幽霊騒動…と言っても、騒いでたのは俺ぐらいだったが、あの不思議な出来事から1週間が過ぎた。
まぁ、あれからオレは自分から
こなたに対して行動を起こすわけでもなく、ただ今までのように平然と過ごしていた。
あんな無茶な頼みごと、オレは聞く必要なんてないし…はっきり言ってこなたをお嫁にだなんて願い下げだ。
あと、こなたはオレに好意を持ってるとか…そんなことを
かなたさんは言っていたが、こなたを見てると…とてもそんなことは信じられなくなる。
なにせ、アイツは相変わらずのネトゲ三昧。あれを恋する乙女と見ることが誰にできようか。
今になって思えば、これはかなたさんがオレをその気にさせるためのウソだったと考えるのが妥当だろう。
だが、運命は…オレに安息を許すことはない。
「突然ですが、こんにちは。かなたです」
「ど…どわぁぁぁぁ!!」
いきなり、幽霊…もとい悪霊が出てきた。っていうか、ホントに突然すぎる。心臓に悪いからいきなり出てこないでほしい。
「冷たいですね。それと、あなたの一週間の生活を見ていましたが…ホントにこなたに対する態度が冷たすぎます。
アレでは、こなたに愛想を尽かされても知りませんよ?」
「愛想もなにも、こなたはオレにそんな感情なんぞ持っちゃいませんよ。で、なにしにきたんですか??」
正直言うと、こないでほしかった。この人がくると…おそらくロクなことはない。そんなオレの心も知ってかしらずか、かなたさんはにっこりと微笑みながら
「ええ、なんだか素直になれない貴方たちを見てるとヤキモキしてしまうので…サポートに参りました」
「サ…サポート??」
「でも、その前に私が持ってきたこの誓約書に目を通していただけますか?」
…なんというか、相変わらず勝手に話を進めてくる。俺の質問なんかどうでもいいということかよ。
で、誓約書だったっけ。なんだか知らんが、どりあえず読んでおくとしよう。
「この誓約書には、あなたがこれから生活する上での決まりごとが書かれています。それを遵守してくださいね」
そうしてオレは誓約書に目を通してみると、遵守するべきことが項目で書かれていた。その内容とは…
第一項.こなた以外の女性に欲情しない。こなただけを見ること。
第二項.こなた以外の女性は基本的に道端の雑草同然に思うこと。
第三項.道端の雑草と話すなんてことはしないこと。
※もし、この3つの規則をどれか一つでも破った場合には……
「…って何ですか、これはぁぁぁぁぁッ!!!!!」
「あら、どうかされたんですか?」
とにかく滅茶苦茶だ。なんだ、この規則は? しかも、もしこの規則を破ったら俺はどうなるんだ?
3点リーダの後が非常に気になるんですけど…!
「3点リーダの後ですか? それは……フフフ」
「なんですか?このタイミングでその笑いは!!!」
「でも、たったの3項目。誠実なシンくんなら、楽勝ですよね?ホントはこんなことを書く必要なんてなかったのでしょうけど、念には念を…入れてみました」
これは念を入れすぎですよ。冷めてるとかよく言われるけど…オレだって一応、男なんです。こんなの守りきれるかどうか…
「それにシンさんは、学校でモテモテだと聞いていますので、他のメス犬がよく貴方に…たかってくるのでしょう?
それをシンさん自身に振り払ってほしいものですから…このような規則を作ったんですよ」
よく考えれば、かなたさん…おしとやかそうで言ってることはかなりエゲつないな。オレの中でのあなたの第一印象がどんどん崩れていってます。
「しかし…こんなモン、オレがサインしなければ有効には…」
「その問題も解消済みです。あなたが了承済みなのはわかっていましたから、あなたの手を煩わせることもないと思いまして。
というわけで、昨日あなたが寝てる最中に、私が体に乗り移ってサインを書かせてもらいました」
「え?そ…そんなバカなことがあるわけ……って、あるしッ!!!」
て…手口が汚すぎる…。その誓約書には、ちゃんとオレの筆跡で「シン・アスカ」とサインがしてあったのだ。
どうやら、オレには始めから「NO」なんて選択肢はなかったってことになる。娘が大事なのはわかるが…これはないだろう。
ってか、この悪霊…体に乗り移るなんてこともできるのかよ!
「それでは、シンくん。将来の夫として、早速こなたと愛を営んでください」
またこの人は無理・無茶・無謀を押し付ける!
「そんなことできませんッ!!オレは断固として拒否します!」
「今、こなたはお風呂ですから…そこに突入すればいいですよ」
くそッ!!会話にならない!わかってたけど、やっぱオレの話なんか聞いちゃいねぇよ、この悪霊は!!
「オレはここを動かない!テコでも動かないからなッ!!」
あんな滅茶苦茶な内容の誓約書なんて知るもんか。俺は…かなたさんに「反逆」するッ!!
「照れ屋さんなんですね。わかりました。じゃあ、私があなたに乗り移りましょう」
かなたさんがそういうと、いきなりかなたさんがオレの体にスゥっと入り込んできた。
そして…体の自由が利かなくなってしまったのだ。
「ふふ。今、あなたの体は私が動かすことができます。さぁ、こなたも待っていますから…お風呂場へ行きましょうか」
もちろん、オレとしてはそんなことは阻止したかったが、意識はあるのに体が全く言うことを聞かない。
というか、喋ることすらできない。オレの体は…完全にかなたさんに乗っ取られてしまったようだ。
そんなオレにできることといえば…情けなくも心の中でかなたさんに罵声を浴びせることだけ。
「(ドチクショーッ!!離れやがれーーーッ!!!)」
だが、願いも空しく…かなたさんが操る俺は、無謀にもこなたのいる風呂場へと堂々と飛び込んでいく。
もちろん、こなたはオレを待っていたわけもなく、ただ…普段はあまり見せないような表情を浮かべてオレを見つめてくるだけだった。
その後の展開だって? あの後、オレはその現場を
そうじろうさんに見られたために、地獄を見た。
半殺しで済んだだけ、マシだと思うべきなんだろうな…こういう場合。全てはかなたさんのせいだから、納得したくないけど。
とにかく、こんな生活を続けていると体が保てない。なんとか…この窮地を脱する方法を考えてみる。
でも、結局どうすることもできずに、オレはこれからも肉体と精神を削っていくハメになるのは…言うまでもないかもしれない。
終わり
最終更新:2008年03月03日 10:26