『4分33秒』 - (2009/12/18 (金) 23:27:13) の最新版との変更点
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*『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その時、時刻は19時56分27秒。
警告時間の1分間を足すと残り時間は4分33秒。
4分33秒間。
それがリヒャルト・ギュオーに許された逃走のための時間だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ずるずると重く、動かない体を引きずってエリアの端を目指す。
先ほどウォーズマンとの激しい戦いを経た体はなかなか言うことを聞かない。
木の根に足を取られた巨躯がぐらりと傾いだ。
「くそっ!ウォーズマンめ!」
俺は生きて、世界の支配者となるのだ!
だから、この俺がーー
「このリヒャルト・ギュオーがっ!こんな所で潰えることがあってはならんのだああぁぁぁぁあああっっっ!!!」
咆哮を上げ走り出す。
それは演奏開始の合図。
ギュオーは振り上げたのだ。
自分に残された4分33秒を奏でる指揮のタクトを。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ざわざわざわ、びゅうびゅうびゅう。
ベースラインは、風を切る音、闇に塗りつぶされた木々がざわめく音。
ぜぇぜぇぜぇ、どくどくどく。
主旋律は己の体の悲鳴。呼吸の音、心臓の早鐘。
体の外から、内から、音はF-5と名付けられた範囲に響き渡る。
時間は淀むことなく勤勉に進み、ついには最終楽章に至る。
演奏記号はcrescendoでPrestissimo。
その身にまとわりつく音はどんどん大きく速度を上げていく。
果たしてその旋律はこの男の耳に届いているのだろうか?
残された力を振り絞るようにギュオーは前へ進む。
生にしがみつく精神はすでに限界を叫ぶ体をさらに加速させる。
軋む体に鞭を打つように、両の足を交互に繰り出すことにのみ全神経を傾ける!
残り1分を刻んだところで
ひとつ、音を奏でる楽器が増えた。
『警告。
リヒャルト・ギュオーの指定範囲外地域への侵入を確認。
一分以内に指定地域への退避が確認されない場合、規則違反の罰則が下る。
繰り返す……』
走りながら落ち着きなく目玉を動かす。
そろそろエリアの端に出るはずなのだが明確な目印があるわけではない。
首筋から這い寄る死の影がやかましくわめき続ける。
『10、9、8、7……』
「えぇい!くそぅっ!!」
追いつめられた彼は最後に賭けに出た。
出ざるを得なかった……自分の命をチップにした賭けに!!
どん!と最後の跳躍。
男の体は宙を舞った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『……6、5、4、……』
その巨躯は数瞬空を舞った。
それは獣神将の力によるものではなく、男・ギュオーとしての挑戦。
慣性の法則に従い、人体の通過点は放物線を構築する。
『……3、2、……』
未だ生存ラインに届かない、警告音は鳴り止まない。
しかしその足はすでに再び地に着こうとしている。
『1、ゼ………………』
男は死線を越えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
男は肩で大きく息をついていた。
その体は、濃く暗い木の陰の中。
彼の後ろには目に見えない線がある。深くて暗い線が在る。
『退避確認』
曲の最後の音は勝利を歌った。
男は賭けに勝ったのだ。
しかし生を勝ち得た男は快哉を叫ぶこともなく、ただうずくまる。
「うぅっ!な、何だ、今のは……」
がくがくと体を震わせ、わななく唇でそう呟いた。
蠢いたのだ、何かが自分の首元で。
それが自分の中で起こったものか、首輪の側で起こったものかは判然としない。
だが、確実にこの幾ばくもない隙間で何かが起こっていた。
ギュオーの脳裏に『あれ』の存在がかすめていく。
加持を殺めたときに知った存在、首輪に潜む『あれ』が。
「それに今の感覚はなんなのだ……!? まるで俺が俺でなくなるような…………!」
もう駄目かと思うほど崖っぷち、その瞬間、感じたのは想像していたような痛みでも灼熱感でもない。
ただ自分という個が消えてしまうような感覚だった。
ギュオーは野心の強い男である。
支配者アルカンフェルをも打ち倒し、成り代わろうとする業の深い男である。
故に彼は誰も信用せず、己の力と存在のみを拠り所としていた男。
・・・・・・・・・・
その男が唯一信ずる自分が自分でなくなるとしたらーー
「フ、フハ、フハハハハハッハハハハッハハハハハッ!!!!」
男は笑う。
その身に起こった異変に動じず、さながら王のように。
「今のが禁止エリアの発動の片鱗というものか! くくく……面白い、面白いぞ雑魚がぁ!!」
狂ってなどいない。
その振る舞いは髪の先まで、常の彼と微塵も違わない。
「俺はユニットを手に入れ神に、支配者になる男だ!一度死にかけたとてハクがついたというものよっ!」
男は歩く。
先ほどとは別人のように、ゆったりと余裕さえ見えるようで。
しかし、黒い恐怖は彼の背に貼り付いて放さない。
音もなく、べたりと。
ただべったりと。
【F-5周辺のエリアのどこか/一日目・夜】
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身軽い打撲、左肩負傷、ダメージ(大)、疲労(大)
【持ち物】支給品一式×4(一つ水損失)、参加者詳細名簿、首輪(草壁メイ) 首輪(加持リョウジ)、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、
ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン、 毒入りカプセル×4@現実、
博物館のパンフ 、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー 、
クロエ変身用黒い布、詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×12@ケロロ軍曹、
ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品0~1
【思考】
1:優勝し、別の世界に行く。その際、主催者も殺す。
2:キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3:自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4:首輪を解除できる参加者を探す。
5:ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6:タママを気に入っているが、時が来れば殺す。
※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」「加持リョウジ」に関する記述部分が破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されていると推測しました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています。
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。
※ギュオーはF-5以外の、F-5を中心とする9コマのエリアどこかにいます。どこにいるかは、次の書き手さんにお任せします
*時系列順で読む
Back:[[鎧袖一触~鎧は殴るために在る~]] Next:[[比較魔法論]]
*投下順で読む
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|[[カッコつけた言葉じゃない強さを見せてくれ]]|リヒャルト・ギュオー|[[]]|
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*『4分33秒』 ◆MADuPlCzP6
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その時、時刻は19時56分27秒。
警告時間の1分間を足すと残り時間は4分33秒。
4分33秒間。
それがリヒャルト・ギュオーに許された逃走のための時間だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ずるずると重く、動かない体を引きずってエリアの端を目指す。
先ほどウォーズマンとの激しい戦いを経た体はなかなか言うことを聞かない。
木の根に足を取られた巨躯がぐらりと傾いだ。
「くそっ!ウォーズマンめ!」
俺は生きて、世界の支配者となるのだ!
だから、この俺がーー
「このリヒャルト・ギュオーがっ!こんな所で潰えることがあってはならんのだああぁぁぁぁあああっっっ!!!」
咆哮を上げ走り出す。
それは演奏開始の合図。
ギュオーは振り上げたのだ。
自分に残された4分33秒を奏でる指揮のタクトを。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ざわざわざわ、びゅうびゅうびゅう。
ベースラインは、風を切る音、闇に塗りつぶされた木々がざわめく音。
ぜぇぜぇぜぇ、どくどくどく。
主旋律は己の体の悲鳴。呼吸の音、心臓の早鐘。
体の外から、内から、音はF-5と名付けられた範囲に響き渡る。
時間は淀むことなく勤勉に進み、ついには最終楽章に至る。
演奏記号はcrescendoでPrestissimo。
その身にまとわりつく音はどんどん大きく速度を上げていく。
果たしてその旋律はこの男の耳に届いているのだろうか?
残された力を振り絞るようにギュオーは前へ進む。
生にしがみつく精神はすでに限界を叫ぶ体をさらに加速させる。
軋む体に鞭を打つように、両の足を交互に繰り出すことにのみ全神経を傾ける!
残り1分を刻んだところで
ひとつ、音を奏でる楽器が増えた。
『警告。
リヒャルト・ギュオーの指定範囲外地域への侵入を確認。
一分以内に指定地域への退避が確認されない場合、規則違反の罰則が下る。
繰り返す……』
走りながら落ち着きなく目玉を動かす。
そろそろエリアの端に出るはずなのだが明確な目印があるわけではない。
首筋から這い寄る死の影がやかましくわめき続ける。
『10、9、8、7……』
「えぇい!くそぅっ!!」
追いつめられた彼は最後に賭けに出た。
出ざるを得なかった……自分の命をチップにした賭けに!!
どん!と最後の跳躍。
男の体は宙を舞った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『……6、5、4、……』
その巨躯は数瞬空を舞った。
それは獣神将の力によるものではなく、男・ギュオーとしての挑戦。
慣性の法則に従い、人体の通過点は放物線を構築する。
『……3、2、……』
未だ生存ラインに届かない、警告音は鳴り止まない。
しかしその足はすでに再び地に着こうとしている。
『1、ゼ………………』
男は死線を越えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
男は肩で大きく息をついていた。
その体は、濃く暗い木の陰の中。
彼の後ろには目に見えない線がある。深くて暗い線が在る。
『退避確認』
曲の最後の音は勝利を歌った。
男は賭けに勝ったのだ。
しかし生を勝ち得た男は快哉を叫ぶこともなく、ただうずくまる。
「うぅっ!な、何だ、今のは……」
がくがくと体を震わせ、わななく唇でそう呟いた。
蠢いたのだ、何かが自分の首元で。
それが自分の中で起こったものか、首輪の側で起こったものかは判然としない。
だが、確実にこの幾ばくもない隙間で何かが起こっていた。
ギュオーの脳裏に『あれ』の存在がかすめていく。
加持を殺めたときに知った存在、首輪に潜む『あれ』が。
「それに今の感覚はなんなのだ……!? まるで俺が俺でなくなるような…………!」
もう駄目かと思うほど崖っぷち、その瞬間、感じたのは想像していたような痛みでも灼熱感でもない。
ただ自分という個が消えてしまうような感覚だった。
ギュオーは野心の強い男である。
支配者アルカンフェルをも打ち倒し、成り代わろうとする業の深い男である。
故に彼は誰も信用せず、己の力と存在のみを拠り所としていた男。
・・・・・・・・・・
その男が唯一信ずる自分が自分でなくなるとしたらーー
「フ、フハ、フハハハハハッハハハハッハハハハハッ!!!!」
男は笑う。
その身に起こった異変に動じず、さながら王のように。
「今のが禁止エリアの発動の片鱗というものか! くくく……面白い、面白いぞ雑魚がぁ!!」
狂ってなどいない。
その振る舞いは髪の先まで、常の彼と微塵も違わない。
「俺はユニットを手に入れ神に、支配者になる男だ!一度死にかけたとてハクがついたというものよっ!」
男は歩く。
先ほどとは別人のように、ゆったりと余裕さえ見えるようで。
しかし、黒い恐怖は彼の背に貼り付いて放さない。
音もなく、べたりと。
ただべったりと。
【F-5周辺のエリアのどこか/一日目・夜】
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身軽い打撲、左肩負傷、ダメージ(大)、疲労(大)
【持ち物】支給品一式×4(一つ水損失)、参加者詳細名簿、首輪(草壁メイ) 首輪(加持リョウジ)、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、
ガイバーの指3本、空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン、 毒入りカプセル×4@現実、
博物館のパンフ 、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー 、
クロエ変身用黒い布、詳細参加者名簿・加持リョウジのページ、日向ママDNAスナック×12@ケロロ軍曹、
ジュエルシード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品0~1
【思考】
1:優勝し、別の世界に行く。その際、主催者も殺す。
2:キョンを殺してガイバーを手に入れる。
3:自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4:首輪を解除できる参加者を探す。
5:ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6:タママを気に入っているが、時が来れば殺す。
※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」「加持リョウジ」に関する記述部分が破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されていると推測しました。
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。
※詳細名簿の内容をかなり詳しく把握しています。
※一度ギュオーをLCL化させかけた影響で首輪に変化があるかもしれません。
※ギュオーはF-5以外の、F-5を中心とする9コマのエリアどこかにいます。どこにいるかは、次の書き手さんにお任せします
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