「ただいま~」
「おかえり」
オレが家に帰ると妻のかがみと息子のれいが出迎えてくれた……って………
「あれ?今日お前遅くなるって」
「うん。法廷の方が早く終わってね」
オレの問いにかがみは笑って答えた。
「かがみん飯はまだかよー」
「こら、れい!母さんになんて口の聞きかたするんだ!」
変な
アニメにでも影響されたのだろうか、れいは時々オレ達にタメ語で話す。
ここは親として叱っておくべきだろう。
「敬語もまともに出来ない人がよく言うわね」
かがみがニヤニヤしながら、茶々を入れて来る。それが始まりの合図だった。
「オレがいつ敬語できないって?」
「初対面の時からずっーーとよ。最初から私の事呼び捨てにしてたでしょ?」
「何年前の話だよ!?」
「あら、れいはまだ小学4年生よ」
「それはそれ、これはこれ。だいたいおない年の奴に敬語で話すかよ!」
「あんたは年上にも使わなかったじゃないの!」
「使ってた!」
「使ってない!」
「使ってた!!!」
「使ってない!!!」
「…どうでもいいけど飯にしよ」
れいが溜め息をつきながらそう言った。
「で今日の飯なんだけど………」
れいの仲裁で口ゲンガもひとまず終わり、シンが私に尋ねてくる。
今日はシンが料理当番のはずだけど………。
「もう私が作っちゃった」
「なにー!?」
私の返答にシンが目を剥いた。
「ちなみに何を作ったんだ?」
「サンドイッチと生サラダ」
「なんであの材料でそんな軽食しか作れないんだよ?」
そう言って大袈裟に肩を落とすシン。それが始まりの合図だった。
「な、なによ!?あんたの負担を減らしてあげたんでしょ!」
「頼んでねぇよ!!だいたい当番はオレだろ!?」
「それであんたの帰りが遅かったら、れいがお腹空かせるでしょ!?」
「ちゃんと帰ってきただろ!?それに遅くなったら、
つかさに頼むつもりだったんだ!」
「私の妹はベビシッターか!?」
「いいだろ!つかさもれいを可愛がってくれてるんだし!」
「よくない!」
「いいだろ!」
「よくない!!!」
「いいだろ!!!」
「…キッチン着くまでに何分かかってるんだ?」
……………。
『すいません』
シンと私は息子に頭を下げた………。
晩飯も食べ終わり、オレが自室で明日の仕事の準備をしていると――
コンコン
「とうさん、いい?」
「ああ」
れいがこの時刻にオレの部屋に来るのは珍しい。
たいていれいはこの時刻テレビを見てるか、ゲームをやってるはずなんだが………。
「ねえ、とうさん?」
部屋に入って来るなり質問するれい。声の様子から真剣な質問らしい。
「なんだ?」
「とうさんとかあさんって仲悪い?」
「はぁ?」
余りの突拍子のない質問にオレは声をあげる。
「なんでそう思うんだ?」
「だって、とうさんとかあさん毎日ケンカしてるし」
毎日は言い過ぎだろ……かがみとオレは仕事が忙しくて会えない日もあるから、顔を合わせればの間違いだ。
いや、そんなことよりここは誤解を解くべきだ。
「いいか、れい。父さんと母さんは仲なんて悪くないぞ」
「じゃあなんでケンカするの?
友達に聞くとさ、他のとうさんとかあさんはケンカしないって」
「そ、そうなのか?」
「それに先生がケンカはよくないことだ、って言ってたぞ」
「それはそうなんだけど…父さんと母さんのケンカは…その…なんだ………」
頭でわかってても説明するのは難しい、これが今の典型的なパターンだ。
かといってそんなこと言っても、れいは納得しないだろうな。かがみとオレの息子だし………。
「……そうだな……父さんと母さんがケンカするのは……会話してるんだよ、お互いのことを」
「なにそれ?」
わからないって顔をするれい。
「簡単に言うと、オレ達はあのケンカの中でお互いのことがわかるんだ」
「とうさん、おれをバカにするなよ」
れいは半裸目でオレを睨み付けて来る。
「ホントだって! まあ人間なんだし全部わかるのは無理だけど、だいたいのことはわかるぞ」
「じゃあ、母さんが何を思ってたのか言って見てよ」
疑惑のまなざしのれい。……全然信用してないな、こいつ………。
「うーん、そうだな。
あの様子だと、仕事は順調。早く帰れてれいの顔が見れて嬉しい。でもって今日は食べ過ぎたから体重が少し心配ってとこかな。
後は………」
「もういい。……嘘いってないよね?」
「いってない」
「かあさんに聞いてきていい?」
「どうぞどうぞ。でもオレがそう言ったて言うなよ」
「何で?」
「今更だし、あたってても自慢にもならないからな」
「……わかった」
納得してない顔で出て行くれい。
まあ、かがみのことだからバレるとは思うけど………だいたいオレが帰ってきて、予想外にかがみに会えて嬉しいってのも、バレてたし………。
「…これって冷静になると、かなり恥ずかしいな………」
オレは1人で顔を赤くしていた。
私は自室で明日の法廷に使う資料の整理をしていた。
コンコン
「かあさん、今いいかな?」
「いいわよ、入ってらっしゃい」
何か難しい顔をして部屋に入って来るれい。宿題じゃなさそうだけど………。
「最初に聞くけど、とうさんとかあさんって仲悪いの?」
「え!?仲悪くみえるかしら?」
「うん」
「…あっそう」
そんなにはっきり、本人の前で言わなくても………。誰に似たんだか…って私達よねーどうみても……。
「仲いいかどうかわからないけど、悪くはないわよ」
「ふ~ん、じゃあ次の質問――」
「ちょ、ちょっと待って!それは何なの?」
「両親のことについてってのが、宿題で出たんだ」
見事なまでのポーカーフェイスで答えるれい。……ここらへんは私達に似なかったわね…反面教師ってやつかしら?
「仕事はどう?」
「だいぶ、大きなこともまかされる様になったし、順調かな?」
「では次、体重は気になりますか?」
「ちょっと待てぃ!」
余りの質問に私は思わずツッコミを入れてしまった。
「宿題だよ、これ」
そんなこと聞く宿題があるか!……て待てよ………。
「これ父さんにも聞いたの?」
「うん」
…あいつは息子になんということを話すんだ………。
しかしやっぱりバレてたか………。
「さっきの質問には答えられません」
「えー?それは困ります」
「他の質問にはなんでも答えるわよ」
「じゃあさ、かあさんはとうさんとケンカばっかしてんのに、どうして仲が悪くないって言えるの?」
なるほどそれが本題ね。
しかしまた説明しにくい質問ねー。
「そうね、傍目に見ると仲悪く見えるかもしれないけど…あのケンカがあるから、私達は仲良くやってるの」
「なんで?」
「ああやって、お互いの言いたいことぶつけあって、見えてくるものがあるの……って、れいには難しかったかな?」
そう言って私はれいの頭を撫でる。
「…わかったのは、とうさんとかあさんがホントは仲が良いってことかな」
「そーいうこと。
それがわかっただけでも上出来よ♪」
「なんだよ!子供扱いするなよ!!」
むくれて部屋を出て行くれい。
「…冷静に考えると私達って子供の前で、愛してる、って言ってるようなものよね………」
うわ~そう思うと、恥ずかしくなってきた~!!
そして次の日。
「ふぁ~ぁ」
「アフッ」
「……2人ともクマ出来てるよ………」
シンと私はものの見事に寝不足になっていた。
~fin~
最終更新:2009年06月30日 00:21