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伝説のアレ - (2007/10/03 (水) 04:02:51) のソース
<p> <u>伝説のアレ</u> 作者：香月</p> <p> </p> <p> </p> <p> やややや、ちょっと待ってくれ。もう一度聞くぞ。お前は何だ？</p> <p>「何だも何もない。我は伝説の……」</p> <p> いや、やっぱり言うな。何も言うな。正体を明かされてしまったら、俺はさらにどうしていいかわからなくなる。</p> <p>「わがままな奴だのぅ」</p> <p> 何を頷いて、いやそれは頷いているのか？ まずどこが本体なんだ？ というかお前は何なんだ？</p> <p>「だから、我は伝説の……」</p> <p> いや、言うな、言うな、言うな。やめてくれ。うちまで白衣にチェーンソーはゴメンなんだ。ここで迂闊に言っちまったら、それこそ大惨事だ。</p> <p>「我は強いぞ」</p> <p> 唐突すぎて意味がわからん。<br> <br> さあ、物事を整理していこう。まず、お前は何でここにいる？ ここは俺の部屋だ。机の上にあるサイコロも、テレビの横にあるグレイテストヒッツも、全て俺が買ったものだ。<br> <br> 最初に行くべきは俺のところではなく、ツキのところだろう？</p> <p>「ボケ同士では会話がまとまらんでな」</p> <p> 漬物のくせに変な気を使いやがって。つーか、名前がなくちゃ不便だな。お前、名前はあるか？</p> <p>「キ……」</p> <p> わかった。わかった。俺がつけてやる。お前はそうだな……キム公……よし、チャイナだ。お前はチャイナだ。</p> <p>「どういう発想をしとるんだおぬしは」</p> <p> どこを１と数えていいかわからない奴に言われたくないな。どこが口だ。どれが体なんだ。お前ほど形容しづらい奴もなかなかいないぜ。</p> <p>「そうだな、あえて言うなら１パックだ。だが、我ほどになると、高いぞ？」</p> <p> こら！ 俺が何のために正体を明かしていないと思ってる。</p> <p>「我がどういう容姿かを、あのソフトモヒカンの男が決められなんだからであろう？」</p> <p> そうだ、そういうことだ。なんだ、ちゃんとわかってるじゃねぇか。漬物のくせに。</p> <p>「おぬし、漬物を愚弄するか！」</p> <p> あんまり好きじゃないな。お前も好きにはなれそうにない。だから早々に立ち去れ。さっきから臭うんだよ。</p> <p>「何だと！ 我を愛してやまない人間が、世界にどれほどいると思っておる！」</p> <p> おい、俺がもし、お前を愛してたらどうなってたと思う？ 今頃、お前は腹の中だ。わかるか？</p> <p>「ぬ、そうであった。仕方ない、許してやろう」</p> <p> お前に許してもらう気なんてさらさらない。というかこの会話も無駄すぎるんだよ。</p> <p>「いつまでも、登場せぬわけにはいかぬだろう」</p> <p> なら最初から出て来いよ。そうしてくれれば、俺が亀を探す必要もなかっただろ。</p> <p>「亀とは、フィラデルフィアか？ まだ生きておったか。懐かしいのう。いや、奴の用兵は実に巧みでな」</p> <p> 用兵？</p> <p>「ああ。奴の指揮する騎馬隊は精強だった。<br> 帝の不興をかい、北の地においやられたが、奴はそこで兵と馬を鍛え上げた」</p> <p> …………</p> <p>「奴と我は戦う運命だったのだ。<br> 我の指揮する騎馬隊は３千、奴は５千。もっとも、我は歩兵と連携するための、３千だったのだが」</p> <p> …………</p> <p>「危なかった時もある。弟とともに、奴の騎馬隊とぶつかった時だ。<br> あの時、我らはまだ若かった。対フィラデルフィアに編成した騎馬隊であったのだが」</p> <p> …………</p> <p>「最後は父のおかげで何とか助かったのだが、父がいなければ我は討たれていたであろうな」</p> <p> …………</p> <p>「それからも、度重なる衝突があった。最後は、父が味方の裏切りのせいで戦死し、一応は終結したのだが」</p> <p> …………</p> <p>「だが、奴と我の因縁は、それを終わりを迎えることはなかった」</p> <p> 長いわ！ <br> <br> 何が用兵だ。亀と漬物が何で戦争してんだよ。お前は楊家軍なのか。それと、騎馬隊ってなんだ。亀のくせに馬か。漬物のくせに馬か。</p> <p>「お、よく知っておるのう。むぅ、これは致し方ない。もちろん嘘だ」</p> <p> 腹立つ漬物だな。ていうか、そんな話をどこで知った。</p> <p>「うむ。用兵は嘘だが、フィラデルフィアと知り合いなのは真実だ。これは、フィラデルフィアから聞いたのだ」</p> <p> また……亀のくせにそいつも生意気だな。</p> <p>「まったくである」</p> <p> お前もだよ！ </p> <p> いい加減出て行ってくれないか、部屋に臭いが染みついてしまう。そうなったら、誰も部屋に入れられない。あいつの部屋、キムチの臭いすんだよ。なんて言われたら、もう生きていけないだろ。</p> <p>「その生きていけない臭いを体から発している我はどうなるのか」</p> <p> もう焼却処理だな。</p> <p>「我を焼く？ そんな食べ方があるのか？」</p> <p> いや、聞いたことないが。んー、焼却？ そうだ、その手があったか。</p> <p>「何だ、悪い顔になっておるぞ」</p> <p> ああ、ちょっと待っててくれ。今、コンロか何かを……</p> <p>「待て待て！ おぬし、よもや我を燃やすつもりではるまいな」</p> <p> 人聞きが悪いな、燃やすんじゃなくて焼くんだよ。さらにおいしくなるかもしれないだろ。</p> <p>「む、それは。いや、ダメだダメだ！ あやうく騙されるところであった。撤退する！」</p> <p> あ。て、ええぇ！ 飛んだ、漬物が飛んだ！？ こら、汁をこぼすな、シミになっちまうだろ！</p> <p>「これ以上こぼしてほしくなかったら、早々に窓を開けい！」</p> <p> く、くそ。しょうがない。</p> <p>「それでいいのだ。はっはっは、今日は楽しかったぞ。気が向いたら、またきてやろう」</p> <p> 漬物が高笑いしながら、華麗に空を舞った。名前なくても、不便じゃなかったな。<br> </p> <p> </p> <p> </p> <p><br> <br> 「という、夢を見たんだ。えへへ」<br> 「夢落ちかよ！ しかも何で俺視点で夢を見てるんだよ、お前は！」</p> <p> </p> <p><a href= "http://bbs15.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=kansou&mode=view&no=90">感想ＢＢＳへ</a></p> <p> </p>
