魔道学園 書記 シャーリー
学園の空に大きな黒い空間の穴……異界の扉が開いたとき、わたしとヴォルフ先輩は生徒会室にいた。
あまりに現実離れした光景に、わたしは思わずヴォルフ先輩の袖を引く。
先輩はわたしの方を見ると、微笑んでくれた……何だか、いつもより、やさしい。
でも、そんな平穏な時間はあっという間に消えてしまった。
背後から強い衝撃を感じるのと同時に、先輩が宙に浮き、窓の外へ落ちていく。
目の前に現れたのは、黒い影のような「何か」。
これまで感じたことのない怒りが涌き上がってくる。
素早く床に落ちていた愛用の銃器に手をかけて、がむしゃらに引き金を引いた。
目にも止まらない早さで生徒会室から出て行く黒い影。
無我夢中で追いかける……周りは見えてなかった。
許せない……ゼッタイに許せない!
——黒い影を追ってたどり着いたのは、学園で最も高い塔の最上階。
そこに居たのは……ダンケル学園長?
普段の学園長とは違う雰囲気な気が……
目が合った瞬間、急に身動きがとれなくなり、息が苦しくなる。
「く、苦しい……助け、て。」
諦めかけたその時、聞き覚えのある声とともに苦しさから開放され、地面に倒れる。
「おい、大丈夫か?」
見上げるとイツキ先輩と、隣には初めて見る人(魔法使い?)とかわいい黒猫さんがいた。
ほっとしたのも束の間、慌ててイツキ先輩に伝える。
「ヴォルフ、先輩が……」
涙が出そうになったとき、入口の大きな扉がゆっくりと開く。
傷だらけのヴォルフ先輩と生徒会のみんなが駆けてくる。
思わず、ヴォルフ先輩に飛びついた。
みんなも……よかった……
またみんなに出会えたこと、無事でいたことの喜び、それはみんなが感じていた。
生徒会メンバーが集まり、希望の光が見えたけど、その光を覆い隠すように学園長が近づいてくる。
どうして?
全員の頭に疑問と戸惑いが駆け巡る。
一つ明らかなのは、かつての学園長の面影はなく、わたしたちに敵意の眼差しを向けているということ……
この学園の未来をかけた戦いが、今始まろうとしていた。
最終更新:2014年08月04日 14:02