かがみルート最終日『エンディング1』
かがみとの高感度90%以上、レイとの選択肢『帰るよ、俺』を選択
卒業式が終わる。
それが全てとの別れの時を意味していた。
「もう、満足したか?」
「ああ」
友人たちとの別れに涙している仲間達に気付かれないように教室を
出て行く。
「安心しろ、シン。
お前がこの世界から消えたとき、彼らの記憶からお前は消える」
「そうなんだ」
「ああ。お前の存在が消えたままだと色々問題だからな。
世界が修正を行なうんだ」
難しい話は気にするな、俺は気にしないとレイが言うのを
シンは空を見つめながら聞いていた。
自分の記憶が消える、それはつまり自分が過ごしてきた3年近い思い出が
消える事で。
こなた達の中から自分が消える事で。
「辛いか?」
「まあ、ちょっとは寂しい」
「そうか、だったら――」
「レイ、俺があの世界に帰るのは変わらない。俺はケジメをつけたいんだ」
「……そうか」
そう、ケジメ。
あの時、アスランに破れた自分は気付けばこの世界へ飛ばされた。
パイロットスーツに身を包み、こなたの家で気を失っていた。
そして、
そうじろう達に助けられて学校へ行くことになった自分。
あれから、2年が経った。
平和な世界、平和な日常、ザフトに居た頃には体験する事のなかった
色々の出来事に囲まれて過ごした楽しかった時間。
何もかもを失った自分には過ぎた幸せだった。
海に行った、学園祭をした、
クリスマスを祝った、初詣に行った。
数え切れないほどの出来事がこの胸にある。
だが、それなのに、それでも自分は忘れる事が出来なかった。
あの世界を、C.Eを。
それはきっと自分に染み付いてしまった呪いだったのかもしれない。
自分はあの世界を忘れる事は出来なかったのだ。
「レイ、ごめん」
こなたの卒業式を見に言っているため誰もいない泉家。
パイロットスーツに身を包んだシンはレイに向かう。
「何をだ?」
「俺は結局こんな選択肢しか選べなかった。忘れてここで暮らす事も
できたのに、しなかった」
「シン、前にも言ったが俺は気にしていない」
「………」
「だが、一つだけ言える。お前は優しすぎたんだ」
「優しい……?」
「ああ。お前はあの世界を見捨てる事ができなかった。
辛い事だというのに、お前は帰るなんてことを選んだんだからな」
レイの手が肩に置かれる。
それは感触はないのに優しく暖かかった。
「ありがとう、シン。俺は、お前に感謝する」
「レイ……」
それは今まで見たどんなものより優しい笑顔だった。
「待ってよ!!!」
その声にシンは振り向く。
ああ、やっぱり。
「かがみ……!」
そこには、居間の戸を開けたそこには、かがみが立っていた。
「何処に……行くつもりなのよアンタ」
息を切らして自分を見る眼がかすかに潤んでいるのは気のせいではない。
この世界で一番自分を気にかけてくれた少女。
時に気が強く、時に優しく、時に怒ってくれた少女。
こなたの友達、
つかさの姉、日下部達の友達。
隣のクラスで、いつもここにいて、自分の傍に居てくれた。
あの世界の事を話した、こなた以外ではたった一人の少女。
そして、自分に恋をしてくれた少女だった。
気付いてはいた、その想いに。
自分を見てくれる瞳がただの友情でないことにも。
だけど、まさか、こんなところで。
「何で、ここにいるんだよ」
「アンタが一人で学校から消えるからよ。それで、こなたに家に
行けっていわれたから……」
アイツにはお見通しだったということか。
ふざけた真似をしてくれる。
「それで、何だよ?」
「何処に行くのよ」
俯きながら続ける。
「帰る、とか言わないでよね……アンタ、一緒に大学いくんでしょ」
「ああ、そんな事も言ったな」
「こなたにツッコミいれるの私だけじゃしんどいんだから」
「そうか」
「まだ、貸してないラノベもいっぱいある」
「おもしろかった」
「卒業旅行に行こうって言った!」
「ああ」
「行かないでよ……」
それは無理だ。
言おうと思った、だけど。
「かがみ……」
言えない、言えるわけがない。
だって、
「っ……」
かがみは泣いていたから。
「知ってる、シンが私とは違う世界から来た事。でも……なんでよ。
何で帰るのよ!何で………何でよ……っ!!」
「シン」
分かっている、レイにそう目配せしてシンはゆっくりとかがみに近づく。
そして、
「っ!?」
抱き締める。
今の自分にはそれが精一杯だった。
「悪い。でも、俺行かなくちゃ駄目なんだ」
「どうしてよ………」
胸の中でかがみが見上げる。
「前にも言ったけどさ、俺の世界は今きっと大変な事になってる。
それを無視していることなんてできないんだ」
「……」
「俺、みんなに出会ってそう思うようになった、ここは平和だから。
だけど、あの世界ではまだみんな苦しんでいるんだ」
思い浮かべる。
2度の戦争で荒廃した地球、資源のないプラント。
何処にも飢えに苦しむ人がいて奪われる人たちがいた。
ラクスの言っていた自由な世界はそれを救う事が出来るのか?
人は自由に生きる事が出来る、それはそうだろう。
でもそれは、この世界みたいに戦争がなかったらだ。
ラクスはそれに気付いていない。
この世界に来て、違う環境に身を置く事でそれに気付けた。
だから、あの世界をもう一度見ないといけない。
違う世界を知った自分だから。
「だから、行かなくちゃ」
「……いや」
それは断固とした拒否。
「絶対いや!私、シンと離れたくない……だって私は!!」
「知ってる」
「え……?」
「かがみが俺のことどういう風に想ってくれてるか知ってる。
だけど無理だ、俺には応えられない」
「シン……」
「ごめん、でもありがとう」
「どうしてそういう事言うのよ……そんな事言われたら、止められない」
胸の中で絞るような涙声が聞こえてくる。
それが胸に罪悪感を募らせる。
「……悪い」
そう言うしかなかった。
「良いわよ……もう」
突き放すように抱擁を振りほどかれ
「でもね」
そして、
「っ!?」
今度はかがみから抱きつかれ
「ん……」
口付けを受けた。
それは永いキス、自分の力ならば簡単に振りほどけるのにできない。
唇と唇が触れ合うだけの行為だというのに、こんなにも愛おしい。
「んん……っ、シン……」
シンもかがみを抱き寄せ、更に深く口づけする。
どれだけの時間そうしていただろうか、どちらからともなく唇が離れる。
互いの目を見つめ合う。
「帰ってきてよね」
「え?」
「私はシンが好き。だから、帰ってきて」
そう一言。
それだけ言ったきりかがみは背を向けてシンを見なかった。
「ほら、行きなさいよ」
その背中が震えている。
だけど、シンはそれ以上近づこうとも抱きしめようとも思わなかった。
自分にはその資格はない。
何故なら、自分が消えれば彼女は自分を忘れるのだから。
かがみに背を向ける。
それはこの世界との別離の一歩。
「扉はもう開いている」
レイの横を通り過ぎ、そこに在る光の中心へ歩を進める。
淡く輝くそれに包まれて、自分から何かが離れていくのを感じとる。
そのまま歩みを進めるたびに輝きは増していく。
その先にある懐かしいあの姿を幻視して。
「デスティニー……」
両腕と両足をもぎ取られたそれは初めて見たあの時のままだった。
いや、あの時よりも強壮とした姿だ。
「そうか、俺はまたお前と一緒に征くんだな」
呟く。
そして、いよいよこの世界との境界に踏み込む。
その時になって、何故か振り向いてしまった。
背を向けるかがみがまだそこにいた。
「かがみっ!!」
叫んでいた。
振り向くかがみ、それに向かってまた叫んだ。
「俺、いつか帰ってきてやるからな!!」
「……うん!!」
それが最後、この世界でのシンの最後の思い出。
最終更新:2009年05月08日 04:36