り、美琴の唇に自分の唇を重ねた。

――――ふぁぁぁぁぁあぁ。
上条当麻は目を覚ました。そこは病院だった。彼は、過労で倒れて救急車で運ばれていた。冥途返しのいる病院のいつもの個室であった。その中に、1つだけ変化があった。茶髪の女の子が上条のベッドに寄り掛かって寝息を立てている。
(ずっと見ていてくれたんだな。さんきゅ。)と心の中でうつぶせに寝ている中学生に言う。
「あ。起きたんだ。おはよ。」美琴は目を覚ました。
「あぁ、おはよ。」と上条が返すと間髪なく美琴は怒ったような口調で言う。
「ったく。何回この美琴センセーの手を煩わせればいいわけ?…かかか勘違いしないでよね。あんたがこんなにバカだから、しょうがなく…付き合ってやったんだから。感謝しなさいよ。」
美琴は、話すボリュームをデクレッシェンドしていきながら、顔を真っ赤にした。もちろん、目線は俯いている。
その姿を見て、上条は状態を起こして美琴の頭に右手を置いて微笑んだ。
「ありがとな。美琴がいてくれたから、俺は生きてるんだよな。」
「…バカ当麻っ!」といいつつ美琴は内心嬉しそうだ。

そんな様子を見て、上条は思った。
――さっき見た夢のような日々が来ればいいな。たとえ、このあとが不幸であっても。



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