その名のとおり江戸時代の話で佐竹義宣という有名な戦国大名が関ヶ原の戦い後の話しです。秋田県の民謡、与次郎稲荷でも有名な言い方ですが久保田山の白狐と呼びます。
久保田の山に 新しい殿さまがお城を建てられる時
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仮の寝所で休まれていた殿さまの夢枕にひとりの翁が立った
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仮の寝所で休まれていた殿さまの夢枕にひとりの翁が立った
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- 私はこの久保田山に住まう白狐です この山に城を築かれる由 我が里が損なわれるも止むなき事とはいえ せめて一坪なりとも我らが生きるささやかな地所を残していただきたいのです
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もし 我らが願いを聞き届けてもらえるならば今後 佐竹のお家は栄え また 私は一匹の飛脚狐となりて お城と江戸表をつなぐ速足の使者となりましょう・・
もし 我らが願いを聞き届けてもらえるならば今後 佐竹のお家は栄え また 私は一匹の飛脚狐となりて お城と江戸表をつなぐ速足の使者となりましょう・・
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はじめのうちは夢の戯れ言かと思い流していた殿さまであったが 同じ夢を何度も見ることで次第にこれを気に掛けるようになっていったそうな
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そして 江戸屋敷へ残してきた奥のこともあり 家臣を呼ぶとこう言いつけた
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「山の頂 日当たりの良き場所に十坪の地を囲い 禁足の地として祀るように」
はじめのうちは夢の戯れ言かと思い流していた殿さまであったが 同じ夢を何度も見ることで次第にこれを気に掛けるようになっていったそうな
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そして 江戸屋敷へ残してきた奥のこともあり 家臣を呼ぶとこう言いつけた
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「山の頂 日当たりの良き場所に十坪の地を囲い 禁足の地として祀るように」
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白狐の報恩か築城はつつがなく進み やがて立派な城下町も出来た
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そして いつしか 殿さまの近くにひとりの下役が付くようになったそうな
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名は「与次郎」 驚くほど速足の者で国の大事な書状や用事を江戸表まで往復六日でこなしてしまう
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与次郎 は下役ながら殿さまに可愛がられておったのだと
白狐の報恩か築城はつつがなく進み やがて立派な城下町も出来た
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そして いつしか 殿さまの近くにひとりの下役が付くようになったそうな
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名は「与次郎」 驚くほど速足の者で国の大事な書状や用事を江戸表まで往復六日でこなしてしまう
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与次郎 は下役ながら殿さまに可愛がられておったのだと
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ところが その頃 江戸の幕僚内では不穏な話しが持ち上がっておった
.
出羽国には妙な飛脚が居るという
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あまりの速足でその姿を見たものは誰もおらぬ
.
目にも止まらぬ速さで出羽と江戸を行き来するとは 人知れぬ間者ではあるまいか
.
捨て置けば先々の憂いとならん 見つけ次第切り捨てるべしと
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早速に多くの隠密を使い与次郎の行方を追うことになったのだと
ところが その頃 江戸の幕僚内では不穏な話しが持ち上がっておった
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出羽国には妙な飛脚が居るという
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あまりの速足でその姿を見たものは誰もおらぬ
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目にも止まらぬ速さで出羽と江戸を行き来するとは 人知れぬ間者ではあるまいか
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捨て置けば先々の憂いとならん 見つけ次第切り捨てるべしと
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早速に多くの隠密を使い与次郎の行方を追うことになったのだと
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そのような動きなどつゆ知らぬ与次郎 今日も江戸への仕事を済ませいつものように六田の里の旅籠で一泊の宿をとっておった
.
この旅籠の一人娘 “お花” はかねてより男前の良い与次郎に想いを寄せておったが 今日に限っては見知らぬ客が数人 父である宿主 間右衛門のもとへ詰め寄り何やら合議しておる
.
聴くともなく佇むうち 襖の向こうから聞こえてくる話しが耳に入ってきて驚いた
.
幕府の放った隠密どもは この旅籠屋でついに与次郎を見つけたのだ
.
ここを百年とばかりに謀略をねり 間右衛門へ金を渡し与次郎を亡きものにしようと画策
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猟師の谷蔵を呼びにやらすところまで話しは進んでおった
そのような動きなどつゆ知らぬ与次郎 今日も江戸への仕事を済ませいつものように六田の里の旅籠で一泊の宿をとっておった
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この旅籠の一人娘 “お花” はかねてより男前の良い与次郎に想いを寄せておったが 今日に限っては見知らぬ客が数人 父である宿主 間右衛門のもとへ詰め寄り何やら合議しておる
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聴くともなく佇むうち 襖の向こうから聞こえてくる話しが耳に入ってきて驚いた
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幕府の放った隠密どもは この旅籠屋でついに与次郎を見つけたのだ
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ここを百年とばかりに謀略をねり 間右衛門へ金を渡し与次郎を亡きものにしようと画策
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猟師の谷蔵を呼びにやらすところまで話しは進んでおった
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与次郎様がお上に追われるような悪人とは思えない
愛しい与次郎様を何とかして助けねば
.
お花 は夜 誰もが寝入る頃になると与次郎の部屋に忍び 事の次第を伝えた
.
危険を冒してまでも我が身を案じてくれる お花の心根に打たれた与次郎であったが
命の危機とあっては猶予はならぬ
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自らの正体が久保田山の白狐であることを明かし 涙にくれる お花を後に早々と宿をたった
与次郎様がお上に追われるような悪人とは思えない
愛しい与次郎様を何とかして助けねば
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お花 は夜 誰もが寝入る頃になると与次郎の部屋に忍び 事の次第を伝えた
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危険を冒してまでも我が身を案じてくれる お花の心根に打たれた与次郎であったが
命の危機とあっては猶予はならぬ
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自らの正体が久保田山の白狐であることを明かし 涙にくれる お花を後に早々と宿をたった
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追手が来ぬうちに久保田の山に帰ろう そしてしばらくは鳴りを潜めていよう
.
そう思いながら峠に差し掛かった時 何やら藪の中から香ばしい匂いが漂ってくる
これは好物の鼠揚げの匂いではないか
.
なるほど これで俺を罠にはめる気か そのような手に乗るわけにはいかぬ
さりとて これをこのままに捨て置いて仲間の狐に害があってはならん
.
枯れ枝を手にエサを弾いてやろうと背を伸ばしたその時
.
一本の矢が与次郎のこめかみを貫いた
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猟師の谷蔵は旅籠にとどまらず あらかじめ先回りしていたのだ
追手が来ぬうちに久保田の山に帰ろう そしてしばらくは鳴りを潜めていよう
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そう思いながら峠に差し掛かった時 何やら藪の中から香ばしい匂いが漂ってくる
これは好物の鼠揚げの匂いではないか
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なるほど これで俺を罠にはめる気か そのような手に乗るわけにはいかぬ
さりとて これをこのままに捨て置いて仲間の狐に害があってはならん
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枯れ枝を手にエサを弾いてやろうと背を伸ばしたその時
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一本の矢が与次郎のこめかみを貫いた
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猟師の谷蔵は旅籠にとどまらず あらかじめ先回りしていたのだ
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息絶えた与次郎の亡骸は旅籠まで戻され さらし物にされたと言われておる
.
変わり果てた与次郎の姿に お花は泣き崩れたが それでも気丈に与次郎の骨を拾い近くの山に埋めて手を合わせたそうな
.
しかし 間もなく六田の里から お花の姿は消えてしもうた
与次郎の影を追って何処へともなく旅立ってしもうたのかも知れぬ
息絶えた与次郎の亡骸は旅籠まで戻され さらし物にされたと言われておる
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変わり果てた与次郎の姿に お花は泣き崩れたが それでも気丈に与次郎の骨を拾い近くの山に埋めて手を合わせたそうな
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しかし 間もなく六田の里から お花の姿は消えてしもうた
与次郎の影を追って何処へともなく旅立ってしもうたのかも知れぬ
.
それだけではない
.
その後 与次郎を射った猟師 谷蔵はいつの頃からか気がふれてしまい家族も死に絶えてしもうたといわれる
.
間右衛門の旅籠も火事となり 立て直す者もなかった
.
里には悪い病が流行り いつしか これらはみな非業の死を遂げた与次郎の祟りだといわれるようになり 村外れに与次郎を祀る祠が建てられると災厄も治まったそうな
それだけではない
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その後 与次郎を射った猟師 谷蔵はいつの頃からか気がふれてしまい家族も死に絶えてしもうたといわれる
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間右衛門の旅籠も火事となり 立て直す者もなかった
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里には悪い病が流行り いつしか これらはみな非業の死を遂げた与次郎の祟りだといわれるようになり 村外れに与次郎を祀る祠が建てられると災厄も治まったそうな
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一方 久保田の城では いつまでたっても戻らない与次郎を皆が心配していた
.
待ち切れなくなった殿さまの指図で探しに出掛けた家来が 六田の里で与次郎が殺されたことを知ったが 全ては後のまつり
.
お家に忠義を尽くしながらも悲しく死んでいった与次郎は稲荷明神として今でも厚く祀られているそうな
一方 久保田の城では いつまでたっても戻らない与次郎を皆が心配していた
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待ち切れなくなった殿さまの指図で探しに出掛けた家来が 六田の里で与次郎が殺されたことを知ったが 全ては後のまつり
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お家に忠義を尽くしながらも悲しく死んでいった与次郎は稲荷明神として今でも厚く祀られているそうな