いかにして人はクマとなるか?
みなさんはクマという単語にどのようなイメージを持つだろうか?野性のクマを思い起こして、凶暴そうとか、または、
ぬいぐるみなどのキャラクターを思い起こして、かわいいとかそういったイメージを抱いているのではないだろうか?
ここに登場するクマはそのどちらでもない。ありていにいえば、かわいそう。哀れ。そしてちょっぴり愉悦の感情をひ
きおこすそういう生き物である。より具体的にいうのならば、株式市場という自然界に勝るとも劣らない弱肉強食の
世界のなかで、食物連鎖の頂点をめざしていたけれど、夢半ばにして他の生物の肥やしになりかかっている元人間
であるといえるだろう。そう誰もが最初は人間であった。人間のまま巨万の富を築きたかったのである。
しかし、世の中はいつの時代も一握りの勝者と圧倒的多数の敗者によって構成されるものである。もちろん現代も
例外ではない。人類みな兄弟、四民平等、自由、博愛、平等、そんな心地のいいキャッチフレーズにだまされてはい
けない。市場にも人生にも、そんなおいしい話は転がっていないのである。そんなことはクマにいわれるまでもなくわ
かっていることだとみなさんは思うかもしれない。しかしそれは、自分だけは詐欺にあわないと過信することと同じくら
い危険な思考である。最初はだれもが希望をもって株式市場へと参加する。しかしその希望を達成することができる
のはほんの一握りの「人間」だけなのだ。しかも人間のままでありつづけられるのも難しい。たいていの人間は畜生界
ならぬ、クマ地獄へと堕ちていくのだ。では人がどのようにしてクマになるのかを見ていこう。
クマと階級
クマと階級には一見なんの関係もないように思える。しかし人間社会が縦社会であるように、クマの社会も厳しい階級
制によって成り立っているのである。クマの階級は軍隊の階級表のように下は二等兵から上は大将まで格付けされて
いる。階級は損失金額と連動しており、損が拡大すればするほど階級も上がる仕組みである。人間社会では、なにか
功績を立てたり、利益を出したりした人の階級が上がる仕組みであるから、みなさんはすこし不思議に思うかもしれな
い。しかしよく考えるとすこしどころではなく、180度人間社会の階級制と異なっているのである。人間社会では+にな
れば階級が上がるのにたいして、クマ社会では-になればなるほど階級があがるマゾシステムを採用しているのであ
る。ではクマは望んで損失をだしているのであろうか?
クマは望んで損失をだしているわけではなく、むしろ早く退役したいとおもっているのである。退役というのは軍隊と同じ
ように兵役を終え、一民間人としてクマ生活におさらばし、人間になるということである。「早く人間になりたーい!」これ
は妖怪人間だけではなく、クマにも共通するこころの叫びである。マゾシステムに違和感を感じたみなさんもクマがマゾ
ではないことを理解していただけたことと思う。ではなぜクマ社会ではマゾシステムを採用しているのだろうか?それは
クマの性質によるところが大きい。一度人間からクマに堕ちると株で利益をだすという目的がいかに元本の損失をとり
戻すかという目的にシフトする。こうなるともはや人間の思考ではなく、クマ思考へと変貌したことを意味する。
元本を取り戻すためには、これ以上損失をだすわけにはいかない。しかし、クマ思考におちいるとたいていは、買っては
下がり売っては上がるといった自分の願望とは逆の取引をしてしまいがちになる。それは損を取り戻そうとあせってしま
い高値づかみをしたり、これ以上損をしたくないため狼狽売りをしたりするからである。もちろん頭のなかではそのような
売買は愚か極まりないことであり、冷静に取引すべきことはわかっている。しかし、頭でわかっていてもクマ思考がじょ
じょに体の内部まで染み込んでいき、体が冷静な判断を許さなくなるのである。