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2021年総評案3 大賞:Cuteness is justice


【2021】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所
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75: 総評3 :2022/02/28(月) 22:50:12 ID:???0
そこは、数多の夢と浪漫が永眠し、悪鬼羅刹がのさばる煉獄。
修羅の国とも呼ばれる、現し世の常識が通じぬ魔界。
その片隅に存在する、物好きな冒険者たちの集う砦こそが、クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)である。
2020年には、総勢22体の怪異が全ての月を支配する中、親の777光と属性地雷群を自己満ルビで粉飾し尽くした『LOVE・デスティネーション』が、図抜けた威容を示して戴冠した。
張り裂け散らばった無念を湛え深さを増す暗天の下、時の流れは冒険者たちを次なる戦禍へと誘う。
これより伝えるのは、コンパスにして鍵たる一人一つの性癖を胸に、己の真実を求めてさすらう者たちが史に刻んだ悲喜劇である。

2021年の始まりは、怪異どもが活性化する3の月。
コンセプト詐欺感を訴える者が砦の酒場を訪れた。
恋愛譚・青春譚・幻想奇譚との触れ込みに惹かれて物語を買い求めたが、個別分岐が実質BADで明るい話がひとつもないという。
しかし、この傾向はブランドの作風として確立されたものであり、体験版をプレイしていれば回避できていたことから、どこまで納得できるかで意見は割れた。
同時に、近年のKOTYeにおいて中心議題となっているフィーリングのミスマッチ、すなわちコンセプト詐欺・宣伝詐欺・タイトル詐欺について改めて問い直す契機ともなったのである。
事前情報はどこまで集めるべきか?
売り手の説明不足と買い手の判断力不足を分ける境界とは?
意見のすり合わせが行われたが、万能の尺度を創造するのは不可能に近く、結局はケースバイケースで判断するほかないとされた。
いずれにせよ、エントリー方式を採るKOTYeにおいて、虚偽ないしはそれに準ずる難癖でもない限り参戦は拒まれない。
そしてこの一見は、修羅の国の在り方そのものを問うような動乱の、ほんの発端にすぎなかったのである。

続く4の月には、名ばかりIRによるぼったくり被害が発生した。
元締めは、悪名高きスワン連合の一味Calcite、開業されたのは『女勇者と幻想カジノ ~求む亜人巨乳美女ギャンブラー~』である。
異世界に転生してギャンブルとイカサマの知識で無双する話とされているものの、各種設定はことごとく形だけ。
カジノといっても、敗者への罰ゲームを名目にHシーンを並べているにすぎない。
この過程でミニゲームとしてブラックジャックを実際にプレイできるが、製作者がルールを把握していないらしく、役のあるなしに関わらず同点なら引き分けになってしまう。
この一点だけでも、取り扱う題材に対する下調べ不足は明らかである
イカサマを使えば、プレイ自体をスキップして勝てるのが救いか。
開催するショーもは「2人で利尿剤を飲んでどちらが先に漏らすか」などのバカバカしいものばかりで、何をしてどうなったか淡々と説明されるだけなので面白みもない。
また、キャラクターの設定は外見にしか反映されておらず、中身は偽物の疑似餌ならぬ「疑似絵」として被害を拡大した。
そして結末はいずれも大なり小なり打ち切りであり、酷いものでは“結果が出てしまう前までがギャンブルだ”との開き直りとも取れる言葉で結ぶ。
CGの使い回しも度を越しており、60枚のうち約半数は反転などの加工による水増しである。
フルプライスでありながらOPすら存在しない安っぽさ、頻発する暗転読み込みといったお家芸も標準搭載で、もはや本作そのものがイカサマであった。

近年流行の疑似絵系トラップが早くも発動し、便乗の機運が高まりかけたその時。
そんなものはお遊戯用の能力とでも言わんばかりに、領域展開による割り込みが発生した。
前年に続いて参戦したevollの『とっても明るい!お嬢様の満喫☆夢のどすけべ生活』である。
開始早々、「人目につかず使われていないが勝手に侵入できる立派な屋敷」を具現化し、登場人物もろともプレイヤーを閉鎖空間に引きずり込む。
あとはやりたい放題である。
根幹をなすのは、加虐嗜好のない主人公がヒロインから陵辱プレイを強要されるという変則的な設定。
とにかく、ガチ陵辱にあらずと予防線を張り巡らせながらのプレイが繰り返される。
導入からして、主人公の借金をヒロインが肩代わりする条件として竿役を強要する展開であり、あくまでもヒロインの望みであることが強調されている。
行為の真っ最中にも、主人公が躊躇するモノローグが入ったり、つい素で悦んでしまったヒロインが嫌がる演技に入り直したりと、幾度となくガチではないと念を押す。
行為後には立場が逆転して、ヒロインによるプレイの採点とダメ出しが始まる始末である。
あまりに言い訳が執拗すぎて、陵辱プレイとしては微妙であり、かといって純愛路線としても成立していない。
陵辱要素を採用しておいて規制には及び腰すぎる中途半端な姿勢は、作品そのものを迷走させている。
また、チ○コを腕よりも太く長くして画面外から挿入する必中効果、広すぎて読みにくい文字間隔や巨大な顔アイコンといった環境要因によるストレス上昇効果も発現。
全要素がしっかりと粗悪さを堅持した領域であった。

涙雨が降りしきる6の月には、増水した三途の川でルアーに釣られた者が犠牲となった。
前回『つくりかた』と称して完成済み詐欺をやらかしたSUKARADOGが、新たな罠『家出ギャルを拾ったので育ててみた』を発動させたのである。
今回もやはりタイトル詐欺に堕しており、ギャルっぽいのは見た目だけで育てているとも言い難い。
ヒロインには主体的な個性に乏しく、家出中に成り行きで教師の家に転がり込んだ後は、懐いてなんとなく股を開くか、レ○プで股を開かされるかの肉オ○ホでしかない。
展開次第で黒髪清楚や黒ギャルにスタイルチェンジするものの、前者はただの変装で、後者は主人公による強制。
内面の変化の現れではなく、CG差分を利用したシーン数水増しに体よく利用されているだけである。
また、UIは「左クリック一本で勝負」という要らぬ漢気に溢れており、ホイールによる読み進めをはじめ、右クリックやキーボードによる操作を受け付けない。
単なる釣り道具には留まらず、ストレスを強いつつ腱鞘炎へと導く脅威としても恐れられたのであった。

後にわかることであるが、これが本年のエントリーで唯一のロープライス作品となる。
この先で冒険者たちを待ち受けるのは、重量級怪異との連闘であった。

口火を切ったのは、panacheの『ぱられるAKIBA学園』である。
“更なるクォリティアップのため”として一年に及ぶ延期の末に竣工したのは、注力するポイントを間違えた上に統一感も無い廃校であった。
冒頭では、主人公が異世界召喚の勢いを利用したカミカゼアタックで魔王を開幕ワンパン。
帰還不能の代償としてオタクグッズ満載の自室を召喚してもらい、オタク文化に染まった勇者パーティーのヒロインたちと布教活動を開始する。
ここまでは良しとしよう。
しかし、続いて始まるのは学園生活ではなく、不毛の大地の開拓である。
魔王のせいで荒廃しきった異世界にAKIBA文化を根付かせるため、まずは人々の生活基盤を確立し、教育により識字率を上げるところからスタートする。
本作は、そんな気の長い鉄腕開拓記なのである。
活動内容の大半を街づくりが占め、学園要素はなんとなく着ている制服込みでもせいぜい1割。
その街づくりにしても、政治・経済にまで生々しく話を広げては半端な力技で解決したことにするため、腑に落ちないモヤモヤが積み重なっていく。
しまいには、漫画や遊○王カードを普通に読むモブの登場によって話の前提が崩壊。
真面目に向き合う意義の薄い、単なるコスプレHへの動線にすぎないことを思い知らされるのである。
一方、ヒロインたちとのエピソードでは整合性が崩壊している。
共通が終わると性格どころか人格が変わり、吟遊詩人エルフは生ける騒音に、頭脳派魔道士は切れる若者へとタイプチェンジ。
個別はヒロイン全員の小話を一巡するごとに進行していくが、順番が任意のため、呼び方が親密と他人行儀を行き来するわ処女膜が再生するわで時系列が乱れ狂う。
ほかにも、海水浴で水着を着ているはずが立ち絵は全裸など、そこかしこに突貫工事の痕跡が透けて見える。
異世界転生のテンプレに便乗も逆張りもしきれなかった本作は、改めて現実の厳しさを冒険者たちに知らしめたのであった。

炎暑が続く8の月には、人を選ぶ筆致で知られるベテラン魔族が、ド○クエパロとバグチート無双の邪配合によって狂える勇者を生み出した。
キャラメルBOXいちご味の『下戸勇者 ~酒は飲まねど酒池肉林!~』である。
問題点は、俺様パロディ・ドヤ解釈・クセポルノと三拍子揃ったシナリオ。
アクの強さがあまりに深刻であり、下戸とは言うがシラフで書かれたとは到底思えない。
旅立ちの街の名前が「アリエヘン」なのはマシな部類で、以降ズレた方向へと加速度を上げていく。
日本語を英語風にもじった呪文詠唱は痛々しい上に種類も多く、「――Callarine.Hanacolor Nuu-Guu!――(チャラリー 鼻から乳牛)」あたりは短いだけまだ救いがある。
さらに、ヒロインの名前が「ああああ」、「いいえ」で無限ループや無意味な8択といった古い選択肢ネタに加え、「メッセージウィンドウに長すぎる名前を表示」という8年前に我々が通過した遊びまで網羅。
ここまでなら古く痛く寒いで終わるが、DQヒロインの名前に引っ掛けた選択肢を出して「バ行で始まってカで終わる」と貶すネタは、原作への敬意を欠くと批判された。
一方で、何かにつけ世界観の設定を細かく丹念に語り始めては脱線し、徒労感をも上積みする。
通貨がゴールドである理由の俺解釈を滔々と語られても、それがどうした以上のリアクションは取りづらい。
挙句の果てに、こうしたクセと無駄はエロをも汚染している。
ピストンしながら「会心の一撃!」と連呼する、行為の真っ最中にはぐれ狩りの豆知識と自慢話を語る、空間魔法で4人のア○ルを重複させて同時に挿入する等々、実用性云々以前に意味がわからないシーンも多い。
最後には突然の主人公女体化エンドまで仕込む徹底ぶりである。
一部をかい摘んで聞く限りでは、いわゆる「くさや系」として楽しめるのではないかという意見もあるかもしれない。
しかし実態は、凍気と虚空の波状臭撃がフルプライス相応の大ボリュームで絶え間なく押し寄せる「わんこくさや1万円分」であり、その圧力を楽しみきれる者となると稀有であろう。
未読スキップすら無い化石UIでレトロ感を演出する無用な配慮も行き届いており、それがトッピングとして苦渋をも添えている。
かくして、はぐれ勇者はキンキンに冷やした大地にクレバスを刻み、大穴の底へと消えていった。

9の月には、低レベルな粗製乱造スキルを駆使する常連が参戦する。
スワンの眷属ももいろPocketが『ぶっかけ陰陽師絵巻 ~Hなお祓いいたします~』で3年連続のエントリーを果たした瞬間であった。
内容は、陰陽師である主人公の精液には解呪効果があるという設定を導入にして、ただぶっかけまくる話である。
次々と発生する呪いに対し、患者のどこにぶっかければ解呪できるかを選択していくシステムであるが、例によってヒントはほぼない。
例えば下着が脱げなくなる呪いの場合は、下着・脇・手の三択となり、正解は「手」、根拠は“下着はただの布だから、何か起きてるとしたら手の方か”である。
呪物や付喪神は存在しないらしい。
しかも間違えたまま進めると、個別ルートのフラグが折れたり 最後のHシーンが出なかったりと、後になってから悪影響が生じる陰湿な仕組みである。
作画コストの徹底削減も、もちろん健在。
左右反転・回転・拡大縮小に加え、時間帯変更や立ち絵の一枚絵化まで、多彩な増殖系の禁術を乱用してCGを使い回し、1枚から最大で5回のシーンを生み出してのけた。
「ぶっかけ」に対するこだわりなどあるはずもなく、「お腹にかける」であってもフェラCGを使い回す杜撰さである。
さらに、前作でもさんざん流用した時代劇風の背景をそのまま転用している上に、私服は現代風なので統一感もない。
背景と文章しか表示されない場面も多く、味わいのないドット絵のようなチープさがいっそう引き立っている。
その極地がラスボス戦である。
世界を滅ぼせるらしいラスボスにも集結した陰陽師の軍勢にもCGは皆無で、専用CGはヒロインの立ち絵をアップにしてでっち上げたカットインもどき1枚のみ。
そして最終決戦の舞台はただの民家である。
この選択を陰陽師B氏が「当たり前のことを言うな」とたしなめるが、おそらく「背景を使い回せる場所で戦うのが当たり前」という意味であろう。
挙句“本当の本当に総力戦だった”の一言で8割方の説明を片付けており、漫画でいえば下書きどころメモ書きをそのまま掲載するが如しである。
厚顔無恥に己が覇道を突き進むスワン帝国はどこへ向かうのか。
冒険者たちは、呆れながらもその野望の行き着く先に想いを馳せるのであった。

季節が秋へと移り変わる頃。
某所で開催された「秋のクリ拾いセール」が「クソ拾い」と空目されたことが引き金となり、戦火の火種が世界各地へと飛び火した。
スタンピードへと繋がる大きなうねりは目前に迫っていたが、冒険者たちがそれを知るのは少し先のこと。
このときはまだ、酒場での論戦に興じる余裕があった。
話の種は、タイムスリップとループを取り入れた歴史物語である。
源平合戦をなぞっているが、源義経に成り代わった現代人を主人公に据えているため、赤の他人でしかない頼朝と「肉親であるがゆえの愛憎劇」を演じる違和感が拭いきれない。
さらに、最終章では話が大きく脱輪して妖怪大戦争が勃発し、ぽっと出の最強キャラがだいたいなんとかする超展開が待ち受けている。
ほかにも、源平合戦と関係ないドヤ薀蓄が多すぎる点や、現代人のヒロイン2人にしかHシーンがなく数も合計5つと少ないことが指摘された。
一方で、オチと薀蓄はともかく大筋は十分面白い、あえてエロを最小限にしたのは英断、といった意見もあった。
トータルの出来栄えは決して悪くはなく、むしろ良いとさえ言える。
それでも不満の声は上がり、反論はあれど共感も集まった。
この事態が意味するものとは――
新たな知見が垣間見えたそのとき、突如鳴り響いた警鐘によって議論は途絶してしまう。
鐘の音は、かねてより監視対象となっていた魔王級モンスターの来襲を、ひいてはスタンピードの始まりを告げていた。

時は遡って5の月。
とある公式サイトの情報が開示され、漂ってきた妖気が冒険者魂を震わせていた。
絶妙にヘタウマグレーゾーンなメインビジュアル、初代戦極姫を思い出させる絵柄のばらつき、潰れた饅頭のように愛嬌のあるSDキャラ。
さらには、ブランドデビュー作にして三部作というクソデカ自信。
こうした事前情報の時点で「約束された臭気の便」と看破し、冒険者たちは厳戒態勢に入っていたのである。
そして迎えた10の月、決戦の日。
新星Vanille Macaronが排出した怪物、『Cuteness is justice』との戦いに挑む。
プロローグで滅ぶヒロインの祖国の名称“エンパイアエルフ王国”からしてツッコミが殺到。
帝政と王政が両方備わる最強感とおバカさは、ある意味で住民たちの心を掴んでしまった。
内容以前に文章作法が怪しく、不親切な語順や要領を得ない形容が無駄な読解作業を要求してくる。
そしてストーリーは、3部構成の序章であることを加味してもスケールが小さく、添え物程度。
名ばかりヘタレ調教師の主人公と亡国のエルフ姫が、なんとなく交流と戦闘訓練を重ね、モブ素材臭が漂う全裸のリザードマンを倒したところで終わる。
メインとなる育成シミュレーション要素は、プリンセスメーカーの系譜に連なるオーソドックスなもの。
古代の習わしを踏襲して情報のほとんどが伏せられており、ステータスの意味や各種コマンドの効果に始まりエンディングの分岐条件まで、ひとつひとつ手探りで明らかにしていかねばならない。
情報収集さえ終われば、至極単純な全体像と攻略ルートが明白になるため、娯楽たりうるとすればそこに至る過程それ自体であろう。
いわば方眼紙マッピングのようなレトロで地道な作業であり、現代では高難易度ではなく理不尽とされかねない。
このシステムを持ち味として許容できたとしても、真の脅威はその先にある。
それは、テンポの悪さである。
盤面切り替え時の暗転、ヒロインの立ち絵表示時の拡大縮小カメラワーク、各種行動の成否判定、マップ画面での移動演出……。
何かするたびに操作できない待ち時間が小刻みに発生し続け、速やかにストレスを積み重ねていく。
トライ&エラーと周回プレイを前提としながら、3歩進んで2秒スタンするかの如き挙動は致命的というほかない。
おまけに、セーブとロードは行動選択画面でしか実行できず、クイックセーブ及びロードが存在しない仕様も、手探りのペースを落とす障害となっている。
2周目以降ともなれば、スキップ待ち含めて体感9割が待ち時間となり、精神に支障をきたす冒険者が続出した。
エロに関しては、CGの塗りが最低限求められるラインを下回っているのみならず、尺の中途半端さも相まって実用性が著しく低い。
ほとんどのHシーンは調教コマンドを実行するたびに発生するため、「抜きに短し演出に長し」なのである。
ヒロインが1人のみであることも含め、フルプライス相当の価値があるとはお世辞にも言えまい。
やりたいことはわかるし、SLGとして破綻しているわけでもないが、全てにおいて安っぽく、洗練されていない。
「低価格同人なら凡作」との評が、本作の有り様を端的に示していた。

11の月には、North Boxの使徒にしてエルフの皮を被った性獣『エルフのお嫁さん ~ハーレム婚推奨~』が現れ、ほぼ完璧なタイトル詐欺を成し遂げた。
結婚要素は無いに等しく、「性行為を通して魔力供給する契約が、人間でいうと結婚にあたる」と説明されるのみ。
花嫁姿はパケ絵にしか存在せず、結婚式もなければ孕みもない。
ハーレムも名ばかりで、ただ4人と同時に契約しているにすぎず、シーンの大半は1対1である。
エロゲーでハーレムを名乗るなら、尻を3つ以上並べてからではなかろうか。
シナリオは食事とまぐわいを交互に繰り返すだけであり、エルフのイメージと噛み合っていない。
止めに公式サイトのキャラ設定が本編にほとんど反映されていないことも判明し、選評者をして“あらゆる層からのヒットを避ける魔球”と評せしめた。

疑似エルフの嬌声が遠ざかったのも束の間、今度はグラボの唸り声が怪しく響き渡った。
元凶はQUINCE SOFTの『ごほうしアクマとオシオキてんし』である。
天界から来た天使や悪魔と共に過疎の島を盛り上げていくシナリオは、テンプレ通りにつまらない。
旅館に見習いで入れば2週間でリピート客が増加し、PVを作ればすぐに大バズりして観光客が殺到するなど、あまりに都合の良い展開が続発。
個別に入ると、業務中であっても所構わず発情してヤリまくるようになり、浴場掃除からなだれ込むパターンは大欲情と揶揄された。
天使悪魔の設定は例によってルアーであり、天使に至っては羽ありHが無いためコスAVですらない。
そして最も注目を集めたのが盤外戦術、無制限のフレームレートである。
本作の起動中はGPU使用率が跳ね上がり、100%に張り付くことも珍しくないため、ステルスベンチマークとして恐れられた。
プレイ時間に比例してグラボの寿命を要求する挙動は、なるほどアクマ的ではあるが、そのまま天に召されぬようにと冒険者たちは祈るのであった。

そんな祈りをあざ笑うかのように、今度は骸骨系のリビングシットが冥府から魔界へとまろび出た。
その正体こそ、スワン帝国領Calciteが放った本年2体目の刺客『ニート娘を更生させよ!~性技があれば生きていける~』である。
何があったかはわからないが、前作『幻想カジノ』で採用されていたCG増殖の禁術を封印。
その結果、肉はおろか皮も削られた骨だけの姿で顕現している。
総容量302MB、総プレイ時間5時間未満。
総CG数はミドルプライス下限ボーダーの40枚にして、価格だけは上限一杯の税込価格7480円。
その上で、モノローグの比率を上げてボイス代をケチる外法が新たに付与されている。
ゆえにHシーンは長いモノローグと少ない喘ぎの低密度仕様と化し、5回も喋ればいわゆる「もう出そう」に至る。
一方で、奇襲系スキルとしては一般的な「突然のNTR」をも習得済みであり、風俗勤務を志願する分岐がヒロイン全員に存在する。
中でも、闘病資金を速やかに稼ぐ必要に迫られての風俗堕ちは、抜きゲーにあるまじき重さ。
サブタイトルの“性技があれば生きていける”が、ここにきて甚だ悪趣味さを帯びてくるのである。
さらには、右クリックを左クリックと同じ挙動にして混乱を招く、竿役の名前を「Man」にするといった怪しい小技も披露。
「クレジットにデバック表記がないのは、デバックしていないからか」、「ニートを更生させる前にお前が働け」といった鋭いツッコミが入るも、貫通耐性で受け流してしぶとく暴れ回ったのであった。

どうにかスタンピードの猛威を凌ぎ切った頃には、年の瀬も押し迫っていた。
いつものように駆け込み申請が届き始めたが、その理由は例年とは趣が異なる。
自分が遭遇した事態を怪異として届け出て良いのか、長らく迷い悩んだ末の報告が目立ったのである。
いつもの酒場で始まった座談会で、割り切れぬ感情を抱えた冒険者たちは何を語るのであろうか。

まずは、異端の棒術使いが引き起こした惨劇の話であった。
諸事情により秋で終わっていたSF四季シリーズの冬編にして完結編であり、主人公も含め少女たちしか居ない世界を舞台とした学園SFミステリーを称している。
しかし、推理ものとしてはお粗末を通り越して失格に近い。
導入からして冗長であり、殺人事件発生前に全編の1/3が無駄話で消費され、回想の6/9が埋まる。
探偵パートでは、推理の前提となる情報を開示するタイミングが出鱈目すぎて、プレイヤーが主人公に同期して共に推理を進めることはできない。
最初のうちはプレイヤーにだけ伏せられた情報のせいで推理のしようがなく、逆に露骨な伏線で真相がバレバレになった後も主人公は迷走を続けるといった有様である。
挙げ句には「理由があってあえてお粗末な犯行にした」ことが作中で明かされるが、ならばミステリーを標榜しないでいただきたい。
そしてもう一つの問題が、不意打ちふたなりである。
事前にライターが述べていた“百合的側面はあるけど百合作品ではないです”という言葉の真意は「生えるから」であった。
メインテーマに直結した仕掛けにして、あえての挑戦であることは理解できる。
それでも人を選びすぎる要素には違いなく、地雷と化して多数の重軽傷者を出したのも必然といえよう。
これなら未完結で良かったとまで嘆かれる、苦い幕引きであった。

次いで、名の知れた“曲芸”師の杜撰な仕事ぶりが語られる。
全年齢版からR18版へ移植する、いわゆる逆輸入であるが、今回は手抜きにも程があるという指摘であった。
移植元のシナリオには全く手が入っておらず、追加要素はエンディング後に一括挿入している。
さらに、HCGの使い回しがあまりに露骨。
1人につき2シーンで4枚しかないCGを、1シーン目で3枚使い、2シーン目はそれらをそのまま再利用した上で1枚追加して完成である。
差分すらほぼなく、短い追加エピソード内で連続発生させて既視感を強める演出も心憎い。
サブヒロインに至っては1枚減って3枚で同じ手口を使うため、何をか言わんやである。
かつては、要所要所に追加エピソードやR18シーンを滑らかに挿入し、全年齢版と両方買ってこそ味わえる満足感すら生み出したこともあっただけに、支持者たちの落胆もひとしおであった。

座談会はなおも続き、申請期限の最終日にようやく折返しを迎えた。
新たに届いた報告に曰く、「絵師のファンなら良作、抜き重視なら凡作で済むが、キャラやシナリオを求めるなら地雷」
姫ヒロイン専門ブランドの最新作を総括しての言葉である。
まず、CGとシーンは質・量ともにオーバープライス相応を確保できている。
しかし、内面に姫らしさが感じられるヒロインは4人中1人のみで、ネタ切れによるルアー堕ちを疑われた。
シナリオは冗長を極めており、「記憶喪失をフライパンで治す」など、逆に新しくもない虚無展開が値段分の長尺で続くばかりである。
必ずしも「絵が良くてエロければ良し」とはならない、近年のトレンドを強く反映した報告であった。

そして日付も変わろうかという締め切り間際には、ハーレム一本道のお泊りラブコメ第二弾が滑り込んだ。
指摘されたのは、前作からのソウジャナイ修正である。
そこでまず前作を振り返ってみると、ハーレムに至る過程に関しては、少々癖があれど面白いと素直に評価されている。
問題は、日常描写がHシーンを挟まずに延々と続くせいで生じる冗漫感と、いざハーレムが完成するとヒロイン全員が統一規格の性奴隷BOT化してHシーンのみになる極端な構成であった。
これを受けての本作は、なぜか最大の美点でもあったハーレムまでの展開を豪快に放棄。
エピソードの積み重ねによるキャラクターを掘り下げを減らし、独白でダイレクトに心情を説明することで大幅な時短を実現している。
それでいて、ハーレム入りしたヒロインが人格を喪失する点に変化はない。
結果、冗長さは解消されたが長所も減殺されており、トータルでは劣化と見なされた。
メーカーは、これでデビュー作から3作連続のエントリーである。
しかし不満の多くは、例えるなら「樽いっぱいのワインにひとかけらのウ○コ」の如き痛烈なもったいなさに由来する。
十分な美点も備えているだけに、今後は良メーカーとしての活躍を切に願う。

以上で2021年度の概要を振り返り終えたところで、次点及び大賞を発表する。

次点は、
『下戸勇者 ~酒は飲まねど酒池肉林!~』
『ぶっかけ陰陽師絵巻 ~Hなお祓いいたします~』

そして大賞は、
『Cuteness is justice』
とする。

2021年の特筆事項は、参戦ボーダーラインの低下であろう。
原因のひとつとして、ポルノの多様化とアクセスの易化が考えられる。
高速通信を介し、それこそ世界中の多種多様なポルノから、高品質かつ性癖に刺さるものを手軽に、安価に、秘密裏に選べる時代になって久しい。
商業エロゲーが内包する「ポルノであるというだけで担保される価値」は、かつてと比べて大きく損なわれた。
にもかかわらず、決して安くはない価格を据え置くのならば、相応の付加価値なくして顧客を納得させることは難しいのである。
では、現代における商業エロゲーならではの価値とは?
翻って、その対極に位置するであろう「一番のクソゲー」とは?
この命題に対し、性質の異なる仮説をそれぞれ携えた三者が大賞決定巴戦へと負け残った。
需要とのズレの彼方へと我が道を滑り去った、真性の異質王『下戸勇者』
悪辣な手口で内容実質ゼロの境地を目指した、惰性の悪質王『ぶっかけ陰陽師絵巻』
全方位に力なき正義の無力を見せつけた、天性の低質王『Cuteness is justice』
困難を極めた判定の果てに、いずれ優れぬ三者の勝敗を紙一重で分けたのは「失敗作としての価値」であった。
昨今の流れを踏まえ、本年の「一番のクソゲー」を「いま最も意義のある失敗作」と解釈したのである。
『下戸勇者』は、並外れた個性を十全に発揮したものの需要がなかった。
『ぶっかけ陰陽師絵巻』は、高かろう悪かろうを前提とした売り逃げ常習者の小道具にすぎない。
いずれも、延長線上に光の見えない行き詰まり、デッドエンドを感じさせる。
しかし『Cuteness is justice』からは、高く遠く掲げて届かなかった理想の姿を垣間見ることはできた。
すなわち、CG・シナリオ・エロに加えて音声・音楽・システム、そしてゲーム性まで、全ての構成要素がプロ品質を実現し、それらの混交と調和によって創造される総合エンターテインメント。
そこに至るために必要な「要素」は一応揃え、目指す「方向」も間違っておらず、前向きな「意志」も感じられる。
その上で、ただただ力不足により「品質」が払底している有様は、商業エロゲーの理想と現実を浮き彫りにする「最強の反面教師」と呼ぶに相応しい。
これをもって、『Cuteness is justice』にエンペラークソゲー王の称号を奉ずるとともに、KOTYe2021の大賞を贈る。

本年は、エロゲーを取り巻く環境の移り変わりを改めて意識せざるを得ない年となった。
クソゲーとはなんぞやという永遠の命題に関しても、答えに近づくどころか遠ざかっているとさえ感じられる。
しかし、答えの出ない状況で考え続けることは無駄ではない。
それを示すのが、「即断即決」と対をなす概念、「ネガティブ・ケイパビリティ」である。
「消極的受容力」とも訳され、「目先の安直な結論に飛びつかず、答えの出ないままの不安に耐え続ける能力」を指す。
人は未知を恐れ、ときには仮初の断定に縋ってでも心の安寧を得ようとする。
されど冒険者たちは、そうした不明瞭や不確実をとにかく払拭したい本能に抗おうとする。
遅効性地雷にじりじりと脳を焼かれ、夢破れた痛みを反芻しながら、検証を重ねつつ熟慮し、間違えては反省し、根源的な問いに様々な価値観から多角的なアプローチを試みる。
それはあえて地獄の釜に飛び込む行為とさえいえよう。
けれども、そこに身を浸し続けるうちに、迷いを経た知性は磨かれ、苦しみに耐えた精神は鍛えられ、倫理と共感性が自立する。
それらは、より深く発展的な答えに近づく力となるのである。
そう信じればこそ、冒険者たちは戦い続けるのであろう。
たとえ到達したと感じても、その地点をゴールではなく新たなスタートラインと見なして。
シロとクロの間で輝く、色鮮やかな可能性を求めて。

ともあれ、悲喜劇を語るのはここでひとまず区切りとしよう。
このイカれた世界に向け、KOTYe2021の終止符にして次なる始まりの号砲として放つのは、精一杯の皮肉と、最低限の敬意と、そして喜怒哀楽のスペクトラムを詰め込んだ次の一言である。

「kusoge is justice!」
最終更新:2022年03月01日 22:04