とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とイヤホン


「だぁぁぁあ!補習が長引いた~」

 急ぎ足で待ち合わせ場所に向かう。
そう、今日は絶対に外せない約束があるのだ。

 普段の授業に+補習というのは、いつもの事だ。
いつもの事ではあるが、今日は予想以上に長引いた。
 勿論、とっくに待ち合わせの時間は過ぎている。
これはまずいと思って、メールを送ったが返事は来ない。

(こりゃ、相当怒ってるよなぁ……)

 正直、補習も常にあるような身で放課後に時間を作るというのは厳しい、だから部活動も行ってない。

 それでも幼馴染に付き合う理由。

「いや~悪い、遅くなった!」
 ベンチに掛けているのを見つけ、慌てて駆け寄り
すまんと手を合わせて、内心ビクビクしながら様子を窺う。 
「おーい、美琴……もしもーし?」
 しばらくしても反応が返ってこない。
不思議に思って、目の前で手を振ってみる。

「あっ当麻…」
 今、気付きましたよといった具合で目をぱちくりさせ
「ごめん、聴き入っちゃってて…思いっきりスルーしちゃった」
 と言いながら美琴は音楽プレイヤーの停止ボタンを押して、イヤホンを外す。
その軽薄な態度に少しだけムッときて余計な一言をぽろりと出してしまう。

「上条さんは、補習でへとへとなのですよ~。それでも来た事に、ねぎらいの一つも掛けてくれてもいいと思うのですよ~」
 遅れた事を棚に上げ、自ら墓穴を掘りにいっている事に気付いた時は後の祭り。

「どの口が言うのよ、遅れたくせに…」
 とジト目で突っ込まれ
「しょうがないじゃない、大体あんたがい・つ・も待ち合わせの時間に、来ないから悪いのよ!」
 待つのも疲れるんだと美琴は主張する。
「うっ!いや、それは……」
「それは?」
 美琴にじーと見られること数秒――いよいよ降参、白旗を上げた。
「悪い、悪かった、だから…!」
 と許しを請う。その様子に美琴は、はぁ~とため息をつき
「まっ、でもいつも当麻に付き合ってもらってるし、いいわよ、別にもう…」
 と少し照れた口調で、今回だけだからねと付け加えた。
「ところでさ、何を聴いてたんだ?」 
 機嫌が直った事に、ほっと胸を撫で下ろし――先ほどから気になってた事を口にした。
「ん、ああこれ?」
 と美琴は、膝に置いてある音楽プレイヤーを持ち上げる。
「そそ、いや…珍しいなと思ってな」
「ちょっと、それどういう意味よ!」
 またもや暗雲が立ち込めそうな流れに、待て待て続きを言わせてと、美琴をけん制し告げる。
「その…美琴が曲聴いているのって、何か新鮮でな。ほら、普段聴かないだろ?だからどうしたのかと思ってな」
 思わぬ返答に、美琴は少しだけ思案し理由を話す。
「えっと、佐天さんに勧められて…ちょっと気になったから」
「佐天さんつーと、この間話してた後輩だよな?」
「うん、中学は違うけど、何回か遊んで…これもその一つかな」 
 そう言って、音楽プレイヤーを指す美琴。
「なるほどな」  

 どことなく嬉しそうに話す美琴の様子を見て、友達が出来たんだなと素直に喜ぶ。


 上条当麻が幼馴染に付き合う理由。

――それは以前、自分の隣が一番自然でいられると言われたことがあるからだ。
学園都市に7人しかいない、レベル5の第三位、常盤台のエースである幼馴染はその能力の
高さ故、輪の中心に立つことはできても、輪の中には入っていけない。それでもそれが当然の
事だと分かっている。いやむしろそう思うことで、友達というものを諦めてきていた様にも感じる。

 クラスでデルタフォースと呼ばれる内の一人で、バカばっかりやってる自分からすると、
それってどうなのと心配していたが、ただ話を聞く限りでは、最近は変わってきたようだなと思う。

今は、一度しかない。いくらレベル5と言ってもまだ14歳の少女なのだ。普通の女の子として過ごして欲しいと願う。
その願い通り、幼馴染の少女の周りに新しく場所が出来つつあり、そろそろそのお役はご免だろうかとふっと考える。
その時、脳裏によぎったのは寂しいという言葉、きっとそれは、自分も例外なく隣にいるのが当たり前だからかもしれない。
喜ばしい事なのに、どこか腑に落ちない感情の渦に入ったような――そこで名を呼ばれてる事に気付き、思考は中断した。


「ねぇ、ねぇってば!」
 いつの間にか、どこか遠くへ行ってしまった幼馴染に向けて呼びかける。 
「………お、おう?」
 ようやっと戻ってきたかこのバカと、こつんとデコピンをかます。

「ちった~人の話を聞けやぁぁ!」
「いってぇ、いきなり何をする!?」
「はぁ…あのねぇ勝手に話を振っておいて、無視すんじゃないわよ!」
「……はて、どこか飛んでました?」
「思いっきりよ!とぼけるフリして話をそらそうとするなっ!」
 当麻の何か言いたげなその目を無視して、無理矢理話を進める。

(そりゃ、飛んでたのはお互い様かもしれないケド…でもそれとこれとは話が別!) 

「それでさ、聴く?」
「聴くって?」
 だからこれよこれ、と音楽プレイヤーを当麻に見せる。
「何を聴いてるの?って言ってたじゃない」
「そうだったか…な?」
「そっ、だから…はい」
 と片方だけイヤホンを当麻に渡し、もう片方は自分の耳に付ける。
並んでベンチに座っていても、少し距離がある為、イヤホンは引っ張られる。

「当麻、もう少し近寄ってくれないと届かないから…」
 改善のため、もっとこっちに来いと隣の位置を手でパンパンと叩く。

(一緒に聴かなきゃ意味がないんだから…)

 好きな人と何かを共有したいという思いは誰にだってあるもの。
美琴の場合、同じ曲を一緒に聴く時間を共有するというものだった。
 待つ間、どうやって切り出そうかとずっと考えていた。
もともと佐天さんから勧められた曲、それをどうしても当麻にも聴いて欲しくなった。

こういうのが好きなのも、御坂美琴っていう幼馴染の女の子なのだと、当麻に知って欲しいただそれだけ。

 今、その計画は着実に実行されようとしている。

「あの…みっ美琴さん?」
「………あ、えっとその」

 密着する肩、触れ合う手、そこから感じる体温。

「「…………」」

 勿論、再生された曲は二人の耳には全く流れてこない。
互いに奏でる、ハートビート、そんな二人の幼馴染の放課後。




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