赤いK悪魔の終焉 その2
事件から数日が経過した、大型連休も終わり本格的に5月が始まった。
テレビ・新聞では連日事件の事が報道されている。今までは、デスノートの事は秘匿されて来たが
ゆたか篭城事件により秘匿は困難になったと判断され公表される事になり世界中が驚倒した。
しかし死神の事は秘匿され、ノートは古代文明のオーパーツではないかという発表がなされた。
死神界の存在を公にするのは、宗教的にまずいので隠匿するのはやむをえないだろう。
最後のノートは、ゆたかが死亡するまで保管される事になった。年に一度Lと関係者によりノートが確認される。
ゆたかより先に、Lが死亡した場合はLの後継者の1名が新たに代表になり、ゆたか死亡後葬儀終了を待って焼却される。
竜崎の予想通り、解決した日の夜から雨になり、数日小雨が降り続いた。「キラ事件の犠牲者の涙雨」
と報じたマスコミも多かった。ようやく天候も回復したが、気温もあまり上がらず肌寒い一日だった。
夜11時のニュースを見終えた竜崎は外出の準備を始めた。
「ワタリ、今から出かけてきます。最後にある人に会います」。
「解りました、気を付けて下さい。」ワタリが竜崎に市内地図を渡す。
既に人通りは少ない、竜崎はコンビニでおにぎりや菓子パン、肉まんなどをいくつか買うと再び歩き出した。
竜崎は人気の無い、公園のベンチに座り、買って来たおにぎりを食べしばし休んだ。
ふとある気配を感じ、周囲に誰も居ない事を確認すると、ゆっくりと誰もいない空間に向け呼びかけた。
「そろそろ話しませんか、夜も更けてきました。心の準備は出来ています」。
ぼんやりとした光が立ち込め、やがて人の形を形成した。それはこなたにとてもよく似ていた。
「泉かなたさんですね。私の事は竜崎とお呼び下さい」。動揺も無く話しかける竜崎。
「こんばんわ、今日は竜崎さんに聞きたい事があります」。
「単刀直入に言います。4月19日に駅のホームからゆたかさんを突き落としたのは貴女ですね」。
「はい、私がやりました。こなたやそう君と仇を討ちたかったの。しかし、貴方が助けてしまった」。
「どうしてなの、もう少しでこなたやそう君の仇が取れる筈だったのに、場合によっては」。
「ゆたかさんの様に殺しますか。その気持ちは解ります」。
「そこまでは、力も使ってしまったので、でも変わりにストーキングしちゃいます」。
「なるほど、オヤシロさまならぬカナシロ様と言うわけですね」。竜崎は妙に納得した様子で答える。
「竜崎さんは、そう君みたいに面白い人ですね」。どうやらこの2人気が合うようです。
やがて再び両者の顔が真剣な物になる。竜崎がおもむろに口を開き、
「それでは何故ゆたかさんを助けたのか話します」。
「それは、貴方の愚かな犯行を止める為です。月並みな表現ですみません」。
「私も、様々な犯罪者と戦って来ましたが、幽霊の犯行を阻止したのは初めての経験です」。
「ゆたかさんが死亡した場合、事件の真相究明は難しくなっていたでしょう。
日本には古来より死者に鞭打つ事をダブー視する傾向があります。犯人が自殺し真相究明が出来なかった例もあります。
それで済めばよい方で、こなたさんが犯人ということで事件捜査が打ち切られていた可能性もあります。
事実私がいなければそうなっていたでしょう。貴女の行為は全くの逆効果です」。
かなたの顔は青ざめていた。自分の愚かな行為の意味を知らされた衝撃は大きい。
「私、母親失格ですね。こなたに取り返しの付かない汚名を着せようとしていたのね」。
「はい、その通りです。」ずばりと言い切る竜崎。かなたは怒る気力も消えうせた。
「うう、少し位フォローしてくれてもいいのに、そう君に言いつけてやるー」。泉かなたの憤慨
「いいえ、私もこなたさんを助けられなかった点では全く同じです。後10日早く帰国していれば・・・と考えてしまいます。
さらにゆたかさんを助けた事で、不可効事ではありますが4名もの犠牲者を出してしまいました。
今後私を非難する人も出るかもしれませんね。それが公正な世論と言う物です」。
「あの子を地獄に落として、こなたの痛みを・・・・今更遅いですね」。
「気持ちは解りますが、残念ながら、ある事情によりそれは不可能なのです。」
「何を言っているの、あんな酷いことをしたのだから地獄に落ちるのは当然じゃないですか」?
「所で、キラ事件に付いては知っていますか?最初のキラ事件の方ですが」?
「知ってます。レイさんと美空さんと言う方と友人になり教えて貰いました。貴方が解決したのでは」。
「そうです。実は、ゆたかさんも同じキラの能力を用いて犯行を行いました。
「ええっそうなの、こなたもそう君も・・・・酷い」。かなたの怒りは当然であろう、しかしかなたは知らなかった。
「実はキラの能力には厳しい掟もあります。能力を使用したものは天国にも地獄にも行けない、無だそうです」。
つまりゆたかさんが死亡した場合、ゆたかさんの苦しむ時間は僅か数秒です」。
「ええそうなの!知らなかった」。泉かなたの驚愕@@レイや美空は詳しいルールは知らないので当然である。
かなたは、大きく安堵の息を漏らし竜崎の方を向いた。微笑を浮かべている。
「竜崎さん、私を止めてくれてありがとう。これで思い残す事無く、2人の所にいけます」。
「こなたさんに、いずれゲームの再戦をしたいとお伝えください。半世紀ほど後になるかもしれませんが」。
それと、美空さん達に、Lがごめんなさいと言っていたとお伝えください」。
「責任を持って伝えますね。ではさよなら竜崎さん」。淡い光が立ち込め、一瞬視界が奪われる。
数秒後、竜崎が気付くと既にかなたの姿は無かった。
「さて、ヴァルハラでどんなゲームでこなたさんと対戦するか、60年後までに考えねばなりませんね」。
エピローグ
数日後・・・・青森や函館の桜も散り始め、逆に沖縄ではもう梅雨入り・・・・
竜崎は、午前中にいくつかの事件のデータを参照し決済した。お昼になったのでルームサービスで昼食中だった。
夜神月が逮捕されて数年、Lの後継者たるメロとニアが本格的に活動を開始し始めたため、竜崎への依頼は
以前に比べれば減った。しかし引退した訳では無いので、難事件の依頼は多い。
今回の事件は、全て警察の功績という事になった、篭城事件の際には現場付近から
報道関係者は退去させられたので、竜崎の正体等については露見しなかった。「SATの様な警察の特殊機関じゃないのか」等と噂されたが。
月が逮捕された際に「ちゃんとおやつ以外の食事も食べたほうが良いぞ」と忠告されて以来、
普通の食事もするようになり、おやつも減った。また外に出て事件の調査をする機会も増やした。
「竜崎、フロントに来客が来ています」。新聞を読んでいた竜崎は手を止め、
「誰でしょうか?今回の事件の関係者でしょうか」?ここの場所を知るのは困難なはずである。
「竜崎にお土産があると言っています。不審な点は無さそうですね」。思い当たる竜崎は、
「その人の外見ですが、泉こなたさんに似ていませんか」?
「はい、非常に似ています。違うのは、左目の下のほくろが無いくらいですね」。
「なるほど、それでは受け取ってください。少し早いですがおやつにしましょう」。
ワタリが、紙袋を持って部屋にやってきた。泉かなたの故郷金沢の銘菓とお茶のセットが入っていた。
金沢は藩祖前田中納言利家公以来、加賀百万石の城下町として栄え、「北陸の小京都」と呼ばれた。
歴史ある町である。茶道も盛んで、茶道が盛んな場所には銘菓(お茶菓子)が生まれるのも自明の理である。
竜崎とワタリは最高級の加賀茶と銘菓を味わった。箱の中にはカードが入っていた。
「この前はありがとうございました。一度機会があれば金沢を是非訪れてください」。
「ちゃおー。60年くらい後の再勝負を楽しみにしてるよ。じゃにー」。
「私達の無念を晴らしていただいてありがとうございます。竜崎さんの正体を見るのが楽しみです」。
かなた、こなた、美空からのメッセージが入っていた。竜崎は丁寧に折りたたむ。しかし、
「私のコレクションをお譲りするので、オタクとしての道を極めてくれ」。誰の文章かは言うまでも無い。
「全力でお断りします。」竜崎は即座にゴミ箱に叩き込んだw
金沢の有名な菓子店 店主夫婦がひそひそとなにやら話し込んでいます。
「母ちゃん、この前店に来たお客さん、美人だけど、こうなにか尋常じゃない物を感じるねえ」。
「そうだねえ、そういえば、輪郭が半分透けていたような・・・・ガクガクプルプル」
最終更新:2022年05月04日 17:02