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もう結構あたってる気がするけど……
 PART6いい加減つかさにスポットライトを当てる。を実現してみる。

 放課後。つかさがこなたと談笑しながら帰り支度をしていると、教室に姉がやってきて、こう言った。
「ごめん、つかさ。ちょっと用事が出来ちゃったから先に帰ってて」
「え、なんで?」
 つかさは、キョトンとした顔で聞き返す。
 一年の時はかがみが学級委員をやっていたので、別々に帰る事はあったが、
三年になってから今日まで、二人とも委員会も部活もやっていないので、そんな事は無かった。
 そのため、つかさは「先に帰って」と言われた理由が思い浮かばなかった。
 そんなつかさの戸惑いを察したのか、かがみは言葉を続けた。
「今日、体育委員の会議があるらしいんだけど、みさおの奴、風邪で学校欠席してるのよ」
 ここまで聞いて、つかさは納得した。
 友人どころか、他人だとしても、困っている人がいる時は必ず手を差し伸べるのが姉の性格である。
「そっか。じゃあ私、待ってるよ」
「そう? じゃあ委員会なんてすぐ終わると思うから。教室で待ってて」
「うん、分かった」
「しかし、みさきちのかわりに体育委員の会議に出席してあげるなんて、かがみって人が良いよねぇ」
 隣で姉妹のやりとりを聞いていたこなたも、何気なく言う。
 かがみは、ツインテールを指で遊びながら、こなたに向き直った。
「まぁ、しょうがないじゃない。風邪だっていうんだし、峰岸は風紀委員の会議があるから……」
 かがみの頬が少し朱色に染まる。これはかがみが人から誉められたりして、照れた時の癖だった。
 その癖を察知されて、かがみはいつも、こなたにからかわれるわけだが、今回もその例に漏れないようだ。
「あ~なるほど。暇人なのはかがみだけ、って事か」
「年中暇人の、お前にだけは言われたくないわ!」
「私は暇じゃないよ。ちゃんと家事してるし、バイトもしてるよ」
「そう言われてみればそうね……でもなんだかあんた見てると凄い暇そうに見えるのよ。不思議……」
「失礼な!」
「その前のあんたの発言も、その失礼っていうのに該当すると思うのは、私だけか!」
「まぁまぁお姉ちゃん」
 感情の昂ぶった姉を静めるのは、妹であるつかさの役目である。
「そういえば、こなちゃん」

「なに?」
「今日、スーパーのタイムセールスがどうとか言ってなかった?」
「……ああ! しまった!」
 こなたの帰り支度の動作が目に見えて早くなる。なんか、その小さな後姿から生活感が滲み出ていた。
 よくよく考えてみると、こなたは女子高生でありながら、学業? バイトに家事と確かに忙しい生活を送っている。
「あんたも大変ね」
 かがみも同じように考えていたらしい。
 自分は学業に専念できる環境にいることを後ろめたく思っているのか、多少複雑な表情を浮かべていた。
「いやぁ、うちにはよく食べる奴がいるからねぇ。こういう安い日に買えるだけ買っておかないと」
「そうなんだ。大変そうだね……」
 つかさは、言葉の上では同意をしてはみたが、内心は少し違う。
 こなたは面倒臭いと言うが、つかさはその面倒臭い事をしているこなたを、少しだけ羨ましく思っていた。
 つかさは料理や家事が好きなので、それを好きな人のために毎日行える事に憧れがある。
 好きな人のために尽くす。今どき古い考えだと言われる事もあるが、
 それでも、自分がシンのために、毎日家事ができたとしたら、それは楽しい生活だと思う。
「じゃあ、悪いけどそろそろ失礼するよ」
「はいはい。とっとと行かないと売り切れるわよ」
「こなちゃん。また明日ね~」
 こなたが駆け足で教室を後にすると同時に、
「あ、見つけた!」
 と、軍人のように姿勢を正した男が教室に入ってきた。
 シン・アスカ。寝癖のように散らばる前髪から、日本人離れした深紅の瞳を覗かせる3年B組の体育委員は、
 そのまま、つかさ達二人の前に立った。
「シン? どうしたのそんなに慌てて……」
「探したぞかがみ。お前、今日みさおの代わりなんだろ? 早くしないと会議はじまるぞ」
「えっ、もうそんな時間!? じゃあつかさ、なるべく早く戻ってくるから!」
「うん、行ってらっしゃい」
 つかさは、シンにも同じことを言おうとして、
「あれ、シン君、ボタン取れかけてる」
 シンの制服のボタンの一つが外れかけている事に気付いた。
「んっ、あ、本当だ」

 シンはそのボタンを確認すると、眉をひそめた。
「今にも取れそうだな……知らない間に取れて、無くしても困るし、今のうちに取っちゃうか」
 言いつつ、シンがボタンを握る指に力を入れる。
 しかし、つかさがここぞとばかりに、声をあげた。
「あっ、待って。なんなら、私が繕っておいてあげようか?」
「え、いいのか?」
「うん。授業で使った裁縫セットがまだロッカーの中に残ってるから」
 すると、黙ってつかさの言葉を聞いていたかがみが、半眼になりながら言った。
「ねぇ、つかさ。もしかしてそれ、この前、家で散々『無い無い!』って騒ぎながら部屋中探してたやつじゃないでしょうね」
 つかさは、一瞬、体を強ばらせた後、申し訳無さそうな顔を姉に向けた。
「あ、うん。が、学校に置きっぱなしだったのをさっき見つけて……」
「だらしないわね。ちゃんと一回一回持ち帰る癖を付けないからこういう事が起きるのよ」
「ごめんね、お姉ちゃん。探すの手伝ってもらったのに……あっ」
 と、ここでつかさは、シンを置いてきぼりにしていた事に気付いた。
 案の定。シンは姉妹の会話に付いていけず、呆けていた。
「シン君。私、お姉ちゃん待ってる間暇だから、ボタン付けるの任せてくれないかな?」
 つかさが取り繕うように言うと、続いてかがみも口を開いた。
「シン、やってもらいなさいよ。つかさはこういうの得意よ」
「ふむ……」
 シンは少し考えて。
「そうだな。つかさなら安心して任せられそうだ」
 サラリと言った。
 と、ここで、かがみの眉がピクリと動く。
「……ねぇシン。そのつかさ“なら”の“なら”っていうのは誰と比べて言ってるのかしら?」
「かがみ」
 シンはさも当然、といった感じで、淡々と言った。
「悪かったな! どうせ私は家庭科苦手だよ!」
「じゃあつかさ。悪いけど頼むよ」
「って、スルーかよ! どんだけだお前!」
「うん、任せて。あ、そうそう。帰りは一緒に帰ろうね」
「ああ」
 それからシンは、つかさに上着を渡すと、騒ぐかがみをなだめながら、教室を出ていった。
「さてと……」

 教室内はいつの間にか誰もいなくなっていた。
 つかさは教室の後部にある、自分のロッカーまで歩き、そこから自分の裁縫セットを取り出す。
「だらしない性格も、たまには役に立ったな~」
 作業自体はつかさにとってはそう難しく無い。自分の席に座って、
「バルサミコ酢~♪」
 なんて口ずさみながら、チョチョイのチョイですぐ終わる。
「出来た」
 糸を八重歯で切って、出来具合を確かめてみる。
 やはりシンには、少しでも良い出来のものを提供したいので、確認する目にも自然と力が入る。
 その最中。つかさはとあるものに気を取られた。
(あ、シン君の匂いだ……)
 制服から出る、特有の匂い。
 女もそうだが男にも、何とも言いがたい独特の匂いが存在する。
 別に臭いとかそういうのではなく、こういうのは洗濯しても取れないもので、
 あえて言葉にするならば、服に染み付いたその人自身の体臭と生活臭のミックス、と言った所だろうか。
 人にもよるが、異性の匂いというのは、不快に思うこともあれば、
 心が落ち着いたり、どことなくホッとしたりすることもある。
 つかさにとって、シンの服の匂いというのは、後者、つまりホッとする方にあたる。
「あの時と同じだな……」 
 つかさは、シンと出会って間もない頃の、とある出来事を思い出した。

 つづく。

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最終更新:2007年12月02日 13:50
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