温泉を賭けた戦い ストーリー


開始時

+ 開始時 ──翌日。旅館に泊まった君たちは、午前から
夕方にかけてを、魔道の勉強に費やした。

ノア
「や、やっと終わりました~……」

ヴォルフ
「はぁ……こういうのは勘弁してほしいぜ」

シャーリー
「会長、なんか上の空な感じだったけど、
 だいじょーぶ? けが、まだ痛い?」

リンカ
「う、ううん……大丈夫よ」

ダンケル
「やあやあ諸君!
 勉強のはかどり具合はどうかね!」

──戸を開けて部屋に入ってきたダンケルを、
一同は、うろんな目つきでみやる。

ニコラ
「学園長……あの『肝試し』、
 なんかサムライが出てきたんですけど……」

ダンケル
「あれも修練の一環だ。だからツキカゲ君には
 模造刀を使ってもらったのだよ」

ニコラ
「そういうことじゃなくて!
 ふつー、もっとこう……違うでしょ!?」

ダンケル
「そうそう、ノア君は大活躍だったね。
 ごほうびに、上位ランクの制服を授けよう!」

ノア
「わーい! ありがとうございます!」

ニコラ
「えええちょっと学園長甘くないですか!?」

ダンケル
「夏だからね」

ニコラ
「理由になってないっ!!」

ダンケル
「それはさておき。
 実はこの旅館には、いい温泉が湧いていてね」

ダンケル
「打ち身、きりきず、疲労回復に肌の保湿、
 ストレスの解消などにだいたい効く」

イツキ
「効能がありすぎて、うさんくさいな……」

ダンケル
「ははは、そう言わず、入ってみてくれたまえ」

ダンケル
「──入れればの話だがな!!」

イツキ
「は?」

???
「この旅館の温泉は、選ばれし者にのみ
 解放される秘伝の温泉……」

トモエ
「あなたがたがそれにふさわしいか……
 このトモエが見極めさせていただきます!」

ニコラ
「旅館の女将さん!?」

トモエ
「まずは仲居たちがお相手いたします!
 さあ、私のもとまで辿り着けますか!?」

──闇に呑まれ、姿を消す女将。
代わりに、仲居たちが押し寄せてくる。

ニコラ
「ちょ、あの女将さん何者なの!?」

ダンケル
「ふ、さすがはブラッディ旅館の地獄女将──
 その腕はおとろえていないようだな……」

リンカ
「が、学園長? 何旅館の何女将と
 おっしゃいました?」

ダンケル
「そんなことを気にしている場合ではない!」

ダンケル
「女将を倒せねば、
 学園の全員が温泉に入れぬと心得たまえ!」

リンカ
「学園の全員が……ということは、
 学園長もなのでしょうか?」

ダンケル
「あ」

ダンケル
「……しょ、諸君! 勝て! 勝つのだ!
 ぜひとも勝ってくれたまえー!!」

ヴォルフ
「ノリでしか動いてねぇのかこのおっさん!?」

イツキ
「とにかく、みんなのためにやるしかないな」

リンカ
「ええ……そうね。
 行きましょう……」

道中

+ 道中 あの女将……ただ者じゃないにゃ!
イツキたちを助けるにゃ!

ボス戦前

+ ボス戦前 ──仲居たちを倒しつつ、君たちは
女将を探して旅館を駆け巡る。

──ただ、昨日の戦いで足を痛めたニコラが
辛そうだったため、休んでもらうことにした。

──イツキ、リンカをニコラの護衛につけて、
君、ヴォルフ、シャーリーで探索を続ける。

ノア
「……あたし、転校初日に、
 生徒会のみなさんに助けてもらったんです」

──道中、ノアがぽつりとつぶやいた。

シャーリー
「え? そんなことあったっけ?」

ノア
「はい。誰かが封魔の壺を割ってしまって、
 凶暴な魔物が現れて……」

ヴォルフ
「ああ……そういや、そんなこともあったな」

ノア
「あのときあたし、魔物に負けちゃって……
 そしたら生徒会のみなさんが来てくれて……」

ノア
「みなさんの戦いを見て、すごい、って
 思ったんです。バッチリ戦ってるっていうか」

シャーリー
「んー。生徒の安全を守りつつ、互いをカバーし
 長所を生かして的確に動く、って意味で?」

ノア
「そうです、そうそうそんな感じ!」

ノア
「でも、今はなんだかギクシャクしてて……
 なんでなんだろう、って……」

ヴォルフ
「俺のせいだ」

ヴォルフ
「俺が動物を殴れなくてアテにならねぇから、
 みんなの動きが乱れちまってるんだ……」

ヴォルフ
「イツキやリンカの雰囲気がいつもと違うのも
 俺が情けねぇところを見せちまったから……」

ウィズ
「うーん……
 原因はそこじゃないと思うけどにゃあ……」

──そのとき、君たちは
剣戟の響きを耳にした。

ノア
「あっちで……戦ってる!?」

ヴォルフ
「イツキたちの方に女将が出やがったのか!
 ちくしょう、いま行くぜ!」

──その頃、イツキたちは女将と遭遇し、
戦いを始めていた……

イツキ
「『私のもとまで辿り着けますか』って言って
 おいて、なんで奇襲をかけてくるんだ!?」

トモエ
「相手の言葉をうのみにするなんて若いですね。
 それに、仲間を守りながらで戦えますか!?」

リンカ
「イツキ! かばわれなくても、
 私はちゃんと戦えるわ!」

イツキ
「リンカもニコラも、まだ痛みが引いて
 ないんだろ! 強がるなよ!」

ニコラ
「でも、これじゃイツキ君が」

トモエ
「ほほ──乱れた心で私を倒そうとは笑止千万!
 受けなさい、仲居投げ!」

──割り込んだヴォルフが、
仲居を受け止め、防ぐ。

ヴォルフ
「おらぁっ!」

イツキ
「ヴォルフ! 魔法使いたちも!」

ヴォルフ
「すまねえ、イツキ、リンカ!
 俺が情けねぇせいで迷惑かけちまって!」

イツキ
「は?」

──唖然となるイツキとリンカに構わず、
ヴォルフは叫びを放つ。

ヴォルフ
「俺は……生徒会に来て、初めて仲間ってもんを
 知った。おまえらにはよ……感謝してんだ!」

ヴォルフ
「ノアが言ってた。俺らの戦い方はすげぇって。
 生徒会は、バッチリ戦ってたって!」

ヴォルフ
「俺のせいでそれが崩れるなんざ我慢ならねぇ。
 俺は、おまえらとバッチリやっていきてぇ!」

ヴォルフ
「俺のふがいねぇところはいくらでも謝る!
 だから──だからよ……!!」

──イツキとリンカは、
ぽかんとした顔を見合わせ……

──そして、苦笑を浮かべた。

イツキ
「……こっちこそ、わりぃ、ヴォルフ」

イツキ
「原因は、オレの心の弱さだ。でも……
 そんなこと、言ってる場合じゃなかったな」

リンカ
「私たちは生徒会……学園を守るために、
 力を合わせて戦わなければならない!」

イツキ
「そうだ……悩もうが、迷おうが──オレたちは
 そこだけは外れちゃいけなかったんだ!」

ニコラ
「イツキ君、リンカ……!」

イツキ
「新入りだって見てるんだ。気合入れなきゃな!
 行くぜ──みんな!」

ボス戦後

+ ボス戦後 ──ニコラとシャーリーの射撃がトモエを襲い、
回避行動を取らせて攻撃を封じる。

──そこへ、イツキとリンカが左右から突進。
水の剣と炎の刀が、トモエをはさみ撃ちにする。

トモエ
「仲居シールド、番頭ウォール!」

──無数の仲居と番頭を展開し、
両の剣撃を防ぐトモエだが、

ヴォルフ
「かますぜ新入り!」

──ヴォルフとノアの力任せの攻撃が、
仲居と番頭をはじき飛ばしていく。

──そして、防御手段を失ったトモエへと、
君の狙いすました魔法が炸裂し……

トモエ
「くうっ……!」

──防御姿勢のまま吹き飛ぶトモエ。
壁を破壊し、露天風呂まで押し込まれていく。

トモエ
「やってくださるものですね!
 ならば、これで!」

──トモエが腕を振るうと、温泉の湯が
竜のごとき形となって、こちらに向かってくる。

イツキ
「押し返すぞ、みんな!」

ノア
「ハイパー生徒会キャノンですね!」

イツキ
「そんな名前はつけてないけど、
 たぶんそんな感じだ!」

リンカ
「見せましょう……クロム・マグナ魔道学園
 生徒会の力を!」

──君たち全員の魔力が放出され……
湯の竜を打ち砕き、トモエを直撃した。

トモエ
「ああっ……!」

──くらりとよろめき、倒れ伏すトモエ。

ニコラ
「や、やった……!」

ノア
「やりましたー!」

──みなの力で得た勝利に、
生徒会の面々は純粋な喜びをあらわにする。

イツキ
「悪かった、ヴォルフ。
 おかげでアタマ冷えたよ」

リンカ
「私からも、ごめんなさい。
 そして……ありがとう」

ヴォルフ
「へ? なんで俺が謝られてんだ?」

ヴォルフ
「ま、なんにしても……よかったぜ。
 やっぱ、生徒会はこうでなきゃな!」

ノア
「はいっ! ですよねー!」

ヴォルフ
「ありがとうよ、ノア。おまえのおかげだぜ」

ノア
「いえいえ! えへへっ」

──ヴォルフの大きな手で頭をなでられ、
ノアは恥ずかしそうに笑っている。

──それを見つめるリンカの肩に、
ニコラが、からかうように、あごを乗せた。

ニコラ
「あれはねぇ……たぶん、小動物を愛でるような
 ノリだと思うんだよね~……」

リンカ
「わ、わかってるわ。もうっ……」

──笑顔を交わす彼らの間に、気まずい空気は
もはやない。君の頬にも笑みがこぼれる。

ウィズ
「……それはいいけど」

──肩の上で、ウィズがぼそりとつぶやいた。

ウィズ
「今の戦いで、
 温泉の湯が吹っ飛んじゃったにゃ……」

──生徒会の面々がそのことに気づいて
絶叫するのは、もう少し後のことになる。
最終更新:2014年08月03日 18:49