最後の一振りを少女に……
かがみ「オッスこなた」
こなた「今日も私のために来てくれたねかがみん♪」
かがみ「誰が貴様のためじゃ!」
つかさ「アハハ」
昼休み……いつもの4人が集まり、ってこれで始まるの今まで何回もあったような気がするが……
細かい事を気にしてはいけない。
こなた「まぁ基本は大事だよね」
いい事言うな青虫(ドカッ バキッ …………泉こなた様。
こなた「でもかがみ、いっつもココに来てるけどみさきちや峰岸さんの事はいいの?」
かがみ「いいのよ。あいつ等は他に友達多いんだし。それにアンタの顔も見たいしね」
こなた「アハ♪」
『あんたの顔』、と言う言葉に思わず歓喜してしまった彼女は自分が背景コンビの名前を出した時、
かがみが少し曇った顔をしたのをこなたが気づく事は無かった。
ついでにその言葉に込められた真意にも……。
ヴァ「おーい柊、何処行くんだよー」
明くる日、こなた達の待つクラスに向かおうとしていた所、みさおに声をかけられてしまう。
ヤバイと思ったときにはもう遅い。
かがみの腕にはみさおのそれが絡み付いて思いっきり引っ張ってくる。
抵抗しようとすればできない事も無いのだが、そうすると後でどんな目に会わされるか……。
ヴァ「ちょっと暇なんだから来てくれよ」
デコ「たまには私達と過ごすのもいいよね、柊ちゃん♪」
ああ今日も始まったか……とかがみは思った。
今の彼女の気分は、水中に一分しかもぐれない男が一分の限界に水面に出ようとした時、
グ イ イ と足を引っ張られる……というのはどうだろうか?
そのまま女子トイレへと引きずり込まれるのを気にかける者は誰もいなかった。
ヴァ「アハハハハハハ、マジで便器舐めてやがんぞw」
デコ「柊ちゃん汚いのが好きなんだね、今度便器のお水飲ますためコップ持ってこないと」
何も考えずに、何も感じずに、ただ言われた事だけを行う。
こうする事が一番自分の被害を抑える事ができるのだ……。
前に一度逃げた事があったが、その時はみさおの兄を含めた男達を呼ばれて……その後の事は思い出したく無い。
かがみ「う……ゲ……」
ビチャビチャと汚らしい音がトイレの中に響き渡った。
ヴァ「あーダメだぞ柊」
そのままかがみのツインテールを引っ張って、吐瀉物へと彼女の顔面を押し付けた。
かがみ「うう……」
ヴァ「食べ物粗末にしたらバチが当たるんだぞー。だからちゃんと残さず食べろよ」
デコ「ホントゴミ柊ちゃんにはもったいない位のご馳走ね」
あやの「もうみさちゃん……その辺で許してあげようよ」
みさお「あ……でもなあ」
あやの「せっかく頑張ったんだから、ご褒美しなくちゃね」
ドカッ、と勢い良くかがみは脇腹を蹴り上げられる。
こんな細い足の何処にこんな力が……と思う余裕ももはや無い。
つま先がいい所に入りそのままむせ返った。
みさお「そうだな、ちゃんと頑張ったんだからな」
同じく背中から思い切り踏みつけられてしまう。
その女子トイレは普段から割りと人気が無く、今も彼女達だけしかそこにはいない……。
そして鳴り響く授業のチャイム。
それを合図に、本番が始まろうとしていた。
あやの「さーて、色々遊ぼうね柊ちゃん」
こなた「ねえかがみー」
かがみ「うわ!」
気がつくとこなたの顔が目の前に迫ってきており、思わず椅子ごと転びそうになる。
つかさ「お姉ちゃん……ずっと暗い顔してたよ」
こなた「どしたの?」
思わず出てしまいそうになる安堵の溜め息を堪える。
少なくともここにいる間は自分があんな目に会う事は無い。
大切な彼女達に心配をかける事も無い……服で隠れた箇所を狙ってくるみさおとあやのに感謝すべきかもしれない。
そんな思考に思わず笑ってしまう。
かがみ「ううん、平気よ。ちょっと考え事してただけ」
つかさ「なら……いいけど」
かがみ「それとこなた、ゴメン。放課後アニメイト一緒に行くの無理みたい……みさお達と約束入っちゃって」
こなた「え、そりゃ無いよかがみ」
かがみ「ゴメン、私行くから!」
慌てるように立ち去る背中を見て、二人は顔を見合わせる。
こなた「…………ねぇ、何か変だよね」
つかさ「こなちゃんもそう思った?」
赤い染まった太陽が二人を赤く染める帰り道…………。
あれから少し迷ったが、結局つかさが家で少し話しを聞いてみると言う事で帰路についたのだが…………、
つかさ「………………こなちゃん」
こなた「ん?」
つかさ「ゴメンね、先帰ってて」
こなた「あ、ちょっとつかさ!」
結局、言いだしっぺの方が様子を見に行こうと決意した。
こなたの方はせいぜい、『まぁかがみんもそういう日があるんでしょ』、あるいは『あの日かもな』程度にしか思っていなかった。
だが長い間、ずっと一緒にすごしてきた双子の妹……つかさにとってはどうしてもイヤな予感がしてならなかった。
つかさ(あんな顔したお姉ちゃん…………、今まで見た事無いもん)
もし何か悩みがあるのなら、たとえ聞き出せなくともできるだけお姉ちゃんを支えてあげよう。
単なる勘違いならそれでいい、日下部さん達と一緒にお話しながら帰れるかもしれないし…………、いやきっとそうなる。
そうなって欲しい。
────つかさの足は本人が意識しないうちに早まっていた。
つかさ「あ!」
校門に着いた所でつかさは立ち竦む。
つかさ(お姉ちゃんどこにいるの……)
日下部達に会いに行ったのならもう教室は出ている可能性が高い。
あるいはもう学校から出ているかも…………、そう思った所で
つかさ「あれ?」
つかさの目に体育館の方へと向かうあやのの姿が映った。
(お姉ちゃんと一緒じゃなかったのかな……?)
少し考えている間に、その姿はすぐに見えなくなってしまう。
その後、とりあえず彼女だったらかがみとみさおが何処に行ったのか知っているかもしれない。
そう思って後を追う事にしたのだが…………。
つかさ(居た!)
あやのの姿はすぐに見つける事ができたのだが、目の前で体育館倉庫に入られまたしても姿が見えなくなる。
すぐに自分も入ろうと、扉に手をかけるものの……
つかさ(でもなんで峰岸さんがこんな所に……?)
普段おっとりしている彼女が……それも放課後に、もっとも縁が無さそうな場所に入る理由は何だろう?
そう思った瞬間、扉を開こうとしている手の力が急に抜けてしまう。
何か特別な理由……そういえば、とつかさは峰岸には恋人がいると言う話を思い出した。
だとしたら開けるのはマズイかも……と言う考えが頭を過ぎるが────
つかさ(それは無いか。峰岸さんに限って)
思い直して扉を開く。
それが間違いの元だった。
つかさ「え─────?」
目の前に広がる光景…………、まるで昔見たホラー映画の人肉に群がるゾンビみたいに、一つの箇所に固まる数人の男子。
その隙間から垣間見える、ただ空ろな表情で虚空を眺めているツインテールの少女……。
つかさの穢れ無き天然頭脳は、事態の理解を拒んでしまう。
つかさ「あ……!」
ようやく事態が飲み込めた時、
つかさ「あああ!」
殆ど本能のような物で悲鳴を上げようとするが、
つかさ「う────」
あまりに遅すぎた。
突如後頭部に走る衝撃。
そのまま彼女の意識は遠くへと飛ばされていった……。
つかさ「う…………」
あれからどれほど立ったのか、頭の痛みでようやくつかさは目を覚ます。
霞がかった視界が明確になるのと同じくして、頭の思考もハッキリとしてくる。
ようやく先ほどの事態を思い出し、立ち上がろうとするがそれが出来ない。
つかさ「な、どうして!?」
彼女の手は何か紐状の……おそらくはガムテームだろうか?、のような物で後ろに縛られており、身動きがとれない。
じゃあ足に感じる重量は……
みさお「おーっす妹」
つかさ「日下部さん……?」
彼女の足は縛られているわけでは無く、現時点ではみさおによって押さえつけられているだけだったのだ。
だが動こうにも、元々力はみさおの方が強い上に、またがられているわけだからビクともしない。
みさお「オイオイ暴れんなってば」
そう言われて従うわけにはいかない。
早く姉の下へいかねば……、それだけが彼女の心をしめる。
縛られている現状では向かった所で姉を救出する事も適わぬだろうに……。
みさお「おーいあやの、柊連れてきてやれよ」
あやのに半分引きづられるようにして現れたのは…………、おそらく先ほどの陵辱のなごりであろう、
髪はみだりに乱れ、制服が肌蹴られてしまっているかがみだった。
そのまま放り投げられるように、つかさのすぐ前にかがみは地面へと這い蹲らされてしまう。
つかさにも彼女にはすでに立ち上がる気力も無いのだと言う事が良く分かる。
つかさ「お……お姉ちゃん……」
返事こそは返してくれなかったが、いま目の前にいる姉は先ほどの人形では無い事を彼女の目が語っていた。
その瞳は、自身の汚れた姿を妹に見せ付けさせるあやのでは無く、自分を押さえつけているみさおに向けられている。
こんな状況でもかがみはつかさの事を優先している…………、
一瞬、言う事を聞かずにここに来てしまった自分を睨みつけているのだと思ってしまった事をつかさは恥じた。
かがみ「やめてよ……!」
あやの「ん?」
かがみ「私だけでいいでしょ……つ…かさだけには手ぇ出さないで!」
あやの「んーそうだねー。どうしようかしら……」
クスクスと、考えるようなそぶりを見せるがその実は最初から決まっている。
あやの「ダメだよ。だって……」
みさお「柊の妹だもんなー」
みさおがあやのの言葉を代弁する形で遮る。
まるで好きな女の子からお気に入りの人形を奪い取り、意地悪をする少年のような笑顔で……。
みさお「よっと……」
みさおが尻にしいているつかさを、仰向けに転がして……
みさお「さーてぇまずは鑑定鑑定」
つかさ「や、やめ」
あやのがつかさの制服に手をかけ、そのまま一気に捲り上げる。
みさお「アハハ、柊と違ってひんそーだなあ妹は」
あやの「大丈夫よみさちゃん、そういう趣味の人もいるだろうしね」
みさお「だよなー、ちゃんと稼いでくれよこれから」
かがみ「ちょ、ちょっと待ってよ!」
その言葉の聞いた瞬間、つかさは意味が理解できなかったようだ。
だが、かがみの方は先ほどまでとは対照的に今度は顔を青く染めている。
かがみ「つかさにまであんな事をさせるつもりなの!? そんな事したら絶対に許さないんだから!」
みさお「ヴァかだなー。誰かに言ったりしたら写真バラ巻くって言っただろー」
かがみ「構わないわ! つかさに手を出されるくらいなら……あんな写真いくらでもバラ巻いて!
その代わり私は警察に行ってやるんだからね!」
そう言われても二人は戸惑う事はおろか……
みさお「だってさ、困ったよなあやの」
あやの「そうだね、どうしようかなー」
形だけのやりとりを始める。
つかさ「んーーーーー! んーーーーー!!」
紐が思い切り背中に食い込み、つかさは痛みに悶える。
だがみさおの方はその表情を見ても、むしろ嬉々として力を更に加える。
ブチッ、と音がして。
ようやく紐が切れた。
結果、こなた以上ではあるがそれでも丘程度の盛り上がりしか無いつかさの乳房が露になったわけだが、
今のつかさにとっては羞恥心よりようやく激痛が終わった安堵の方が心をしめていた。
みさおの方はと言うと……
みさお「チェッ、つまんねーの」
そう言ってつかさから剥ぎ取ったブラジャーを後ろへと投げ捨てる。
あやの「ダメだよ、みさちゃん。そんなのだって後で売れるんだから」
みさお「あ、わりーわりー…………そうだ」
何かを思いついたらしく、彼女は口元に八重歯をのぞかせながらポケットに手を入れる。
そうして取り出したのはつかさの知っている彼女にはあまりに不釣合いな物……。
みさお「いやー私は吸わないんだけどね。兄貴からちょっと借りてきた」
側面に横文字でメーカーなどが書かれている、タバコの箱だった。
そこから一本タバコを取り出して、一緒に持っていたライターで火をつける。
みさお「ほーら」
つかさの胸にそれが押し付けられた。
つかさ「───────!!!」
いわゆる根性焼き……、それが何度も繰り返される
あやの「あ、柊ちゃん。助けようなんて思わないでね」
かがみの目の前に、一本のナイフが突きつけられる……。
あやの「柊ちゃんが良くっても……みさちゃんだっておんなじの持ってるんだから、わかるよね?
あ、目逸らしてもダメだよ」
つかさ「ん! ん────!!」
みさお「おいおい根性ねえな妹。柊だったらもっと我慢できてたぞー」
あやの「あはははははははははは……そうだよねー、柊ちゃんはこうされると嬉しいんだもんねえ」
かがみ「お願い、止めて……何でもするから、止めて…………」
放課後の体育倉庫……。
かがみはつかさを人質にとられ、つかさはかがみを人質にとられ、背景コンビの残酷な遊戯は続いていく……。
─────かに思われた
あやの「あはははははは は」
突如、まるで脳内にて閃光が走ったかのような衝撃が走る。
だが痛みは全くと言っていいほどない。
あやの「…………え?」
今の……何? そう思って回りを見渡すと、みさおも、足元にいるかがみも、
更に先ほどまで絶えず痛みに悶えていたつかさでさえ、目に涙を溜めながらも自分の方をずっと見ている。
よく見るとかがみの顔に血がついていた。
しまった───、と思う。
何時の間にナイフで傷つけてしまったんだろうか? だとしたら今までの苛め方ができなくなる……
そんな考えも顔に何かがつたう感覚で全て吹っ飛んでしまう。
顔に触れてみると……、手がべったりと赤く染まった。
あやの「アハ……ハアアハハハハアハ?」
彼女に痛みを感じる暇があったのか……、それが自分の血だと気づいたのか?
そして、振り向いた先にいるのは金属バットを振り上げたこなた……その意味する事に気づいたか。
とにかく次の瞬間にはこなたの振り下ろしたバットがあやのの顔面を完全に叩き潰した。
みさお「あ……あや?」
この状況が理解できずにいるのはみさおも同じだった。
どういう事だろう? さっきまでいたぶる立場だったあやのが今はそこに倒れて痙攣してる?
何でここにチビっ子が?
いずれ柊とおんなじようにしてやろうと思ってたが、今ここに居るはずがないのに?
それと……、それと……。
(なんで何回も殴ってんだよおおおおおおおおおお!!?)
痙攣を続けているあやのをまだ生きていると判断したのか、目の前のこなたはなおもバットを、
まるでスイカ割りで割れたスイカを更に粉々に砕くかのごとく振り続けてて居た。
あやのの痙攣が止まるまで、何度も、何度も、何度も何度も何度も頭を。
脳漿やら血飛沫が口と鼻から飛び出て自分に降りかかろうが、
ゴリャと言う音と一緒に頭部が完全につぶれて頭蓋骨の欠片がはみ出ようが、
眼球がかがみの頬に飛べばそれを摘んで潰した。
みさお「ヒッ!」
やがてこなたの瞳が自分に向けられる。
それは先ほどかがみが向けてきたような怒りの目では無い。
純度100パーセントの殺意……狂気も何も無い、それが自分に向けられている。
そして向けている本人は一歩ずつこっちに近づいてくる。
お世辞にも頭が良いとはいえない彼女だが、ようやくそこに来て事態を理解できた。
みさお「イヒイイイイイイイイイイッッ!!」
すぐに入り口の扉に駆け寄るも……
みさお「ありゃ? あれえ!?」
戸を横にスライドさせようとしてもビクともしない。
みさお「な、なんなんだよ! 何であかねえんだよ!!」
無理に力を込めると、滑らせた手の爪が引っかかり、剥がれた。
みさお「開けろよ! 開けてくれよ!! こっから出してくれってヴァ!!」
ドンドンと扉を強く叩く。
もはや今日は体育館にどの部活も無い、この体育館には自分達以外誰もいないと言う事などは忘れていた。
自分の股間が生暖かくなっている事に気付く余裕すらも無い。
こなた「みさきち?」
みさお「ハッ」
気づくと、すでに真後ろにはこなたが……。
みさお「よ、よおチビっ子……ひ久しぶりじゃん?」
こなた「…………」
ズリッ
引きつった笑いを浮かべながら、背を壁に貼り付けたまま一歩下がる。
もっとも本人に笑っている自覚などは無いのだが。
みさお「今日はもう帰ったんだと思ったぜ? ま、まだ居たのか?」
こなた「…………」
ズルリッ
みさお「そういえばさ、チビっ子がこの前言ってたゲームやってみたけど」
こなた「…………」
ズルリッ
みさお「結構面白かったぜホントに今度一緒にやらねーか」
こなた「みさきち」
ズリッ
みさお「あ、さっき柊にやってたのなら冗談だゾちょっとした悪ふざけなんだ、
ちちち……チビっ子もまさか本気にしてねーだろ? ね、ねーよな!?」
こなた「…………」
一瞬、みさおはこなたとは別の方向に視線を向ける。
みさお(いける!)
そう判断を下しつかさのすぐそばに落ちているナイフに手を伸ばす。
つかさを人質にすれば、目の前の悪魔だって一瞬は怯むだろう。
後は目の前のチビを殺すなり逃げるなりすれば良い。
その後は……もう退学でも警察でもいい! 少年院なんて兄貴も行ったのだ、この状況を切り抜けられるのならそれくらい──
──────ゴシャ、と言う衝撃が伸ばした手に走る。
みさお「………………」
震える手の先には、かつて指だったものが複雑に絡み合い、まるで出来損ないのタコのようだ。
見上げるとゴルフの要領でバットをスイングした後のこなた……。
みさお「ヒギャアアアアアアアアアアア!!」
みさお「ぐえ」
ヤモリのようにはいずって逃走を試みるみさおの背中に、さらに一撃。
脊髄にいいのが入ったのだろうか?
下半身が痙攣している。
みさお「ギッ」
そのまま肩にもう一発。
今度は骨が砕ける感覚が良く伝わってきた。
こなた「ねえ教えて」
肩を抑えて転げまわるみさおの髪の毛を引っつかみ、口を耳元に寄せ呟く。
こなた「『コレ』でつかさに何しようとしたの?」
みさお「じ、じでない……! 何も、しようとぢでない……だから止めでぐれよ……ホント」
こなた「ふーん」
こなたはナイフの切っ先をみさおの指に当て、そのまま押し付ける。
みさお「ヒッ……」
こなた「な に し よ う と したの?」
みさお「や、やめて……ほんの! ホントにほんお冗談だったんだよ、ホント!!
もう、しないから勘弁してくれって!!」
こなた「これも冗談だよ」
本日、何度目かも分からないみさおの悲鳴が再び響いた。
かがみ「こ…………なた……?」
あまりに間の抜けた声が響く。
だがそのか細い声にもこなたは敏感に反応した。
呼ばれた次の瞬間に彼女の体はかがみへと向いていた。
かがみは目の前の状況がまるで理解できない。
少し離れた所には呆然として事のなりゆきを見つめている妹。
すぐ隣には頭部が完全粉砕されたクラスメート。
その親友日下部みさおは、床に突っ伏したままだ。
死んではいないようだがその体は絶えず痙攣を繰り返している。
そのすぐ後ろには自分の親友。
────返り血に濡れた顔と、その手にはナイフを持って。
散らばった脳みそ、これまでの苦痛の日々、汚された自分、妹……血 血、血……
こなた「ねぇ……かがみん」
かがみ「ひいッ!」
こなた「かがみんを苛めた奴らはコレでみんな殺したヨ……だからもう怖がらないで大丈夫だよ?」
救いを求めるように手を差し伸べるが、かがみは尻餅をついたまま後ずさってしまう。
こなた「かがみ……」
かがみ「イヤ……イヤ、来ないで! 来ないで!!」
声をかけるたびに血の気がひいた顔で首を横に振るかがみは、こなたの血にまみれた顔が、かがみのそれ以上に真っ青である事に……、
自分以上にこなたを恐れているのは、こなた自身である事に気づく事は無かった。
やがて体育倉庫の隅に追い詰められる。
こなた「かが────」
かがみ「あっち行ってよ人殺し!!」
こなた「………………!!」
かがみ「イヤよ、助けて、だ、誰か助けて、つかさぁ!」
こなた「………………」
こなたは無言のままナイフを高く振り上げる。
その何も感じていない表情……。
かがみ「ヒッ」
思わず目をつぶって体を庇うかがみとは対照的に、遅れて動いたのは
つかさ「……! こなちゃんダメエエエエエ!!」
先ほどまで呆然としていたつかさだった。
そして覚醒した瞬間に気づいていた。
こなたの本当の狙いは……。
ザクリ
つかさ「あ……」
気づくのがあまりに遅すぎた。
こなたから数歩の所でつかさは膝から崩れ落ちる。
そして……かがみは、血を流しながら倒れる彼女の名前を思わず呟いた。
かがみ「こ……な……た?」
そしてまた血溜りが広がった。
完
最終更新:2024年04月24日 19:04