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16-595

 ~『新生活』~


「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはよ~、遅いよー」
「おはようございます」
 台所に顔を出すとすでにそうじろうさん、こなたゆたかが朝食を食べていた。どうやらオレが1番起きるのが遅かったらしい。
 そうじろうさんやゆたかはともかく、こなたよりも遅いとは………。
「こなた今日は早いじゃないか?」
「ま~ね~。さすがに新学期くらいはねー」
 なるほど。それにゆたかの手前だらしないとこは見せれないってとこか…その気持ちはわかるけどな。

「お兄ちゃん昨日眠れた?私は緊張して早く起きちゃったの………」
「例の子もいるんだろ?それにゆたかならきっと新しい友達がすぐ出来るって」
「そうそう、ゆーちゃんはいい子だからだいじょーぶ!」
「うん、ありがとう!お姉ちゃん、お兄ちゃん」

「しかし賑やかになったな~。
シンくんが現われて、ゆーちゃんが家に来る、なんて1年前には考えられなかったしな」
 そう言って嬉しそうに目を細めるそうじろうさん。
 …オレもそうだ。1年くらい前にはこうなると想像も出来なかったな………。
「は~い、男性陣!目が遠いよー、新学期なんだからそんな目禁止!朝飯をチャチャっと食べる!」
 こなたに言われて、オレとそうじろうさんはお互いを見合わせ苦笑し、朝飯を食べだした。



「とは言ったもののさー。
『春って新しい何かが始まりそうな(中略)大きな期待マジで恋する5秒前!』
って爽やかなイメージあるけど、実際は知らない人と一から始めなくちゃいけないから鬱だよね………」
「私はもう慣れたけどなー。それにあんたはマシでしょ?」
 だいたい恋はもう十分だろ、と心の中でもツッコむ私。
「慣れたんだったら、かがみだけ別のクラスでいいじゃん」
 笑いながら言うあいつ。
 こ、こいつわ、人の気も全く知らないで………。
「ダメだよシンちゃん。そんなこと言っちゃ」
 やんわりとあいつをたしなめるつかさ。
「お姉ちゃん昨日の夜、みんなと一緒のクラスになれますように、ってわざわざ神社の方にお参りしてたんだよ」
「ち、ち、違う!あ、あれは、つかさみゆきと……あーもう!言うな!」
「はぅっ!ごめんね………」
 …ホント悪気がないって恐ろしい……知ってたけど………。

「かがみんはかわいいね~♪」
「だな。さすがツンデレウサギ♪」
 案の定、こなたとあいつはからかいモードに入るし………。

「もう、早く行かないと遅刻するわよ!!行こゆたかちゃん!」
「え!?あっ、はい」
 私はゆたかちゃんの手を取り早足で歩いていった。
「ちょっ!?かがみん!」
「待てって!」
「お姉ちゃ~ん!」
 勿論、私は3人の声にも止まることはなかった。



「そこの少年!アニメーション研究部に入らない?」
「ハァ?」
 学校の門を抜けるといきなり、オレは声をかけられた。
「現在絶賛部員募集中!今ならうるさい3年生もいないよ~!さあ!さあ!」
「…オレ3年なんだけど………」
「えっ!ウソ!?……先輩?……失礼しました!!」
「いや、別に――」
「あの~アニ研部に入りたいんですけど……ハード系ってありっスか?」
「いらっしゃ~い!!わがアニ研は来る者は拒まず!詳しい事は………」
 オレとの会話それっきりにして、声をかけて来た新入生に行くアニ研部の人………。
 …一体何なんだ!?

「こうしてシンの恋は桜と共に散ったのであった………」

「なんだよ恋って!?勝手にふざけたナレーションつけるな!」
「そう言えば、桜が咲き始めたよね~」
 つかさの言葉に、オレはふと近くにあった桜の木を見た。
「桜ね………」
「なにあんた、桜嫌いなの?」
「いや、イメージがないだけ。前のアカデミーの入学式の時に見た気はするけど、そん時は余裕がなかったし………」
「でも今年は桜をゆっくり見れるよね?」
 こなたの相変わらずのゆる~い顔でオレに聞いて来る。
「…ああ、そうだな」
 オレはこなたの肩を軽く叩いた。
「では諸君、次は新クラスを見に行くぞ~!」
『おー!』
 こなたの激に威勢よく答える、オレ、つかさ、ゆたか。
 「なんか嫌な予感がする………」
 その後ろでかがみがボソッと呟やいた。 



 ゆたかちゃんと別れて、わたし達が3年生の階に行くと、そこにはもう何人かの人だかりが出来てたの。

「みなさん、おはようございます」
「おはよ~。ゆきちゃんクラスわかった?」
「いえ、これから探そうかと思っていたところです」
「ねぇ、それだったらみんな自分の名前だけ探して後で一斉に発表しようよ」
 こなちゃんの提案に反対する人もいなかったので、わたし達はバラバラに探すことにしたの。


「ひ、ひ……っとあった!」
 そしてわたしの上にお姉ちゃんの名前はなかったの……べ、別に探したわけじゃないよ!……偶然上の人の名前が目に入っただけだから

………。
 でもこれでお姉ちゃんとは一緒のクラスじないってわかっちゃった………。
 もし、こなちゃんやゆきちゃん……それにあの人……誰とも一緒じゃなかったらどうしよう~。
 わたしはホラー映画を見るような気分で元の場所に戻ったの。

「ふっふっふっ、1人になっても泣くなよ!」
「いや、さすがに泣く奴はいないだろ………」
 泣きそうです………。
「じゃあ、行くよ?せーの」
『B組』「C組」
 1人だけ違うクラス名を言った人がいたの………。



 みんなが一斉に違ったクラス名を言った者の顔を見る。
「あら~私だけまた違うかー」
 苦笑しながらかがみは言った。
 無理してるのがバレバレだな………。
「お姉ちゃん………」
「つかさよかったじゃない、みんなと一緒で」
 今にも泣きそうなつかさ、オレやこなたやみゆきにも笑顔はなかった。
「ほら、辛気臭い顔しない!あんた達はとっととB組に行った!行った!」
 かがみに追い立てられて、オレ達はB組の教室に向かった。


「あっ、悪い。オレ、トイレ」
「わかりました。先に教室に行っていますね」
 全くどうかしてるよなー!たかがクラス替えで!
 オレは頭を掻きながら来た道を引き返した。


「いるよなー。自分の目標以外、目に入らない薄情くんてさー」
「いやっ、ちがっ………」
「わたし達、さながら背景ですぜ」
 かがみと話している子達は、かがみと一緒にいるとこを何度か見た事があった。どうやらかがみと同じクラスになったらしい。
「…なんだよ、心配して損した」
 愚痴って振り替えると、そこにはつかさが笑顔で立っていた。
「シンちゃん、お姉ちゃんを励まそうとしてくれたんだよね?」
「ち、違う!トイレに行っただけだ!!ついでだ!ついで!!」
「えへへ」
 この様子だとこなたやみゆきもわかってるよな………。
「クソッ!…行こうぜ」
 そしてオレはつかさの頭をくしゃっと触ると、B組に歩き始めた。



「うーす。黒井や」
 私達B組の担任は2年生の時と一緒で黒井先生です。
「高良、前期の委員長頼んでええか?」
「あ、はい」
「委員長とかって一度やると、キャライメージが固定されちゃって続くよね」
「それはなんていうか……ご愁傷様」
「そうですね…嫌ではないのでいいですけど………」
 泉さんとあの方の言葉に私は曖昧な笑みで答えました。

「どなたか、体育委員をなさるお方はいらっしゃいませんか?」
 新クラスですから当然ですがなかなか手が上がりません。
 ふとあの方に目をやると我関せずといった風に外を見ておられました。
「シンさ……アスカさん体育委員をやって下さいませんか?」
 危うくいつもどうりの呼び方で呼びそうでした……公私混同は行けませんね。
「パス。面倒いだろ、それ」
 興味なさげに断るあの方。やはりあの方も公私混同はしないのでしょう……ですがあっさり断りすぎです………。
「じゃあやるよ」
「すみません、お願いします」
 見るに見かねたのか別の方が立候補して下さりました。
 その後もなんとかH・Rは進んで行きました。
 あの方や泉さん、つかささんは結局委員会に入られませんでした………。



 今日はH・Rで学校は終わりなんだけど、天気もいいし外で飯を食べようという話になって、校庭で昼飯を食べているのだが………。


「みゆきさんの私服ってどれも似合ってるよねー」
「そうよね。スタイルいいから、ってのもあるんだろうけど………」
「いえ、そんな…私はただ自分が気に入った服を着ているだけで………」
「うわー今越えられない壁を感じたわ」
「じゃあ今度、みゆきさんにわたし達が似合いそうな服を選んでもらおうよ」
「ええー!?」
「それ賛成ー♪ついでに――」
 といった具合に、先ほどからオレには理解不能な会話がなされていた。
 こなたも前までああいう話には興味が無かったはずだが、最近では積極的に話に参加するようになってしまい、完全にオレだけ蚊帳の外


「ったく、なんだよ」
 オレは八つ当たり気味にお握りを口に放り込んだ。

「…うっ!ウググ――」
「シ、シンさん!?大丈夫ですか!?」
 みゆきがいち早くオレの異変に気づき、お茶を渡してくれる。
「危なーい!!」
 オレがお茶を飲んでいる時に遠くで声が聞こえた。と同時だった――
 ドカッ!
 オレの後頭部に何か命中した。
 普段のオレだったら気づいて避けていただろうが、今のオレは飯との戦いに集中しすぎていた。

 ゆるくなったもんだなオレも―― 

 そんな自嘲的なことを思いながらオレの意識は薄れっていった。


 気づくとオレはベッドの中にいた。
「気づかれましたか?」
「大丈夫?どこか痛くない?」
「まったく、驚かせないでよ………」

「え~と、オレはなんでここに?」
「野球ボールがシンに当たって、倒れたんだよ」
「なるほど。あれは野球ボールだったのか」
 疑問が解けたところで、オレは新たな疑問を口にする。
「なんで、オレの名前知ってるんだ?」
 …………。
 その時、時が止まった。

「あんた!何言ってんのよ!?」
「かがみうるさいって…ここ保健室だぞ?」
「あっ、ごめん……って、あれ?あんた今、私をなんて呼んだ?」
 かがみがトボけたことをオレに聞いてくる。
「ハァ?アンタはかがみだろ?それともつかさと入れ替わってんのか?」
 そう言ってオレはかがみの隣にいるつかさを見る。
「ううん、そんな事してないよ~わたしがわたしだもん」
「だよな。…かがみ、オレをおちょくってんのか?」
「も、もういいわよ!心配して損したわ……さっきのはあんたなりの冗談ってわけね」
「ですが一時はどうなる事かと………」
「あれくらいじゃ大丈夫だって、心配性すぎるよみゆきは」
「でもシンも冗談を言うとは、良い傾向だね☆」
「いや、だからアンタ誰なんだよ?」
 …………。
 その時、再び時が止まった。


~つづく~

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最終更新:2009年06月30日 00:26
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