ここにいる此方
by ガンガン福岡
ピピピピ…ピピピピ…カチャ…
「んっ…ふぁぁぁぁ~朝かぁ~。 今日もいい天気だね…」
午前6時、いつものように眠たい目をこすりつつ
いつものように眩しく輝く朝日を浴びながら起きる…
これが私、泉こなたの一日の始まりだ。
私は台所に立つと、ありあわせの食材を使って簡単なお弁当を作った。
以前はチョココロネをお昼に食べていたのだが、最近は手作りのお弁当を学校に持って行っている。
「ん…これでよし、と…ピザも焼けたかな?」
冷凍ピザを、オーブンで加熱したものを取り出す。今日の朝食だ。
「いただきます、んぐんぐ…これはこれで美味しいかな。普通はピザ生地から作るけどね」
私は制服に着替えると、お弁当を鞄に詰め込み、学校へ行く支度をした。
「さて、いってきまーす」
返答は帰ってこなかった。
私は自転車を軽快に漕ぎ、朝の清々しい風を浴びながら学校へ向かう。
最近は自転車で通学している、これで運動不足には悩まされないかな。
キーンコーンカーンコーン♪
ダダダダダダダダダダッ!!バンッ!!ハァ…ハァ…
結構自転車トばしてるけど、やっぱり学校まで遠いなぁ。
今日も遅刻ギリギリだったよ。
私は急いで席につくと、教科書を開いた。
「ふぅ…今日の学校も退屈だなぁ~…ふぁぁぁ…」
…午後の授業を終えるチャイムがなった。
「今日はバイトも無いし、ゲマズにでも寄ってみるかな。」
私は、帰り支度を終え、帰路についた。
カチカチ…ガチャ…
「ただいま~」
私は早速自室へ入り、ゲマズにて手に入れた本を棚に飾る。
しかし、あまり最近は読む気がしない、とりあえずシリーズ物をなんとなく集めている感じだ。
「さて…夕食の準備でもしよっと」
帰りがけに寄ったスーパーの食材を使って夕食を作る。
「今日はみんな大好きチキンカツ♪私鶏肉大好きだからね~」
「ふぅ~お風呂はやっぱり気持ちいいなぁ~♪今日の疲れがじんわり抜けていくような感じ…」
私はこのお風呂の時間が好きだ。とてもリラックス出来る。
色んなことをゆっくりとお湯の中で忘れることが出来る…この時間だけは…
「ふあ~…いいお湯だった。お風呂上がったよ~」
やはり、返答は帰ってこなかった。
風呂から上がり、自室に戻ると私はPCの電源を立ち上げ
早速2chのチェックをする。
「今日も更新なし、か…もうすっかり過疎ってるね。か…そ…みん、っと。」
それからぽちぽちとサイト巡りしていたが、特にやることも無いので早々にPCの電源を切った。
最近はめっきりネトゲをやらなくなった。やってても楽しくなくなってしまった。
ネトゲだけでは無い、TVもゲームもあまりやらなくなった。
漫画も、もちろん勉強もやる気がしない。夜はベッドでゴロゴロしていることが多い。
静かに夜は更けていく、まさに虫の音も聞こえないほど静かな夜だ。
「11時、か…そろそろ寝よう。あはは…こんな早くに寝るようになっちゃって。私ってみゆきさんみたいだね」
「おやすみ…」
私は、静かに眠りについた。
ピピピピ…ピピピピ…
「んっ…ふぁぁぁぁ~朝かぁ~。 今日もいい天気だね…」
午前6時、いつものように眠たい目をこすりつつ
いつものように眩しく輝く朝日を浴びながら起きる…
これが私、泉こなたの一日の始まり…
「もう…やだよ…」
いつものように始まる私の朝…そう、私一人だけの朝…
「うわああああああああああああああああああああ!!
誰も居ない!かがみもつかさもみゆきさんもお父さんもゆーちゃんもみんなみんなみんな!!
何をやっても!何を言っても返ってくるのは孤独!孤独孤独孤独孤独孤独孤独孤独孤独孤独!!
誰も聞いてくれない…誰も見てくれない…もういやだよぉぉ…」
いつからこうなってしまったのか…
そう時間は経ってないはずなのにもう何年も経ったかのように思える…
事の起こりはある朝から始まったんだ…いつものように眠い目をこすりつつ
いつものように朝日を浴びながら起きたあの日…
そう…いつもどおりだった…それ以外を除いては。
家には居るはずだったお父さんも…ゆーちゃんも居なくなっていた。
そればかりか、通りにも人は居ず、動物すら存在しないような静けさを帯びていた。
恐る恐る学校へも行ってみたが、生徒がいない…
かがみやつかさ、みゆきさん…黒井先生や白石君…誰一人いない校舎は静まりかえっていた…
私は泣いた、そしてたまらず叫んだ。声が出なくなるまでずっとずっと…
聞いてくれる人がいることを願って…
それから随分、時間が経ったんだろうか…
私は、”日常”を過ごすことを決めた。
電気や水道はとりあえず止まる気配はないし、食べ物も生鮮食品には手をつけられないが
スーパーに行けば冷凍食品や保存食が沢山あるのでどうにかなる。
普通に朝起きて、普通に学校へ通い勉強をし、
ゲマズにもよったり、バイトへ行ったり…
そうすればまた、みんなに会えるんじゃないかという期待を胸にして…
朝起きたら、皆が私のまわりに集まってて、笑いながら「これはドッキリだよ♪」って
言ってくれるんじゃないかと思いつつ眠りにつく…
そしていつもの朝を迎え…一人の朝をもう何日も何日も…
ゲームもし放題、漫画も読み放題、学校には行かなくていい…
好きなことをやってだらだらと過ごす毎日…前はそんな生活が出来たら
どんなにいいことだろうと考えていた…まさに、今がその時だというのに…
何をやっても上の空、ひしひしと感じるのは孤独のみ…
「もう…ダメだな…私…」
いくら待っても何も変わらない…かりにこの先にこの孤独が終わる日が来るとしても
私の精神はもう…限界…
私はゆっくりとベッドから起き上がると、洋服のクローゼットを開け
奥の方から喪服をとりだした。
これは…私の大好きだったおじいちゃんが亡くなった時の喪服…
たしか小学生の頃だったかな。
「ふふ…まだ普通に着られるし。私って成長してないなぁ…
私のお葬式、誰もやってくれないなら、自分だけでもやってあげなきゃね…」
そういうと私は、母の仏前で正座をした。
ろうそくを点けて、線香に火をつけ、手を合わせる。
目の前には母の遺影がある。写真の中の母はにこやかに微笑んでいた…とても癒される笑顔。
「お母さんだけは…私を迎えに来てくれるよね?」
私は家から出て、鍵をかけようとしたがやめた。
どうせ誰も入ってきやしない。
それに、もう帰ってくることはないんだ…この家に…
私は、学校の屋上にいた。
色んな思い出が詰まった陵桜学園…私にとってとても大事な場所…
「かがみ…いつもバカやって一緒にはしゃいだね…
つかさ…一緒にお菓子食べたり、お話出来てとても楽しかった…
みゆきさん…優しくてあったかくて…本当にお姉さんみたいだった…
みんな…大好きだよ…でも…なんで…
何で私を残していっちゃったの…私は…まだここにいるよ…」
私は屋上の手すりを乗り越えた。
心地よい風が頬をなでていく。
「みんなの…居ない世界なんて…私にはもう…」
フッ…
私の体は宙に舞っていた…
ゆっくり、時間が流れていく。
ありとあらゆる記憶が頭の中を流れていく…これが走馬灯なんだな…
夏祭り…海…
修学旅行…花火大会…体育祭…色々あったなぁ…
…あれ?…なにかとても大事なことを忘れてるような…
そうだ…あの時私は突然まぶしい光にさらされ…思い出し…
…私の意識は、そこで消滅した…
ピーーーーーーーーー
異星人A「被験体、生命反応消えました」
異星人B「ふむ…この星の生物を消滅させた後、この孤立空間でどのような行動をとるか
観察していたが…なかなか予想外な行動をする。
まさか自ら機能を停止させるとはな…いいデータが取れた」
異星人A「でも、被験体1体、無駄になってしまいましたね」
異星人B「なに、心配はいらんさ。オリジナルはここにあるのだ。必要ならまたコピーを作ればよい…」
悪夢はまだ…終わらない…
完
最終更新:2024年04月22日 20:21