操り人形・・・・・

by福岡県

「かがみ、今日みんなでカラオケ行かない?」
「あぁ、久しぶりにいいわね、校門で待っててね」



今日もいつもどおりの一日であった、普通に学校に行って、
四人で弁当を一緒に食べて、そして締めくくりにカラオケに行く・・

誰が見ても仲のよすぎる完璧な親友、クラスの枠を超えてくるかがみ、
そして中産階級の三人にはつりあわない程の金持ちのみゆき・・
そんな違いなど関係なく同じように付き合っているのだから



「どうしてこなちゃんってアニソンしか歌わないの?」
「ふふん、アニソンを馬鹿にしちゃいけないよ、宇宙戦艦ヤマトやエヴァンゲリオンみたいに名曲もたくさんあるのだよ!」
「でもさ、アンタが歌うのは勝手だけど
 つかさとみゆきにドラえもんを歌わせるのは勝手なんじゃないの?割り勘なんだからね!!」
「まあまあ、かがみさん私は別に嫌じゃないですよ、お気になさらないでください」



本来ならここで終わるはずだった、いつも人徳者のみゆきがここですべてを収めてくれる、
そうこなたは甘えていたかもしれない、だが今日は何かが違った。
「みゆき!こなたには一度ガツンと言った方がいいわよ!!」
「え?」
「か、かがみ、わ、私てっきりみんなが楽しんでくれてると思って・・・」
「アンタ空気読めないの?だから私たち以外にリアルな友達ができないのよ!!」
「ちょっと!!お姉ちゃんそれ言いすぎ!!」



その瞬間かがみはハっとした、言い過ぎたか?いやまさかこなたに限って・・・
しかしこなたから返ってきた言葉は意外なものであった、
その瞬間こなたはつかさにゆっくりといつものジト目を移し・・



「いいよ、いい子ぶらなくても・・・どうせアンタもリアルな友達は私たちだけだよ、ねえつかさ?」
「えっ?ちょっと、こなちゃん・・・」
「私帰るよ・・・・みんな迷惑そうだから・・・」
「ちょ、ちょっと!!待ちなさいよこなた!!」



かがみはわかりやすい性格だった、つかさのことだけじゃない、
先程のことは自分が言い過ぎたのが原因と思ったからだろう、一言でいい、誤解を解きたかった
ただ、みゆきもかがみと一緒にこなたを追っていったがつかさはうつむくだけであった



「まあいいや、私のストレス発散方法は他にもあるから・・・」
「ダメだ、さっきからこなたの家に電話してもつながらないや、さっきのこと怒ってんのかな?」
「お姉ちゃん、もういいよ私全然気にしてないし、こなちゃんだって一日寝たら忘れるよ・・」
「そうかな、じゃあお休み!」



つかさは満面の笑みでかがみと廊下で別れた、しかしつかさは寝るわけにはいかない、自分の夜はこれからなのだ



「ふぅ、こなちゃんにも困ったもんだよ、さて・・・」



そしてつかさは携帯を取り出しあるサイトにアクセスする、そこは陵桜学園の裏掲示板だった、
すると先程の笑顔とはうってかわって冷静に画面を見つめていた・・



「ハデスさん・・・今日も来てるかな?」



愚痴や不平を掲示板にぶちまける、それがつかさの楽しみであった、
しかもそれの大半はこなたのことである、もちろん名は伏せてあるが・・
そこで知り合った「ハデス」という人物と意気投合しこなたの悪口等で盛り上がっていたのだ



しんちゃん:今日はとても嫌なことがあった、マジで
  ハデス:また例の「少女A」か?オタクってのはホントウザいよなぁ(笑)
しんちゃん:うん、私あの子とは合わない気がする、合わせてあげるの疲れるよ(涙)
  ハデス:そうか、気持ちわかるから泣かないでくれよ
しんちゃん:いっそのこと、こなちゃんなんて死んじゃえばいいのにな・・・



「あっ!!」



書き込んでしまった、軽い気持ちだったのに・・・ヤバイ、本当の名前なんて書いたら大変なことに・・・だが・・
ハデス:そうか・・俺が手伝ってやろうか?いや気にしなくていい自殺に追い込む上手い手ある・・・



「な、返事が来るなんて・・・嫌だ!!もうやめた!!こんな掲示板なんてもう来ない!!」



その瞬間つかさは携帯を放り投げた、あまりの恐怖のために、気味が悪いもう寝よう、だがその瞬間携帯が震える、つかさは恐る恐る携帯を取った



「人ヲ殺ス位ノ願イ事ヲシタカッタラ悪魔二モ魂ヲ売ルンダ、ソウダロ?柊つかさ・・・」



声を変えている?これは「ハデス」からだった、彼女は従うしかなかった、見られている、あの人は私を知っている、断れば何をされるわからない・・・



「い、いいよ、教えて?どうしたらこなちゃんをこの世から消せるの?」
「ソレハダナ・・・」



つかさは悪魔に魂を売った、こなたが嫌いなのは本当だったから・・・
翌日
「あ、こなた・・・昨日は・・・ごめんね」
「ん?なぁに?かがみ・・・」



こなたには目にクマができていた、、まさか昨日寝ていないのか?そのことがいっそうかがみに重くのしかかる・・



「いや、昨日のことでさ、アンタ気にしてんじゃないかって・・だから眠れなかったんでしょう?ホントごめんね・・・」
「いやぁ、違う違う、昨日徹夜でネトゲしてたからさ・・・あと超レアアイテム発見して先生と一緒に盛り上がってね」
「はいはい・・・わかったわよ!!」



心配して損をした、元々こいつはこんな奴だ、先が思いやられる、もう今日はほっといても大丈夫だ、そう思ったとき・・・



「あれ?ない・・・」
「こなた、どうしたの?」
「ないんだよ、私の上履きが!!」
「お早うございます、あら?泉さん、どうかされたんですか?」
「あぁ、みゆき、ちょうどよかった、こなたがね、上履きがないって言うのよ!!」
「じゃあ私はこっちを探します、かがみさんと泉さんは向こうの方をお願いします」
「見つかりましたか?」
「いいや、まだ・・・」
「早くしないと授業が始まります、急ぎましょう!!」



下駄箱を引っ掻き回している三人は昇降口から入ってくる生徒達から特異な目で見られていた、しかし気にしてる暇はない・・



「あ、あった!!」
「え、どこですか?泉さん!!よかったですね!!」
「うん・・・で、でも・・・・」



確かに上履きは見つかった、だがもし見つけたのがみゆきだったら「よかったですね」なんて言わなかっただろう・・・
何しろそれは掃除用具入れの中の汚い水が入ったバケツの中に放り込まれていたのだから・・・



「な、何て酷いことを・・・・」
「だ、誰よ!!こんなことしたのは!?」



流石の二人も耐えることはできなかった、みゆきは言葉を失うほどに驚き、かがみは怒りのあまり人前にも関わらず大声を上げ・・
ただ当のこなたは冷静であった、異常なほどに・・・



「く、黒井先生に相談したほうが・・・」
「いいよ、みゆきさん・・・これは私の日ごろの行いが悪い天罰だよ・・・」
「え?そ、そんな・・・」
「どうしてよ!!アンタ自分の上履きが汚されたのよ!!どうかしてるわ!!」



キーンコーンカーンコーン♪
そこまでだった、もう教室に行かないといけない、するとこなたは何事もなかったかのように・・・



「授業が始まるから、私先に行くね・・・」



二人はそんなこなたをただ見送ることしかできなかった・・・
「先生!!泉さんの気持ちがわかって言ってるんですか?」
「せやけど、ウチにどうしろって言うんや?」



二人の言葉は対照的であった、温厚なみゆきには珍しく怒りをこらえてるようであった・・・
だが黒井はさっさと教室に行かねばならないと迷惑そうであった、しかも耳を弄ってるところから本当にイラついてるようだった



「ですから、犯人を見つけて・・・」
「甘いな、高良は・・・」
「は?」
「これくらいな事、どこの学校でもよくある事や、ウチも一回隠されたことあるけど大したことなかったしな」
「・・・・・」
「ほな、授業があるから行くな・・・」
「あなたは・・・・本当に・・・・・教師としての自覚があるんですか・・・・・」



しかしこの声が黒井に届くことはなかった、もうその時には黒井は他の教室に消えていた・・



「先生なんて・・・・あてにならない・・・・・」



しかしそのおかげで黒井は見ることがなかった、涙にはまみれてはいるが、怒りに任せて我を失いそうなその表情を・・・



「もういいよ、みゆき・・・・」
「うっ・・・かがみさん・・・・・私・・どうしたら・・・」
「私たちで・・・犯人捜そう・・・・それしかない!!」
「うわぁ!!みゆきさん、いつもながら今日も豪華なお弁当だねえ!!」
「いいえ、今日もいつもの残りですよ・・・」
「どうしたの?つかさ・・・・」
「い、いや、なんでもないよ・・・」
「あんた今日ヤケに来るの早かったわね、どうしたの?」
「は、早めに来て勉強してたんだよ、き、期末近いし・・・」



姉は私のこと疑っているのか?いや、そんな馬鹿な・・・そんなことを考えつつ昼食は終了、味がまるでしなかった・
昼休みもそのせいで落ち着かなかった、今日は一人だ、いつもは楽しく三人で談笑するはず・・・いや二人でいい・・・
あの女が消えてくれれば・・・



ピルルピルル♪
誰?ま、まさか・・・落ち着くのよ、つかさ・・・



「も、もしもし、ハデス?」
「流石ダナ、今日ノ手際ノ良サハ素晴ラシカッタヨ・・・」
「み、見てたんだ・・・・こ、光栄だな、これもハデスのアドバイスのおかげだよ・・・」
「ソウカ、ソレハヨカッタ、俺ハイツデモオマエヲ見テイル・・・・今更オジケヅイタリシテナイヨナ?」



何だって?私をずっと見ている?その瞬間あたりを見回してみる、誰なの?いや、誰でもハデスに見えて来る・・・怖い・・



「ま、まさか!それはないよ・・そ、それで次は何をしたらいい?」
「次ハ体育ダッタナ?俺ノ計画通リ二ヤッテイレバ必ズ泉こなたハ死ヌ、ヌカルナヨ・・・」



つかさは次の指令をじっと聞くことしかできなかった・・・
「今日はバレーだったよね?私頑張るよ!!」
「泉さんが私たちのチームにいてくれると心強いです・・・・」
「どうでもいいけど、張り切りすぎて突き指しないようにね?」
「つかさは?」
「今日は休むってよ、体調が悪いってさ」
「だったらかがみ、今から言うことを事をつかさに伝えといてくれるかな?直接言いづらいから・・」
「え?」



バレーは楽しかった、久しぶりにいい汗をかいた、
今日はつかさも珍しく頑張っていた、かがみが同じクラスメイトでないことだけが残念だったが
ネトゲより楽しかったな・・・
そんなことを考えていた、私には仲間がいるじゃないか?どんな奴が私を襲ってきても私は負けない・・・



「さてと・・汗を拭いて着替え・・・・・えっ?」



汗びっしょりで早く着替えたい・・・だがそれはかなわぬこと・・・何しろ彼女の制服はカッターでズタズタに切り刻まれていたのだから・



「一体誰が・・・・・・・・く、狂ってます!!同じ学校の仲間にこんなこと・・・」



そしてみゆきはあり得ない人物へと矛先を向けた・・・・



「あなたがやったんですか?何とか言って下さいつかささん!!」
「何を言ってるの?ゆきちゃん、どうして私が犯人になるの?証拠はあるの?」
「だ、だってあなたは・・・」
「確かに私は体育を休んだけど保健室でずっと寝てたんだよ、保健の先生に聞いてみればぁ?」



言い方が何かむかついた、「見ればぁ?」である、しかし保健の先生と一緒にいたということは無理・・・



「くっ・・・ご、ごめんなさい・・・」
「まぁいいけどね、それじゃ私早退するから・・・・・」



みゆきは何も言い返すことができなかった、自分はクラスメイトを疑った、いやそれ以上のこなたの友達を・・・
するとすぐにつかさはみゆきの脇を通り過ぎた、ジロりと睨んだのは間違いであって欲しい・・



「みゆき・・・・・・どうしたの?」
「い、いや見ていたんですか?かがみさん・・・・」
「ま、まさかあいつが・・・・嘘・・・・」
「確証はありませんが、様子がおかしいのはあるようです・・・・」
「どうする?これ、先生に話す?」
「ムダですよ、はっきり言って・・・・あの人はこんなこと興味ないようですし・・・泉さんは・・・・?」



こなたの姿はもうそこにはなかった・・・
あれからこなたが来なくなって三日が過ぎた、いつもみたいに適当な言い訳して休んだようだ・・・
その上先生はこなたがゲームに熱中していると思っているらしかった、かがみもはっきりいって黒井先生が嫌いになった・・
二人はつかさを疑ってみるが大した証拠もなくウロウロする日々が続いた・・・



「ハデス・・・・あなたの計画は完璧だよ・・・・」
「マダマダ手ヌルイ・・・コレジャ、泉こなたハ自ラ死ヲ選バナイ・・・」
「あとね、私疲れたよ、仲間が欲しい・・・・一人でいじめるのは大変だもんね?」
「今カラメールでソイツノ証拠ヲ送ル、ソレヲソイツ二見セタライイ、」



つかさは待った、ハデスから送られてくるメールが待ち遠しくて仕方がない、久しぶりだ、ハデスからの電話を楽しみにするのは・・
もうハデスはつかさにとって恐怖の存在ではなかった、むしろ恋人と同じように信頼しあっているようだった。



「会いたいなぁ・・・・ハデスに・・・・」



ピルルピルル♪



「あ、メール来たんだ・・・ポチっとなっと・・・・・ん?・・・はは、まっさかこの人がこんなことしてたなんてね・・・・あははははは♪」



何ヶ月ぶりだろう、こんなに笑ったのは、明日が楽しみでならなかった・・・
「あ、来た来た・・・おーい、こっちだよぉ?」
「一体何ですか?私はあなたと話すことはもうありませんが・・・」
「まあまあ、ゆきちゃん今日はゆきちゃんにプレゼントがあってね♪」
「今日は誕生日ではないのに・・・・」



どういう風の吹き回しだろう?できることなら私よりこなたにこの優しさを向けて欲しい・・・
そう思っているとつかさは何やらバッグから封筒のような物を取り出す
プレゼントにしては薄い封筒、何だろう?
商品券?クオカード?一体何が入っているんだろう?しかしそれはみゆきの期待を遥かに裏切る物であった、悪い意味で・・・



「う、うそです!!お母さんが!お母さんが!!」
「所詮は女ってことだよ、ゆきちゃん・・・・ゆきちゃんのお父さんが相手してあげないからこんなことになるんだよぉ♪」
「お、お願いします!!これだけは!これだけは誰にも言わないで下さい!!母の名誉に関わることなので・・・」
「どうしようかなぁ?あははは♪」



つかさは上機嫌であった、この間自分を散々犯人扱いしたみゆきが自分に涙を瞳にためながら土下座をする・・・
最高のシチュエーションだった。



「だったらさ、私の仲間になってくれない?お金持ちのゆきちゃんがいると何かとやりやすいし・・・」
「そ、そんな・・・・」
「じゃあこの写真をネットにばら撒かれてもいいのね?アンタ学校に来れなくなるよ・・・・それでもいいの?」



そのとおりだった、こなたと母の名誉、どっちが大事?でもこなただけは裏切りたくない・・・しかし彼女の頭の中にとんでもない言葉が流れる・・



(友達はいくらでも作れるけど・・・お母さんは一人しかいない・・・こなたがいなくても、かがみとかがいるし・・・)



そこまでだった・・次の瞬間にはつかさはみゆきの頭に手をやり愛おしそうにくしゃくしゃっと撫でた、まるでアンタは私のしもべと言いたいばかりに・・
最早つかさが天使だったという名残は黄色いリボンだけになってしまった・・・・



こなたが休んで一週間が過ぎた頃・・今日はかがみが来てくれた、なんだろう?この安堵感は?



「具合、どう?」
「うん、最近はご飯もたっぷり食べてるから大丈夫だよ・・・・」



たっぷり食べてる割にはげっそりとしているような?かがみを気遣って言ってくれてるのだろうか・・



「あれ?今日はあの子はいないの?」
「あぁ、ゆーちゃんのこと?今日はみなみちゃんと一緒に遊ぶって言ってたからいないよ・・・」



あれからかがみは毎日来てくれている、でもみゆきは昨日から来てくれない、なぜであろうか?
しかし今のこなたにはそんなに気にはならなかった、かがみと話していると不思議と安らぐ、
しかし学校に行きたいという気持ちにはならなかった。



「あ、そろそろ帰らないと、明日はみゆきと来るから、じゃあね・・・」
ドンッ!!
「あ、こんにちは!!」
「あれ?ゆーちゃん、お帰り」



そこにいたのはゆたかだった、いきなりかがみにぶつかってきたから驚いた、しかしなんだか様子がおかしい、ここでゆたかがこなたに言うべき言葉は
「ただいま、お姉ちゃん!!」あるいは「お姉ちゃん?今日は学校行かなかったの?具合は大丈夫?」であろう、
だがゆたかの言葉はこなたにとって信じることはできなかった



「お姉ちゃんが・・・・悪いんだ・・・・私は悪くないのに・・・大嫌い・・・・」
「・・・・ゆーちゃん・・・・どして?」



その瞬間かがみはゆたかの胸を物凄い勢いで掴んだ・・・
「ちょっとアンタ!!自分が何言ってんのかわかってんの!?こなたはアンタの大事な従姉でしょう!?」
「ふざけないでよ!!私の気持ちも知らないくせに!!」
「どういうこと?」
「今日・・・みなみちゃんが・・・・」



午前中~
「あ、お早う!!今日のことなんだけど?」



しかしみなみは答えない、どうして?そう思いながら去っていくみなみの制服を強引に掴んだ瞬間・・



「触らないでくれる・・・・汚いから・・・」
「え?」
「聞こえなかった?もう私には話しかけないで欲しい・・・・」
「な、なんで?テストの時あんなに優しくしてくれたのに!!」
「それはあなたが誰か知らなかったからよ・・・あの女の親戚だなんて・・・風俗でバイトしてる女のいとこなんて・・・」



まさか・・自分のいとこが風俗でバイトをしている・・・そんな・・・・



「う、嘘・・・・だ、誰から聞いたの?」
「つかささんとみゆきさんから・・・・」
翌日~



かがみは昨日は自分が何をしたか全く覚えていなかった、頭の中にはある人物のことだけしかない、
その人物はここに既に呼んでいた・・



「あ、あの?かがみさん?今日は一体何の御用で・・・・・」
バァン!!
「きゃぁあっ!!!」



言葉より先に手が出た、その瞬間みゆきの頬に高速で何かが衝突した、それが何か確認する前にみゆきは床に倒れた・・



「な、何を?」
「何を?よくそんなことが言えるわね?アンタゆたかちゃんにありもしないことを吹き込んだらしいわね?」
「ご、ごめんなさい!!私つかささんに脅されて・・・」



それはかがみにとって予想外の行動だった、あっさりと自分の非を認めた?・・・土下座までして・・・
が、そんなことはどうでもいい・・・無意識に右足が宙に浮く・・・・そして
ドガッ!!



「ぐはぁっ!!」
それは上品なみゆきには似合わない悲鳴だった、眼鏡を拾いふと上を見た、しかしみゆきはあまりの恐怖のため目を背けた・・



「ごめんなさいですって?じゃあ今からこなたに言ってくれば?」
「わ、私はひどい女です、もうこなたさんに合わせる顔が・・・・」
「そう、だったらもう私の前に現れないで・・・汚らわしい・・・」



かがみはみゆきを許さなかった、おそらくかがみの人生においてこれほど人を恨んだことはないだろう・・・



「うっ・・・あぁ・・・うわああああああああああ!!!」



もうその場にはみゆきはいなかった、顔を先程倒れたときについた泥と涙で顔はもうぐちゃぐちゃになっていた・・・
しかしその表情をかがみが見ることはなかった・・・
こなたは結局病院に入院した、みゆきやゆたかに裏切られたことでわずかな食事すら喉に通らなくなり、治療が必要となったのだ。



「どうしてこんなことになったんだろう?私って何か悪いことをしたのかな?」



そんなことを考えることが増えた、昔はこんなこと考えなかった、むしろ自分がやりたいようにやっていた、あのころは楽しかったけれど



「みんな・・・我慢してたんだな、つかさやみゆきさんも・・・・みんなもう私の我侭に耐え切れなくなったんだ・・・」



我慢していた・・・まさかかがみも?いや、かがみだけは信じたい・・・



「かがみん・・・あんただけは裏切らないよね?」



枕は濡れていた、泣いた?・・・何年ぶりだろう、本当に泣いたのは?お母さんが死んでから・・・・・



「かがみ・・・・かがみ・・・・会いたいよ・・・・」
泣きつかれたのだろうか?こなたは深い夢の中へと落ちて行った、いや、こなたにとって先程までのことが夢であって欲しい
これが現実なのだ、今見ている夢こそが・・・



「ねぇ?つかさ、チョココロネってどっちから食べる?」
「う~ん、頭のほうかなぁ~♪」
「うわぁ、みゆきさんのお弁当っておいしそう!!」
「いえいえ、これ全部昨日の残り物なんですよ、恥ずかしながら・・・」
「バルサミコ酢ぅ~♪」



ここは楽園であった、いつもの昼食風景、昼休みの雑談・・・体育祭、夏休み・・・
あの時間はもう帰ってこない、永遠に・・・・



ざ~ん~こぉくぅな天使のよぉにぃ~しょ~おぅね~んよ・・・
ピッ!!



「はぁい・・・」



そんなこなたの夢を破き現実へと引き戻したのは一本の電話であった・・・
「私だよ私、ほら、かがみだよ!!」
「かがみ・・・今から見舞いに来れる?」
「あ、うんもう少しで来れるよ、それでさ、今日は面白い話があるんだ・・」
「面白い話?」
「いや、つかさのいじめを止めさせるいい方法がね・・やっと見つかったんだよ・・」
「うそ・・・」



心なしかかがみの声は嬉しそうに聞こえる・・



「そ、それにはどうしたらいいの?」



一気に元気が戻った、そしてわくわくして携帯電話を握りながらかがみの答えを待つ・・・



「それはね、私を殺したらいいわ・・・・」
「は?」



意味がわからない、どうして?なんでかがみを殺さなくちゃいけないの?
「まだわからないの、私もう疲れたのよ、アンタの子守をするの・・・」



「う、嘘だと言ってよ・・・」
「嘘じゃないわ!!だってもううんざりなのよ!!アニメ?ゲーム?私はそんなもの興味ないのよ!!コミケの時だってあんたは!!」
「ま、まさか・・・つかさは?」



嘘だ、間違いであって欲しい、こんなの嘘だ、ま、まさかかがみが・・・しかしもっとも聞きたくない言葉がこなたの耳に届く・・



「ようやくわかったのね、そうよ!私は掲示板に書き込んできたつかさを脅してアンタをいじめさせたのよ、そしてみゆきもねぇ・・・」



いつものかがみの声ではなかった、それは甲高く冷たい・・・なんだろう、まるでかがみじゃないみたい・・・



「じゃあね、すぐそっちいくわ、そこに果物ナイフがあるでしょう?もっともアンタに殺されるような私じゃないけどね、あははは♪」



そこで切れた、終わった、何もかも・・・全てがもう終わり・・・私には・・・友達がいなかった・・・結局誰も・・・
コンコン!!
「どなた・・・・」
「私だよ、入るね・・・ほら、あんたの大好きなチョココロネ買ってきたわよ♪」



かがみは優しい笑顔を浮かべてチョココロネをこなたに手渡そうとした、だが・・・
パンッ!!その音と共にチョココロネは床に落ちた、病院の床は汚いもうこれは食べられないだろう・・



「いらないよ・・」
「え?」



かがみが買ってきてくれたものなんて欲しくもなかった
そう、この女こそが影で操っていたのだ、つかさもみゆきも・・・最初はちょっと困った程度のことをこの女は・・
つかさは最初はかわいかった、みゆきさんは純真で優しかった、ゆたかも私を本気で慕っていた・・・
それを・・・・・怒りを増幅させ、自分を追い詰め、あろうことか亡き者にしようとした・・・だったらさっきの電話通り・・・



「な、何言ってんの、違う!!わ、私は!!」






オマエヲコロシテヤル!!!!!




それはかがみが聞いた最後の言葉になった・・・・
その日の深夜つかさは町の高台に来ていた、今日は星が見たい気分だった、何しろ姉の葬式の終わった日、気分転換がしたかった・・
聞けばかがみはこなたに刺され即死だった、駆けつけた医師によりこなたは取り押さえられたが、直後に舌を噛み切って死んだ・・・
もともと双子の姉妹だ、声をちょっと変えれば・・いや、演技なんてしなくても気がめいっていたこなたには十分なこと・・
これも全部ハデスのアドバイスだった、もう誰も信用できない状態に陥らせ、最後にかがみに裏切られる、
こなたを破滅させるには最高のシチュエーションだった・・・



「お姉ちゃんには何の恨みもないけど・・・仕方ないよね、こなちゃんが死ぬにはそれなりの代償が必要だったから・・・」



もう誰もお姉ちゃんを奪うことはできない、だって死んじゃったんだから、しかしあのこなたは異常だった、
つかさの目からしたら、こなたはいつか自分から大事なもの、即ち姉を奪われそうで怖かった。
そしてつかさはポケットから何かを取りだす、それは白い・・・そう、かがみの骨、火葬場で一個くすねた物・・・
つかさはそれをゆっくりと口に運ぶ・・



「お姉ちゃん、これでずっと一緒だよ、死ぬまで・・柊かがみは永遠に私の物・・・」



ピルルピルル♪
ハデスからだ、私は早く報告がしたかった、この感動をあの人に伝えたい・・・



「ハデス!!聞いて、私はやったよ、こなちゃんは死んだよ!!あはは♪」
「茶番ダナ・・・俺ナラモット手際ヨクヤレタ・・・・愚カナピエロダヨオマエハ・・・」
ど、どういうこと?私はあなたの言うとおりやってきたのに・・・殺される?そう直感した・・・



「わ、私を殺す気?で、でもアンタ私がどこにいるかわからないじゃない!!」
「ふふふ、言ったでしょう?私はあなたをずっと見てるって・・・・私からは逃げられやしないんですから・・」



不意に後ろから声がした・・・誰?つかさはゆっくりと振り向いた、だがそこにいたのは意外な人物、ハデスという単語からは程遠い・・



「ゆ、ゆきちゃん!!」
「少しお話しません?もう携帯で声を変えながら話すのは疲れましたから・・・・」
「ど、どうして?」
「はっきりいって・・・ウザかったんですよ・・・・あなた方三人が・・・・・・」



そこにはもうつかさが知っているみゆきはいなかった、彼女は黒いTシャツに身を包み動きやすい格好だった、
さらにみゆきはトレードマークの眼鏡を外していた、おそらくコンタクトをはめているのだろう・・・
その上みゆきが普段使わないウザいという言葉・・・そこにいたのはまさしくつかさのイメージしたハデスであった・・・



「私もね、泉さんが大嫌いだったんですよ、懲りもせず同じ話題を繰り返してくるあの人に・・それだけじゃありません・・・」
「わ、私たちが何をしたって言うの?」



「あなた達が・・・・私と同じレベルの高校にいるのが許せなかった・・・特にあなたと泉さんは・・・・」



みゆきは語りだした、今までのことを、そもそもみゆきは東京の高校へ進学がしたかった、しかし体調が悪く試験は不合格
仕方なく滑り止めで受けた春日部の陵桜学園に来る事になった、そこで出会ったのがこの三人だった・・・
しかしあまりに程度の違う話の内容、もう耐えることができなかった、特にこなたとつかさからは馬鹿にされてるみたいで・・



「面白くないのよ!!アンタ達と一緒にいて!!」



とつぜんみゆきが感情を露にする、その光景を見たつかさは一瞬たじろく・・・



「あら?怒鳴って少し大人気なかったですね、でもあなたはよく働いてくれた、私の演技は完璧だった、大学では演劇部にでも入ろうかな?」



確かにそのとおりだった、思えば母親の浮気写真を一番手に入れ易いのもみゆきだった、なぜ気がつかなかったのだろう?
そして運命のあの日・・・掲示板でこなたを殺したいというつかさの書き込み・・・
話し方からつかさであることは一目瞭然、その瞬間自らが手を下すことなく三人を消す方法をみゆきは考えたというわけだ・・



「さて・・・おしゃべりは終わりです、直接手を下すことは私の趣味ではありませんが、あの世で姉妹仲良く暮らしてください♪」
「い、いや・・・私この事は誰にも言わない!!だから・・・」
「駄目ですよ、あなたが生きてると私のやったことがばれてしまうでしょう?その上あなたは私ほどの価値はない・・・」
そうやってみゆきはだんだんとつかさを崖の方へと追い込んでいく・・・



「い、いや・・・やめて!!お願い・・・・きゃああああああああああああああ!!!」



少し後ろに下がりすぎたようだ、つかさは高台から真っ逆さまだ、この高さからは助かる見込みもない・・・



「・・・・またクラス代表で弔辞を読まなければいけないじゃないですか・・・面倒くさいです・・・」




                               完





「やっと終わった、だが・・・」



彼の名は泉そうじろう、小説家である、彼が書く小説はいつも決まって主役は同じ・・・
しかしもうそれはその人物に見せることはできない・・・・



「こなたが死んで・・・もう3年か・・・・」



彼の娘の泉こなたは中学2年の時にいじめが原因で自殺した、あの晩のことは今でも覚えている・・



「お父さん!!ゲームしよう!!私、昨日より強くなったよ!!」
「うるさい!!俺は明日締め切りなんだ!!くだらないことやってないで早く寝ろぉ!!」



思えばあの時がこなたを救える最後のチャンスだったかもしれない・・・
その後彼は持っていたゲーム、漫画は全て処分していた、娘に悪いと思ったから・・・・
そして気がつけば、彼は娘を主人公にした小説を書いていた、高校生になった娘が小説の中で蘇る・・彼にとっては至福の時だった
だが虚しかった、いくら小説の中で生き生きとしていても所詮は死んだ子の年を数えるのと同じこと、
しかも何度楽しい学園生活を書いても行き着くエンドは娘の死・・・



「ゆたか・・・おじさん都合で暫く家を開けるからゆいお姉さんに相談しなさい・・・」



もはやここは彼の家ではなかった、もう妻や娘はいない、彼は行くことにした、
向こうにはきっと自分の世界がある、そこには家があって妻や娘がいる・・彼は二度と埼玉には帰ってこなかった、大きい封筒とともに
そしてその一年後彼のひた隠しにしていた遺作が発表されることになる、それは例の自分の娘が主人公の小説・・・




その本の名は・・・・・・「らき☆すた」
しかしどうその本を読んでも娘が自殺するというバッドエンディングは見つけることが出来なかった・・・
最終更新:2022年04月17日 12:06