「うーん」
「わ、わたしの作ったシュークリーム美味しくなかった………?」
「え、いや、そういうわけじゃないんだ。なんで同じ作り方でこうも味が違うんだろ、と思ってさ」
あの後2、3日かけて
つかさに作り方のコツを教えてもらい、何度か自分で作ってはみたけど、オレとつかさが作ったものとはそれこそジンとデスティニーの性能差くらいの開きがあった。
クソ!
ホワイトデーは明日だってのに。
「わかった!わかったよ!シンちゃん!」
つかさがオレのシュークリームを食べながら叫んだ。
「ホントか!?何が足りないんだ!?」
「愛だよ!これには愛が足りないの!」
こなたみたいなことを言い出すつかさ。
「……つかさ、ごめんな。疲れてるなら言ってくれればいいのに………」
「ちがうの~!ホントだもん!」
つかさの目をみると、どうやら本気で言っているらしい。
「愛って言ってもな~そんな形がないものどうやって入れるんだよ?」
「入れるんじゃないよ、こめるの」
「こめる?……悪い、もうちょっと具体的に言ってくれないか?」「えーとね…うーんとね……」
オレの質問につかさは頭をひねって考え始めた。
「わかった!……えっとねー、わたしの場合食べてもらう人の笑顔を浮かべながら作るの」
「それが愛をこめるってことか?」
「うん……たぶん」
なるほど、漫画で似たような事言ってたけど、料理の達人のつかさがいうのだったら間違いないだろうけど………。
「ってことはオレは………」
「お姉ちゃん達の笑顔を思い浮かべながら、作ったらいいんだよ♪」
「だよな………」
なんか照れくさいけどやるしかないよな。
「ってつかさ、そろそろ帰らないとマズくないか?」
「え?…ホントだー!…でも………」
「こっからはオレ1人で大丈夫だから」
「あ……うん…それじゃ帰るね……」
つかさはなぜか寂しそうな顔をしてキッチンから出ようとする。
「つかさ」
なぜつかさを呼びとめたのかはわからない。ただ――
「な、なに、シンちゃん」
「つかさがいなかったら本当にヤバかった」
オレは親指をたてて
「つかさGJ!」
「…うん!シンちゃん無理しないでね!」
つかさはそう言って笑顔で出ていった。
「さて、やるか」
つかさの足音が聞こえなくなってから、オレは作業を始めた。
コンコン
「つかさ、私。ちょっといい?」
ノックの主はお姉ちゃん。ちなみにわたしは帰ってきてから思い出した宿題の真っ最中………。
「うん、いいよ~」
「ごめんね、ちょっと話があるんだけど………」
「な~に?」
「あ、あ、あのさ、あんた、最近シンとい、一緒に帰ってる……わよね?」
「う、うん」
お姉ちゃんにしては珍しく歯切れが悪い。どうしたんだろ?
「あんた達…ホントは付き合ってるんじゃないの?」
「えぇぇぇー!?そんなー違うよー!」
「じゃあ、なんで2人だけで帰るの?」
「そ、それは………」
言えない。ここで言っちゃったら、あの人の頑張りが………。
「お願い、答えて」
「………」
「……あんたがシンと付き合ってたとしても、私は姉として祝ってあげたいし、親友として喜んであげたい。
…でも、このまま私やこなたや
みゆきに黙ったまま付き合うんだったら、……私は祝っても、喜んでもあげられない………」
「お姉ちゃん………」
そう言ったお姉ちゃんの目はとても真剣で……いい加減なことを言うのは許されない、とわたしは感じたの。
「わたし達が最近一緒に帰るのには理由があるの」
私は考えながら、話始める。
「その理由ってなんなの?」
「今は言えないの」
「つかさ――」
「でも!明日になったら全部わかるよ!絶対!わたしを信じて!」「………」
「………」
わたし達は自分と同じ色の瞳を見つめ合う。
「そうよね」
先に声を出したのはお姉ちゃんだったの。「私があんたにウソをつかないように、あんたが私にウソつかないわよね」
そういってお姉ちゃんは照れくさそうに笑ったの。
「ねぇお姉ちゃん」
「なーに?」
「もしシンちゃんと付き合うようになったら私一番にお姉ちゃんに言うよ♪」
「私もよ。もし私がアイツと付き合うようになったら、一番にアンタに言うわよ」
その後わたし達は笑い合ったの。
「さて、私は部屋にもどるわ」
ひとしきり笑い終わった後お姉ちゃんはそう言って立ち上がったの。
「うん」
「今日はごめんね。いろいろと」
「ううん、私がお姉ちゃんだったら、きっと似たようなことやってたと思うし………」
「つかさに慰められるなんて、今日は姉妹逆転かしら?」
「あはは」
そして、お姉ちゃんはドアノブに手をかける。
「おやすみなさい、つかさお姉ちゃん」
「え~と…おやすみ、
かがみ」
パタン
「は~続きをやらないと………」
お姉ちゃんが部屋に入った音を聞いて、わたしは宿題を再開したの。
「こ、これを私達に?よろしいのですか、シンさん?」
「ああ、今日はホワイトデーだろ?
バレンタインのお返しだ」
「そういうわけね………」
「かがみ、何がそういうわけなんだ?」
「何でもないわよ!べ、別にお返しなんて、よ、よかったのに…でも…ありがと………」
「ありがとうございます!よく味わって頂きますね!」
2人はオレの渡したものに驚きつつ、喜んでくれた。見事作戦成功ってやつだ!
特にかがみは異常なくらいの喜びようだった。
あいつ、そんなにシュークリームが好きだったのか………。
「ねぇシン、わたしのは?」
オレの制服の袖を引っ張りながら、質問してきたのはこなただ。
「ない。お前からはバレンタインにチョコもらってないからな」
「ヒドっ!その日の夕御飯は腕によりをかけたじゃん!?」
「そんなのオレに家の掃除当番一週間させたのでチャラだろ」
「……あんた………」
「うっ!あん時はホワイトデーなんて、頭になかったんだよー!ギャルゲーでもホワイトデー
イベントなんてほぼないし……トホホ、失敗だったな~」
「こ、こなちゃんドンマイ」
涙目のこなたの頭を撫でるつかさ――
「おっと、忘れるとこだった、つかさ」
「え?なに?」
「ほら」
オレはシュークリームが入った袋をつかさに渡した。
「え!なんで~!?」
「今日はホワイトデーだろ?」
「でも、昨日わたしにくれるなんて一言も………」
「そりゃな。いきなり渡したほうが驚くだろ?」
そう言うとあの人は無邪気な笑みを浮かべたの。
……もう、あの人って本当に子供だもん、困っちゃうよー。
「後これはお菓子作るの手伝ってくれたお礼みたいなもんだ」
そういって、あの人は少し申し訳なさそうに全体的に白っぽいプラモデルを私に渡したの。
「昨日、夜遅くまで何してたかと思えば、これ作ってたんだ~」
「ああ、ホントはもっと大きなのを渡したかったんだけどな。お金ないし、作ってないガンプラがこれしかなくてさ………」
「この子名前あるの?」
私はそれを手に取って眺めながら、あの人に聞いたの。
「ああ、グーンっていうんだ。ホワイトデー仕様に塗ったんだけど、やっぱり気に入らないか………?」
そんなことない、形はかわいいし、あの人は知らないと思うけど、白は私の好きな色………それになにより――
「すっごい嬉しいよ。だってシンちゃんが私のために、愛をこめて作ってくれたんだもん♪」
『The common feature is white.』
~END~
最終更新:2009年06月30日 00:17