とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

974

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集

これぞ鎌倉時代より続く土御門家の味!



 とある日曜日の昼下がり。
 御坂美琴はやや遅い昼食を食べようとブラブラと歩いていた。
 昼前にベッドに寝転んでいると、そのまま寝入ってしまって寮の昼食を食べそこなったのだ。
(う~、まだ眠気が……気分的にはソバかウドン食べたいけど……サマにならないわね)
 一人でファミレスに入れる美琴でも、何らかの基準はあるらしい。

「おーい、みさかみさか~!」
 土御門舞夏の声に、美琴は振り返る。
「おっすー、ってアンタまたソレに乗って……」
「なんでみんな使わないんだろなー?便利なのに」
 清掃ロボを移動手段に使っているのは、広い学園都市といえどもこの少女のみだろう。
「移動速度が歩くより遅いし、第一怒られるわよ全く。んで何してんのよ?」
「今から兄貴のとこへなー。買出しの帰りだー」

 とりあえず方向は同じのようなので、清掃ロボの速度に落として美琴は舞夏と並んで歩く。
「みさかは何してんだー?」
「私は別に。ただどこかで何か食べようと思ってただけ」
「そっかー。……ヒマならちょっとソコまで来ないかー?」
「? いいけど、何?」
「まあまあ。そこの広場までー」
 美琴は首を傾げつつ、舞夏と共に広場に向かった。

「おーい、兄貴~!」
 向こうで金髪の大男が手を振っている。
(あれ?あの人は……)
 美琴もカジノの件などで面識があったが、同姓でも舞夏と兄妹という事までは考えていなかった。
 その時。

「やっぱり御坂か」
 数メートル先の土御門元春に気を取られていた美琴は、突然後ろからかかった声にビクッとする。
 おそるおそる振り返ると、何やら大きな平べったい箱が入ったビニール袋を手に下げた、上条当麻が立っていた。
 本来、美琴は上条が近づくとAIM拡散力場の乱れで気付くのだが、完全に油断していた。
「な、なな?」
「舞夏、コイツがいるってことは誘ったのか?」
「いや~、兄貴たちの意見聞いてからかなーと思って、まだー」
「そっか、んじゃまず合流だな」

 何だか良くわからないまま、土御門元春の元に集まった面々の一人として、美琴も加わった。
「ったく青髪のヤツ。アイツが急に来ねーとか言い出すからプレートが余計な出費だぜ」
 上条がブツブツ文句を言っている。
「さて舞夏。常盤台のお嬢さんを連れてきたのはいいが、大丈夫かにゃー?」
「ヒマそうだし、お腹もすいてるそうだぞー。みさかなら大丈夫だと思うー」
「な、何なのよ?」
「確かにコイツならいちごおでんとか飲んでるし、ゲテモノは大丈夫だと思うけどな」
「そっちの話もそうだが、俺たちみたいなバカなノリにお嬢様がついて来れるかが心配なんだぜい」
「ちょっと!話が見えないってば!」
 美琴は強く当たれる上条に、噛み付くように叫ぶ。

「何だ、言ってねえのか。……今から土御門ン家で、たこ焼きパーティーやるんだよ。来るか?」

「た、たこ焼き……?」
「そうだぜい。ただし中身は……普通のタコだけじゃない。舞夏、見せてやるんだにゃー」
 舞夏はにや~っと笑うと、美琴に持っていたビニール袋を手渡した。
「何これ……」
 中は、チーズ・キュウリ・ちくわ・こんにゃくといったものから、マーブルチョコや暴君ハバネロなど無国籍状態であった。
「まさか、これを具に……?」
「そう、ロシアンルーレットたこ焼きなのだ~。お嬢様のみさかに耐えられないなら、ここでサヨウナラ、だー」
 うっ、と美琴は声を詰まらせる。

「さらに御坂。無礼講なパーティーだから、例えばお前にヘッドロックをしながら、無理やりたこ焼きを食わせるとか……」
 上条は美琴に、言外に無理じゃねえの?という口調で話しかける。
「要するにお嬢様扱いしねーぞ、てことなんだが、それでもいいなら来ないか?」

 美琴は。
 このような気軽なバカ騒ぎをずっとやってみたかった。しかし、今の交友関係では難しく、諦めていたのだが。
「い、行くわよ!そもそも常盤台ってだけでお嬢様扱いしないでよ!ヘッドロックでもバックドロップでも何でもどうぞ!」
「ほほう。お前の場合、ビリビリも禁止だぞ?」
「分かってるわよソレくらい!……どさくさ紛れにセクハラしたらぶっ飛ばすからね?」
「俺も命は惜しいからな……」


 そんなこんなで、土御門元春の寮に向かう一行。
「他は誰がいるの?」
「あとはインデックスだけだ。もう部屋にいて留守番してもらってる。留守番つーかネコ番だな」
「ネ……ネコ!」
 食べる系の話でインデックスが外れることはないだろうと思っていたので、美琴的には予想通りである。
 ネコは地下街や大覇星祭で見たインデックスが連れているネコだろう。確かスフィンクスと言っていた気がする。
「そーいやお前、AIMナントカでネコに逃げられるんだっけか」
「そーなのよね。ネコはそういうの敏感らしくって。触りたいんだけどね……」

 不意に上条は、右手で美琴の左手を掴んだ。
 美琴の心臓が跳ね上がる。
「例えばこうすると、お前右手から電撃出せねーのか?」
「え、ええ?ええと……」
 美琴は動揺しながらも、精神を集中してみるが……出せない。
「で、出ないわね……左手が存在しないとか暗示をかけてやれば出来るのかもしんないけど、今は無理みたい」
 上条に手を握られた状態では、アドリブがきく精神状態ではない。
 出せない事とAIMナントカは別なのかねえ、と上条はブツブツ呟きつつ、美琴にニヤッと笑いかける。
「演算する頭触る方がいいのかね……ま、あとで頭とか触ってやるよ。ネコ抱けるかもしんねーな」

 後ろでは、そんな上条と美琴を見てにんまりと笑っている土御門兄妹の姿があった。
(いきなり手をつないで歩くとは想定外だにゃー。……今日は面白くなりそうだぜい)
(こりゃー銀髪シスターとのバトルが楽しみだー。みさかからかうの面白いんだよなー)

「しかし、あのみさかに、あっさり手を繋ぐような相手がいたとはねー。しかもその相手が上条当麻ときたかー」
 早速の舞夏の攻撃に、美琴は大慌てで手を離して振り返り、真っ赤になりながらの弁解が始まった。
「ち、違うのよ!これは実験でね、別にそういうことじゃないんだから!し、真剣に能力の話をしてたの!」
「はいはい。いや~、セッティングした甲斐があるってもんだなー。私は嬉しいぞー」
「アンタ私の話聞いてる!?あんまり度が過ぎると怒るわよ!」
「きゃー上条当麻ー、奥さんが怒ってるぞー、助けたまえ~!」
「お前らは小学生か!手ェ繋いだぐらいで騒ぐな!」

 ぎゃーぎゃー騒ぎながら上条の周りを少女たちが走り回る様は、まさに小学生であった。

 ◇ ◇ ◇

 いかにも死にそうなエレベーターに4人が乗り、目的階に着いた。
 美琴はキョロキョロと周りを見渡す。いわゆる男子寮というものに、初めて立ち入ったのだ。
 土御門の部屋の前で、上条は一言声を掛けた。
「ちょっと上着置いてくるぜ。あと具になるモノあるか見てくる」
「おっけー。んじゃこっちは準備始めとくぜい」

 カギを開けて部屋に入っていった上条を、美琴は呆然と眺めていた。……まさか!?

 我に返って美琴は、ずざざっ!と駆けて上条の部屋の表札を確認する。――ドアに小さく、『上条』とあった。
 こ、こんな所に住んでいたなんて。
 思わず携帯を取り出し、位置情報を確認しようとして……舞夏の視線に気が付いた。
「なんだみさか、知らなかったのかー」
 美琴は真っ赤になって、無言で駆け込むように土御門の部屋に入った。

 美琴はからかわれたと思っていたが、舞夏が考えていたのは別のことである。
(とすると、あの時はやはりみさかじゃなかったんだなー。変なゴーグルしてたし反応なかったしー)
 夏休みに寮の入り口で出会ったのは御坂妹の方なのだが、神ならぬ土御門舞夏に分かろうはずもない。


「短髪がどーしているんだよ!」
 初っ端からインデックスは美琴に(文字通りの意味でなく)噛み付いてきた。
「アンタはなんでいつもそーやって私に噛み付くのよ!?」
「う~~」
「チアの衣装直してあげたり、非常食あげたり、色々してあげてると思うんだけど?恩に着せる気は全くないけどさー」
 インデックスの敵意は、ナワバリを侵犯されたという本能によるものだ。だから説明はできない。
 ムスッとして無言になったインデックスを美琴は放っておいた。毎回会えば、こうなのだ。
 そして5分もすれば、不思議とインデックスは普通に接してくる。まるで人見知りする室内犬のようなシスターである。

 それにしても、と美琴は周りを見渡す。
 隅に積まれたトレーニング機材……あの金髪の兄貴の痩身ながらムキムキの体はコレかと納得する。
 そして壁際のメイド漫画コレクションと、その妹の某趣味を思い出して、幾分ゲンナリする美琴であった。
「みさかみさかー。はいこれっ!」
「サンキュー」
 舞夏が投げてよこしたエプロンをキャッチし、美琴は装着して準備万端!である。

 準備といっても、メーカー品の「たこ焼きの素」を使うので、牛乳と混ぜ合せるだけだ。
 あとは具材を小さく切っておけば終了である。
「多すぎない、コレ?」
「あのシスターがいるから、多すぎるに越した事ないんだよー」
「……納得。で、その一番よく食べる子に手伝わせないの?まあやることあまりないけど」
「あのシスターの料理関連スキルはゼロどころかマイナスなのだー……普通なら留守番の間に任せるもんだけどさー」
 美琴と舞夏が台所でわいわいやってる間に、上条が戻ってきた。

「んじゃこれも具材に使ってくれ……お、御坂のエプロン姿初めてだな」
「エプロン一つで印象変わるだろー、上条当麻ー?」
 具材を受け取りながら舞夏は、ちらっと美琴に視線を走らせる。
「そーだな、……若奥さんって単語が浮かんだな、はは。じゃあこっちはプレート用意すっから、油用意しといてくれな」
「はいよー」
 手を止めて赤面している美琴に、舞夏はため息をつく。
「……みさか、反応しすぎだぞー」
「う、うるさい!」

 ◇ ◇ ◇

「焼くのは兄貴に任せておけばいーよ。ひっくり返すのやってみたければそれでもいいしー」
「たっこやき♪たっこやき♪」
 丸テーブルに5人が囲んでいる状態である。土御門が早速生地を流し込み、天かすや紅生姜をパラパラとかけている。
「す、素直にタコで食べれば美味しいのに……」
 美琴はタコの入ったボウルの横にある、小分けされたゲテモノボウルを見て顔に縦線が入っている。
「いやー、意外に何でも合うんで美味いんだぜい?ヤバイのは、むしろそっち」
 土御門は顎でチューブ類を指す。からし、わさびのチューブだ。
「わさびたこ焼き……タコは入ってないからわさび焼き?これに当たるとのたうち回るんだよなー」
「アンタ私に食べさせよーとしてるでしょ?」
 上条の解説に、美琴はジト目で睨みつける。
「いやいや、公平なロシアンルーレットですよ、っと。ま、でも一巡目は普通にタコでいこう」
 そう言って上条はタコのぶつ切りをぽいぽいと放り込み出した。
 土御門は更に生地を流し込み、プレートの上は生地の池になった。

「ま、やってみ」
 上条は美琴とインデックスに竹串を渡し、2つずつ担当させた。
 美琴の場合、屋台で、しかもたいてい作りおきのものをさっさと買って食べていたので、こういう過程は新鮮だ。
「よし、そろそろ竹串で、窪みの周りにある生地をかき集めて、窪みの中に積み上げるように……そうそう」
 美琴もインデックスも真剣だ。美琴はやはり器用で、担当エリア以外の場所もいじっている。
「土御門の真似して、窪みの端から……そう、手首をまわしてくるん、と」
 美琴の1つ目は半回転で失敗したが、2つ目は綺麗に出来た。
 インデックスは……何だか強引にやっていたが、結果としては丸くなっているようだ。

 無事焼きあがり、皆めいめいトッピングをし、アツアツを頬張った。
「あっっつ~~。でもおいしー!」
 美琴は初めて作ったたこ焼きにちょっと感動していた。
「家でこんな簡単にできるんだ……」
「そうだにゃー。まあプロが作るよりは形は悪いが、土御門家直伝の味はどこにも負けないぜい」
「とうまおかわりー!」
「お前は同時に作れる数を、見てワカランのかっ!土御門テメーには突っ込んでやらねー」
「さー、次はロシアンスタートだぞー」

 とりあえず、各自ゲテモノから一つ選んで、やってみることにした。
 結果……。
「うげー、キムチは微妙だにゃー」
「アポロチョコは新しいオヤツ感覚だー。特に変じゃないぞー」
「ポークビッツうめえ。これオカズにできっぞ……」
「うーん、チーズは少なすぎかなこれ。もっと入れたら良かった」
「イカはタコよりおいしいかも!」
 何だ、これなら問題なさそうね、と美琴は胸をなでおろしていた。


 冷蔵庫を物色してペットボトルを手に戻ってきた舞夏は、土御門元春の股の間に座り込み、もたれかかった。
 たこ焼きは今回から、土御門が一人で――つまり本当のロシアンルーレット状態にするために――焼いている。
「ほれほれー、そっちの人間椅子あいてるぞ~。お二人のどちらか座れば~?」
 指さされた上条は、2人の少女を見比べる。
 インデックスが腰を浮かしかけたのを見て、上条は慌てて止める。
「待て待て!え~、いや、2人が俺に恋焦がれて側に座りたいと言う気持ちは分かる。しかしだな」
「誰が恋焦がれてんのよ!」「誰が恋焦がれてるって!?」
 美琴とインデックスが思わずハモる。

「すごいなーカミやん。1秒で2人から振られたぜい」
「さすが上条当麻だー」
 ボケを痛撃に返された上条は沈んでいる。

 それでも、インデックスは立ち上がり、強引に上条に潜り込んだ。
「えへへ~」
 美琴は内心穏やかでは無かったが、流石に真似できない。
 かといって、退くように言うのも嫉妬と取られるようで嫌だ。
「およよー。いいのかみさかー。上条椅子とられちまったぞー?」
「いいわよ別に。私は………………後で」
 最後は小さくぼそっとつぶやく美琴だった、が。

「ま、まて御坂。お前いま、後……って言わなかったか?」
「みさか言ったねー。いいぞいいぞー」
「ち、違うわよ!来るときに猫の話してたでしょ!だから右手後で借りるわよって意味!」
「あ、ああ、そういうことですかい」
「猫ってなに?とうま」
「ああ、御坂がな……」

 上条がインデックスに説明している間に、土御門が大きな皿にたこ焼きを並べて机の上に置いた。
 土御門はうちわでたこ焼きを冷ましながら、
「さーて、本番行くぜい。んじゃお嬢サマから……箸でつまんで、誰かの口にねじ込んでやれ!」
「うっ……!」
 美琴は一つつまみ……インデックスの口に近づけた。一瞬プッと頬を膨らませたが、インデックスはぱくっと食いついた。
「ん……ポテチ…う~~~~~~!辛い!」
「それは暴君ハバネロっぽいにゃー」
 少量なので耐え切ったようだが、不意打ちで効いたらしい。
「短髪ユルサナイ!私はコレでいくんだよ!」
「やり返してたら皆に回らないじゃない……まあいいわ。あーん」
 美琴も覚悟してたこ焼きを頬張る。そしてニヤッと笑うと「これは餅ね。ごちそうさまっ!」
 ぶすーっとしているインデックスを尻目に、美琴は舞夏に差し出す。
「ふむふむー、これは……豆腐かー?味もないしリアクションに困るなー」

 そんなこんなで回して行くと、どうやらインデックスが一番不運のようだった。
 最初の暴君ハバネロから、2回目はパイナップル、3回目はフリスクと地雷ばかりを引き、もう嫌だと逃げていった。
 土御門が更なる第4ラウンドの仕込みをしている間に、美琴は上条をちらっと見て。
 飲んでいたペットボトルの水をテーブルの上に置き、美琴はつつつ…と上条の側に寄ると、おずおずと切り出した。

「猫の約束……いいかな?」

「いいけど、どうすんだ?」
「私がアンタの右側行くから、あとは適当に触ってくれれば」
「適当って言われてもな……まあいいや、頭ってさっき言ってたしな。じゃあ真横に座りな」
「うん」
「インデックスー!スフィンクスこっちにくれー!」
 上条が叫ぶと、スフィンクスに皆ひどいんだよ、と愚痴をたれていたインデックスがしぶしぶやってきた。

 美琴の頭に上条の手が触れているのを見て、不満そうな顔をしたインデックスだったが、事情は了承済みである。
 はい、とインデックスは美琴の膝の上にスフィンクスを置いた。
 スフィンクスは……特に違和感を感じていないようで、美琴から逃げる様子はない。
「やった……!」
 美琴はゆっくりスフィンクスを両手で包みこむとそのまま胸に抱きしめた。
「わー……うれしい……」

 もう異常に感動しているらしい美琴を見て、上条はコレのためだけでもこの右手価値があるよなあ、としみじみ思った。
 また、ここまで笑顔全開の美琴を見たのは初めてである。
 上条まで自然に笑みがこぼれてしまう。スフィンクスもゴロゴロいって美琴に懐いている。
――この幸せな空間は、しばし続くと思われた。


 インデックスが差し出した第4ラウンドたこ焼きを、美琴が何の抵抗もなく口に含んで咀嚼する、までは。

 それは突然だった。口の中からガツン!という、明らかに大量のわさびの衝撃。
「~~~~~!!!」
 美琴はほんの微かに残った理性だけで、猫をできるだけ優しく逃がすと、近くのモノにしがみつき、必死に耐えた。
 鼻の奥がツーンとして、涙が止まらない。
 肩で息をして、ようやく衝撃が治まった美琴に、現実がやってくる。
(イ、インデックス、なんてものを~~~!……って!)

 ようやく、目の前のモノが何か――無我夢中で必死に、涙を押し付けていたモノが何かを理解し。
 潤んだ瞳で見上げると、すぐそこにひきつった口をした上条当麻の顔があった。

「と~う~ま~!」
 胸に顔をうずめた美琴、そしてその肩をを抱く上条に、インデックスの歯が光る。
「待つんだぞシスター!ここで噛みつきは犯則だー!制裁ならコレをー!」
 と、舞夏はたこ焼き――何やら赤色のものが突き出ている?モノをインデックスに差し出した。

 インデックスは怒りの表情で上条の口にたこ焼きを差し出す。上条は嫌な汗がダラダラ出てくるのを感じた。
(絶対ヤバイ。コレは絶対ヤバイシロモノだ。この赤色は高確率で唐辛子でしょーっ!?)
 しかしもう、逃げられない。
 美琴は呆然としているのか腰が抜けたのか、抱きついたまま動こうとしない。つまり動けない。

 覚悟して、たこ焼きを噛んだ。
「痛っ!あだだだ、熱い!ぐはああああああああああああああ」
 美琴は逆に上条に強く抱きしめられた!色気もへったくれもなく、ただただ強く。
「み、水!みずううう!」
 さすがにインデックスもただ事ではないと感じたのか、テーブルのペットボトルを差し出す。
 上条は抱きしめていた右手を離し、ペットボトルを掴むと一気に唐辛子たこ焼きを胃へ流し入れた!
 空のペットボトルをインデックスにトスすると、土御門に噛み付いた。
「なんじゃあこりゃあ!?ただの唐辛子のレベルじゃねーぞこれ!」
「ブート・ジョロキアだにゃー」
「ジョロキアだと……」
「そ、タバスコの200倍以上の辛さらしいぜい。カミやんは明日辺りまで、トイレで地獄を見ることになるにゃー」

 さらに言いつのろうとした上条に、インデックスの冷たい声が被せられる。
「とうま、それ何やってるの?」
「何だよ!何……って……」
 上条は、無意識に右手の下にあったものを撫でていた。――美琴の髪を。
「あ、あれスフィンクスじゃなくて、あれ?み、御坂!? 何脱力してんだ、お前はお前で!」


 美琴は妙な体勢ながらも、もう完全に上条にもたれかかり、左頬を上条の胸に押し付けてまどろんでいた。
「もー立ち上がってもさー、舞夏たちに冷やかされるだけだしさ。もういいわよこのままで」
 ぼそぼそと呟く美琴に、上条は喚く。
「いや、そんな無気力なキャラじゃねえだろお前!」
「いやー、ネコ抱けたし、たこ焼き作れたし、……なんかもー色々満たされすぎちゃったー」

(あれ?これはひょっとして甘えてる……のか?コイツ?)
 上条は、美琴の亜麻色の髪の毛を見つめながら、ちょっと考える。
(いっつも強気だけど、中身はまだ中学2年の親元から離れた女の子、か。冷やかさず、素直にさせとこう……)
「舞夏、毛布あるか?コイツに被せるわ。寝かせとこう」
「みさか調子悪いのかー?」
「いや、眠そうにしてるだけだ。こんな体勢じゃ、起きたら腰痛いって言いそうだな……」

 舞夏が私の毛布だけどー、と毛布を持ってきた。
「ああ、頭から被せてやってくれ」
「いやー、みさかのこんな姿を寮生が見たら卒倒するなー。みさか大人気だからなー」
「そんなに凄いのか?」
「うんー。まさに尊敬一色だぞー。本人からすると気が張って疲れるだろうなーと思ってたー」
「そっか。ここにいる人間には、そういう気張った姿見せなくていいと信用してくれてんだから、このままで」
「そうだねー。じゃあこちらは続きを~」


(……周りがどうこうじゃ、ない。アンタが、こうしてくれるなら、私は――)
 上条が、自分を好きでこうしてくれている訳ではない事は、分かっている。
 だけど、今は何も考えず、上条の優しさだけを素直に受け入れて――甘えさせてもらおう。
 毛布の中で、美琴は少し身じろぎして、改めて上条の胸に頬を擦り寄せた。
 上条の心臓の鼓動の変化に満足しつつ、美琴はゆっくりと意識を落としていった……


Fin.


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー