シンは覚えているだろうか?一週間後の今日は………
~『28日』~
「しかし、あれだなG.w.だっけ?それ過ぎると7月まで祝日がないんだな」
「何を今さら」
コントローラー握りながら溜め息をつくシンに、わたしはゲーム画面を見たまま言葉を返す。
シンは初めての体験だろうけど、わたしにとって、いや学生にとっては毎年受けている絶望感だから、さすがに慣れてくるというもの。
「でも、ほら
イベントがあるじゃん」
「ん?……思いつかないけど、大々的なイベントか?」
「わたしとシンにとっては重大なイベントだよ」
「オレとお前?……
かがみと
つかさの
誕生日か?」
「もっと前」
シンの顔をチラリと見ると本当に分からないという顔だ。まぁ、覚えてないとは思ってたけど、つくづくシンって自分のことより、他人のことだね~。
しかも、他人のこと心配するくせに、他人の気持ちを分かってないと言うか鈍感というか………。
まぁ、一応ヒントは言っとこうかな。
「わたし、シンと初めて会った時、今みたいにゲームしてたんだよ」
「ハァ?何が言いたいんだよ?」
シンがわたしを見るその一瞬のスキをついて、わたしはシンのキャラにコンボを叩き込んだ。
「シンさん、大丈夫ですか?」
「気前がいいじゃない?3人分もおごるなんて」
「もちろん、見返りはしてもらうぜ」
「なーに?」
放課後オレは
こなたがバイトの日を見計らって、かがみ、つかさ、
みゆきに相談を持ち掛けた。
「来週こなたの誕生日なんだけど………」
「プレゼントですか?」
「ああ、なにを買ったらいいかさっぱりだ」
みゆきの言葉にオレは首を縦に振る。
「私はあんたに言われるまで忘れてたわ」
「でもお姉ちゃん、この前、半日くらい考えて買った物は………」
「い、言うなー!!!」
「はぅっ!ご、ごめんね………」
「……で、こなたからは何か要望はあったの?」
かがみは顔を赤くして、髪を指でまきながらオレに聞いてくる。
「一応、ゲームかな………ただ主だった物はもうこなたは予約してるし、かといって美少女ゲーを女の子の誕生日に渡すのは………」
「た、確かにそうですね………」
「端からだとあんたが変態にしか見えないもんね………」
「だろ?」
「…それでは…アクセサリーなんて如何でしょうか?」
「アイツにアクセサリーね………」
別にこなたにアクセサリーが似合わない、とは思わないけど………
「渡しても、こなたのヤツはつけるか?」
こなたは前よりは服のことを気にかけてはいるが、アクセサリー類をつけてるのは見たことがない。
「大丈夫だよ、シンちゃんが渡したらこなちゃんは喜んでつけるよ♪」
「私もそう思います」
その根拠を聞きたいけど、こなたをよく知ってる2人が言うんだから間違いないんだろう。
「じゃあ、日曜にでも渋谷辺りに買いに行くかな」
「シン、一緒に行っていい?私もそこらへんに用事があるし」
「ああ、付き合ってくれると助かるよ、ありがとな」
「お、お礼はいいわよ!それにあんたが変な物プレゼントしたら、こなたが可愛いそうだし」
「なんだかがみ、やっぱりこなたのことが――」
「ちっ、違うわよ!い、言ったでしょ!?用事があるのよ!用事が!」
「はいはい、かがみはかわいいな」
「……あんた、そういうところこなたに似て来たわね………」
「まあまあ。とにかくいい物が見つかるといいですね」
「シンちゃん、頑張ってね♪お姉ちゃんは……頑張りすぎないでね………」
つかさの言葉になぜかみゆきは頷き、かがみは苦笑を浮かべた。
日曜日にバイトなんて入れるもんじゃないね。家に帰ったら9時越えちゃうよ。
ホントこれが電車内じゃなかったら、泣いてますよっと………ん?今チラリと見えた人影は………。
見えたのはやはりシンだった。
いや~シンの姿を見ると疲れも吹っ飛ぶねー……なんて見とれてないで、せっかくだし、声かけて一緒に帰ろっと♪
シンはどうやら誰かと一緒らしい。そう気づいたのは、人込みをすり抜けてシンに少し近付いた時だった。
シンの様子からかなり気を許してる相手みたいだけど誰って………あれはかがみ?なんで?
かがみんめ、わたしが労働にいそしんでる時にシンとデートするとは………こうなったら、シンとのダブルツンデレの会話を聞いて、明日からかっちゃっる!そう決意したわたしは2人の会話が聞き取れるくらいまで潜入を開始した。
「今日は……がとな………たよ……」
「別に……あんたの……したわけ……たまたま用事が………」
ホッホー、かがみ早速ツンデレか!さすがだねー。
しかし、わたしがそうやって余裕を持って聞いていられたのもここまでだった………。
「イニシャル……くれる………」
「どうせなら……SからKへ愛を……よかった………」
「……してくれ…それよりこなたは……くれるかな?」
「大丈夫……あんたが選んだ……こなたも……くれるわよ」
かがみの言葉にシンは頷き、2人は違う会話に移っていった。
わたしは2人の会話が違う話題になったのを確認してから、気になることがあったのでその場を離れた。
どうやらシンとかがみはわたしに秘密事をしているらしい。
それを解くカギは『S』と『K』と見た!
『S』は恐らくシンのことだよね……ということはさっきの会話から……シンが『K』に愛を込めるってこと!?
『K』って誰?誰なの!?……黒井先生……?……ないとは言えないけど、ああいう場合下がKのはず……あー、こういう時に限って出てこないしー!
KOOLになれ!泉こなた!こういう時は身近な人から挙げていこう。まずはかがみ……『K』じゃん!!!
わたしはもう少しで電車内で声を上げそうになった。
「ただいま」
「ああ、おかえり」
出迎えの声はお父さんだった。見るとシンの靴がなかった。
「あれ?シンは?」
「ん?まだ帰って来てないぞ」
あれからうっかり乗り過ごしてしまったわたしより遅いということは、かがみを送っていったのだろう。
……いや、送って行くだけじゃなく、シンとかがみは2人っきりで――
「そうだ。シン君がいない今のうちに渡しとこう……例の物だ」
わたしの悪い想像はお父さんによって中断された。
お父さんが机に置いた物は私が頼んで用意してもらった物だ。でも………
「あ、うん、これね。無駄になるかも………」
「なんだなんだシン君とまたケンカしたのか?」
「そんなんじゃないよ………」
「ふぅむ……まあ、例の日までケンカはしないようにな。渡しにくいだろ?」
「うん、そうだね………今日は疲れたしもう寝るね」
お父さんの言葉を適当に返事して、わたしは『物』を両手で持って、自分の部屋に逃げ込んだ。
悪い思考は疲れてるからだ。わたしはそう考え、自己新記録ともいえる早さでベットに飛び込んだ。
~つづく~
最終更新:2010年01月24日 23:28