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2-607

俺は今こなたの部屋でかがみに借りたライトノベルを読んでいる。
こなたはPS2で遊んでいる。確かFate/stay night [Realta Nua]だったか。
あれだけ長い文を読んで平気なのにラノベを敬遠するのは何故なのかなどと
取り留めのないことを考えながらページをめくっているとこなたが声をかけてきた。
「ねーシンくん」
「何だよ」
「もし元の世界に戻れるとしたらどうする?」
「…………え?」
俺は自分でも随分と間抜けな声を出したなと思った。
固まっている俺に苦笑しつつこなたは続ける。
「ああ、ごめん。もしもの話だよ。
 元の世界に戻れる方法があるんだけどそれを使ったらこっちにはもう居られない。
 そういう状況になったらシンはどうするのかなって思っただけ」
「どうするって言われてもな。考えたこともなかったよ」
俺は素直に答える。
でもある意味では仕方がないことだと思う。
何故なら戻れることなんて考えてみたこともなかったからだ。
そもそもこの世界に来た原因すら解らないのに戻るなんて土台無理な話だろう。
「でもさ、もし本当にそうなったらどうするの?」
「うーん、どうするんだろう……」
俺は考え始めた。
もちろん元の世界への未練がない訳じゃない。
散々なことばかりだったけどそれだけじゃなかった。
友達も居たし戦友も居た。相棒と言えるMSも居た。
思い出の場所もある。もっと話をしたかった奴も居る。
だから元の世界に戻りたいという気持ちは間違いなく俺の中にある。
でも、こっちの世界を捨てられるかと言われればそれは難しいだろう。
右も左も解らない状況でこなたとそうじろうさんに居候としてこの家で暮らさないか
と言われたときは言葉に出来ないほどの感謝をした。
こなたに紹介されて知り合ったかがみやつかさ、高良は友人になった。
こなたに弄られ、つかさの話にツッコミを入れ、かがみと何気ない話をして、高良の知識に感心する。
そんな何でもないことはとても楽しかった。
酔っているゆいさんを介抱するのは大変だけど、だらしのない姉の面倒を見るようでなんだかくすぐったかった。
黒井先生とネトゲーでパーティを組んで話をしながら遊んで
ただの教師だと思っていた人の新しい一面が見られたのは良い経験だった。
最近家族になったゆたかの面倒を見るのだってまた妹が出来たみたいで嬉しかった。
ゆたかの親友のみなみはあまり話さないけれど良い奴だし、昼をゆたかと三人で食べるのも嫌いじゃない。
田村もモデルになってくださいやらこのメカ似てますかやら
人を創作のダシに使われているようだけど頼られるのは悪い気はしない。
そんな日常を捨てられるかと言われれば……、無理だろう。

そんなことを考えていたらこなたが笑い出した。
「なんだよ、人が折角真面目に考えてやってるのに笑うことはないだろ」
「いやー、ゴメンゴメン。シンくんの百面相が面白くってさあー」
「俺そんなに顔動いてたのか?」
「うん、こーんなのとか、こーんな顔もしてたよ」
こなたは俺がしていたらしい顔を再現した。
たしかに変な顔だ。俺も笑ってしまった。
「ひどいよ、シンくん。それにこれ元々シンくんの顔だよ」
「ははははは、ああ悪い悪い」
「んー、ま、いいよ。元はといえばわたしが変なこと聞いたせいだし」
こなたはそう言ってゲームに戻ろうとした、がその動きを途中で止めこっちを向いた。
「まだ何かあるのかよ」
「うん。あのさ、元の世界にさ少しだけ戻れたら何がしたい?」
「少しだけってことはある程度時間が経ったらこの世界に戻るってことか?」
「そ。それなら考えやすいんじゃないかって思って」
「そうだなー……」
目を閉じて考える。したいことか。一番したいことは……。
「墓参りかな」
「……それって家族の?」
「ステラやレイにもだな。墓はないけどオーブの慰霊碑に行けばあいつらにもたぶん聞こえるだろ」
「いいかげんだなー」
「ほっとけ」
「それでどうするの?」
「こっちの世界の話をするよ。戦争がない平和な世界もあるってさ。
 それにこなた達のことも話さないとな。友達が出来たって。
 俺はこんなに楽しいんだからもう平気だって言ってやらなきゃ。
 じゃないとみんな心配するだろ。いきなり居なくなったんだからさ」
「…………そっか。そういうことならホントになるといいね」
「そうだな」
「あ、そーだ。シンくん写真撮ったら?写真あった方が話もしやすいし」
「それって携帯でか?」
「そ。明日あたりにわたしとつかさとかがみとみゆきさんとシンくんで撮ろ」
「ああ、それいいな。みんなで撮ろうぜ」

おしまい

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最終更新:2008年01月31日 01:53
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