そう言えば、久しぶりに晴れたわね。
放課後、私は窓の外からの空を見て気付いた。
梅雨とは言えああも毎日雨ばかり降っていると気分が滅入ってくるってものよね~。
「かがみー!アキバ行こー!」
私のそんなアンニュイ気分は教室に入って来た侵略者によって終わりを告げた。
「そう言えば、あんたとそういうとこ行くの久しぶりね」
「うん、ここ一ヶ月くらい行けてなかったからね~」
「バイト、入れすぎなんじゃないの?体壊したら、元も子もないわよ」
「…かがみ、わたしの事心配してくれるんだ~?」
ニヤニヤした顔で聞いてくる
こなた。
し、しまったー!!つ、つい………。
「なっ!……バ、バカ……ち、ちが………」
「かがみんは可愛いね~♪」
「う、うっさい!!…で、ホントのところは何なのよ?」
「う~ん、
イベントが重なったんだよ。
バイトの歓迎会や親戚の結婚式や異世界からの来訪者(ストレンジャー)のもてなしとかあってね」
「なんか最後に、意味不明なのが有った気がするんだけど………」
「それはかがみんにもいずれ解るさ」
そう言ってこなたは不敵な笑みを浮かべた。
「それで?今日買うのは決まってるの?」
こなたにからかわれてると判断した私は話題を変える。
「あ、うん。取りあえず最低、欲しい物だけはリストに書いて来たよ」
「こ、これは………」
こなたから渡されたリストを見て、私は思わず呻いた。
何もこなたの字の汚さに驚いたのではない、書いてある品物の量に驚いたのだ。
「……こんなにあるの?………」
「多分、もっと増えると思うよ~♪なんってたって、聖地にはまだ見ぬ強豪が――」
「威張るな!!こんなにどうやって持って帰るのよ!?」
書いてあるリストの商品だけでも、私達には持ち切れない量なのは確実だった。
「んっふっふっ。安心したまえ!こんなこともあろうかと………」
そう言って、普段持って来てない携帯電話を取り出すこなた。
「…ちょっと、
みゆきとかを呼ぶんじゃないでしょうね?」
先に釘を刺す私。
そうでもしないと、こいつの場合本気でやりかねん………。
「違うよ、強力な助っ人を呼ぶんだよ」
私の不安を余所にこなたは何処かに電話をかけた。
この家、いやこの世界に来てもう3週間か………あっちの世界はどうなったんだろう。
家の掃除が終わり、オレはあてがわれている部屋に寝転がり、天井を見ながらそんなことを考えていた。
元の世界に戻る方法は相変わらず解らない。だからといって諦める訳にはいかなかった。
別にここが居心地が悪いというわけではない。むしろ逆に居心地が良くて調子が狂う。
そう思うとオレは遺伝子レベルで戦士なんだとつくづく思う。
「と言ってもなー」
そう言ってオレは上体だけを起こす。
でも元の世界に戻りたいと駄々をこねても仕方がないんだよな。
ここに来た当初はそれで、
そうじろうさんとこなたにさんざん迷惑をかけちまったし。
あの親子は少し変わった所はあるがいい人らだ。
いきなり異世界から来たオレを受け入れてくれた事は感謝しきれないものがある。
そんな二人にこれ以上貸しを作る訳にも行かないしな。
だけど必ず戻って見せる。
あそこには守るべき人や世界があるのだから………。
改めてオレが元の世界に戻る決意を固めた時
プルルルルル――――
下から電話のコール音が聞こえた。
「えーと……泉だけど……なにか?」
オレは馴れない口調で電話に出た。
『あ~シン?わたし、こなた』
「なんだアンタかよ。どうした?」
取りあえず、電話の相手がこなたで助かった。
話すのが元々苦手なのに、相手も見えない旧式の電話じゃやりにくくて仕方がない。
『え~とね、今から駅まで来て』
「なんだ、ケガでもしたのか?」
『違う違う、あのね――』
「ふざけんなー!!!」
『し、シン……電話越しで大声出さないでよ……』
「うるさい!
なんでザフトレッドのオレが
アニメグッズの荷物持ちに行かなくちゃならないんだよ!?」
『おお~と、エリート意識ですか~負け犬が~!?』
「なにー!?」
『昨日言ったよね?ゲームに負けたら言う事聞いてやる、って』
「うっ………」
確かに勢いで言ってしまったが、まさか本当にそれをさせるとは………冗談ってのを知らないのか?コイツは?
『ザフトレッドが約束を破ってもいいんだ~?やれやれザフトも――』
「行けばいいんだろ!?行けば!!」
『んじゃ30分後に駅で~♪』
プッ
ツーツーツー
あ、アイツー!
何がオレをゆる~くしてやるだよ!オレを怒りやすくするの間違いだろ!?
オレは唸りながら外出の準備を始めた。
「あっ、いたいた。シ~ン」
こなたの手の振る方を見ると、1人の少年が立っていた。
どうやらあの少年が助っ人………って、ええー!?
こ、こなたが男子を呼んでくるなんて………。
ま、まさか、か、彼氏ー!?いやいやいやいや、兄弟って可能性も……でもそんな話聞いた事ないし………。
私はそう考えながら、改めてその少年を見た。
特徴と言えば、その鋭い目付き。
そして赤い瞳には、こなたに急に呼び出されたからか、怒りとそして、何故か哀しみが宿っていた。
その他は背丈は男子からするとやや小柄だけど、私達と同年代っぽい。
…だけど……その少年が持つ雰囲気は同年代の男子が持っていないもので、私はまるで刃物を突き付けられた感覚になった。
「なに、ジロジロみてんだよ!アンタ!?」
「あっ、ご、ごめんなさい………」
少年の剣幕に私は思わず謝ってしまった。
「こら!シン!いきなり噛み付かない!
ごめんね、かがみ」
「…あ、うん、大丈夫………」
私は驚いたものの、なんとか返事をする。
「シン、紹介するね
この子は柊かがみ、わたしの友達だよ。
でぇ、こっちがシン・アス……じゃなくって……アスカ・シン。
今は訳あってわたしの家に居候中」
ん?今、居候中って言った?ってことは………。
「ちょっと、こなた」
私はこなたの袖を引っ張りこっちに引き寄せる。
「ちょ、なにさ、かがみ?」
「私はジャマみたいだから、帰っていい?」
私は小声でこなたに話す。
実際、デートのだしにされるのはごめんだし………。
でもまさか、こなたに抜け駆けされるとはね~。
「ジャマ?……ああ、違う違う。私とシンはそんな関係じゃないよ」
「じゃあ、なんであんたん家に居候してんのよ?」
「言ったでしょ?訳ありって」
「訳って何よ?」
「それを知るにはまだまだフラグが足りないよ~」
そう言って人差し指を振るこなた………また意味不明な事を………。
「おい!行くんだろ!?」
私達のひそひそ話に業を煮やしたのか、少年は怒号をあげる。
「ああ、ごめんごめん。
でもその前に挨拶しなきゃ、ね☆」
そう言うとこなたは私と少年を近付かせる。
「…えーと、柊かがみよ。よろしくね、
アスカくん」
「まあ、短い付き合いだけどな」
こっちの顔も見ずに言う少年。
何よ、その態度!!ハラたつー!!!
「ん?電車が来るみたいだな。行くぞこなた、かがみ」
私の怒ってるのに気付く事なく、少年はホームへと歩き出した。
っていきなり初対面相手に呼び捨て!?
ホントに何なのよーこいつは!!!?
それが、私とシン・アスカとの出会いだった………。
~つづく~
最終更新:2009年08月17日 00:10