ゆき★こな(黒かがみ)


「今日もいい天気だね~、かがみん」
「そうね、いい天気ね」
「あ、ゆきちゃんだ」
「え!?あ、みゆきさーん!!」

「あ、皆さん。ごきげんよう♪」

「こなたさん、おはようございます。ふふ♪」
「みゆきさん~、おはよう♪」

陽が昇り、草木の雫が眩しい光を放つ心地よい朝
柊姉妹から数メートル離れた所で元気に挨拶をするみゆきとこなた
そこだけ別の空間のようだ

「こなたさん、今日も可愛いですね、ふふ☆」
「そんなぁ、みゆきさんは今日も綺麗だね~★」

「ほんと、あの二人は仲良しだよね~、お姉ちゃん♪」
「…そうね。」

みゆきとこなたは恋人同士

品行方正 高良みゆきとB組の異端児 泉こなたの幻のコンビ
曰く、空前絶後の奇跡のコラボレーション
曰く、歴史上未確認異色タッグ
曰く、最強の凸と最強の凹

一時はそう噂されたこの二人だが、今ではここ陵桜学園高校の公認カップルである
始まりは何時からで終わりは何時までか、一体どちらから告白したのか?
誰もが謎に思った二人の関係なのだが、入学当初からの交際である事が数週間前に発覚した

事の発端はB組の白石みのるが、この二人の放課後のラブシーン(キスまで)を目撃!
取り乱した白石が友人に漏らした一言は波紋を呼び
そこから噂は瞬く間に広まり、校内を驚愕の坩堝となった
白石は語る
『あの光景はまるで御伽噺の世界に足を踏み入れた様な絶景だった』と
後に白石は二代目同姓カップルの女房役として名を馳せる事になるのだが、この話は割愛することにする


「二人ともおはようさん!朝から見せ付けてくれるやないかぁ?」

学校には不似合いなほどの無邪気な教師が至福の二人に声をかけてきた

「黒井先生おはようございます♪」
「あ、おはよう先生~、いいでしょ~★」

こなたはこれ見よがしに、みゆきの腕をぎゅっと抱き占めてみせる

「はいはい、しっかし高良ぁ…こんな奴のどこがええんや?」
「そうですねぇ、………一週間待ってもらえませんでしょうか?」
「は?」
「もし、お時間を頂けるのでしたら泉さんの好きな所を纏めたレポートを…」
「いや、遠慮しとくわ」
「そうですか…残念です。↓」
本気で残念がるみゆきにこなたが頬ずりをはじめた
「みゆきさ~ん、大好きだよ~♪」
「ええ、私も大好きですよ♪」

二人の担任である黒井ななこは少し困ったようなうらやましい様な、そんな笑みを浮かべると
仲むつまじい二人の姿に数週間前の出来事を思い出す

「お前ら、自分が何やってんのか解ってんねんか!?」
「…。」
「はい、解っています」

不可解な噂、捏造されたニュース、たちの悪い悪戯だと思っていた
まさか自分が受け持つクラスの女子生徒二人が、この様な関係になろうとは思いもしなかった

「そやかてお前ら女同士やんか?それでええと思てんのか?」
「そだよ…」
「いけませんか?」

自分をまっすぐと見据える高良みゆき、みゆきの腕をしっかり掴んで離さない泉こなた
あの時の二人は恐らく、世界中のどんな恋人たちにも引けを取らない程にお似合いだった
その姿にほだされてか、それとも『性別など関係ない』と訴えかけるみゆきの眼差しに打たれたのか
ななこは二人を応援することに決めた
後で聞いて驚いたのだがこのカップル成立に置いて、告白をしたのはみゆきの方だったらしい
だが、何となく納得してしまうような気もした                                                 

キーンコーンカーンコーン♪

朝のチャイムが鳴る
みゆきは腕を絡ませて微笑むこなたの頭を撫で、
「そろそろ教室に行きましょうか」と笑っている

教育委員会からの指導、保護者からのクレーム、学校の意向、障害は沢山あった
恐らく、黒井ななこ無くして今の二人の関係は成り立たなかっただろう
みゆきは軽く会釈をすると、こなたを連れて教室へと向かう
ななこはそんな幸せそうな二人を見送りながら小さく、小さく呟いた

「ウチには出来んかったことやからなぁ…」







「ほら、お姉ちゃん遅刻するよ~」
「あ…?うん、行こっか」

みゆきとこなたに遅れて教室に向かう柊姉妹
教務室に向かうななことすれ違う

「あう、く、黒井先生…お、おはようございます!」
「おはようございます…」

「お、柊姉妹やないかぁ今日もがんばろな?妹の方はまた教室でなぁ」
「あ、はあい!」
「…。」

「なんや、変や奴やなw ほら、はよう行かんか」

「はぁ…黒井先生ぇ…」
つかさはななこの背中を目で追いながら切ない溜め息を付くが、
お構い無しに教室へと向かうかがみに気付くと、小走りで姉を追いかけた



昼休み、かがみはC組の教室で、しかも一人で昼食を採っていた

「いや、でも…ブツブツ…」

弁当を広げてはいるが、ほとんど手をつけていない

「どうしたんだ柊、最近ずっと怖い顔して?金魚が死んだのか?体重が増えたのか?」
「こら、みさちゃん」

「ブツブツ…」

少し前まではみさおの言う事にいちいち目くじらを立てていたかがみも
今では二人の会話に参加することすら少なくなっていた

「柊元気ねえな。最近チビッ子の所にも行かなくなっちまったし、相手してくれねえし」
「そうね、きっと悩みが有るんじゃないかしら?」

峰岸あやのと日下部みさおの両名が心配するのもお構い無しに昼休みを終始俯き加減で過ごす柊かがみ
ここ数週間で、かがみの塞ぎ込む姿がこの教室では日常と化してしまっていた



所変わってB組の教室では、いつもの様に愛のお弁当タイムが繰り広げられている

「はい、みゆきさんアーン♪」
「あ~ん♪」

パク モグモグ

「どうどう?美味しい?美味しい?」」
「ええ、とっても美味しいですよ♪じゃあ今度は私が…」

「アーーン♪」
「ふふ☆」

教室だろうが校庭だろうが、はたまた電車の中だろうがこの二人は場所を選ばない
何時見ても仲むつまじい恋人同士だ

「はぁ…いいなあ…」

つかさは摘み上げた卵焼きを箸に挟んだままの格好で、率直な意見を述べる
こなたのアンテナが反応した

「つかざぁごほごほ!!」
「ああ、こなたさん!大変!?」
「…(汗)」

物を食べながら喋ろうとしたこなたがムセてしまった様だ
みゆきは「お行儀が悪いですよ?」と諭しながらもこなたの背中をさすり、お茶を飲ませる
カップルというより娘を介抱する母親にも見えてしまうほどの愛情だ
程なくして復活したこなたが放った言葉に、つかさは度肝を抜かれる

「つかさ、あんた恋してるね?」
「え?ええ!?こなちゃん、なんで解るの??」

案の定つかさは卵焼を床に落としてしまった
みゆきは「あらあら」と言いながらそれをティッシュにくるんで始末すると
「そうなんですか?」と、つかさに向き直る
その落ち着きた物腰たるや私服で外出した際にOLに間違えられるのも頷けるというものだ

「そりゃあ、解るよぉ~☆で、相手は誰なの?年上?男?女?」
「ん~、教えないよ~だ♪」

つかさは黙秘権を行使するのだが、みゆきの声がそれを阻止した

「女性ですね★」
「あうう!?なんでぇ!?」
「流石私のみゆきさん♪」
「ふふ♪」

「ゆきちゃんってば、最近こなちゃんに似てきたかも…」
「ありがとうございます☆」
「似たものカップルだね♪」

「それで?誰なんですか?」
「私たち夫婦が力になるよ!?」
「泉さんったら、夫婦だなんて…(ぽっ」
「あは…みゆきさんったら照れてる☆かわいい~♪」
「どんだけ~」

結局この後、この最強タッグの強行よってつかさの恋の相手が黒井ななこである事が判明し
昼休みの残り時間は柊つかさ原作の大人の女性と少女の淡いラブロマンスの妄想話を
二人そろって延々と聞かされる羽目になってしまった

「でねでね、二人で埠頭に行ってね、バスサミコ酢をね…うんぬんかんぬん」

かくして柊つかさの恋の行方はいかに




「で?何であんたが私の家にいるのよ…」

学校が終わり、鬱蒼とした気持ちのまま帰宅したかがみ
最近は帰宅の時間を三人とずらしているのだが、今日は家に帰ってみると
こなたがつかさの部屋にいた

「いやね、つかさの恋を応援する為に作戦を練らないといけない訳で」
「こなちゃん、私頑張るよ!」
「その意気だよ、つかさ!」
「はぁ…、で?相手は誰な訳?」

この状況では、かがみの心境もどこ吹く風だ
久しぶりにこなたが家に遊びに来た事もあるし、妹の恋のお相手に興味がない訳でもない
着替えを済ませたかがみは三人分の飲み物を持ってつかさの部屋に訪れていた

「ええ!?あんた正気なの!!?」
「本気だよぉ」
「そうなんだよ~」

『前から様子がおかしいとは思ってたけど…まさか、黒井先生だったなんて』
「? どうしたの、お姉ちゃん?」
「あ、いや、なんでもないわよ」

「ところでこなた、みゆきはどうしたのよ?」
「みゆきさんは習い事があるから今日は別行動なんだ。私は寂しいよ↓」
「そうなんだ」

聞いたところ、みゆきは週に5日も習い事をしているらしく休み日くらいしかまともに遊べず
その休みの日ですら、家庭の事情などで消え去ることも多いらしい
こなたは「みゆきさんや~、私をおいて行かないで~」と天に助けを求めるポーズをとって見せた
つかさは「あはは~」と笑いながらこなたに問いかけた

「そういえばさぁ、告白したのってゆきちゃんだったんでしょ?」
「そだよ?」
「参考までに聞きたいんだけど、なんて言われたの?」
「…えへへ~♪教えな~い♪」
「え~、ずるいよ~☆」

「……。」
無言で二人の会話を眺めるかがみは、照れながら「まいったな~」などとはぐらかすこなたに
言い知れぬ感覚を覚える
前まではこなたのどんな表情も好きだったのに、今はこの顔が嫌い
黙ってオレンジジュースに口をつけると、その水面には蛍光灯の明かりが反射していた



「へ!?」

学校帰りの喫茶店
四人で角の席を陣取っていたのだが、こなたが突然話があると言い出したのだ
その内容を聞いたかがみは思わずオレンジジュースを吹き出してしまった

「あんた、冗談よね?」
「こなちゃんがゆきちゃんと?」

「えへへ~♪」
「ええ、前からお付き合いさせて頂いておりまして」

「ふーん、そうなんだ…」
「全然気が付かなかったよ~☆」
「いやね、かがみとつかさにはもっと早く言おうと思ってたんだけどね~」
「なかなか、きっかけと言うかタイミングが解りませんで」

何か大きな杭のような物が自分の胸を貫いたのではないか?と思うほどの衝撃がかがみを襲った
心臓に風穴が開いた様なその感覚が何なのか、理解できないまま会話が進む

「へ~、そうなんだぁ。前からって何時からなの?」
「ええ、丁度入学してから一ヶ月くらいでしたでしょうか?」
「うん、桜の木の下で告白されたんだよ~♪」
「…」

「ふふ♪そうなんです☆」
「え?ゆきちゃんから告白したのぉ!?」
「つかさ、そんなに驚かなくても…」
「…」

「それからもう、毎日薔薇色なんだ~♪」
「もう、こなたさんったら♪」

『こなたさん』、みゆきは今日の昼まで『泉さん』と呼んでいたのに…
そういえば何度か学校で『こなたさん』と言っているのを聞いたことが有った

「…。」
「いや~、照れますな~♪」
「ゆきちゃんは何ていって告白したの?」
「ふふ、内緒です☆ね、こなたさん?」
「んふふ~♪」
「え~、ずるいよ~☆」

談笑する三人を尻目に、かがみはオレンジジュースに映る蛍光灯を眺めながら
自分に問いかけてみた

『なんだろ、この微妙な感覚…』

結局その日かがみは、会話にはまともに参加せずに自分の部屋にこなたを見送った




「も~、みゆきさんったら~♪」
「うふふ、こなたさん☆」

数日、数週間、数ヶ月経ってもこの二人は変わらない
学校では片時も離れずにお互いを愛であっている

廊下で、教室で、体育館で、購買部で、学食で、図書室で、喫茶店で
二人はあと数ミリ近寄れば唇が触れ合ってしまうのではないかと言う程に密着して
頬を染めあいながら愛の語らいを繰り広げる

こなたのわがままも寛大に受け止めるみゆき
ナイーブなみゆきを慰めるこなた

知識、雰囲気、性格などあらゆる面でお互いを補い合う二人、
既にそこいらのカップルなど歯が立たない程に二人の距離は無くなっていた


カチカチ カチカチカチカチ
こなたの部屋でコントローラの操作音が響く
紫色のツインテールと青い長髪がやや離れ気味に座っている

「ねえ、こなた」
「ん?なぁに、かがみん?」

二人は画面を見ながら会話を始めた
格闘ゲームの対戦では、一瞬の隙が命取りだ
こなたのコンボをガードキャンセルで抜けるかがみ、こなたは「惜しい」といいながら
飛び道具で削ってくるがこれも緊急避難で回避された

「みゆきのどこが好きなの?」
「ええ?」

『キャーー・・・・2P WIN』

「あ…負けちゃった」

ほんの一瞬戸惑っただけで、あっという間に超必で極められてしまう
いつもいつもこなたの相手をしていたかがみはいつの間にかゲームの腕を上げていた

「あひゃ~、参ったなあ…」

「しっかし、かがみもゲーム上手になったよね~」
「そうね、誰かさんのせいで、ね」

今日、みゆきは習い事でこなたと一緒にいない
退屈なこなたはかがみを家に招き、格闘ゲームの対戦相手をして貰っているのだが
「暇ならたまには誘いなさいよ」というかがみの言葉がなければこの状況は無かったと言える
つかさはと言うと例によって、ななこを落とすための作戦を考える為
恋愛小説を片っ端から読み漁り、恋愛映画を延々と見続けていてここの所学校以外は家から出てこない

「油断大敵よ、トリッキーなのはあんたの専売特許でしょうが?」
「うう、手厳しい」

「じゃあ、もう一回…」

プツン

再チャレンジしようとするこなたを阻止するように、かがみはテレビの電源を切った

「ちょっとかが、うわ!」

抗議の声を上げようとしたこなたにかがみが抱き付く

「え!ちょっと、あの~、かがみさん?」
「……」

こなたは突然の襲撃に思わずよろめき、二人は床に倒れ込むとかがみがこなたに覆いかぶさる形になる

「こなた、なんでみゆきなの?」
「え、かがみん、ちょっと!マジ?」

「なんで私じゃないの!?」
「や、やめてよ!冗談でしょ!?」

かがみはこなたの両手を掴み、華奢な体を組み伏せた

「こんなにアンタのことが好きなのに!なんでみゆきなの!?」
「いや!離して!!」

かがみの突然の乱心、さっきまでの和やかな雰囲気は一変して
こなたの表情はこわばる
二人きりの家で、廊下にまで声が響く
目を瞑り、唇を硬く結ぶこなたは明らかにかがみを拒否していた

「こなたぁ…」
「やめ!むぎいうう…」

かがみは強引にキスを迫りこなたの唇を塞ぐとバタバタと暴れる足に自分の足を絡ませて
愛しい少女への侵略行為を開始する

「やめてやめて!」
「はあ…はあ…こなた、ごめんね…」

そのまま、かがみはこなたの下着に手を伸ばし、侵略を進めていった

「うう…みゆきさん…」
「こなた、好き…」


数時間が経った後、かがみは侵略行為を完了していた

「ひっく…えっ…ひどいよかがみん、初めてだったのに…」
「…ごめん…」

こなたは今すぐにでも消えてしまいたかった
初めての行為、それはみゆきと卒業までとっておこう、と約束したのに
それをかがみに邪魔されてしまった

「…私、帰るから…もう来ないわ」

かがみは自分の服を着なおすと、乱れた服装のこなたを薄い笑みを浮かべて撫でる
こなたはその手を払いのけた

「…はやく出てって。」
「うん、さよならこなた。みゆきによろしくね」



かがみは笑っていた
『こなたとみゆきの約束』
「契りの行為はお互いが卒業するまで待つ…」
かがみは、その話をみゆきに聞いて既に知っていたのだ
これはみゆきとこなたを別れさせるための作戦だ
無論、これでこなたが自分になびくことは無い
だが、愛しいこなたが自分以外の誰かと一緒にいることはそれ以上に我慢できない
それならばと、何時までも可能性の無い希望を持ち続ける事よりも
多少強引にでもお互いの関係を破局させる事をえらんだ訳だ

かがみは、今頃泣き崩れているであろうこなたの姿を想像して胸を弾ませ家路に着いた

「みゆきのバーカ、こなたの初めては私がもらったわよ♪」





「おはようございます、こなたさん♪」

やや曇り気味の朝でもみゆきは元気に挨拶をしてくる
が、こなたは何やら元気が無い

「こなたさん?」
「あ、み、みゆきさんおはよ…また後でね…」

かがみと関係を持った翌日から、こなたのみゆきに対する態度が一変した
ソワソワと何処かよそよそしく、こなたがみゆきを怖がっているようだ

「みゆき、こなたと喧嘩でもしたの?」
「あ、かがみさん…とんでもありません、私がこなたさんと喧嘩なんてするはず無いじゃないですか」
「そうなの、じゃあどうしたのかしら。なんだかみゆきの事避けてるみたいだったわよ?」

「きっと何か隠し事が有るんじゃないかしら、あとで聞いてみたら?」
「そうですね、そうしましょう。」

かがみは心の中で笑っていた
こなたの貞操を奪ったのは昨日、まさかこなたがちゃんと登校するとは思っても見なかった
通学途中でも何食わぬ顔でつかさと一緒にこなたを迎えに行き

これまでと何一つ変わらない態度でこなたに話しかける

「こなた、おはよう♪」
「…かがみ、おはよ」
「こなちゃんなんか元気ないね~」
「そ、そうかな?昨日ネトゲしすぎてさ、はは」

「まったく、そんなんだったらその内みゆきに愛想付かされるわよ?」
「え、いや、たはは」
「え~、それは無いよ~♪だってゆきちゃんはこなちゃんの事すっごく好きだもんね☆」
「そ、そうだよ~。そんな事無いよ~」
「どうかしらね~、ま…あんたがとっても大事な約束でも破らない限りそれは無いかもね♪」
「…。」
「あ、それはあるかも…ゆきちゃんったらこなちゃんの事信頼してるって言うか、溺愛してるからね★」
「そ、そだね…気をつけるよ」

こなたは『約束』や『別れ』に近いニュアンスに敏感に反応していた
貞操を奪う。男女間であれば明白な肉体関係であるが、女同士ならどうだろうか?
心の結びつきを重視する女性同士の恋愛、それは信頼関係が絶対条件だ
したがって一時の肉体関係で終わる男女間での侵略行為には快楽や肉体の結び付きでは劣るだろうが
心の結びつきと言う点ではそれに勝るといっても過言では無いだろう
かがみはこなたの心にその侵略行為の傷跡を深々と残していた

つまり、何が言いたいかというと

「…裏切り者」

かがみはつかさに聞こえないようにこなたの耳元で傷口を抉る言葉を呟いた
こなたは体を震わせて瞳を潤ませるが、つかさに悟られてはいけないと懸命に平静を装った

昨日のこなたの姿といい、今日の登校時の彼女の表情といい
かがみの気分を晴れやかなものにするには十分な要素
出来ればそれらをみゆきにも見せてやりたいが、それではつまらない



「こなたさん、どうなさったんですか?」
「あ、みゆきさん…」

みゆきは自分の恋人の頬に手を添えて、その瞳をしっかりと見据える
こなたはそのまっすぐな瞳に『約束』の二文字を思い出して思わず目を逸らしてしまった

「あ、うん…ちょっと気分が悪くって…」
「…そうですか、それでは保健室に行きましょう」

みゆきは腑に落ちない気持ちを押し込めて、こなたを連れて保健室へと歩き出した
具合が悪いといわれてしまえば他にどうしようもない
それに本当に悪いのかもしれないし、違うかもしれない
何しろ相手は自分と同じ年の女の子だ、容姿が幼いといっても『アレ』は来る
こなたの『アレ』はそうとう欝なものだった、ひょっとしたら『アレ』かもしれない

「さ、着きましたよ。何か冷たいものを買ってきますので休んでてくださいね?」
「うん、みゆきさん有難う」

こなたはみゆきの顔がまっすぐ見れないまま、彼女の背中を見送った
目を見れば罪悪感が胸を潰し、声を聞けば涙が溢れてしまいそうでいたたまれなかった

ガラッ

ベットに横たわろうとした時ドアが開いた、みゆきだろうか?随分早い買い物だ
ここから自動販売機までは少なくとも15分かかかる筈だ、何か忘れ物だろうか?

「みゆきさん?」

こなたがドアのほうに目線を送ると、そこに居たのはあの女だった

「やっほー♪こなたぁ」
「かがみ…」

かがみは悪戯っぽい笑みでこなたに近づくとこなたの頭を両手で掴み
彼女の唇を強引に塞ぐ

「むぐううう!」
「ん…っむう…うんん…」

こなたは両手でかがみを引き離そうとするが、かがみに腕をつかまれ、身動きが取れなくなった
かがみはこなたをベットに倒すと、そのままスカートの中に顔を埋めピチャピチャと舌を鳴らし始める

「いやあ、やああ!」
「あらぁ?いいのか?みゆきにバラしちゃうわよ~♪」

「え、駄目…そんなぁ…」
「じゃあ、黙って私に愛されなさいよ。大丈夫、あたしが満足させてあげるからさ☆」
かがみはこなたの抗議にお構い無しで少女の肌を求め、汚していく

「うう…くう…みゆきさんに…見つかっちゃうよ…やめてよ」
「はああ、こなた気持ち良い?ふふ、可愛いわね、あんた★」

………

…………

……………


「美味しかったわよ、こなた♪これからも仲良くしましょうね☆」
「うえ…ひぐ…ううっ……ひっくひっく…」

かがみは、満足げな顔で泣きじゃくるこなたを置いて保健室の扉の前に立つと
「みゆきには『先生が探してた』っていってあるから」と言い残して出て行ってしまった
その間に衣類を正せということだろう
保健室に残されたこなたは半裸同然で、濡れた下着を履きなおしながら弱弱しく呟く

「みゆきさん…どうしよう、私…」

かがみの行動は確実にこなたの心を蝕んでいった





「少し遅くなってしまいましたね、こなたさん大丈夫でしょうか?」

ガラ…

みゆきはりんごジュースを片手に保健室のドアを開ける

「あ、みゆきさん、遅かったね?」
「申し訳有りません、先生に呼ばれたもので…あ、これどうぞ♪」
「ありがと…」

みゆきはベットに腰掛けて、蓋を開けた缶ジュースを手渡そうとした時あるものに目が行った
動きを止めたみゆきを変に思ったのか、こなたが首をかしげる

「? どうしたの、みゆきさん」
「え、いえ、何でもありません」

「あの、こなたさん…」
「うん、なあに?」

「私…授業が有りますのでそろそろ戻りますね」
「うん、また後でね」

「失礼します」

いつもとさほど変わらない会話だったが、
どこかよそよそしい感じでみゆきは保健室を後にした

こなたはみゆきの様子がおかしいと思い、彼女が見ていた方向を目で追ってみる

「…まさか!?」

こなたは立ち上がって、鏡の前に立ち髪を掻き揚げてみる
そこには虫さされのような赤い斑点がクッキリと残っていた
それはかがみが残した刻印、みゆきはそれに気が付いたのだ
『だからあんな…』

「…キスマークなんて、ああ、もう!私はどうしたらいいの!?」

一方みゆきは教室で虚空を見つめていた
『アレはキスマークというものなんでしょうか?それとも虫刺され?』
教科書を読んでも、黒板を見ても頭が働かない
『それに、ベットに落ちていた髪の毛は明らかにこなたさんのものでは有りませんでした』
みゆきは考えるあまり、俯き加減で渋い顔をする
『しかし、学校のベットですから気にしなくても……しかし、あの制服の皺は…』

「…ら…たか…高良!?」
「あ、はい!!?」

みゆきは驚いて声のほうを見上げた

「授業を終わりたいんだが、号令は無いのかな?」
「あ、すいません…」

この日からみゆきとこなたの関係に少しずつ亀裂が入り始める事になる








最近のこなたは、明らかにおかしかった
恋人のみゆきがみてそう思うレベルではなく、周囲の誰が見ても明らかな異変

当たり前だ、あれから今までの間
度重なるかがみからの精神的な陵辱、そして性的な虐待が繰り返されているのだから
毎日では無いにしても、その行為自体に衰弱しない方がどうかしている

体育館で、保健室で、屋上で、非常階段で、放課後の教室で、かがみの家で
かがみはみゆきがいない隙を狙ってはこなたに近づき、一方的な愛情表現でこなたを苦しめた
そして、それを武器にしてはこなたを脅し、翌日には何食わぬ顔でこなたと登校する
その繰り返し
地獄の繰り返しだ

なかでも最悪だったのは、みゆきが公欠(親類の結婚式)で休んだ日
こなたはこの日、少しの時間を置いてかがみとの事からなんとか立ち上がったばかりだった



放課後、こなたは帰り支度を済ませると尿意を催し、女子トイレに向かう
何気に携帯を開くと、みゆきからの「会いたいです」とか「寂しい」という内容のメールが
この一日だけで10件以上も来ていた

「むふふ~♪」

もちろん既読なのだが、それを読むだけで心が温かくなり、口元が緩んだ
愛されている事にさらに愛おしさを感じる至福のひと時
こなたはみゆきに当てたメールを打ちながら廊下を歩く

「今日はみゆきさんの顔が見れないから寂しかったよ(涙)みゆきさん大好き(ハート三つ)…っと」

※メールの()内は絵文字と思うべし

送信ボタンを押すと、数分後にまたメールが返ってきた

『私も早く会いたいです、結婚式は良いものですね(ハート)私もこなたさんと式を挙げたいものです(照)』
「みゆきさんったら…私のツボを心得てるなぁ~」

携帯を片手にトイレに入り、個室の扉を開け鞄を台座に置いてからドアを閉める

バン!

「ひええ!?」

閉まった筈の扉が勢い良く開いて、こなたは悲鳴を上げた
見ればドアは何者かの手によって、半開きの状態にされている
そして、その人物は…もはや語るまでも無いであろう

「こなた、楽しそうね~♪私が後ろから来てたのに気が付かなかったのかしら♪♪」
「か、かがみん…ドア…閉めてよ…」

こなたは携帯を握り締めて震える声を絞り出した

「あ、ごめんごめん☆今からトイレよね~、じゃあ一緒にしよっか★」

かがみはそう言って個室に入り込み、鍵を閉めるとこなたを見てニッコリ笑う

「や、出てってよ…」
「まあまあ、そう言わないで…ほらぁ手伝ってあげるからさぁ♪」

かつての親友は容赦なくこなたのスカートに手を掛け、下着まで脱がそうとしゃがみ込んだ
こなたは怖くて逆らえず、かがみのされるがままに半裸の状態に…

「いやぁ、助けて…」
「やっぱりあんたって可愛いわね~、っと油断させておいて…それ☆」

かがみはこなたの手を握り、携帯電話を毟り取る
そして、その中身を見てこなたを舐める様に見た

「あんた、まだ話してないんだぁ…私との関係★ま、そうだろうと思ったけどね♪」
「ああ、返してよ~」

「なになに?『私もこなたさんと式を挙げたいものです』だって、みゆきらしいわね~」
「返してよぉ…」

「こなたが初めてじゃないって解ったら、みゆきはどう思うのかしらねぇ?」
「え…」

「みゆきったらショックのあまり死んじゃうんじゃないかなぁ?それとも男に走るかも♪」
「…」

こなたは顔を真っ青にして抗議するのをやめた

「ふふ、解ってきたじゃないの…裏切り者のあんたに選択権はないのよ?こなたぁ♪」
「…どうしたら、いいの?また私を弄ぶつもり?」

こなたの諦めたような、泣き出しそうな顔がかがみの心をくすぐる

「じゃあ、そのまま後ろ向きなさい。そして壁に手をつくの…」
「…」

こなたは何度かエロゲーで見たことのある体位を取る
いわゆる「バック」という奴だ
こなたの小ぶりな臀部がツンと冷たい空気に触れて震える、
そのまま流れるように流線型を魅せる太ももは頼りなく細いが、
腰からのラインはまるで美術の彫刻のようにハリがあり
隙間からのぞく花園は雨上がりの桜の様に妖艶な紅みを帯びている

「改めて見ると、あんた肌綺麗ね~」

かがみは思わず、その柔肌に手を伸ばし、『つつっぅ』と指でナゾっていく
こなたは既に尿意をもよおしている上に、必要以上の刺激に振るえ
ぎゅっと両の手のひらを握り、必死で耐えていた

「そうそう、はいそのまま動かないでね」

パシャ!

「え!?」

突然のシャッター音に耳を疑うこなた
振り返ってみれば、かがみが二つの携帯でこなたのあられもない姿を激写している

「ちょ!?やめ…」

思わず声が大きくなってしまった、とこなたは声のトーンを落とす

「なにするの…」
「何って、私のは保存用で…あんたのは布教用♪」

「悪い冗談はやめてよかがみ…」
「冗談なんか言ってないわよ?これをみゆきに送ってあげようと思ってね♪」

いたずらっぽく笑うかがみに、こなたは非難の声を上げていたが
その内、嗚咽が混ざり始めた

「やめてぇ…もういやだよぉ…消してよぉ…ひぐぅ…」
「あんたのその顔、好きよ♪でも、可愛そうだから送らないであげようかな…」

「ぐす…ほんと…?」
「ええ…言うことを聞けばね…」

そのまま、かがみはこなたの秘所が見える高さで反対の壁を背にして座ると
自分の携帯電話をこなたに向ける

「そのままの格好で済ませちゃいなさいよ☆そしたら許してあげるから♪」
「え…」

「さあさあ、早くしよ~☆」
「ん…。」

「ほらほら~♪」
「…。」

「早くしないと許してあげないわよ~☆」
「んく…(みゆきさん)」

こなたは、目を閉じて恋人の事を思った
『こんな事で失いたくない、こんな事で幸せを逃したくない』
たとえそれがかがみを満足させる結果になろうとも…



……

………

…………



「あははぁ、こなたったらいじらしいわね~。まさかここまでやるなんて☆」
「うう…」

「ま、約束は約束だもんね。お陰でいい動画が取れたしね♪♪」
「……。」

「ほら携帯はスカートと一緒に鞄の上においておくからね?」
「…。」

「じゃあ、私は帰るけど。あんたも早く帰るのよ?風邪引いたら大変だもんね♪」
「ぐす…」

かがみは、座り込んだこなたにキスをして個室からでるともう一度振り返る

「あ、そうそうアンタのパンツもらって帰るからね~。バイバ~イ★」
「…。」

こなたはそのまま、なんとか起き上がり便座に座り込むと扉を閉め、スカートを履く
下着が無いのでスースーするがかがみが持っていってしまったので仕方ない
嬉しそうなかがみの顔を思い出すととてつもなくやるせない気持ちになる

ボーっとしていると携帯が鳴った、メールの様だ
操作して新着メールを開くと、みゆきからのものだったのを覚えている
内容は…

『先ほどかがみさんから、こなたさんの体調が悪い様だと連絡がありましたが、大丈夫ですか?心配です…』

というものだ
これは、『自分はいつでも二人の関係を裂ける』というかがみからの脅迫に他ならない
こなたは涙目の瞳を擦ると

『大丈夫だよ、ごめんね』

とみゆきに返信し、うずくまって気が済むまで泣いていた
その日はそれ以降、みゆきからのメールを返さなかった

もちろんその日以降も、かがみからの愛情表現が続いていたのは言うまでもないだろう







「そういえばさあ、この前トイレでうめき声が聞こえてきてさぁ」
「え!?ちょっと、お姉ちゃんやめてよ」
「ふーん…」

「つかさは怖がりねぇ♪そういえば、非常階段で少女の泣きそうな声が聞こえたって話もあったわね★」
「わーん!こなちゃん~お姉ちゃんが苛めるよ~(泣)」
「か、かがみん駄目だよぉ…」

「あらぁ?何よあんた、まさか怖くってお漏らしとかするんじゃないでしょうね☆ね?こ・な・た♪」
「いくら私でもそんな事しないよぉ~でも…おトイレ行けなくなるかもぉ(汗)」
「…。」

今日もこなたはかがみとつかさと三人で登校する
かがみは朝の時間を使って、こなたに圧をかけてくる
何気ない会話にふくまれる言葉でこなたを陵辱して楽しんでいるのだ
こなたがみるみる視線を地面に落としていくとかがみはこなたの隣に来て
『もっとその顔を良く見せて、泣いて見せて』と、つかさに聞こえないように囁く

毎朝の登校時間が何時間にも感じるが、それを我慢すればみゆきの待つ校門へとたどり着く
これが今のこなたの日常と化していた
それでも日に日にみゆきに対するこなたの態度は変化していく

「こなたさん、おはようございます。」
「あ…みゆきさん、おはよう♪」

「お加減が優れないようですが、どうかされましたか?」
「え?そ、そんな事無いよ…。す、数学の宿題をやってたら眠れなくって」

「あら?数学の宿題なんか出てましたっけ?」
「え…で、出てなかったっけ?おかしいな…はは」

「こなたさん、最近眠れてないんですか?目の下にクマが…」
「そ、そんな事無いよぉ☆私はいつも元気100倍だよ★」

傷心の少女は力コブを出すようなポーズをとって見せるが、どこかぎこちない

こなたは何か無理に明るく振舞っている
みゆきの目にはそう映った
みゆきはそんなこなたに少し悲しそうな目で素直な気持ちを述べた

「こなたさん…こんな言い方失礼かもしれませんが、何か私に不満があるんでしょうか…?」
「え…?そんな事…」

「だって、そうでしょう?最近のあなたは何かを誤魔化してばかりで…」
「あ…」

「まるで何か、私の事を避けてる様な…う…え…そんなの嫌です…ひっく…」
「みゆきさん…」

朝日に輝く長髪の美女は、公衆の目を気にせずその場に崩れてこなたを抱きしめた

「場所、変えようか…みゆきさん」
「…。」


みゆきとこなた、校内の話題のカップルである二人は学校の近くにある喫茶店で
テーブルを挟んでお互い無言で座っている
お互いの目の前にあるホットコーヒーが、一口も飲まないうちから湯気を発さなくなってしまった

普段なら愛の語らい場であるこの喫茶店も重苦しい空気に包まれて、今では呼吸一つ一つが苦しい

「学校…サボっちゃったね…」
「…そうですね…」

この空気に耐え兼ねたのはこなた、目の前のみゆきはただただ涙を流すばかりで
普段のおっとりした雰囲気は枯れて散ったかの様に口をつぐむ

いかに優等生であろうともやはり年頃の女の子だ
この状況で平静を装える程、安定した精神は持ち合わせていない
こころの中はこなたの事で一杯
恋人の今まで見せなかった拒絶の姿勢を間のあたりにして、涙の栓は完全に機能しなくなっている

「みゆきさん、泣かないで…」
「…だって…うう、ひっく…」

テーブル越しに伸ばしたこなたの手がみゆきの頬に触れて、涙のしずくを拭っていった
みゆきは、その手を両手でそっと包み込んでそれに寄り添った
赤く腫れてしまってもなお美しい澄んだ瞳がこなたを襲う

「…。」

思わず、目を逸らしてしまった
こなたにはその眩しい眼差しに応える術が無い
みゆきが怖い

「何故…こちらを…えぐ…見てくれないんですか…?」
「…。」

「ぐじゅ…私が…お嫌いですか?」
「違うよ…そんなこと無い」

「だったら……私の目を…ひく…見て下さい…」
「…。」

こなたは必死にみゆきの瞳に自らの視線を合わせたが、思わず目を逸らしそうになる
『駄目…目を逸らしちゃ…』
自分に言い聞かせた、
愛しい人の泣き顔をこれ以上見たくない、そんなのは嫌だ
が、恐怖がそれを上回った…、こなたは目を逸らし「ごめんね」と小さく呟いて
グッと俯く

「…こなたさん…。」
「……。」

「………私たち…」
「…。」

「もう終わりなんでしょうか……」
「……。」

気が付けば窓の外は曇っていた
まるで二人の少女の心の様に…

最終更新:2024年04月20日 11:41