鬼火


  • 1963年/フランス
  • 監督:ルイ・マル
  • 出演:モーリス・ロネ、アレクサンドラ・スチュアルト、ジャンヌ・モロー


  • 「僕は自殺する。誰も僕を愛さず、僕も誰も愛さなかったからだ。
  • 僕は自殺する。君達に消し難い汚点を残してゆく・・・」

ラストシーン(思い切りネタバレw)。こんなセリフで終わる。それでも衝撃的な終わり方だった。死に向かっていることが明らかで、主人公も散々にほのめかしていた。けれど友人達との会話を繰り返し、苦悩するシーンが重なるほどに、死という不在が現実感を失っていくのだった。

雰囲気がとても好みな映画だ。ヌーベル・バーグらしさというのか、パリの街を自由に駆け回り、哲学的な会話を喧しげに交わす。友人と散歩をし、何度も向かい合う。女性達がみな緊張感のある美しさで登場し、絵に描いたようなセリフを言う。それら全てがブルーがかったモノクロ(そう見えるだけなのか)映像でスタイリッシュに展開していく。裕福なブルジョア家庭に生まれたルイ・マルゆえの洗練さなのだろうか。

内容よりもビジュアルからの心地よさが生まれ、エリック・サティの音楽と合わさってなんとも濃密な空気をつくり出してくれる。映画は基本的にこうあるべきではないか、そんな作品だと思う。「死刑台のエレベーター」もそうだが、音楽と映像の関係がとても戦略的だ。2005-03-23/k.m

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最終更新:2008年04月13日 21:31