とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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バレンタイン




「…不幸だ」
最近は使うことのなかった言葉が不意に零れた。
そう呟いた少年、上条当麻は手に持っていた箱の中身を再び見る。
見間違いでありますように、と切実な思いを込めながら。
しかし、現実はやはり残酷なのだ。

交通事故。目の前で子供が轢かれそうになってるのを見過ごせるはずがなかった。
その結果、箱の中身は歪な形へと変わり果てたチョコレート。
落とさないようにとポケットに忍ばせたメッセージカードはクシャクシャ。
衣服の何箇所かは擦り破れ、血が滲んでたりするのだが、
(やべー。今から着替えに帰る時間も、替えを用意する時間もねーのに)
彼の意識は既に別の所にあった。

風紀委員の白井黒子は交通事故の知らせを受け現場に来たのだが、
明らかに見覚えのある忌々しい姿が目に映る。
何やらブツブツと言ったままで、こちらに気づいてないようだ。
「…上条さん」

「呼び出したのは俺だしな、、アイツ待ってるだろうし」

「上条さん聞こえてませんの?」

「つか今、何分だ?…遅刻じゃねーか!急がねぇと」

「上条さんお待ちなさい!…行ってしまわれましたわね」
「しかし、待ってる等と言ってましたが。…まさか相手はお姉様?キィエエエエッ!」
「この黒子の目が黒いうちは!『白井さん早く事情聴取するわよ』…はいですの」


2月14日同時刻

「…遅い」
呟いた少女、御坂美琴は待ち合わせの度に使う言葉を今日も発していた。
約束の時間の30分が過ぎようとしても一向に姿も見えなければ、連絡も来ない。
不意にポケットに入ってるモノに意識を向ける。
この日のために作ったものが入っているのだが、正直不安になる。
必ず貰うであろう他の人達からのチョコに勝ちたくて、
あの2人に相談した結果出来たのは、到底使えそうにないチョコになった。

(いや、でも呼び出してきたのはアイツからだったし...も、もしかしてこ、こここ告白されたり!?
えへへ。私が電話しようと思った時にアイツからかかってきたもんね!ふ。ふふふ…)

妄想空間を堪能している少女は無意識化で微弱な電気を帯び始める。
それが次第に周囲に迸ろうとする瞬間を、少年は目撃した。

「おい御坂!電気!!」
ズタボロの体で走りながら叫ぶ。両手を動かし止めるようジェスチャーも忘れない。

「ふぇ?」
(とうまだ!あれ、両手広げてどうしたんだろう?…もしかしてこのまま、だだ抱きついてくるつもり?///)

「美琴、電気漏れてるから!」

(…!!美琴!いま美琴って!美琴っ言った!!名前呼ばれた!!えへへ///)
「…ふにゃああ」

「ミコトセンセーッ!!」




「ったく。何とか間に合ったから良かったものの、最近多くないか漏電」

「ごめん」(勘違いしてたなんて言えるわけがない!)
「でさ、気になってんだけどそれどうしたのよ?」

「何がだよ?」

「アンタ血出てるわよ。あ、動かさないで消毒するから」

「いつも思うけど準備いいなお前」

「か、勘違いしてんじゃないわよ、アンタの為に持ち歩いてるわけじゃないから!」

「それは分かってるけどさ、何ていうか…」

「何ていうか、何よ?」

「御坂ってツンデレさんなのか?」
「ダチの言ってたツンデレの特徴通り『…バチバチ』すみません冗談です」

「ったく。はい、終わったわよ」

「おう、相変わらず手際良いな。ありがとな御坂」

「誰かさん一人のおかげですっかりなれてしまったせいかしらね」
「で、こんな忙しい日に呼び出してどうしたのよ?」

「え、あーいや、御坂も誰かにチョコ渡しに行くのか?」

「わわ私!?私は別に…ん?御坂も?」

(ギクッ!)

「もしかしてアンタ誰かに渡すつもり?あのシスター?それとも二重瞼の女か?」

「インデックスでも五和でもねえよ、、つか、どっちにしろこれはもう渡せねぇよ」
「頑張って作ったんだけどなー、ボロボロになったからな」

「…じゃあ誰に渡すつもりだったのよ…」
(あの2人以外にもこいつの周りには女の子沢山いるからなぁ)

「お前にだよ」

(こいつの手作り良いなぁ)

「御坂だぞ?」

(…その子が羨ましいなぁ)

「美琴センセーにですよ」

「わ、私っ!?」

「そう言ってるだろ?けど、これはもう渡せねぇしな」
「悪いな御坂、わざわざ来てもらったけど今日は『それちょうだい』…へ?」

「作ってくれたんでしょ?形なんか関係ないわよ、だからちょうだい?」

「お前がいいなら良いけどよ、ほら」

「ありがと。あ、どうして私なの?」

「あー…日頃の感謝とかです」

「ふーん。何々、御坂へ。いつもありがとう。宿題見てもらったり…」

「ぎゃあああああ!!」
「お前!いつそれを奪った!?」

「これと一緒に渡したのアンタでしょ?」

「…バカな!?」

「夕飯作ってもらったり御坂と居る時間が多くなったよな」

「美琴センセー、お願いですから音読は勘弁して下さい」
「つか、帰ってから読んでください。お願いです」

「もう読み終わってるわよ?最後の一行以外」
「でさ、これ直接は言ってくれないの?」

「…お前が好きだ」

「…こんな時くらい名前で言いなさいよ」

「わかったよ…美琴が好きだ!」

「…私もさ、アンタに渡す、じゃないか。アンタに受け取って貰いたいものがあるのよね」
「絶対に返品不可だけど、それでもアンタはいる?」

少年が静かに頷いたのを確認した少女は円筒状のものを取り出し自分の口に塗る。
塗られたそれがチョコレートだと認識するのに時間は掛からなかった。

「…私もねアンタが、当麻が好き」
その言葉を告げた少女は少し背伸びをして、二つの影を一つの影に変えた









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